
現地2月13日(日本時間14日)、イタリア・ミラノ・コルティナ五輪のスノーボード男子ハーフパイプ決勝で、歴代最高峰のバトルが繰り広げられた。戸塚優斗が95.00点で金メダルを獲得。平昌・北京で味わった悔しさを胸に、3大会目にしてつかんだ“3度目の正直”の勝利だった。
日本勢は4人が決勝に進出。五輪初出場の山田琉聖は独創的な滑りで92.00点をマークし、銅メダルを獲得。平野流佳は魂の滑りで自己ベスト91.00点を記録したものの、惜しくも4位にとどまった。4大会連続メダルが期待された平野歩夢も最後まで攻めの姿勢を見せたが、転倒により7位となった。
金メダル、銅メダル、そして全員が示した高いパフォーマンス――令和の日の丸飛行隊は、世界最高峰の舞台でその強さと存在感を鮮烈に示した。
目次
戸塚優斗、4年越しの完成形 ― “勝てる滑り”でつかんだ金
戸塚優斗が、ついに頂点に立った。
1本目。冒頭でわずかにバランスを崩しかけながらも踏みとどまり、キャブ・ダブルコーク1440ミュートからフロントサイド・トリプルコーク1440トラックドライバーへとつなぐ高難度構成を滑り切る。スイッチ・バックサイドアーリープロデオ・ステールフィッシュ、そしてバックサイド・ダブルコーク1260ミュートまでまとめ上げ、91.00点。まずは2位につけた。
続く2本目。同じルーティンを選択したのは、自信の証だった。磨き上げてきた“勝てる構成”を、今度は完璧な精度で表現する。軸となるトリプルコーク1440を中心に一つ一つの技を研ぎ澄まし、95.00点。スコアボードの最上段にその名が刻まれた瞬間、4年間積み重ねてきた時間が報われた。
3本目はすでにメダル圏内を確保した中での挑戦。さらなる高みを狙ったが、最後のトリックで転倒。それでも2本目の得点が守り抜き、悲願の金メダルを手にした。
平昌で11位、北京で10位。五輪の舞台では結果を残せず、悔しさだけが残った。技の完成度だけでは勝てない――その現実を痛感した戸塚は、この4年間で滑りそのものを再構築する。高難度技の強化はもちろん、パイプ形状や天候変化への適応力を徹底的に鍛え上げた。今季はダブルコーク1620も実戦で成功させ、選択肢の幅を広げた。
さらに、シーズン前には神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮でおはらいを受けるなど、精神面の準備も欠かさなかった。積み上げた努力と静かな覚悟が、一本一本の滑りに宿っていた。
構成を変えず、完成度で勝つ。
それが戸塚優斗の出した答えだった。
3度目の五輪で示したのは、爆発力だけではない。揺るがぬ完成度と、自分を信じ抜く強さ。
その滑りは、間違いなくハーフパイプ史に刻まれる金メダルだった。
最後まで迫ったスコッティ・ジェームス、日本の牙城を揺らす猛追
日本勢にとって、最後まで最大の脅威となったのが、金メダル候補の一角と目されていたスコッティ・ジェームスだった。
予選を堂々の1位で通過。決勝ではラスト走者という絶好のポジションを手にし、会場の視線を一身に集めた。
1本目はまさかのミス。それでも2本目で一気に流れを引き戻す。
キャブ・トリプルコーク1440ミュートから入り、フロントサイド・ダブルコーク1260ステールフィッシュ、バックサイド・ダブルコーク1080ステールフィッシュへと高回転を連ねる。さらにスイッチバックサイド1440ジャパン、締めはバックサイド・ダブルコーク1440ジャパン。
1440を3発組み込んだ超高難度構成をまとめ上げ、93.50点。優勝争いに一気に肉薄した。
そして迎えた最終滑走。
日本のエースが3本目を終えた直後、会場の緊張は最高潮に達する。同じルーティンで加点を狙い、ラストトリックではバックサイド・ダブルコーク1440ジャパンから、さらに回転数を1620へと引き上げる大技に挑んだ。
空中での完成度は申し分なかった。だが、着地がわずかに乱れる。ボードが雪面をとらえきれず、その瞬間、勝負の行方が決した。
もし、あの一瞬が決まっていたら――。
金メダルの色は変わっていた可能性もあった。それほどまでに完成度と難度を兼ね備えた、圧巻のルーティンだった。
最後の最後まで日本の牙城を揺さぶり続けたスコッティ・ジェームス。その猛追があったからこそ、この決勝は歴史に残る名勝負となった。
山田琉聖、19歳の衝撃 ― “独創”で射抜いた銅メダル
ハイレベルな日本男子ハーフパイプ代表の中で、最後に切符をつかんだのが19歳の山田琉聖だった。
いわば“ジョーカー”。その存在が、大舞台で一気に花開いた。
1本目から攻めた。
キャブ・ダブルコーク1440ノーズグラブで高さと完成度を示すと、フロントサイド・ダブルコーク1260ミュート、バックサイド・ダブルコーク1080ジャパンへと流れるようにつなぐ。
そして会場をどよめかせたのが、独創性あふれるダブルマックツイスト・ジャパン。最後はスイッチバックサイド・アーリーウープロデオ900ステールフィッシュで締めくくった。
高回転とハイエアで世界をリードしてきた平野歩夢や戸塚優斗、平野流佳とはまた異なるアプローチ。
山田の滑りは、純粋な“スタイル”と“魅せる力”で勝負するものだった。
完成度の高いルーティンで92.00点を叩き出し、暫定トップに立つ場面も演出。五輪初出場とは思えぬ堂々たる滑りで、最終的に銅メダルを手にした。
爆発的な回転数だけではない。
スノーボードの自由さ、格好良さ、その表現力――。
19歳のルーキーが示したのは、日本ハーフパイプの“次の可能性”だった。
平野流佳、魂の3本目もあと一歩届かず
2大会連続出場の平野流佳は、悲願のメダルにあと一歩届かなかった。
決勝1本目、スイッチバックサイドダブルコーク1440など高難度技を成功させ、90.00点をマーク。日本勢トップ3独占の一角として3位につけた。2本目も安定の滑りで90.00点を記録。
迎えた3本目。平野はさらに完璧なルーティーンで挑む。
スイッチバックサイド1440 → バックサイド・ダブルコーク1260ミュート → フロントサイド・トリプルコーク1440トラックドライバー → キャブ・トリプルコーク1440 → フロントサイド・ダブルコーク1260。
着地後に雄叫びをあげ、ハイスコア91.00点をマーク。正直「もっと得点出てもよかったのでは?」と思わすようなジャッジング。完成度・難易度ともに申し分ない滑りで、得点以上の存在感を示した。
4年前の北京五輪では、決勝の高さが増したパイプに対応できず3本とも転倒。12位に終わった悔しさを胸に、完走を徹底するトレーニングとW杯3季連続総合優勝の経験を重ね、リベンジの舞台に臨んだ平野流佳。
今回の滑りは、順位以上に彼の進化と挑戦の軌跡を示すものとなった。
平野歩夢、執念の挑戦 ― 7位でも示した王者の存在感
前回王者の平野歩夢は7位。4大会連続メダルという偉業には届かなかった。
今年1月のワールドカップでの転倒により骨盤を負傷。万全とは言えない状態で迎えた今大会だったが、予選を突破し決勝へ進出した。
1本目は転倒。それでも2本目で立て直し、86.50点をマーク。高難度の4回転半技を成功させるなど、表彰台を狙う攻めの姿勢を貫いた。
迎えた3本目、メダルを懸けて難度を上げたラストのバックサイド1260ジャパン。しかし着地でバランスを崩し、無念の転倒となった。
結果は7位。それでも最後まで挑戦をやめない滑りは、会場の空気を一変させるほどの存在感を放った。
大会後、SNS上ではその姿勢や覚悟を称える声が広がり、順位以上のインパクトを残したことは間違いない。
メダルには届かなくとも、王者としての矜持を示した一戦だった。
令和の日の丸飛行隊が刻んだ歴史
世界最高峰の舞台で、日本勢は圧倒的な存在感を示した。
戸塚優斗が悲願の金メダル、山田琉聖が初出場で銅メダル。
そしてメダルには届かなかったものの、平野流佳、平野歩夢も含め、日本勢4人が歴史的ハイレベル決勝を演出した。
金と銅を手にした令和世代、そして挑み続けたレジェンド。
この決勝は、間違いなくハーフパイプ史に刻まれる一戦となった。
ミラノ・コルティナ五輪
スノーボード男子ハーフパイプ 決勝結果一覧
| 順位 | 選手名 | 国 | ベストスコア | Run1 | Run2 | Run3 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 🥇1 | 戸塚優斗 | JPN | 95.00 | 91.00 | 95.00 | DNI |
| 🥈2 | スコッティ・ジェームス | AUS | 93.50 | 48.75 | 93.50 | DNI |
| 🥉3 | 山田琉聖 | JPN | 92.00 | 92.00 | DNI | 92.00 |
| 4 | 平野流佳 | JPN | 91.00 | 90.00 | 90.00 | 91.00 |
| 5 | バレンティーノ・グセリ | AUS | 88.00 | 35.00 | DNI | 88.00 |
| 6 | イ・チェウン | KOR | 87.50 | 24.75 | 24.75 | 87.50 |
| 7 | 平野歩夢 | JPN | 86.50 | 27.50 | 86.50 | DNI |
| 8 | ジェイク・ペイツ | USA | 77.50 | 77.50 | DNI | DNI |
| 9 | ワン・ズーヤン | CHN | 76.00 | 17.75 | 17.25 | 76.00 |
| 10 | アレッサンドロ・バルビエリ | USA | 75.00 | 75.00 | DNI | DNI |
| 11 | チェイス・ジョージー | USA | 70.25 | 11.75 | 70.25 | DNI |
| 12 | キャンベル・メルヴィル・アイブス | NZL | 43.00 | 43.00 | DNI | DNI |

