【コラム】スノーボード・ギアのジェンダーレスという観念に共感

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboard.com

BACKSIDEマガジンに興味深い記事がアップされていた。

“男女別”ギアの常識を覆すRIDEの新提案「オールジェンダー・コレクション」とは
https://backside.jp/ride_article1/

上記写真は、Ride Snowboardsフェイスブックからのシェアになるが、このライダー二人は、ジル・パーキンス(女性)とリード・スミス(男性)だ。共に同じ長さのボードを愛用している。

記事の内容は、ボード選びは男性用、女性用に関係なく体重が決め手というもの。
たしかに、スノーボードをする上でのギア選びよは、体重や身長という体格が大きな要素となるだろう。
次にライダーの筋力や技術というものが左右するように思われる。

しかし、近年のスノーボードのギアは、男性用と女性用がしっかりと分かれていることが多い。

ウェアに関しては、男性用と女性用が分かれやすいことは承知できる。
そもそもデパートでの服売り場では、男性用と女性用がフロアしっかりと分けれているものだ。
女性っぽい服装とか女性っぽいファッションというのは、充分に理解できる。

だけど、スノーボード(板)、ビンディング、ブーツに関して、近年のようにしっかりと女性用と男性用が分かれていることって、どうなのだろう?

男性だって小柄で体重があまりない方だっているし、女性だって、大柄で体重がある方だっている。
女性だって、男性に負けないほどのスキルを持ち、筋力がある人だっているのだ。

ジェンダーレスの先駆者エンデバー・スノーボード

筆者は、今年からエンデバー・スノーボードのディスリビューションの仕事をしているが、バンクーバーの本社オフィスでオーナーのマックス・ジェンキ氏からエンデバーのコンセプトを聞いた時、すべてのボードがジェンダーレスで作られると聞いて、驚いた。
エンデバーでもかつては、女性用のボードを作っていたのだが、マックスはその考えがナンセンスということをいち早く気づいていたのだ。
エンデバーでは、どこのメーカーよりも先駆けて、2018年頃からメンズもレディース分けもないジェンダーレスなスノーボードを作り続けている。

(エンデバーでもかつは女性向けのボードを作っていた。上はかつてあったBoyfriendというモデル)

女性用ボードという観念が芽生えた90年前半

そもそもスノーボード界に女性用ボードが誕生したのは、いつのことだろう?
また、そうしたボードのニーズが高まった理由は?

筆者が、スノーボードを始めたのは1985-86シーズンで今から35年以上も前のことだ。翌シーズンにはすでに大会(以下、動画参考)に出ていたのだが、その時にはもちろん男性用、女性用のボードはなく、そもそも鉄のエッジのないスノーボードに乗っていた。

先日、友人のフェイスブックから、1989年に筆者が参加していた第一回のニュージーランド・ナショナル・クラッシックの記念撮影の写真が出て来たのだが、その時にもまだ女性用のボードはなかった記憶がある。

記憶が曖昧だが、最初に女性用のボードとして人気が高まったのは、90年前半のシムスのティナ・バシッチのシグネチャーか、バートンのシャノン・ダンのモデルあたりはではないだろうか。
バートンには、シャノンの前に活躍したアシルド・ルフタス、ミッシェル・タガード、ビクトリア・ジュルースなどいたが、彼女たちがシグネチャーを出していたか。あるいは乗っていただろうか。たしかアシルドあたりは、バートンのクレイグのモデルを使っていたと思うのだ。で、シャノン、ティナが活躍した93年頃から90年中頃になってレディースのシグネチャー・モデルが誕生したように思う。

彼女たちのシグネチャーモデルのデザインは、蝶々やひまわりのグラフィックでひじょうに女性的なものだった。
おそらくこのあたりから、どこのメーカーも女性用のグラフィックを出していったのだろう。

当時、自分は神田にあったミナミ・スポーツというところで、店員バイトをしていたのだが、たしかに以下のような板を売っていた記憶がある。たしか、このシグネチャーは、他のメンズ兼用で使えるよりも高くて、ちょっした高級品。
だけど、おそらくこの頃から、徐々にどこのメーカーもレディース商品を出すようになって、値段も下がっていったのだろう。

レディース用の板の繁栄の影にはメーカーの陰謀があり!?

レディース用の板は、必ずと言っていいほどこんな宣伝文句が使われた。

「女性の脚力でも安心して乗れる板」

その上で、さらに女性が好むようなカラー、グラフィックが採用されていったのだ。

今ではあたり前のようなレディース用の板だけど、ちょっとメーカーに対して意地悪な見方をすれば、モデル数を多くして購買意欲を高めた結果、繁栄しているようなビジネスでもある。

というのも、RIDEスノーボードやエンデバー・スノーボードが考えるように、そもそも板の選び方で重要なことは、そのライダーの体重であったり身長であるからだ。

おそらく、これまであまり誰も指摘して来なかったけど、それは板に限らずビンディングやブーツにも当てはまることだろう。
だけど、今のようにあたり前にどこのメーカーでもレディース、メンズでギアが真っ二つに分かれている現状は、メーカーの売り上げに良い影響をもたらすため。そういった意味では、メーカーの陰謀にも感じられる。

もちろん、女性なら女性らしいカラーの板、女性らしいグラフィックを好む傾向あるだろう。女性用の板を作っているメーカーが、女性の体型や脚力をリサーチした上で、新ボード作りをしていることも理解できる。そういった意味では、陰謀とはいい過ぎかもしれないが…。

まとめ

僕の最終的なまとめとしては、レディース板が増えた要因はスノーボード市場規模が広がった結果。ユーザーのニーズ以上にメーカー主導で広がったように思える。今のように、ここまで女性用と男性用で分けるのはナンセンスのように思える。もちろんこれまで通り女性用らしいデザインの板があってもいいし、日本人女性の脚力などをリサーチした板作りというのは支持するけど。

みなさんは、どう思いますか?
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コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は37年。