Category: コラム

【コラム】トレーニングのすすめ

文:齋藤 稔

PART 1

カタログ号も出そろい、ショップにはニューモデルが出始め、そろそろスノーボードが気になってきている人も多いんじゃないでしょうか?僕は一年中気になってしかたがないんですけど・・・。

ところでみなさんいきなりシーズンを迎えて大丈夫ですか?新しい道具を買ったり、ボードをチューンナップしたりだけではなく、自分の体もシーズンに備えておきましょう。「だいたいスノーボードなんて楽しけりゃいいんだよ」と言う人はそれで構いません。自分のスタイルというものや考え方がありますから個人の自由です。ただ、「シーズン入ったらすぐにでもバンバン滑りたい」・「昨シーズンよりも上達したい」・「怪我をしないで楽しみたい」と言う方は、読んでみてください。

トレーニングの必要性
そもそもトレーニングは必要なのか?答は簡単「上手くなりたいなら、怪我をしたくないならトレーニングは絶対にしたほうがいい」となります。夏の間なにもしないで夏バテとの戦いに明け暮れた人は、確実に昨シーズンの終わりよりも体力が落ちています。スノーボードもスポーツですから、体力は必要なわけで、体力を維持、向上させるためにはトレーニングが必要になります。夏の間室内ゲレンデや、海外に行って、何度か滑っている人、サーフィン・スケートボードをやっている人、なにかしらスポーツをやっている人、スポーツクラブやトレーニングジムに通っている人は、そのまま続けていればなんの問題もありません。スノーボードのトレーニングだから、なにか特殊な方法があるのと言うわけではありません。フリースタイラーの方やプロの人はトランポリンなんかを使ってトリックの練習をする場合があるようですが、一般レベルではそれほど必要ないでしょう。基本的に健康な体なら大丈夫なのです。ただ、体力があることによるメリットは多々あります。HPやワンメイクのハイクアップで疲れにくいため、他の人より多く練習できる。長い距離を滑っても足腰が疲れにくいから人より多く滑れる等です。さらに筋力が充分にできてくれば、今までよりもシャープなターンができるようになったり、トリックのレベルがあがったりします。この時期トレーニングをしておくことによって、体力の維持ができ、シーズンが始まってすぐにスノーボードが楽しめるようになります。もしトレーニングをしていない場合何日かは、感覚を取り戻すこと、体力を取り戻すことに使われてしまいます。この時期に無理をすれば怪我を招き、シーズンを棒に振ることにもなりかねません。そんな事態を回避するためにも、トレーニングを始めましょう。

どうやってやればいいの?
まず、普段それほど時間をかけなくてもできることにストレッチングがあります。ストレッチングを普段から続ける事によって、体が柔らかくなり、転倒した場合でも衝撃を効率的に分散・吸収できるようになり、怪我をしにくい体になります。また体が柔らかくなれば、間接の可動範囲も広くなり、トリックを行う場合、よりスムーズにできるようになります。ストレッチングは学校の体育の時間にやったような簡単な柔軟体操でも効果が現れるので、毎日続ける事をおすすめします。他にも時間をかけることなくできるのは腕立て伏せ・腹筋・スクワットなどです。各100回ほどやっても10~15分ほどでできますから、自分の体力に合わせて無理なく続けていくことができると思います。その他にはジョギングなどもあげられます。ジョギングはある程度の距離を走ることになるので、時間が必要になりますが30分程走れば、汗もかきますし、とりあえずは効果があるでしょう。必要なことは継続してやること。一日だけがんばってやるよりは毎日少しでもいいですから続けることが大事ですし、その方が肉体的にも精神的にも効果があるのです。

毎日いろいろと忙しいかも知れませんが、一日のほんのわずかな時間でもトレーニングに使うことでシーズンに入ったときはライバルに差が付けられるのは間違いないです。上達しようという気持ちもトレーニングを続けることで維持できます。今からでも遅くはないですから、シーズンが始まる前にトレーニングを始めてみてはいかかですか?

PART 2

オフ・トレーニングについて
スノーボードで必要な筋力は主に下半身の筋力ですが、実際には体全体のバランスが重要になります。陸上の短距離選手を見ればわかると思うのですが、下半身が発達しているのと比例して、上半身の筋力もかなり発達しています。これは体全体のバランスを取るためです。下半身だけ筋力が発達すると体のバランスが崩れ、結果的にスポーツにおいては筋力UPの効果はでません。下半身だけ強化すると上半身に対して下半身の筋力が過大になり、そのため、体全体が下半身に振り回されることになるからです。走ることで言えば、腹筋背筋で上半身を支え、体のブレをおさえる。腕を振ることによって上半身の力を下半身に伝え、効率よく走ることができるようになるのです。また、腕を振ることによってでてくる腕からの動きを吸収し、上手く使うためには肩周り・背中・胸の筋肉が必要になります。こうやって考えていくと、やはり筋力はバランス良くアップさせることが必要で、どこか一カ所ばかりの筋力をアップさせてもそれほど効果はあがらないということがわかると思います。体操選手なども良い例で、体全体のバランスがとれ手いる選手は、様々な技をやっても綺麗に演技する事ができています。一般レベルのスノーボーダーならば、普段から何かしらの運動をすることによって、体力を維持することができますから、特別なトレーニングをするよりは普段から体を動かすことが重要になってきます。しかし、競技者ならば一般レベルよりも高次元での筋力が必要になってきます。そのためには体のことを考えたトレーニングが必要です。プロのスノーボーダーのインタビューなんかでは「それほどトレーニングなんかしない」と言う人が多いですが、プロの人達は一年を通してスノーボードをやっていますから自然と必要な筋力が付くのです。アメリカンライダーならばマシントレーニングはそれほどしないとはいっても、日本人の考えるトレーニングの量以上は確実にやっていることと思います。ショーンパーマーが以前雑誌のインタビューでトレーニングについて話をしていましたが、毎日かなりの量のトレーニングをこなしていました。ジムリッピーも現在自宅のガレージにトレーニング施設を作っているとのこと、やはり、高いレベルでライディングをする場合にはそれなりのトレーニングが必要なのです。
具体的には?
では、具体的にはどのようなトレーニングが必要なのでしょうか?まず誰でも考えつくのが足腰の強化のために走ることだと思います。走ることによって下半身の強化と心肺機能の強化が望めます。心肺機能が向上すると持久力が付きます。これは体の中で効率よく、酸素と二酸化炭素を交換できるようになるためで、常に体に酸素が行き渡る状態になれば疲れにくいのです。「ハイクアップがつらい」と言う人は、ジョギングなどで体力をつけるといいでしょう。では各部分について少し詳しく書いていきます。下半身からいきます。まずはすねとふくらはぎです。滑走速度が速くなると、足首を自分の思ったようにコントロールしないと暴走してしまいます。つまり自分の思った角度に固定できないと、滑っていて疲れるし安定しません。そのためすねとふくらはぎの力が重要になります。ここを鍛えるには、つま先立ちになって何度も伸び上がる運動が有効です。「カーフレイズ」といいます。次にふとももです。下半身では一番大きな筋肉でこのふとももの筋肉が弱いと力強い滑りはできません。「スクワット」が効果的です。下半身全体のバネを鍛えるには、「ジャンピングスクワット」が有効でしょう。一度しゃがみ込んでその後思いっきりジャンプ、着地の時にはまたしゃがみ込んでジャンプのエネルギーを吸収します。これの繰り返しです。下半身のバネがあるとオーリーをやっても踏切が強くなるので高く飛べますし、高いところからの着地でもきちんとエネルギーを吸収できるようになります。「ジャンピングスクワット」の時に腕を思い切り振りながら前にジャンプすれば全身運動としても効果的で、体全体が鍛えられます。腹筋背筋は、下半身と上半身のジョイント部分ですからここはしっかりと鍛えておかないとダメです。特にトリックを行う場合は上半身で回転をリードしたり、バランスを崩したときのリカバリーは全身で行うので、ここはしっかりと鍛えておくべきです。普通に腹筋背筋運動を行えば問題ないです。最後に上半身。腕の振りでトリックのきっかけを作ったり、転んだときに受け身を取ったり、高速で滑っているときにバランスを取る、など意外に上半身は活躍しているのです。「腕立て伏せ」や「懸垂」などが効果的です。

何度もいうけどバランスが肝心
何度もいいますけど肝心なのはバランスのとれた体を作る事です。下半身だけ、あるいは上半身だけではスノーボードのパフォーマンスは向上しません。スポーツに適した体というのは一日二日でできるものではないので、無理せずトレーニングを続けていくことが必要になります。今回紹介したのはジムに行かなくてもできるトレーニングばかりです。強度もそれほどきつくはないでしょう。空いている時間を見つけて少しでもいいから続けて見てください。シーズンまでまだ2ヶ月ほどあります。シーズンが始まってすぐにトレーニングの効果が実感できるはずです。それでは頑張ってください。

【コラム】学校では教えてくれないこと

文:齋藤 稔

今まで、みんなも昔学校でいろんなスポーツを習ってきたし、遊んできたと思う。野球・サッカー・バスケットボール・水泳・バレーボール・etc。でも、今みんなが夢中になっているスノーボードは、学校では教えてくれないものだ。スノーボードは自分の意志ではじめたもの。誰からもスノーボードをすることを強制されたり、部活動のようにおっかない監督がいるわけでもない。それでも、雪が降ると僕らはスノーボードにでかける。

スノーボードのスタイルは人それぞれ、自分のペースで楽しんでいるはず。学校では、基準があり、それにそったカリキュラムが組まれている。部活に至っては、勝利至上主義になっている場合も少なくない。高校野球を見てもらえればよくわかると思う。選手はただ勝つことだけを求められる。数年前の甲子園。現巨人軍の松井選手がすべての打席で敬遠されたのがその良い例だ。選手は果たして楽しんでいるのだろうか?今の高校球児に僕は聞いてみたい。「心から楽しんでやっている?」と。

そもそもスポーツは遊びの延長だった。スポーツ=楽しいこと。でも、今、学校で教えているスポーツには疑問を感じる。個人のレベルに合わせて楽しむことを教えるのは確かに大変だと思う。学校という環境であるから、すべては教育のためというのもわかる。しかし、場合によってはスポーツなんかは勉強時間の邪魔くらいに考えている先生や親がいるのは寂しい限りだ。受験勉強がすべてにおいて優先されるなんて、そんなの間違っている。少年時代にはもっと人生を楽しむことを学ぶべきなのだ。

スノーボードは学校では教えてくれない。だから自分でやるしかない。お金も時間もかかる。でも、学校では教えてくれないことをたくさん教えてくれる。雪が降ったあとの肌を刺す風がどれだけ気持ちいいか。パウダーを巻き上げる足元の浮遊感。自分のレベルで上達できた時の達成感。新しくできる仲間達。他人をリスペクト(尊敬)する気持ち。学校で教えてくれる方程式なんかより、ずっと僕らの役に立つことをたった一本の板は教えてくれる。トリックを失敗しても、派手に転んでも、選手からはずされたり、できるヤツに笑われるわけでもない。スノーボードは優しく僕らに接してくれる。時には厳しく自然の怖さを教えてくれることもある。猛吹雪で前が見えなくなるとき、寒さのあまり凍えてしまいそうになるとき、僕らは自然に対する人間の無力さを感じる。それでもたった一本の板は僕らに語りかける「どうだい、最高に楽しいだろ?」。

だから今年も僕らは眠い目をこすりながらゲレンデを目指す。学校では教えてくれなかった楽しいことが僕らをずっと待っているから。

【コラム】THE TEMPTATION OF FERNIE

文:MASANORI KAMIYA

PART 1

FERNIE(ファーニー)・・・、カナダはB.C.州の東端、カナディアンロッキー山脈に属しカナダ一の豪雪地帯。そして、なにより、最高の雪が降る秘密の場所・・・。

今日、ウィスラーと言えば世界にその名を轟かせる大リゾートである。スノーボード、モーグルスキーをやっている人なら知らない人はいないと言うくらい有名である。巨大な2つの山、WHISTLERとBLACKCOMB。広大なバックカントリー、充実したパーク、整備されたパイプ、有名ホテルの数々、しゃれた店やレストランが居並ぶヴィレッジ、それに見合った料金と人の数・・・。ようするに、いろんな意味で、すべてがリゾートとして完璧と言っても良いほどなのである。
そんなウィスラーで僕は3年の月日を過ごした。高校を卒業後、カナダに渡った僕はウィスラーに住みつき、スノーボードをし英語を勉強し仕事をした。カナディアン、日本人はもちろんヨーロピアン、コリアン、メキシカン、オージーetc。世界中からいろいろな人々が集まってきているので、たとえ少しでも他の国の文化・風習などを知ることができ、とても良い環境だった。
だったと書いたのは、今のウィスラーが少し悲しい現状にあるからである。多すぎる観光客、そのために増設されるヴィレッジ、新しくかけられるチェアーリフト、そのための森林伐採や変形してしまう地形、人々から出される大量のゴミ。でも、これらのことが悪いとは言わないし、言うことはできない。ウィスラーは観光業で成り立っている所だから、こうゆうことも必要なんだろうし。なにしろ僕自身ここで生活しスノーボードをしていたわけだから、当然ゴミも出すしチェアーリフトも使うし観光客のおかげで仕事もできるわけだしってなると、もう何も言えなくなってしまう。
スノーボードをしている時点で、いや、生活をしている時点で自分も自然破壊の加担者になってしまっている。それよりも、だいたい人間なんて生きていること自体が地球破壊だ!なんで他の生き物と違って人間だけがこうなんだ。なんてことを言い始めると人類起源の謎を解明してしまう勢いなのでやめときます。
でも、まあ何をする時でもそうなんですけど、そういういろんなことに対して考えを持ったり、リスペクトする気持ちを持ってスノーボードをするのと、何の考えも気持ちもなしに「楽しければ何でもいーじゃん」とスノーボードをするのとでは、結構な差があると思う。案外この差が、すべての、スノーボードの未来を左右するようにも思えるのだ。ちょっと違う話になるけど、実は、ウィスラーには夢の島のようなゴミの埋立地がある。僕も初めて見たときは少し驚いた。大自然の山々の中にある異質の場所。ウィスラーで出されるゴミの量を考えれば当然といえば当然の存在なのだけど、果たしてどのくらいの人がこの存在を知っているか?と考えたときに、観光客や冬の間だけ篭りに来る人は、まず知らないだろうと言える。僕は仕事の関係で数回行ったが、やっぱりいいもんではない。でもそういうことを知っとく必要はあるし、知れて良かったと思う。だからむやみにゴミをそこらへんに捨ててる奴がいると、蹴り飛ばしたくなるのを通り越してあきれるのだ。せめてゴミ箱に捨てろよ、と。
日本人にも結構タバコのポイ捨てが多い。それが、今のウィスラーの現状の一つだ。それともう一つ、ウィスラーに昔から住んでいるローカルのことも悲しい現状の一つ。そもそもウィスラーには、もともと住んでいる人はいなく、そこに鉄道が通り駅が出来た事によって、人が住み始め村ができた。そして、そこに素晴らしい山と雪があったので、そのために人々が集まり始めた。そういうノリで出来たところだったので、初期のころのリゾートは、ドカ雪が降った次の朝などは、どの店も仕事そっちのけでファースト・チェアを奪い合っていたそうである。そういうおもしろさが最近のウィスラー・ローカルには無く、仕事ばかりで滑りに行かなかったり行けなかったり、ただ商売のために移り住んでくる人もいる。別にそれはそれでいいんだけど、ウィスラー独特の気質や乗りが失われていくのは、少し寂しい気がする。そんな中、ローカル達のウィスラー離れが起きているのも事実であり、ますますローカルっぽさが失われていくばかりである…。
ここで勘違いして欲しくないのは、僕はウィスラーを否定しているのではないということ。それどころか、僕にとって大切な大切な場所であり、第二の故郷である。今でもたくさんの友達が住んでいるし、年に何回かは戻っている。やっぱりそれほどに良いところなのである。 ただ、僕が言いたいのは、ウィスラーだけにこだわっているのはもったいないということ。B.C.州はカナダの中でも唯一標高の高い山々が密集する州(他の州はまったくと言っていいほど山が無い)で、広さは日本の2倍以上とくれば、他にもおもしろい山があるんじゃないのかと考えるのはあたりまえのこと。それで、いろいろ探していた僕に、FERNIE(ファーニー)の情報が飛びこんで来たのは、ウィスラー3年目のシーズンも終わりにさしかかった夏の頃だった・・・。

PART 2

FERNIE(ファーニー)の街の灯が見えたのは、もう真夜中近くであった。「やったー、やっと着いたー!」と感動したと言うより、ただ、ほっとした安堵感があった。

ウィスラーからファーニーまで車で15時間、B.C.州の西の端から東の端まで1200kmの道のりである。今でこそ、B.C.州とその隣のAlberta州を縦横無尽に駆け回る僕だけど、ファーニーに移り住むまでは3年間ウィスラーから出たことがなかったので、ファーニーはとても遠くそして未知なる場所であった。そこにどんな山があり、どんな人が住んでいるのか。ウィスラーを出発したその朝は、まだ10月下旬だというのに大雪が降ったことをおぼえている。

その年の夏、ウィスラーを離れどこか他の場所にいってみようと探している僕に、カナディアンの友達がそっとおしえてくれた。「ファーニーはやばいよ」
実は、僕がファーニーに決めたのはもう一つ理由がある。そこに、アイランド・レイク・ロッジがあったからである。かのフリーライディングの天才、クレイグ・ケリーが愛し、みずからがそのオーナーになったほどの山である。彼ほどの人を虜にさせてしまうその場所とは、いったいどんなところなのか。これは自分で行って確かめるしかないと思い、僕はウィスラーを離れたのであった。

ファーニーの街は、本当にただの田舎の街で、何もない。何もないと書くと誤解されそうだが、まあ、数軒のBAR、スーパーマーケット、カフェ、レストランetcくらいは普通にある。だが、ウィスラーと比べると田舎である。ずっとウィスラーに住んでいたせいもあり、何でも比べてしまうのは悪い癖だが。しかし、そんなウィスラーにないもの、失われつつあるものが、ここファーニーにあるのもまた事実で、それがとてもいい雰囲気なのである。もともと鉱山の街として昔からあった街らしいので、人々(特に老人達)はとてもおおらかでひとなつっこい。特に僕らみたいな若いアジア人は珍しいらしく、好奇の目でみられる。僕らが日本から来たとわかると、どうしてこんなところに?みたいな反応をする。どうやらスノーボードのためにこんなところまでくる神経を理解できないらしい。そのギャップがとてもおもしろい。また、夕方6時を過ぎるとほとんどの店は閉まってしまいシーンとなる。ファーニーの夜はとても静かで、ゆったりと時間がながれる。暇な夜などは、数軒あるBARに行く。一杯飲みながらプール(ビリヤード)をしていると、ほろ酔いの奴が話し掛けてきて、ビールをおごってくれる。一緒にプールをして、いろいろ話しているうちに仲良くなってしまう。こんなことをちょこちょこやってるうちに、そこらじゅうに顔なじみができる。そんな出来事もファーニーの魅力である。しかし、なんと言っても最大の魅力はスノーボーディングだろう。

ファーニーの山は正式にはFERNIE・ALPINE・RESORT(ファーニー・アルパイン・リゾート)と言う。山の規模は、ウィスラーなどと比べてしまうと、とても大きいとは言えない中規模の山だが、その起伏に富んだ地形(土地の隆起によってできた山なので複雑な地形をしている)。スティープな斜面(ロッキー系の山なので上部は鋭い)。広大なバックカントリー(山脈なので山々が周りに連なっている)。膨大な降雪量(カナダ一の豪雪地帯、パウダートライアングルの一角)。なによりも最高の雪質(太平洋から来る雪雲が途中で余分な水分を落とし、最後に雪を降らせる場所がファーニー)。そして、独特なローカルの雰囲気。シーズンを通して滑りこんだ僕は、これらの魅力にすっかりはまってしまった。雪などは本当に軽くて、ターンする時に板を切りすぎると、そのしぶきで前が見えなくなるどころか、呼吸ができなくなる。おもわず笑みがこぼれてしまう。そんな最高のファーニーの日々のなかで忘れられないライディングがある、そう、あの月夜のライディング・・・。

PART 3

FERNIE(ファーニー)・・・、カナダはB.C.州の東端、カナディアンロッキー山脈に属しカナダ一の豪雪地帯。そして、なにより、最高の雪が降る秘密の場所・・・。

今日、ウィスラーと言えば世界にその名を轟かせる大リゾートである。スノーボード、モーグルスキーをやっている人なら知らない人はいないと言うくらい有名である。巨大な2つの山、WHISTLERとBLACKCOMB。広大なバックカントリー、充実したパーク、整備されたパイプ、有名ホテルの数々、しゃれた店やレストランが居並ぶヴィレッジ、それに見合った料金と人の数・・・。ようするに、いろんな意味で、すべてがリゾートとして完璧と言っても良いほどなのである。
そんなウィスラーで僕は3年の月日を過ごした。高校を卒業後、カナダに渡った僕はウィスラーに住みつき、スノーボードをし英語を勉強し仕事をした。カナディアン、日本人はもちろんヨーロピアン、コリアン、メキシカン、オージーetc。世界中からいろいろな人々が集まってきているので、たとえ少しでも他の国の文化・風習などを知ることができ、とても良い環境だった。
だったと書いたのは、今のウィスラーが少し悲しい現状にあるからである。多すぎる観光客、そのために増設されるヴィレッジ、新しくかけられるチェアーリフト、そのための森林伐採や変形してしまう地形、人々から出される大量のゴミ。でも、これらのことが悪いとは言わないし、言うことはできない。ウィスラーは観光業で成り立っている所だから、こうゆうことも必要なんだろうし。なにしろ僕自身ここで生活しスノーボードをしていたわけだから、当然ゴミも出すしチェアーリフトも使うし観光客のおかげで仕事もできるわけだしってなると、もう何も言えなくなってしまう。
スノーボードをしている時点で、いや、生活をしている時点で自分も自然破壊の加担者になってしまっている。それよりも、だいたい人間なんて生きていること自体が地球破壊だ!なんで他の生き物と違って人間だけがこうなんだ。なんてことを言い始めると人類起源の謎を解明してしまう勢いなのでやめときます。
でも、まあ何をする時でもそうなんですけど、そういういろんなことに対して考えを持ったり、リスペクトする気持ちを持ってスノーボードをするのと、何の考えも気持ちもなしに「楽しければ何でもいーじゃん」とスノーボードをするのとでは、結構な差があると思う。案外この差が、すべての、スノーボードの未来を左右するようにも思えるのだ。ちょっと違う話になるけど、実は、ウィスラーには夢の島のようなゴミの埋立地がある。僕も初めて見たときは少し驚いた。大自然の山々の中にある異質の場所。ウィスラーで出されるゴミの量を考えれば当然といえば当然の存在なのだけど、果たしてどのくらいの人がこの存在を知っているか?と考えたときに、観光客や冬の間だけ篭りに来る人は、まず知らないだろうと言える。僕は仕事の関係で数回行ったが、やっぱりいいもんではない。でもそういうことを知っとく必要はあるし、知れて良かったと思う。だからむやみにゴミをそこらへんに捨ててる奴がいると、蹴り飛ばしたくなるのを通り越してあきれるのだ。せめてゴミ箱に捨てろよ、と。
日本人にも結構タバコのポイ捨てが多い。それが、今のウィスラーの現状の一つだ。それともう一つ、ウィスラーに昔から住んでいるローカルのことも悲しい現状の一つ。そもそもウィスラーには、もともと住んでいる人はいなく、そこに鉄道が通り駅が出来た事によって、人が住み始め村ができた。そして、そこに素晴らしい山と雪があったので、そのために人々が集まり始めた。そういうノリで出来たところだったので、初期のころのリゾートは、ドカ雪が降った次の朝などは、どの店も仕事そっちのけでファースト・チェアを奪い合っていたそうである。そういうおもしろさが最近のウィスラー・ローカルには無く、仕事ばかりで滑りに行かなかったり行けなかったり、ただ商売のために移り住んでくる人もいる。別にそれはそれでいいんだけど、ウィスラー独特の気質や乗りが失われていくのは、少し寂しい気がする。そんな中、ローカル達のウィスラー離れが起きているのも事実であり、ますますローカルっぽさが失われていくばかりである…。
ここで勘違いして欲しくないのは、僕はウィスラーを否定しているのではないということ。それどころか、僕にとって大切な大切な場所であり、第二の故郷である。今でもたくさんの友達が住んでいるし、年に何回かは戻っている。やっぱりそれほどに良いところなのである。 ただ、僕が言いたいのは、ウィスラーだけにこだわっているのはもったいないということ。B.C.州はカナダの中でも唯一標高の高い山々が密集する州(他の州はまったくと言っていいほど山が無い)で、広さは日本の2倍以上とくれば、他にもおもしろい山があるんじゃないのかと考えるのはあたりまえのこと。それで、いろいろ探していた僕に、FERNIE(ファーニー)の情報が飛びこんで来たのは、ウィスラー3年目のシーズンも終わりにさしかかった夏の頃だった・・・。

FERNIE(ファーニー)の街の灯が見えたのは、もう真夜中近くであった。「やったー、やっと着いたー!」と感動したと言うより、ただ、ほっとした安堵感があった。

ウィスラーからファーニーまで車で15時間、B.C.州の西の端から東の端まで1200kmの道のりである。今でこそ、B.C.州とその隣のAlberta州を縦横無尽に駆け回る僕だけど、ファーニーに移り住むまでは3年間ウィスラーから出たことがなかったので、ファーニーはとても遠くそして未知なる場所であった。そこにどんな山があり、どんな人が住んでいるのか。ウィスラーを出発したその朝は、まだ10月下旬だというのに大雪が降ったことをおぼえている。

その年の夏、ウィスラーを離れどこか他の場所にいってみようと探している僕に、カナディアンの友達がそっとおしえてくれた。「ファーニーはやばいよ」
実は、僕がファーニーに決めたのはもう一つ理由がある。そこに、アイランド・レイク・ロッジがあったからである。かのフリーライディングの天才、クレイグ・ケリーが愛し、みずからがそのオーナーになったほどの山である。彼ほどの人を虜にさせてしまうその場所とは、いったいどんなところなのか。これは自分で行って確かめるしかないと思い、僕はウィスラーを離れたのであった。

ファーニーの街は、本当にただの田舎の街で、何もない。何もないと書くと誤解されそうだが、まあ、数軒のBAR、スーパーマーケット、カフェ、レストランetcくらいは普通にある。だが、ウィスラーと比べると田舎である。ずっとウィスラーに住んでいたせいもあり、何でも比べてしまうのは悪い癖だが。しかし、そんなウィスラーにないもの、失われつつあるものが、ここファーニーにあるのもまた事実で、それがとてもいい雰囲気なのである。もともと鉱山の街として昔からあった街らしいので、人々(特に老人達)はとてもおおらかでひとなつっこい。特に僕らみたいな若いアジア人は珍しいらしく、好奇の目でみられる。僕らが日本から来たとわかると、どうしてこんなところに?みたいな反応をする。どうやらスノーボードのためにこんなところまでくる神経を理解できないらしい。そのギャップがとてもおもしろい。また、夕方6時を過ぎるとほとんどの店は閉まってしまいシーンとなる。ファーニーの夜はとても静かで、ゆったりと時間がながれる。暇な夜などは、数軒あるBARに行く。一杯飲みながらプール(ビリヤード)をしていると、ほろ酔いの奴が話し掛けてきて、ビールをおごってくれる。一緒にプールをして、いろいろ話しているうちに仲良くなってしまう。こんなことをちょこちょこやってるうちに、そこらじゅうに顔なじみができる。そんな出来事もファーニーの魅力である。しかし、なんと言っても最大の魅力はスノーボーディングだろう。

とても静かで、雲ひとつ無い夜だった。白く輝く月が、周りの山々をさらに白く浮び上がらせていた。そして、その世界にいるのは自分たちだけだった…。
その日の朝は、とても早起きだった。昨夜のうちにまとめておいた荷物を持って車に飛び乗り、まだ夜の明けきっていない冷え冷えとした薄暗いなかを友達の家へと急いだ。友達は眠そうな目をこすりながら朝食を作っている最中だった。山へ向かう途中の7-ELEVENで、朝焼けで真っ赤に染まった空を見ながら熱いコーヒーをすすった。今日は晴れると確信した。
この日の何日か前から、友達の間で、山の裏にあるキャビンに行ってみようという話が持ち上がっていた。いつも山に行く途中に見えるあの斜面を狙ってみようと言うことになった。そうとなれば膳は急げで、キャビンの状態や位置、ルートの確認や所要時間の割り出しをして、ビーコンやらスノーシューやらの装備を整え、必要な食料を買いこみ備えた。あとは天気予報とのにらめっこと、雪の神様に祈るだけだった・・・。
山のロッジに着き、荷物の最終確認、ビーコンのチェックなどを済ませ、装備を整えた。その日が土曜日だったせいもあり、朝早くから人や家族連れがけっこういて、重装備の僕達の方をしきりに気にしていた。とりあえずはチェアー・リフトに乗り、山の上を目指した。そこからずーっとトラバースをし、ちょっとハイクアップをすると、そこからは out of boundary・・・、バックカントリーの世界が広がる。まずは、隣の尾根までトラバースとハイクでたどり着き、そこからスノーシューに履き替え、山頂を目指す。さすがにこの辺りは人が踏み入れていないため、手付かずの深い雪が残っていて、スノーシューを履いていても足が潜ってしまう。それに加えての急斜面なので大変だ。
とりあえずは山頂にたどり着き、一息入れる。周りを見渡す。白い山々が奥へ奥へと続いており、僕達を奥へ奥へといざなう。しばし疲れを忘れる。そこから板に履き替え、山の裏側をトラバースし、隣の山の麓を目指すのだが、古木や岩が突き出しているうえ、風がとても強い。思ったより雪が弱く、滑落の危険性もあったが、無事登り口に到着。そこから、さらに急な斜面を登り始める。
太陽が照りつける。真冬なのに汗が吹き出る。必要に応じて服を脱いで体温調節をし、こまめに水分補給をする。そしてようやく山頂に到着。と同時に雲が立ち込めてきて視界が悪いので、ビバークついでに昼食をとる。ここで大体1/3だ。この後、また斜面を登り、次のピークを目指し、そこからピークリッジをひたすら歩くのだが、間違えて雪庇を踏み抜くと、そのまま雪庇と共に転落し、雪崩を引き起こし、死亡事故につながるので、細心の注意を払いながら進む。神経を使うので倍の疲労感を感じる。そしてまた、さらに上のピークを目指す。この頃になると雲がなくなり、見渡す限りの青空が広がる。周りには白銀の山々が連なる。そして、この辺りでは一番高いピークに到着。そこから裏の斜面を見下げると、下の方にポツンと緑色の屋根が小さく小さく見える。キャビンが見えた!嬉しさが込み上げてくる。後はもうキャビンに向かって滑り降りるだけだ。バインディングを締める手がかすかに震え、我先にと、ノートラックのパウダー・バーンへとドロップしていく。おもわず嬉しい悲鳴をあげてしまう。日の光で輝くパウダー・スプレーを全身に浴びながら、一気にキャビンまで滑り降りる。超高速で。最高の一瞬。
キャビンに着くと、無言でお互いの顔をながめあう。みんな笑顔。心はひとつ。とりあえずは荷物を解き、一息入れる。そしてまず一番最初にすることは、水をつくらなければならない。ストーブに蒔をくべ火をつけ、その上に雪をいっぱいに入れた大鍋をおく。解けてきたらまた雪を足す。これを繰り返して、大鍋いっぱいに水を作る。これで料理にも使えるし、飲み水にもなる。が、このまま飲むと雪臭いので、お茶にして飲むのがベターだ。これさえしておけば、後はもう暗くなるまで周りにゴロゴロしているパウダー・バーンを滑りまくる。遊びまくる。戯れまくる。ハイクはもちろん自分の足でね。へとへとになって帰ってきた後は、ランプとロウソクの灯をたよりに夕食を作って食べる。もちろん電気なんてない。で、夕食後の片づけも終わり、あとは寝るだけと思っていたけど、この後が忘れられないライディングになった。
お茶を飲みながら、トランプをして、今日の感想をあーだこーだと言い合っていると、外がやけに明るい事に気が付いた。気になって外に出てみると、その明るさはさらに増した。月の光に照らし出された山々は、まるで自らが光を発しているかのように白く輝き、その世界を照らし出していた。そして、目の前の山の輝きは、まるで僕たちを呼んでいるようであった。まるで誘われるように板を取りに戻り、無我夢中で飛び出していった。月の光の中に・・・。

最後に。
僕がウィスラーからファーニーに移って、2シーズンになる。ウィスラー地域ほどではないけど、ファーニーのバックカントリーもそれなりに広大で、それこそヘリで狙うような斜面がごろごろしている。それを、自分の足で登り、手に入れるのがバック・カントリーの醍醐味だと思う。キャンプを張りながら何日もかけて行く場合もあるし、日帰りで満足するときもある。その時の天候、状況、雪の状態、自分の体力、その他いろいろなことにも左右される。そういった自然との駆け引きがあり、それを楽しむと共に、やはり自分達は自然に生かされていると感じる。どんなに前に進みたい、ここを滑りたいと思っても、自然からNOという答えが返ってくれば、それは NOなのだ。そこを無理に行こうとすると、痛い目にあうか、あわよくば死だ。だからこそ、天気がよくて、気持ちよくパウダーを滑ることができた時などは、心から自然に対して、滑らせてくれてありがとう!と思えるし、リスペクトする気持ちも生まれてくる。しかしこの気持ちは、やった人にしか理解できないというのも事実だ。よく、自然にリスペクトするってどういうこと?って思う人がいるけど(大部分の人はそうだと思う)、その気持ちもよく分かる。例えば、東京なんかの都会から出たことがない人にとっては、水が飲めるのもあたりまえのことだし、太陽が輝くのもあたりまえのことだ。まあ、それほど自然の力を感じることのない環境っていうのもある。僕自身、東京の出身だから、なおのことよくわかる。都市部に大雪が降ったりするとパニックになるけど、すぐ忘れてしまうのもそのせいだと思う。まあ、忙しすぎるっていうのもあるげど。今の例は極端だけど、ようするに自分がその立場、状況になってみないと、やってみないと分からないことってたくさんあると思う。僕たちスノーボードする者にとっては、雪がたくさん降るのはありがたいけど、実際その地域で普通に生活をしている人にとっては降って欲しくないと思うことかもしれないし、本当に自然に左右される生活をしている農家の人からすれば、ちょっと雪山に入っただけで自然がどーたらこーたら言っているのをバカらしく思っているのかもしれない。また、どんなに心から自然をリスペクトしていようが、勉強をしてようが、経験・知識が豊富だろうが、そんなことには関係なく、自然災害が起きる時は起こるし、死ぬ時は死んでしまう。自然の力とは、そんな絶対的な力なんだと言う事を忘れてはいけないと思う。でも、「どうしようもなかった」で済ませるにはあまりに悲しすぎると思う。
「楽しい」っていいことだと思う。人生だって、悲しいより楽しい方がいいにきまってる。僕は、更なる楽しさを求めてファーニーに移った。ファーニーの、スノーボードの、人生の中の、あるひとつの楽しみ方を知って欲しいと思った。感じ方は人によって、それぞれだけど。
「楽しければいいよ、何でも」じゃなくて、本当の意味での「楽しい」を考えたくなった。人生を、もっと「楽しく」するために。

【コラム】二つの枝

文:齋藤 稔

ここ数日シーズン前のイメージトレーニングにとスノーボードのビデオをいろいろと観ているのですが、そのなかにオリンピックのビデオがありました。アルペン競技とHP両方の競技を観ていて思ったのですが、オリンピックを境に、スノーボードというスポーツが変化してきていることを感じました。もともとは雪の上で遊ぶことを目的に発展してきたスノーボード。その中の流れでトリックを重視するフリースタイル、スピードを重視するアルペン、大きくわけて二つの流れができてきました。同じ木の幹から枝分かれしてきたこの二つの枝ですが、オリンピックを境に枝分かれではなく、分離してしまったのではないかと思います。

アルペンの人気が下降してきていると言われはじめて久しいのですが、これはアルペンの競技のビデオや雑誌のアルペン記事を観ていると、スキーの道具からスノーボードの道具に代わっただけというイメージを受けるからではないでしょうか? 実際は全く違うスポーツなのですが、メディアでの扱い方、競技の方法など、スキーと同じ傾向にあると思うのです。「アルペン=スピードレース」の図式ができあがってしまっていて、「自由に楽しく」というスノーボード本来の魅力をアピールしていないからだと思います。フリースタイルのような独創性はあまりなく、スキーでやっていることをスノーボードでもやっている。それだけのスポーツに見えてしまうのです。これが僕の感じるスノーボードという一本の木からの枝分かれしているのではなく、分離してしまったと言うことなのです。

オリンピック前は、雑誌でもフリーランの楽しさを出したアルペンの記事が多かった気がします。オリンピックを境にそれらの記事は「いかに早く、上手く滑るか?」に変わってしまいました。本当はカービングの最中のG感覚だとか、エッジの切り返しの時の操作感覚だとか、すばらしい魅力を秘めているのに、メディアやプロの人達がそれを表現しようとしていない。雑誌によっては「そんなことはない!」と反論される場合もあると思うのですが、多くの雑誌はその傾向にあると言うこと否定できないと思います。

普通のこれからスノーボードを始めようと言う人のスノーボードに関するイメージは「ゲレンデを楽しく滑ること」であって、ポールをくぐったり、ビッグエアーをしたりでは無いと思います。多くの人はゲレンデで楽しく1日遊ぶことを目的にスノーボードを始めるのだと思います。この「楽しむ事」にはアルペンもフリースタイルも関係ないのです。ちょっと飛んでみたいとか、スピードを感じたいと言うのならばアルペンでも飛べるし、フリースタイルでもスピードを感じることはできるのです。アルペンの不人気の原因は、スピードレースのイメージの影響で、「特別な人がやっているスノーボード」という認識ができあがってしまったことにあると思います。話は前後しますがメディアを始め、スノーボード業界全体がオリンピックを境にアルペンに関しては「楽しさ」ではなく、いかに「速く滑るか」を追求し始めてしまい、これから始めようとしている人を全く無視しているように感じます。初心者向けの本にはフリースタイルだけが取り上げられ、「アルペンは上級者のレース」と言った扱いが多々観られます。この流れを変えていかなければならないのでは無いでしょうか?

スノーボードと言うスポーツをさらに広めるため、また業界の活性化のためにも、この分離してしまった二つの枝をもう一度一つの幹に戻すことが必要なのではないでしょうか?

【コラム】プロになってなにがしたいの?

文:齋藤 稔

実はこの質問、僕がフサキ編集長に「プロになりたいんです。」とメールを出したときに聞かれた事。この質問に答えることが僕の第一歩だった。(残念ながら未だにプロにはなれそうもない)たぶん、他の一線で活躍している人に言っても同じ質問が返ってきたと思う。プロのライダーも口をそろえて言う「プロの資格を取るのがゴールなのではなく、プロの資格を取るのがスタートラインなんだ。」

スノーボードを始めた人ならかなりの確率で「スノーボードを職業にしたい。プロになりたい」と一度は思うのではないだろうか?確かに自分な好きなことで生活できるなんて夢のような話だ。しかし、現実はそんなに甘くない、思いつきでプロになれる人など一人もいない。また、プロの資格を取ってもスノーボードだけで飯を食っていけるのはわずかに一握りのトップだけだ。

他のスポーツも見てみよう。たとえばボクシング。プロとして初めて試合をやるファイトマネーはわずかに4万円ほど。年間4試合やっても16万円にしかならない。世界チャンピオンになって初めて良い暮らしができるのだそうだ。ゴルフはどうだろう。トーナメントプロとして第一線で活躍している人はかなりの年収がある。が、多くはゴルフのみで生活なんかできてはいない。人気の野球ならどうだろう。二軍でもそこそこの年収を稼ぐ選手もいる。しかし、国内でプロを目指してがんばっている人数を考えればわずかな人数というのがわかると思う。これを見てもプロとなりそのスポーツで生活していくのがいかに大変かよくわかると思う。スノーボードも例外ではない、むしろさらに厳しいと言って間違いない。

それでも10代後半~20代前半の人が会社を辞めてまでスノーボードに賭けてみると言う。別にそれは否定しない。その人の人生だからその人の自由だ。ただ、これからそのような生活をしようと思っている人はもう一度じっくりと考えてみてほしい。「会社を辞めてスノーボードに賭ける」なんだかかっこよく聞こえるが、大変な決意と情熱が必要なのを本当に理解しているだろうか?今の仕事がイヤだからスノーボードで一発当ててやるなどと考えている人は止めた方がいい。そんな気持ちでは多くのライバルに蹴落とされるだけだ。強い信念を持ち、すべての困難を克服する意志がある人だけが、初めて挑戦権を得ることができるのだと言うことをもう一度考えて欲しい。成功するのはそういったものを持っている人だけなのだから。

本当にスノーボードが好きで、本気でプロになりたいと思っている人、あなたは質問にはっきりとビジョンを持って答えられますか?厳しい現実を受け止めてそれに打ち勝つ強さがありますか?

【コラム】大胆予想!21世紀のスノーボードはこうなる!!

文:齋藤 稔

謹賀新年
あけましておめでとうございます。本年も皆様にとって良い一年であること願います。

いろんな雑誌等で次の100年はこうなるとか、次の10年はこうなると言った特集なんかが組まれていますね。そこで、「大胆予想!ミノルの21世紀のスノーボードはこうなる!!」
をお送りします。別に裏付けもないし、個人的な大予想ですので軽い気持ちで…

キッズの大躍進
近年クローズアップされているキッズの面々。もはや大人顔負けのスーパースターのショーン・ホワイト(バートン)はもちろんのこと、日本のスーパーキッズの成田三兄弟(ムラサキ)達が、体の成長に伴い、スーパートリックを連発!彼らが20代になる頃には無敵の状態になってくるでしょう。特に成田三兄弟には期待度大ですね。

業界再編
スキー業界を見てもらうと解るのですが、スキーブーム最盛の頃と比べ、業界全体が変わっています。無尽蔵にあった在庫・どこにでも置いておある激安スキーセット。こんな状態が終わり、現在ではスキーは高品質・低価格でないと売れない状況です。日本のスノーボードブームの時にも激安の粗悪品スノーボードが数多く出回りました。現在では、メーカー側の再編が進み、徐々に健全な状態になってきていると見て良いでしょう。近い将来には高品質・低価格のスノーボードが普通となり、無駄に高い物はユーザー側から敬遠されると言った状態になるのは間違いありませんね。

リゾート革命
今年も革命が進んでいるスノーリゾート。多くのスノーリゾートやゲレンデが独自のカラーを出しています。広大なゲレンデが売りの所、パークが充実しているところ、アフタースノーボードが充実のスノーリゾート・パウダーゾーンなど、我々スノーボーダー一人一人がゲレンデを選んで楽しめるようになると思います。シーズンパスもいくつかのゲレンデが協力して、共通シーズンパスと言う物もでてきています。ゲレンデ側がもっと便利にもっと快適にとお客さん主体のサービス向上に努めてくれることでしょう。

第二次スノーボード・ブーム到来
これは間違いなく来るでしょう。第一次スノーボードブームの人が結婚して子供ができ、さて、何して遊ぼうとなったときに「そうだ、スノーボードがあるじゃないか!」となるわけです。と言うことでゲレンデには家族連れのスノーボーダーが増えて、「お父さん・お母さんかっこいい!」という中年層のスノーボーダーも増えるんじゃないでしょうか?

どうでしたか?大胆予想。でもこれは今の状態ではちょっと難しいんですよね。地球の温暖化か環境破壊が進むとスノーボードどころじゃなくなっちゃいます。最後の最後にネガティブな話題で申し訳ないのですが、これも現実問題なのです。みなさん今からでも遅くはありません。少しでも環境問題に取り組んでください。そうすれば夢のようなスノーボードライフはみなさんのものですよ。

【コラム】自然を相手に

文:齋藤 稔

今年は雪の当たり年のようで、日本各地で大雪のニュースが流れている。実際今年の雪の量は半端じゃない。一日で車がすっぽり埋まってしまうくらいの降雪量が各地で報告されている。こんな事は、ここ数年無かったこと。我々スノーボーダーにとってこれ以上ない新世紀の幕開けとなった。

雪が降ればパウダーが滑れると言うことで多くのスノーボーダーが山に向かっていることだろう。dmkでも先日クラブのツアーで白馬岩岳に行って来たが、二日目はとんでもないパウダーに遭遇した。普通のゲレンデなのに足首から腰までのパウダーが楽しめる。しかも山の一番上から一番下まで全部。生まれて初めての経験に頭の中が真っ白になるまでパウダーを堪能した訳だが、いくつか気になった点もあった。氷点下なのに薄着の人たち。雪が降っているのにニットキャップやゴーグル無しで滑っている人たち。どう考えても山をなめているとしか思えない人たちがいるのだ。

人工的に整備されたゲレンデとは言え、実際は自然の山が相手だと言うことを忘れている人が多いんじゃないだろうか?リフトやゴンドラで簡単に上まで登れてしまうし、パトロールやスキー場のスタッフもいる。でも最低限の事は自分でやらなければならない。例えば雪が降る中ニットキャップやゴーグル無しで滑ることがいかに危険か考えたことがあるだろうか?ゴーグルは吹雪の中でも視界を確保してくれる便利な道具。視界を確保できないと言うことは、状況判断ができなくなり、コース外に落ちてしまったり、人にぶつかったり、そんな危険がでてくる。ニットキャップは頭と耳の保温を行い、髪の毛が凍り付いたりしないように守ってくれる。髪の毛が凍り付くと言うことは冷凍庫の中で頭に氷を付けて我慢しているのと同じ事。どのくらい体に悪いかはすぐに想像がつくだろう。

パウダーを滑るのは最高に楽しい。たぶんスノーボードの原点を感じるからなのだろう。でも、ゲレンデだからと言って山をなめては行けない。バックカントリー用の装備をとまでは言わないが、暖かい格好とニットキャップ・ゴーグルくらいは装備して、山に向かおう。自然を相手に楽しむ最低限のマナーなのだから。