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新聞誌記者に捧げたい! スノーボード・トリックの呼び方


STORY & PHOTO: Fusaki IIDA

いよいよ来年はイタリア・トリノ冬季オリンピック。その中でも特に注目を浴びそうなのは、世界ランキング上位の選手が揃ったハーフパイプだろう。男子では、國母和宏、中井孝治、成田童夢がナショナルチームのAチーム指定選手でメダルの期待が掛かる。女子では、成田夢露、山岡聡子がAチームだ。いずれの選手もワールドカップの表彰台経験者で、五輪での活躍が期待される。
来年のオリンピック・イヤーになれば、特に一般新聞誌やスポーツ新聞などで、彼らのことが大いに取り上げられることだろう。しかし、過去の新聞報道の実績を振り返ってみると、かなりお粗末なものが多い。というのも、彼ら新聞記者たちは一般スノーボーダーでも知っているトリックの名前を知らない者も少なくないのだ。
その背景には、スノーボードを担当する記者は、野球やサッカーと違ってマイナーなので、その担当が定着しないことにあるとか。つまり、五輪の前イヤーあたりに、デスク部長から「おい、○○。お前これからスノーボードの担当になってくれ」と言われたり。その新聞記者さんにとってみたら、そこで始めて未開の地とも言えるスノーボード世界に足を踏み始めるのである。だから、スノーボードに関する知識が弱いと。
今年、自分も1月にウィスラーで行われた世界選手権で、彼らの仕事ぶりを横目で拝見していたが、正直言って「なっちょならん!」。彼らの後頭部に延髄切りを叩き込みたくなるほどの失態だった。
というのも彼らは選手やスノーボードのことをあまりよく勉強していないから、質問内容のデリケートさがまったくなし。その内容がどうしても無知という感じで、その結果、横柄な印象になってしまうのである。メディアにやさしい童夢くんだけには、なんとか会話をするが、他のトップ選手からは半分無視されたようでもあった。
この状態を例えるなら、ちょっと昔のサッカー中田に「もっと勉強してから質問してくれ」と言われるような感じ。パイプの選手はもちろん、そんなことまで言わないが、そういう空気は漂っていたように思えた。
そこで、せめて技名ぐらいは覚えておけば?というよけいなおせっかいをしてしまおう、というのが今回の企画の趣旨。また、先日ハウツー掲示板で「スノーボードの技名って難しいですよね」と言われて、「確かにそうだ」と思うので、ここに技名を紹介するしだいである。
きっとここにアップしたからと言って、新聞記者さんがこのページを拝見するとは思えないが、ともかくこのページを読んでくれる可能性を願い、そしてまたスノーボードがもっと多くの世間に浸透していただけるように、「新聞誌記者に捧げたい!スノーボード・トリック呼び方」を贈ろう。

●この原稿は昨年、スノーボーダー誌(実業之日本社)のガールズ号で発表した内容に、加筆して制作しました。

フェイキーとスイッチ
スノーボードの初心者の方が、最初に最も気になる言葉といったら、フェイキーとスイッチでは? というのも、どちらも自分の通常のスタンスとは逆向きに滑ることを現す言葉なのに、その使い分けは曖昧なのだから。実際、自分もはっきりと「これだ!」という回答を言うことはできないのだけど、一応ニュアンスとしては、いかにも逆向きに滑ってている風の人、それがフェイキー。逆にもう前だか後ろだかよくわからないようなライディングする人は、スイッチをしている、という感じだ。

ライダーで言うと、例えばスノーボード界のカリスマと呼ばれるテリエ・ハーコンセン。彼は元々もバインディングの角度が前の方に振ってあるので、逆向きに滑るといかにも後ろ向きに滑っているというのがわかる。よってフェイキーって感じ!? あと忠くん(布施)なんかは、もうレギュラーだがグーフィだがわからないようなスタンスで滑るから、スイッチと呼ぶとか。かなり強引解釈だけど、結構世間ではこういう使い分けをしている人が多い。呼び方は民主主義でないので、大人数がそう呼んでいるからって決まるものでもないかもしれないけど、やはりそういう傾向があるのは事実。

キンク・ボックスで完璧にフロントサイド・ボードスライドを全擦りして抜けたNOMISのマーク・ソラーズ。こんな難しい技なのに、なんとスイッチ!

スノーボーダー誌1号(昨年)で勇亀くん(山崎プロ)なんかは、ひじょうに興味深いことを言っている。
「スタンスもアングルも左右対称の人しかスイッチではない」と。
だから勇亀くんの場合は、前足21度、後ろ足が0度かマイナス3度だから、スイッチとは呼ばない。しかもセットバック(注:スタンスの位置を後ろにセッティングして前方向にすべりやすくしてあること。多くのボードの設定は、このようなセットバックがしてある)している時点でもうスイッチでない、というのだ。
確かに角度が違うと、もう逆向きから入るトリックは、通常前向きから入るトリックと、格好が微妙に変わってしまう。だから、勇亀くんの言うこと納得できなくもない。

でも例えば前足18度、後ろ足マイナス6度とかでうまい人が逆向きで滑っていると、どっちがレギュラースタンスなのかわからなくなってしまう。だから、結局のところやはり世間では見た目で「あの人、スイッチだ!」なんて言い方をしてしまう。それと勇亀くんの定義だと、世の中にスイッチって言葉が消滅してしまいそう。だって、両足均等の角度でど真ん中の設定のスノーボーダーってどれくらいいるのかな? きっとかなり少数だろう。

あともう2つ説があるので紹介しよう。1つの説は、アプローチで逆向きに入ったらスイッチと呼び、着地のランディングが逆向きだとフェイキーだと。これだと「なんとかエア・トゥ・フェイキー」という言葉がよく聞かれるように、なんとなくしっくりくるね。
もう1つの説は、スイッチの語源から。電気のスイッチなどはまさにオンした時に「スイッチした」ということになるので、逆向きになると、スイッチである、と。つまりその解釈だと「Aさんはレギュラーからスイッチして、フェイキーになった」という言い方ができてしまって、ますます混乱しそうなんだけど。もう、結局のところ何が答えってないような気がするのだけど、ともかく世の中でもこのように勝手に解釈しているものと思いつつ、あなたの判断でフェイキー、スイッチの言い方を選んでみたら?

ちなみにハーフパイプ種目においては、ほとんどスイッチと言うのが一般的だろう。スイッチ900とかは言うけど、フェイキー900なんて言わないからね。

ということで記者さんへ。
スノーボードでは、逆向きに滑ることをフェイキーやスイッチと呼ぶけど、ハーフパイプにおいてはスイッチと呼ぶのが一般的! 例えば、逆向きから2回転半したら、スイッチ9(注:スイッチからの900回転)と呼ぶように。
ただし、壁に上がってジャンプし、そのまま逆向きになって降りることは、エアー・トゥ・フェイキーと呼ぶので、気をつけるように。

オープン180とフロントサイド180&キャブ
ジャンプしながら前方方向に回転して180すると、「オープン180だ!」と言ったり、「フロントサイド180」と言う。またその逆向きの回転だと「ブラインド180だ!」と言ったり、「バックサイド180と言ったり、さらにその言葉を略してバック・ワンなんて言ったり。

世界的には技名としての表現を、フロントサイドやバックサイドというのが定着しているようだ。
例えば、トヨタビッグ・エアーで優勝したマーク・アンドレ・ターレの技はスイッチ・フロントサイド1260とか言うからね! オープン1260というのも悪くないけど、しっくりしない。だけど、回転する方向の言葉を指す時には、オープンとかブラインドという言い方の方がしっくり来るのでは? 特にブラインドって見えない方向という意味で、いかにも背中後方から回すというイメージがある。だから、ブラインドで180回す、という言い方は、とてもいい感じ! 用語に慣れている人ならともかく、そうでない人はバックサイド180と言われても、一瞬どっち回りなんだ?なんて考えたりして!?

2年前春のXゲームから。初代スノーボード五輪(長野)金メダリストのジャン・シーメン。スイッチからのアプローチかどうかわかりにくいけど、ともかく抜けの姿勢をチェックすればどっちかわかる。

しかし、この言葉って、さっきのフェイキーとスイッチ以上に難解な言葉だね。世間ではいったいどういう分け方をしているのだろうか?

それでスノーボーダー誌ではどう分けているか聞いたのだけど、
「キッカーはオープンサイド、ブラインドサイドで、パイプではフロントサイド、バックサイド」ということ。ちなみに完全に統一していない、と。
なるほど、これは名案! キッカーでオープンなんとか回転スピンとか言うと、どんな技をしているのかイメージが沸きやすい。だけど、パイプでオープンとか使ってしまうと、もう世界的にもさらには歴史的にずっとフロントサイドなんとか、って言って来たから、こればっかりは変えられない。
だけど、世界的に見るとキッカーでもフロントサイド、バックサイドという表現が多いので、正式にはキッカーでもフロントサイド、バックサイドという言い方になるのかもしれない。直訳すれば、

フロントサイド・スピン(前側回転)
バックサイド・スピン(後側回転)

オープンサイド(見える方向回転)
ブラインドサイド(見えない方向スピン)

になるからね。
ともかく、オープンやブラインドという言い方は海外にもあるけど、どちらかというと日本人読者がわかりやすいうように専門誌でそう言って来た、というスノーボード用語の歴史背景もあるようだ。

それと世の中でさらに混乱しちゃう言葉は、キャブ、正式にはキャバレリアルという言葉。
これは、スイッチ(フェイキー)からフロントサイド(オープンサイド)で回転した時の名称で、例えばキャブ・ファイブ(540)と言ったら、スイッチ・フロントサイド540のこと。略してスイッチ・ファイブなんて言ってしまうことも多いけど、ともかくキャブって厄介! だって、そんな言葉をなくしたって技名としたらまったく困らないのだから。素直にスイッチ・フロントサイドなんとかって言えばいいのに! だけど、実際、雑誌に出る「cab 9」という名称って、なんだかカッコ良くて言ってみたくなるもの。こんなミーハー族が、さらにボード用語の難解度を加速させているようでならないけど、これは日本に限らず世界的に行われているということ。というか、スケートに代表される横乗り文化の特徴か!?

それとキャブというのは、スイッチからフロントサイドに回転して、自分のメインスタンスに戻す時だけ、という言い方の説もかなり強い。 パイプだとキャブ360、キャブ720、キャブ1080、キャブ1440しかなくて、ストレートジャンプだと、ハーフキャブ(180のこと)、キャブ540、キャブ900、キャブ1260しかない、ということになるんだ。技名って本当に難しいね!

その他、混乱用語たち
その他、スノーボード用語の混乱はもっともっとあり、例えばパイプではバックサイド壁でやるとメソッド・エアーでフロントサイド壁でやるとリーンと言ったり。また同じ技なのにフロントサイドでやるとステールフィッシュで、バックサイドでやるとフレッシュ・フィッシュになり。だけど、ストレートジャンプで同じことやっても、メソッド・エアーとかステールフィッシュになるのにね。ああ、ますます混乱してしまいそう・・・。
結局、これらはその形をメインに考えた呼び方なんだろう。例えば、腐った魚が語源のステールフィッシュは、まさに魚が腐ったような形のエアーだ。フロントサイドの壁を抜けたらボードをシフト(上半身と下半身を逆に捻ること。この場合には、ボードはリップのラインに対して垂直に向けるような形)させて、カカト側でつかむ姿は、まさに腐った魚のよう。対して、まったく同じグラブ技でもバックサイド側でやると、生き生きをした姿になってフレッシュ(新鮮な)・フィッシュになる。ストレート・ジャンプでは、多くの人がパイプで行うステールフィッシュのような形になるので、ステールフィッシュと呼ぶのだ。だけど、キッカーで起用にもフレッシュ・フィッシュのような形で飛んだら、フレッシュ・フィッシュって呼ぶのかな? あまり聞いたことがないけど。そう考えるとちょっとナンセンスで、もうこうなったら「後ろの手をカカト側につけて、もう片方の前の手は上に上がるエアー」っ呼ぶことにする? ああ、だけどこれだと名前長過ぎて大変だ~。オリンピックのアナウンサーが泣いてしまいそうだね。「おっと中井孝治、フロントサイド1080をやりながら、後ろの手をカカト側につけて、もう片方の前の手は上に上がるエアーを決めました!」と言っている内に、もうその滑り終わってしまったり・・・!?

その他、まだまだ混乱言葉あるぞ。パイプでブラインドサイドに回るアーリーウープ。これもやっかいな技名だ。フロントサイドの壁で行えば、そのままアーリーウープで通るけど、バックサイド壁で行うと、回り方がフロントサイド・スピン(=ブラインド回転)なので、フロントサイド・アーリーウープなの?と思われるし、そもそもパイプの技名を壁を主体で呼ぶハズだから、バックサイド・アーリーウープなのかな?と思われたり。

ああ、もう、こんなこと書いていたら、いつまでも終わらない!
そろそろまとめに入りたいのだけど、このままではさらに新聞記者さんを混乱させるだけなので、ここではこの特集の基本に返り、五輪種目のパイプの技名という観点で、基本技からお伝えしてしていこう。


ここからが本場、初歩的技名用語

まずパイプには2つの壁があり、フロントサイド・ウォール(壁)とバックサイド・ウォールがある。前足が左になるレギュラー・スタンスの人は、フロントサイドは滑り降りて右手方向ということになる。

フロントサイド壁では、トゥ(つま先)エッジでアプローチして、途中フラットな部分(ボトム)を通過し、そしてRの部分から垂直な壁部分(トランジション)に進み、そしてさらにエアーが炸裂するリップ部分を抜け、そのままエアーして、パイプに戻って来る。

このパイプに返る運動が、パイプでは180回転したとみなされるため、さらに180を加えてスイッチで着地すると、フロントサイド360になる。多くの人が、最初に戸惑うパイプならではの技名の呼び方である。つまり、通常のスレート・エアー感覚の180回転すると、すでにパイプでは360になっていると言うこと。さらに180を加えて、レギュラー着地(注:自分のスタンスで着地、スイッチの反対語)すれば、フロントサイド540になる。

女子では最高峰の高さを出すハンナ・テーターは、五輪では900を炸裂させるだろう。ちなみにこの技はリーン・エアー。

パイプのスピンでは、トゥの方がエッジを掛けやすく回しやすいので、トゥエッジのスピン技の方が回転数が多くなる傾向。だからフロントサイド1080は、バックサイド1080よりも簡単とも言える。逆に言えば、バックサイドで1080できれば、すでに世界最高峰だ。

ちなみに今、最もパイプで強いと言われているアンティ・アウティ(トップの写真のライダー)は、フロントサイドで1080をして、そのままスイッチの状態でさらに1080をする。この2連発の1080コンボと称し、今、最もパイプの世界で熱いトリックと言われている。五輪において男子の場合には、1080は必須科目になりそうで、メダルを取るためには今、アンティがやっている1080コンボにプラスして、900や700、さらには縦回転や高さが求められるだろう。

女子では720(2回転)の争いになりそうで、最高回転数が540ならかなり高さがないと認められない傾向になるだろう。また、900をやるライダーも4、5人は出て来そうである。具体的に名前を出せば、ハンナ・テーター(アメリカ)や、ドリアン・ビタル(フランス)など。また、オーストラリアのトーラ・ブライトが行う高さあるマックツイスト(注:バックサイドの壁で行う前方縦回転技)も注目を浴びるに違いない。「女の子でこのマックの高さはあり得ない!」という感じで。ちなみにこの子、メッチャ可愛いので、要チェック。そう、スノーボード界には、可愛い女の子が多いのも特徴である。

日本の女子では、成田夢露が独特の縦回転技メロー・フリップがあり、また山岡 聡子は、720コンボをやりそうな気配。山岡の場合には、安定した技と高さが売りなので、最高スピンは720までにして、あとはきれいにルーティーンをまとめて表彰台を狙って来そうだ。

あれっ、どんどん難しい話になっているぞ。すんません、基本に返り基本グラブ技です!

まずボードのつま先部分を後ろ手でつかむ技。これはインディと言ってかなりオーソドックス。バックサイド壁でやってもフロントサイド壁でも同じ技名で、基本的には、バックイサイド・インディ、フロントサイト・インディのように呼ばれる。同じインディでも前足を伸ばす形は、さらに難易度が高いと認められる傾向で、その足を伸ばす行為をノーズボーンと言う。さらに両足を伸ばすとステフィーなんて呼ぶのだけど、最近、その言葉を聞く回数がかなり減って来て、もはや死語か!?
ちなみにこのインディ・エアーをやろうとして、テール(ボードの後ろ部分)の方をグラブすると、テール・グラブだがインディだが、わからないということで、ティンディと呼ばれてしまう。これは、かなりバカにされた用語だから、そうならないようにしたい。

インディと同じほどよく使われるグラブがメランコリー・グラブ。これは、前の手でカカト部分をつかんだ時の技。そのメランコリー・グラブから、エビ反りのような形がメソッド・エアーだ。さらに後ろ足を蹴って、おもいっきりボード面を正面に向けたような形になると、トゥイークと呼ばれる。ちなみに日本では、以上のような定義になっているが、外人はトゥイークもメソッドもいっしょじゃない?というライダーが多く、両方やってと伝えると「同じ技じゃん!」と突っ込まれることが多い。
冒頭にも伝えたが、この技はバックサイドで行うとメソッドで、フロントサイド壁でやればリーン・エアーになる。
さらにこのメソッドだが、ただ両ヒザを軽く曲げてなんとなくメソッドの形を作り、女の子がキャピって感じでジャンプだとギャルメソ(女の子のメソッド)ということで、バカにさらてしまう傾向があった。しかし、最近、多くのライダーたちがあえてこの技を子バカにしたように、オシャレ(?)に決めることにより、逆におもしろいトリックとして見られるようになった。五輪選手では、よく中井やコクボがお遊びでやる傾向。特に 國母はよくやる。
こういった1つの技が以前はバカにされながら、今ではオシャレ技に成長していることを考えれば、バカにされる代表トリックであるティンディも、将来にはオシャレ技に成長できるかも!?
さらに注釈。このギャルメソを発展させて、カカト側をグラブするよりも、もっとエビ反りを強くしてつま先側までグラブすると、スーツケースと呼ばれ、これも最近のオシャレ技に分類されている。

フゥー、ここまで説明して、かなり着いて来ていない人も多いかもしれないけど、もうちょっとの辛抱だ。
あと、代表的な基本技は、つま先側を前の手でグラブするミュート。そこからメソッドのようにエビ反りにするとジャパン・エアーに発展。
カカト側を後ろの手でグラブするステールフィッシュ。これは冒頭の方で説明したように、フロントサイド壁でやるとフレッシュフィッシュ。
さらにノーズをグラブすれば、ノーズ・グラブで、テールグラブもあり。スピンすれば、スイッチになって、ノーズだがテールだかわからなくなるけど、基本的には元々のスタンス側のグラブで考えればいい。例えば、あるライダーがノーズをグラブしながら180すると、逆向きになるので、テールをグラブしたようにも見えるが、ノーズグラブと呼べばいいと思う。

まとめ
以上、ここまで書いて、これは1冊の本を書くほどの大変な作業だということに気づいたので、勝手にまとめに入らせていただく。
まず、ここで述べたことは、自分なりに正しいと思い書いたが、もしかしたら若干間違っている可能性もあるので、許してね。というか、五輪選手だってわからない技名があるぐらいなのだから、なかなか完璧にするのは難しい。

あと、基本グラブ技をだいたいマスターしたら、ぜひ縦回転を覚えてほしいと思う。代表的なのは、フロントサイドで行うロデオ(フリップ)やバックサイドでやるマック(ツイスト)があるが、その他にクリプラーとか、サトゥ(フリップ)とか、これまたかなりあるので、なんとか頑張って覚えよう。
ちなみにこの技名をマスターするのは、JSBA(全日本スノーボード協会)から出ている教程本や、また各専門誌に問い合わせて、その手のムック本を購入することをオススメする。

また、選手のスタンス(レギュラーかグーフィ)を把握し、スイッチ技がどうか、ということをしっかりとパイプのビデオなど何度も見て、勉強してみよう。
パイプの大会ビデオとしては、ニッポン・オープンやUSオープン、さらには過去の五輪素材なども参考になるだろう。

そして、最後のメッセージとしては、ともかく英語と同じで技名は体で覚える、ということ。英語を勉強していても、「なんでこんな使い方をするの?」と疑問に思うことがあるが、そんなことを考えていては勉強にならない。どんどん英語を聞いて、会話をして、英語を体で覚えていかないと、なかなかその真髄には近づけないものだ。だから、スノーボードのトリック名もどんどんと体で覚えるように、スノーボードの専門誌の編集者やカメラマンなど、その道で専門している人と、いっしょに飲んで聞いてみたらいいと思うのだ。自分なんかも世界選手権中に、「なんでこんなに知らないのだったら、オレと一杯飲もう、と誘わないんだろう?」と不思議に思った。素直にわからないんだったら、聞くような環境を積極的に作ればいい。やる気しだいでは、自分ぐらいの知識はすぐに身につくし、五輪直前までの時間で、自分よりももっと技名を理解することは可能だ。さらに選手のことも理解すれば、質問の仕方もわかるだろうし、他の世界で培った記者経験がスノーボードの世界でも発揮されて、これぞプロ!という仕事ができるハズである。

世の中には、学校の勉強ができるスマートな方と、そうでなくどこでも食っていけるようなストリート・スマートと呼ばれる方がいるが、とかく新聞記者さんの場合には、良い大学に行って、良い新聞社に就職し、ストリート的なスマートさが欠ける可能性が強いように思うので、そちらの方も考えていただければ、と思う。
以上、かなり勝手にこんな特集作ってみました!

自分に質問したい方は、 fusaki@dmksnowboard.com まで。

 

上達するための思考力

スノーボードをうまくなりたい、と思うのは、スノーボードに出会った人なら自然に沸く感情だ。そこで世のスノーボーダーたちは、ハウツーが掲載しているスノーボード雑誌やハウツー・ビデオを購入したりする。実際、このような要望に応えるかのように、今ではどこの雑誌もハウツーを取り上げられるようになった。しかし、果たして本当に雑誌やビデオで上達できるのか? 時には誤った方向に導くものもあるのではないだろうか? そんな疑問や憤慨が今回、自分が「上達するための思考力」を執筆した経緯である。

STORY: FUSAKI IIDA

自分がSnowBoarder誌のハウツー・コンテンツ作りに協力するようになってから、かれこれ10年ぐらいが経っただろうか。その前にもハウツービデオ、ハウツー本などの制作によりハウツーという世界にいたが、SnowBoarder誌のハウツー作りを行う中で、ずいぶんと勉強させていただいたように思う。そのお陰で自分はハウツーの作り方など考える機会に恵まれたし、また毎年違ったテイストのハウツー・コンテンツを発信したいという思いから、研究するようにもなった。

しかし、今、お世話になって来たスノーボード専門誌のハウツーを見ると、もう1つ説明が足りなくてその内容に疑問を持つこともある。例えば、ある人が基本姿勢を説明する時に「懐を深く構える」と伝えているとしよう。しかし、その後に「どんな理由で懐を深く構えるか」という説明がなく、そのハウツーの根拠というのが曖昧だ。「こうするとうまく滑れるよ!」というだけでは、乱暴な教え方のような気がする。

どうしてそうしなくちゃいけないのか?しっかりと説明できなければハウツーと言えないのはないだろうか。
そこで今回の特集では、スノーボードの上達方法を自分で思考できるような方法を提案したい。「自分のハウツー」という主体性を持って、始めて本当のハウツーというものを理解できると思うからだ。

テーマは3つに分けた。
1つは、思考力の基本を育成する天邪鬼的な考え方。例えば、雑誌で伝えるコツというものが果たして、どんな人にも合うものなのか? 本当にそれが正しいのかと疑ってみる発想。この物事を斜めに見る発想が、天邪鬼的であり、またそのような習慣を持つことで、「自分のハウツー」というものが磨かれて来るだろう。

次に、自分がピンと来たカッコいい写真を雑誌から探し、そのカッコいい写真を撮影するために、ライダーはどんなテクニックが必要だったか?考えてみる。1つのトリックには、様々な基本的な要素が潜んでいて、その基本要素を足し算することによってその技が完成する。これは言わば数学的なテクニックとも言える。

最後に伝えたいテーマは、インプットとアウトプットのバランスについて。いくらいろいろなハウツー知識を身につける作業(インプット)をしても、最終的にその滑りにトライ(アウトプット)しなければ、ほとんど意味はない。だから、アウトプットのことまでイメージしてハウツーを考える、という習慣を身につけることを提案する。

以上、大まかに3つのテーマを決めてみたが、実のところ自分自身、まだ研究段階でこの原稿の完成度をどこまでアップできるか疑問である。しかし、この原稿を書くというモチベーションを持つことで、その考え方を推進できると思うので、自分の責任を持って発信できるdmkのウエブでこの特集内容を披露してみたい。


イジワルばあさんになろう!

以前、イジワルばあさんという番組があった。元東京都知事の青島さんが演じていたキャラクターだが、このばあさんはいつもイジワルをしていて、人々を困らせていた。しかし、イジワルをするというのは頭が良くないとできないことである。例えば、あなたは某有名ライダーのキャンプに参加していて、1つのアドバイスを授けられた時に、そのライダーをも困らすような質問を投げかけることはできるだろうか。有名ライダーが伝えてくれた言葉だけに、なかなか突っ込むようなことは言い難いかもしれない。しかし、自分が本当に疑問に思ったことは正直に質問すべきである。もし、相手が困り果てているようなら、そのコーチはしっかりと説明していない、ということだと思うからだ。ある種、質問者はイジワルばあさんになったような心境になるが、「それでいい」と思うのである。

今年、自分は春のウィスラーで GSSキャンプで3人のキャンパーのコーチングを引き受けたのだが、その時には人数も少ないこともあり、かなりキャンパーに考え方をつけさせるレッスンを行った。例えば、こんな質問をしてみた。「基本姿勢ってどんな姿勢? 」

そうするキャンパーは、基本姿勢とはヒザを曲げて、目線を進行方向、懐は深く構えて、上半身はリラックス、体はやや前方に構えて・・・、などいろいろ雑誌や以前どこかのキャンプで習ったことを話す。しかし、「そうちなくちゃいけない理由は?」と尋ねた時にきちんとしっかりとその理由を答えられる人がいなかった。

このことからもわかるように、多くの人は雑誌やビデオでのハウツーを見た時に、そのアドバイスをほとんど疑問を持たずに受け入れたのだ。もしかしたら、人それぞれ違ったレベルやスタイル、さらには持っている筋力や骨格でも基本姿勢は変わるかもしれないのに。

自分が考える基本姿勢

それでは自分が考える基本姿勢を伝えてみたい。
まず基本姿勢というのは、そのスタンスに合わせて自然な形で構えなければならない。無理に上半身を捻って前を向くようにして構えると、そのスタンスに合わせた最適な運動ができないからだ。実際、捻った運動でヒザを曲げたり伸ばしたりすると、ひじょうに困難で骨格に合っていないことがわかる。滑ってみても、捻り戻り運動が発生して、確かな抜重ができないことがわかるだろう。
基本姿勢を作って、唯一捻られた部分があるのは首だけだ。目線を滑る方向に導く関係から、頭だけは進行方向を向く関係で、首だけ捻れている。
しかし、その他の骨格パーツ、特に足首、ヒザ、股関節などはスタンスに忠実に曲げ伸ばしできるように無理に捻ったりせずに自然に構えること。

左、ダックスタンスで立ったところ。右、ダックスタンスなのに無理矢理に上半身を前に捻ったところ。無理に前に捻ることで、体重の乗り方が後ろ足の方が多くなる。だから、スタンス幅や角度に合わせた姿勢で立つことが大切。

スタンスには大きく分けて2つの種類がある。両ヒザが外側に向くダックスタンスと後ろヒザが内側に入りやすいノーマルのスタンスだ。
ノーマルスタンスでは、例えば前足 21度、後ろ足9度などの設定なので、上半身がやや前に向く。上半身が前に向くと、進行方向に対して左右のバランスが生まれるので滑りやすい。ターンを習得しようとしている初心者や、ターンに磨きをかけようとしている方に最適なスタンスだ。
ダックスタンスの場合には、上半身は横を向くことになる。横を向いた分、進行方向へのバランスは悪くなるが、逆向き(スイッチ)で滑った時には、ノーマルスタンスよりも違和感なく滑ることができる。しかも、両ヒザが外側に向くのでヒザが曲げやすい。オーリーなどヒザの曲げ伸ばしを大いに使うフリースタイル技を行う時に役立つので、フリースタイラーには人気のスタンスだ。

人間骨格に逆らわない!これが、自分が提案する基本姿勢である。何度も言うが、それは一番運動効率を高める姿勢のため。自然に構えたこの姿勢こそ、ニュートラルな姿勢であり、最も運動域を広くしてくれるものだ。

それでは、なぜスクールに行くと、自分のスタンス以上に上半身を前を向かせるイントラがいるのか? それは先にも伝えたが、やはり上半身を前に向かすと、その進行に対するバランスが良くなるからだ。またそのスクールのリーダーが、アルペンボードに乗っていて、必要以上に上半身を前に向けてしまう傾向がある可能性もある。しかし、下半身に対して上半身が無理に捻られた形なので、最初からスタンスを前に向かすようなスタンスにする、というのは良くないと思う。もちろん人間には、股関節の柔らかさなどから、ある程度、捻りがあっても対応できるが、その微妙な捻りによって運動域を狭くしてしまうことを考えれば不正解だと思う。

左、自分が考える通常の基本姿勢。右、懐を深く構えた基本姿勢。どちらも左右軸を保てることは事実だけど、腰の高さの位置が変わり、安定感は通常の基本姿勢の方が高い。脚の筋力をより使っているのも特徴。

次によくある教え方のパターンとして、「懐を深く構える」というのはどういうことだろうか?
確かに懐を深く構えると下半身がドッシリとなる。この構えに一理あるなあ、と思うところだ。
しかし、厳密に言えば、懐を深く構えることは、ヒザや足首の曲げをあまり作らずに、太ももやふくらはぎの筋力をあまり使わないことだと思う。

例えば懐を深く構えずに、上半身の位置を下げるためには足首やヒザをしっかりと曲げないといけない。これで確かに重心をしっかりと保つことができる。だけど、太ももの筋肉やふくらはぎの筋肉をとても使うので、この姿勢を取っただけで大変疲れるという人が多いだろう。
しかし、こちらの筋力を使う構えの方が、より重心を保ち、また前後の軸も保てることを意識できると思う。従って、懐を深く構えるという基本姿勢は、女性のように筋力がない方が、とりあえず重心と軸を保つような姿勢を作りたいために考えた基本姿勢のように思えるのだ。言葉は悪いがインスタントである。インスタントは悪くないし、実際にこのインスタントの懐を深く構えた基本姿勢がライディング強化を導くことも想像できる。だが、やはり鍛えるべき筋力は鍛えるべきなので、上半身はそのままで特別に懐深く構えずに、ヒザや足首をしっかりと曲げて基本姿勢を作った方がいいだろう。

以上、基本姿勢を例に、その格好をしなくてはいけない意味や、そのアドバイスの背景にあるものなどを考えてみたが、こうしてハウツーは思考することが大切だと思う。だから、これからはコーチのアドバイスや雑誌で書いているあるコツなどがガッテンいかない場合には素直に疑問を投げかけるようにしてみるといいと思う。なぜならその疑問から「自分のハウツー」という主体性が身につくからだ。冒頭に伝えたように主体性がないと、何が正しいとか間違っているとか、自分に合っているとか、そういう判断がつきかねなくなる。

ところで自分はコーチというのは、かねがね医者のような仕事だと考えている。患者さんのために最善の処方をしようと努力する仕事だ。患者さんの恐怖心を想像し、そこから治療方法を考える。医者が常に完璧な治療選択をできるとは限らないのと同様に、スノーボードのコーチも同じことが言える。まして、きちんと試験制度を通過していないコーチ、ただスノーボードがうまいというだけでは、コーチとしての力は弱いとも言える。そうかと言って、やはりコーチはキャンパーよりもずっとうまく、試行錯誤の上で上達した歴史があるのだから、そのへんは素直に聞けるといいだろう。しかし、聞く側もある程度の知識がないとただコーチの言うことを飲み込んでやるだけだから、上達しないということもあるのだ。コーチは神様でないのだから、完璧ではない。そのことを理解し、ぜひイジワルばあさんのように天邪鬼的な発想を持ち、主体性のある思考力を身につけてほしいと思う。

映像、写真で考えるハウツー

なんだか、自分らしくない難しい話ばかりで恐縮だが、それではここからは実例でどうしたら上達できる思考力が身につくのか試してみよう。 こっちの話の方が、実用的で頭に入りやすいと思う。

この写真を見てほしい。
これは、 SnowBoader誌1号の表紙だ。これを見て、まず思ったこと。
「うわっ、スゲー! このライダーはスイッチかよ~」
だけど、表紙のライダーを見たら忠くん(布施)ということを見て、「ああ、グーフィスタンス」だと納得。まあ、忠くんならスイッチでもクリフのサイズによっては飛んでしまうだろうけど。
ともかく、基本中の基本だけど、こういうシンプルな部分からアプローチすることが大切。
次にこの写真を行うテクニックとしては、「インディ・エアー」これは誰でも思いつくこと。
さらに、クリフを飛び出す時には、どんなテクニックが必要か?
そう、「オーリー」だ! しかも、ここの雪質はバックカントリーのようなところだから、きっとアプローチもパフパフ、もしくはザクザクという感じで足場が取られやすいところ。よって、蹴り難いところでオーリーした、ということを想像できる。
そして、このエアーのサイズはどんなものか?
ランディングが見えないので、なんとも言えないが小さくはないだろう。ともかく、ランディング時にはもの凄いスピードで着地するような感覚になるパウダーであることを考えれば、やや後ろに体重を乗せるような形でランディングすることが考えれる。
以上のことを考えて、このエアーを自分がメイクするためのハウツー計算式を弾き出そう。

パウダーでもできる鬼オーリー+インディ・グラブ+落下+激しいランディング=この表紙のエアー

この中で誰でもクリアできそうなものは、インディ・グラブだろう。
次に鬼オーリーだが、これも何度かの努力によってできるに違いない。実際にクリフを飛んでいるイメージで「あそから下は本当はクリフなんだ」とか勝手に想像してみて練習するのも手。もちろんパウダーでのオーリーは難しいので、そこでの練習も必要だ。

激しいランディングは例えばコブをチョッカルことでできそうだ。
あとは落下だけど、これは単純に恐怖感との戦いだ。人間は恐いと体を硬直してしまうが、そうすると体が言うことを聞かない。よって、これはジェット・コースターに乗ってリラックスする練習でもするか?
というか、一番いいのは徐々に小さなクリフから大きなクリフに飛ぶ練習をすることだろう。だけど、そんな環境なかなかないので、篭って毎日練習しないと難しい、というようなサンデー・スノーボーダーにとって悲劇的な(?)答えが出るかもしれない!?

ちなみにバックカントリーでは、自分が万が一失敗した時の逃げる場所などのチェックや、その対応まで考えている。一般にパークの映像よりもバックカントリーの映像の価値が高いと言われる点は、そんなところにもあるのだ。

ともかく、こうして1つのトリックを足し算のような計算式を作ることで、アライのようなバックカントリーができる山に篭ればオレにもできるチャンスはある、というような答えを導き出すこともできるのだ。しかも、想像したことにより、ハウツーというのが自分の体に入って来ることになる。これが、大切だ。

次に全米トランズ誌の最新号でも見てみよう。
見開きのページにストリートでの font 180, switch 50-50 through two kinks, to switch backside 180 out !という何とも技名が長いもの。一応、カンタンに訳すと、フロントサイド180でレールに乗り、そのままスイッチでキンク・レールを滑る。このキンクはダウン・フラット・ダウンになっているので、two kinksという表現方法になっていて、レールからアウトする時には、バックサイド180というもの。 さあ、まずは先の計算式のように自分でこのトリックの解明、つまり計算式を作ってみよう。

乗る時にフロントサイド180をしているので、フロントサイド180を使っているのは誰でもわかること。しかし、ここで注意しなくちゃいけないのは、このようなストリートの場面では、エッジを立てたアプローチができないということ。通常フロントイサイド180をする時には、ヒールエッジに乗って蹴るが(注:フロントの場合にはトゥ・エッジに乗って行うパターンもある)、それができずにフラットのまま180をしているというのが1つの注目点だ。またレールからアウトする時にもエッジを立てることは無理だから、エッジを立てずにバックサイド180をする技術も必要である、ということがわかる。これは、ちょっと難しいぞ。さらにキンク・レールをスイッチで 50-50で滑るテクニックも必要だ。従って計算式は以下のようになる。

フラットで抜けたF/S180+キンクでスイッチ+フラットで抜けたBS180=この見開きページのトリック

さらに細かい計算式を作ると、キンクでスイッチという部分を計算することができる。

スイッチで滑る技術+キンクを滑る技術=キンクでスイッチ

このようにして自分でハウツー計算できれば、どんなトリックでも上達の方法が見つかるものだ。イコール、正しい努力の仕方という言い方もできるだろう。今まで雑誌を適当に目にして「凄え!」とか思っていた人も、さらにハウツー計算式を当てはめると、そのトリックの奥深さがわかって「もっと凄え!」と思えることもあるだろう。逆に「なあんだ、このトリックはこれさえ練習すればできるから、オレにもこうした練習でできるようになるな」と思えるようになれば、まさにこの企画の意図、上達するための思考力が身についたことになる。

試しに今、自分の家の本棚に仕舞ってあるスノーボード雑誌を手に取り、適当な写真を見ながら考えてみてほしい。きっと新しいスノーボードの世界が見えて来るだろう。

アウトプットをイメージする意味

スノーボーダーの仲間が集まった飲み会で、よくウンチクを語る人って見かけない? その人が意外に口の達者の割にはうまくなかったりってこともあるのでは!? そういう人は、インプットはされているが、うまくアウトプットされていない可能性が高い。

つまり、スノーボードの雑誌やビデオなどにより、知識はたくさんあるけど、実際にやってみるチャンスや学んだことを活かした滑りというのができていないということ。なぜ、そうなるかというと、アウトプットをしっかりとイメージしてインプットをしている作業をしていないからだ。

例えば、キミがスノーボードの雑誌やビデオを自分のライディング向上のために買ったとしよう。そうしたら、すべてのビデオ映像を見ることがないかもしれないし、特にスノーボード雑誌の場合だとスタイルが広過ぎるので、すべて読むこともない、と思う。よくスノーボード雑誌を読む人は、隅から隅まで読む人も多いけど、自分が知りたいことを知れるページだけ、読めばいいと思う。実際、自分もスノーボード雑誌は、斜め読みで、気になるページだけ集中して読み理解するようにしている。もちろん時間がたくさんある方、もしくは「ともかく読むのが好きなんです!」という方は、ぜひすべて読んだらいいと思うが、自分の上達という観点からアプローチするなら、すべて読むことはないと思うのだ。

極端な話、そのページに魅力を感じたり、匂いというかオーラ、つまり自分にとって大切そうだなあ、というところだけを一生懸命に理解すればいいと思うのだ。例えば、あるシークエンス写真に魅力を感じたら、それを自分の部屋に飾ってみよう。それで、このトリックがどのようにして成り立っているのか、そのトリックをやっているライダーはどんな感覚にあるのか、ということを考えていくといいだろう。風呂入る時やトイレにいる時、電車の中で・・・、ともかく自分が一人で集中できる環境のところで、そのトリックについて考えてみる。

そして、さらに最も大事なことは、実際に自分がやるということを前提にして考えること。これはいわば作戦追行のような作業でもある。

例えば第二次世界大戦の時、アメリカは日本を降伏するために作戦を立てていたとしよう。どこに原爆を落とすか、都市部での大空襲、ロシアからの攻めに対する停戦協定の結び方。日本降伏後の処理方法・・・etc。彼らは、その作戦が絶対に成功するように信じ、行動に移し、そして実際にそうしたハズだ。
それと同じように、1つのトリックは、自分ができると信じて、それをメイクするためのハウツー計算式を作り、その作戦を追行していかないと意味がない。これぞ、まさに『アウトプットを意識したインプット作業』になる。

なんだか、難しい話をしているかもしれないが、小学生の頃の授業を思い出してみよう。キミはどれだけあの頃、学んだことを覚えているか? きっと思い出すのは足し算や引き算、そして掛け算など超基本的なことだけではないだろうか? なぜなら、実際に今の生活で役に立っていない知識は、ゴミと同じで捨ててしまっているからだ。

スノーボードも同じ。興味のないことを学んでも、それはウンチク垂れ増のネタにしかならなくて、スノーボードの上達という観点では、意味がないこと。もちろん、世の中には「ウンチク垂れるのが大好きなんです!」という人もいるから、その人の趣味までは否定しないが、ただ上達を考えるなら、いるものといらないものをしっかりと分けた上で、ハウツー計算式をやった方がいいし、それがつまり自分が言う生きたインプット作業ということになる。

結局はスケベ心(?)

唐突だが、自分の師匠でもある SnowBoarder誌の編集&カメラマンの岩田さんは、スケベである。なぜなら、常にそのライダーがどんな考えで滑っているのか、たくさんの想像を膨らますことができるからだ。だから、岩田さんは良いハウツーを作ることができたし、また自分の師匠にもなったと思う。
みんなにはこの特集を読んだきっかけにぜひ想像力を働かせてスノーボーダーとしてのスケベ心(?)を発揮していただきたい。一人で集中できる環境で、様々なトリックを解明し、ハウツー計算式を作ってみる。今まで電車の中で暇だなあ、と思っていた人もこのハウツー計算式をやってみたら、楽しくなるかもよ。それで、実際に自分の頭の中でシュミレーションして「よし、これでこの技はできる!」なんて、ニタ~って笑ったら、本当にスケベだと思われて、周りから白い目で見られるので気をつけるように。

 

「新」最強伝説 NOMIS軍団特集

本ウエブでは、これまでに何度か NOMISに関する話を紹介して来た。NOMIS代表マット・チャンバリンのインタビューを通して、誕生物語を紹介し、またそのブランド・ネームの決め方、さらには現在のNOMISライダーの活躍からどんなライダーでいるか、ということまで。
しかし、日本ではまだまだ馴染みが浅い NOMIS。そこで今回は自分の思い「もしかしてNOMISっていう軍団は世界一カッコいいんじゃない?」ということを聞いてほしい、と思いこの特集をお届けする。極端な話し、2001年のFORUMチーム。そう、JP、デバン、ジェレミー、ピーター・ラインなどがいたあの最強チームを超える可能性があるんじゃないかな?と思うんだ。

STORY: FUSAKI IIDA
PHOTO: TOSHI KAWANO

jed
simon
mat
mark
lauri
kyle
phile
fraser
aaron
hajime

神の導き!?NOMISとの出会い

NOMISのことをよく知らない人、またNOMISの誕生の経緯を知らない方のために、まずはそのへんの話しからしてみよう。

NOMISというのは、カナダで生まれたアパレル・ブランドである。彼らNOMISクルーたちは、アパレルという名称を使わずに「デザイナー」という言い方で表現している。つまり、デザイナーズ・ブランドだ。

彼らがデザイナーという言い方をするところに、そこに彼らの誇りやブランド愛のようなものを感じる。元々、このブランドが立ち上がった背景は、シモンとその兄マット、双子の弟のアンドレたちが「なんだかあまりショップにカッコいいものないね」という発想から生まれたのだ。自分たちが着たいものがなければ「自分たちで作ってしまおう」ということだったのだ。

ブランド名称に関しては、現在 NOMISの旗頭的なライダーであるシモンから取り、単純にそのシモン(SIMON)を逆さに読んだところから始まった。その他にもいろいろな名前候補はあったのだが、結局、このNOMIS(ノーミス)というフレーズにピンと来たものがあったようだ。

NOMISのロゴに関しては、彼らの友達が考えたのだが、これも深い意味はないそうだ。そのロゴを見て、インスプレーションで決めたのである。

自分が初めてNOMISの存在を知ったのは確か3年前のシーズンだったか。ハジメ(注:dmk新鋭若手ライダーでVitamin JIBでは出演、さらにハウツー・ディレクティングもしている)がTシャツややビーニーを付けているのを見て知ったのである。また、ハジメを通して、NOMIS代表のマット・チャンバリンを対面した。

最初、自分の中で NOMISという存在はそれほど大きくなかったが、マットやシモン、さらに最近では他のスタッフたちと親交を深めるにつれて、どんどんと大きい存在に成長した。今では本当にNOMISを紹介してくれたハジメに感謝しているし、また彼らクリスチャン(注:NOMISのライダーやスタッフがクリスチャンが多い)の言葉で伝えるなら、まさに神に感謝という気持ちである。

自分は特別にクリスチャンでもないし、まあ無宗教とも言えるが、神や仏のような存在はあると思うし、また尊いとも思う。そして、まさに彼らとの出会いは、神仏の導きによって生まれたものではないか、と思わずにはいられない。それほど、 NOMISという存在は今の自分の中では大きいのだ。


左写真、シモンと兄のマット。右写真、アンドレとシモン。兄弟の力を結集して生まれたブランドだ。

 

日本では考えられないヤング・カンパニー

NOMISの魅力はいろいろあるが、その1つにはスタッフやライダーが若いことである。
まずライダーだけど、シモンの 20歳を筆頭に、ラウリ(ヘイスカリ)はその1つや2つ上。また同じプロ・ライダーのマーク(ソラーズ)はまだ18歳か19歳のティーンネージャー。さらにアマのジェド・アンダーソンに至っては、13歳という若さだ。

ついでながら NOMISのライダー組織について話すと、多く分けて3つの段階になっている。
上がプロでシモン、マーク、ラウリ。
次にアマでジェドが一人だけ。
さらにフロウというのがあり、そこにはフレイザー(アビィ)、アーロン(シェピーロ)、カイル(ルータス)、フィル(トーマス)という4人がいる。彼ら一人ひとりに年齢を確かめたことはないが、どうやら19歳前後のようだ。確かラウリを抜かして、みんなシモンよりも下の年齢だから、まさにヤング集団だ。

一応ライダー名をまとめてお知らせしておこう。

The NOMIS team

Pro-Simon Chamberlain
Pro-Lauri Heiskari
Pro-Mark Sollors
Am-Jed Anderson
Am-Fredrik Sirvio

Flow-Fraser Avey
Flow-Aaron Shapiro
Flow-Kyle Lutes
Flow-Phil Thomas

その他に、最近STEPCHILD の若手ライダーのフレデリックというフィンランド人も NOMIS のライダーになった。彼はSTEPCHILDのメイン・ライダーであるが、NOMISの中ではアマにランクされている。

そしてスタッフの方もとても若い。確か代表のマット・チャンバリンはシモンの2つか3つ上だったので、23歳。チーム・マネージャーのマイク・ハッサンもマットの幼馴染で同年齢。その他、デザイナーやオフィス窓口の女の子など、すべてマットよりも年下で21歳、22歳というところ。

こんな年齢の若いスタッフが、今、世界を相手に商売を始めたのだ。
ウィスラーとバンクーバー間のスコーミッシュという町にオフィスを持ち、アメリカのディストリビューターとも契約し、日本でも商売展開している。しかも、今年も最も注目を浴びそうな defective film 「DERELICTICA」のスポンサードもしているのだ。通常このようなメジャー・ビデオのスポンサード費用は、数百万円も必要。また、このような商売している過程で、ラスベガスやサンディエゴなどの北米の主要展示会などにも出展もしている。

自分が20歳前半の時、こんなことを考えられただろうか? 多くの読者はなかなか難しい、と思うのでは? しかし、彼らNOMIS軍団は若干20歳前後のクルーでありながら、世界の海原に航海しているのだ。そんな彼らを見ていると、まるで明治維新の時に活躍した20代の若者、坂本竜馬や新撰組などの強い勇気を感じるのである。自分は素直にこの若さという点だけで、本当に彼らをクールと認めざるにはいられない。そして、そんな NOMIS たちと接していると、凄い勇気をもらうし、自分ももっと荒波に向かって行きたい、という冒険心が沸くのだ。


20代前半の若者たちの新カンパニー。明るくてクリエイティブな雰囲気が漂うオフィスだ。

 

看板ライダー、シモン・チェンバリン

自分が20歳前半の時、こんなことを考えられただろうか? 多くの読者はなかなか難しい、と思うのでは? しかし、彼らNOMIS軍団は若干20歳前後のクルーでありながら、世界の海原に航海しているのだ。そんな彼らを見ていると、まるで明治維新の時に活躍した20代の若者、坂本竜馬や新撰組などの強い勇気を感じるのである。自分は素直にこの若さという点だけで、本当に彼らをクールと認めざるにはいられない。そして、そんな NOMIS たちと接していると、凄い勇気をもらうし、自分ももっと荒波に向かって行きたい、という冒険心が沸くのだ。 自分が20歳前半の時、こんなことを考えられただろうか? 多くの読者はなかなか難しい、と思うのでは? しかし、彼らNOMIS軍団は若干20歳前後のクルーでありながら、世界の海原に航海しているのだ。そんな彼らを見ていると、まるで明治維新の時に活躍した20代の若者、坂本竜馬や新撰組などの強い勇気を感じるのである。自分は素直にこの若さという点だけで、本当に彼らをクールと認めざるにはいられない。そして、そんな NOMIS たちと接していると、凄い勇気をもらうし、自分ももっと荒波に向かって行きたい、という冒険心が沸くのだ。

NOMISの看板ライダーであるシモンを始めて見たのは3シーズン前のウィスラー春大会のジブ・セッションだった。当時17歳の若者は、ケビン・サンサローンなどのビッグ・ネーム・ライダーの中にいながら、一番スムーズでカッコ良かったのだ。まだハジメもシモンと面識はなく、2人で「あいつの滑りヤバイなあ」なんて、話し合っていた。それと、不思議だったのは、そんな若者がその大会に遊びに来ていた大御所JPウォーカーとやたらに仲良く話していたのである。しかもハンサムだったし、何やらその時から只者ではない、という雰囲気がビシビシ漂っていた。

ジブの大会というと取材側はどうも有名人ばかりを撮影する傾向にあり、なかなか無名のライダーというのは目が行かないものであるが、シモンだけは当時から別格で、撮影せずにはいられなかった。そして案の定、大会でも優勝してしまった。

その後にハジメが「フサキさん、あのシモンってニクソン・ジブ・フェスタで優勝したライダーですよ」ということを教えてもらった。なんだい、その大会と聞いたら、
「えっ、知らないんですか。JPウォーカーとかがジャッジするジブ界最高のイベントでエディ・ウォールもこの大会で名を上げたんですよ。これだけのビデオも出ています」
とのことだった。


初めてシモンを見たウィスラーのジブ大会。
格好もオシャレだったし、スタイルも最高で本当にカッコ良いライダーが目の前に現れてビックリした。

その後、ハジメは急速にシモンと接近するようになった。まるで、初恋した女の子にアタックするように、猛烈に近づいて行ったと思うのだ。気づくと、ハジメはシモンといっしょに滑るような仲になっていたのだ。そこで、自分はSnowBoarder誌の岩田さんに電話して、シモンと撮影する許可をいただいた。まだまだシモンのことはよく知らなかったが、なんだか凄いライダーの雰囲気はプンプン漂っていたし、ひじょうに楽しみにしていた。

撮影当日、あいにくの天候は曇りだったが、アイテムがレールやボックスということもあり、強行することになった。通常、雪山での撮影は雪の質感が出ない曇りは敬遠されるのだが、アイテムは色があるので、OKを出したのである。

それで撮影してどうだったか?って。もう、オレもハジメ同様に一発でフォーリンラブしてしまった。自分にとってシモンとの撮影は3つの衝撃だった。

1つ目。ともかく完璧。このような擦り系アイテムの撮影で、これほどフイルムを無駄にしないライダーは、シモンが初だった。しかもハイクアップの速さには本当に驚いた。お陰でどんどん仕事が進んだ。

2つ目。やっていることが凄い。難しい技を簡単そうに決めてしまう。擦り系以外でもヒップでバターで900を決めたのだ。もちろん、そんな難しい技も簡単そうにやっていた。自分はカメラでハジメはビデオを持っていたが、同じ技を2回きちんと決めるので、あたかも2カメのような編集ができた。ちなみに、この模様は浪人2に出ている。

3つ目。スーパー・ナイスガイ! 17歳という若者ながら礼儀を知っていて、相手をきちんとリスペクトし、会話をしていてもその温かい人柄が伝わった。そして、この年、自分はインタビュー記事も製作し、どんどんシモンと仲良くなって行った。また、その話の中から当時、この若者が2つの大きな大会しか出たことがなくて、そのいずれの大会でも優勝していた、こともわかった。普通、大会と言ったら小さいところからスタートし、まして優勝なんてできないものなのに、なんて若者だ!と思った。
ちなみにシモンが最初に出た大会ニクソン・ジブ・フェスタは、シモンのボードSTEPCHILDをスポンサードしているショーン・ジョンソンが推薦した経緯で出場ができたのだ。

その翌年、シモンはラスベガスの大きな大会で優勝し、そして昨年は日本のスロープスタイルで初来日でベスト・オブ・ジバー賞を獲得。さらにはメジャービデオのパートは獲得し、各メーカーも一押しで売りだ。まさにスノーボード界で最も輝くライダーになった。
進化を止めない若者は、これからも輝かしい実績を残すに違いない。

 

チームの鍵を握る男マーク・ソラーズ

 

NOMISライダーというのは、どういうライダーか。
これまでのdmkが発信する情報、またはビデオVitamin JIBでも彼らのことを単純にカッコいいと認識する人は多いだろう。だけど、そのカッコいいという理由には、どんな要素が入っているのだろうか。自分がこれまでに見たところ、以下のようなキーワードが浮かぶ。

ファッション、若い、練習の虫、スタイリッシュ、完璧主義者、知られていない。

彼らのファッションは人と違うし、新しい、そしてカッコいい。
彼らは若い。
彼らはともかくよく滑る。誰もが一度は経験するスノーボードへのフォーリン・ラブ。その思いをずっと継続しながら、楽しそうに滑る。結果、練習の虫となっている。
スタイリッシュ。なぜなら、その動きに無駄な動きがないから。すべてのスポーツに言えるが、1つの動きを体現するためには、その必要な動きを行うと美しく見える。まさに彼らの姿はスタイリッシュで美しく見えるのだ。
1つの技に対して、どれだけ完璧主義者か。それが現在のNOMISライダーのランクを決めているように思える。多くのプロ・ライダーたちがメイクと思える境地も、シモンやマークは「まだメイクしていない」と思う。本当に完璧主義者で英語では、ピッキー(選び屋さん)なんて呼ばれる。
そして、彼らNOMISのライダーは知られていない者が多い。

以上の要素を一番集約されたライダー、その最も象徴するライダーこそ、マーク・ソラーズなのだ。

個人的にはマークは、どんなライダーよりも幅広いテクニックを身に付けていると思っている。擦りもハンパなくうまく、スイッチもレギュラーも同じスタンスようにこなす。そしてオーリーが本当にカッコいい。シモンの機械的に完璧にこなすオーリーも魅力だが、マークのはより躍動感が伝わるオーリーだ。スリースタイル・テクニックの最も基本でシンプルなテクニックだが、マークはそんな些細な技まで魅了させる力がある。自分も何度もマークのオーリーをスロー再送で見たものだ。

NOMISライダーたちの完璧な滑りを見た時、スノーボーダーの多くは今まで自分がやっていたものが何だったのか?という気持ちになる。今までやっていたオーリーは、オーリーではない。今までやっていたフロントサイド180は、180でなかった。もっと完成度を上げよう。スタイリッシュに決めよう。彼らを見ていると、そういうモチベーションを上げさせてくれる。そして、そのことをもっとも自分に教えてくれたライダーこそ、マーク・ソラーズなのだ。

ちなみにマークはカナダでもまだ有名なライダーでなく、今日も秋の雨模様の中、コンストラクション・ワーク(道路工事)を行っていることだろう。

 

 

新しいNOMIS時代を切り開くラウリ・ヘイスカリ

シモンはラウリに惚れたかな。最近、シモンと話していると、そう思う。
シモンの好きなライダーと言えば、JPウォーカー、ジェレミー・ジョーンズ。シモン兄弟たちがスノーボードを始めた時、何度も見たというマック・ダウのDECADEの影響が強いのだろう。彼らは永遠のヒーローという感じだ。

ただ、シモンのJPウォーカー、ジェレミー・ジョーンズ思いは、ライディングから刺激を受けるという部分では、かなりの部分で卒業したのではないか、と思う。彼らからスノーボーダーとしての生き方などを学ぶことはあるだろうが、彼らのライディングを参考にする、というようなことはなくなったのではないか、と思うのだ。

だけど、シモンは最近、ラウリのことはとても気になっているようで、「ラウリはうまい」とよく言うのだ。実際にdefective filmのDERELICTICAを拝見するラウリは、やはりうまい。飛び、擦り、さらにはパフォーマンスまで含めて超プロフェッショナルだ。DERELICTICAの中では、間違いなくナンバー1パートで、きっと今年リリースされるビデオのパートの中でもトップ3にはランクインされるに違いない。それほど、ラウリはうまいのだ。

NOMISのライダーというと、3年前シモンやマットがウィスラーに来てからの仲良し組、もしくはフレイザーのように幼馴染という仲間もいるが、ラウリに関しては別で、そのコネクションはdefective filmつながりである。今年、NOMISがグローバルにビジネスを展開するにあたり、プロとして迎えられたライダーなのだ。だから、ラウリ・ヘイスカリという存在は、NOMISがこれからますます世界に認知されるためにやって来た新時代の切り札ライダー。今までシモン&マークという2枚看板だったのに、さらにラウリというカードも加わり、1+1+1は3ではなく、5、6にもそして10にもなるほどインパクトを与える可能性も持ったのである。

ちなみにラウリ同様にフィンランドからフレデリックもNOMISの新ライダーとして迎えられている。まだ13歳のジェドも含めて、これからのNOMISを躍進させる力となるに違いない。


ラウリが入ってNOMISはさらに強力なティームになった。上の写真は、NOMISの広告ページから。

そして

スノーボードの歴代チームと言うと、古くはLAMMER軍団、SANTACRUZ軍団などがあり、彼らはそれなりの時代を作って来た。そして、FORUMチームがさらにそのカッコ良さやインパクトを人々に与えた。そして今、これまでのパターンとは違ってデザイナーズ・ブランドのNOMISチームが現れた。彼はウィスラーを拠点に、これまでのチームになかった連帯感を見せ、いつも楽しそうに滑っている。これから個々のライダーが、有名になって行く中でこういったセッションは難しくなるだろうが、これからも彼らのカッコいい姿を見続けたい、と思う。そして、自分はこれからも彼らを追い続けて、写真やビデオ撮影を行い、彼らの成長して行く姿をたくさんの方に紹介していきたい。

 

フサキのソルトレイク・スノーバード ライディング紀行

意外に出不精の僕は、北米の山はウィスラー以外、ほとんど知りません。しかし、今回、NOMISのセールス・ミーティングでアメリカ・プロ・スノーボーダーの宝庫ソルトレイクに行くことができました。さすがライダーの宝庫というだけあって、別に約束もしていないのにアーロン・ビットナーに遭遇したり、またランチを食べている時、外を見ていたらマーク・フランク・モントーヤもいたり。その他、いろいろなライダーもいて。もちろん、シモンも来ていましたよ!
今回はそんなライダーたちと楽しく滑ったことや、日本から来た相棒ムラッチョの奮戦記、さらには今回目的であったNOMISのセールス・ミーティングのことなど、ご紹介しようと思います。
結構、みなさんの知らないスノーボード界のお話もあるかと思うので、ぜひ読んでみてくださいね!

プロローグ

ソルトレイクシティ(Salt Lake City)というのは、アメリカユタ州の州都。ロッキー山脈の西部に位置する州の北部に位置し、周辺には雪質の良いスキー場を多数有しています。2002年には冬季オリンピックを開催したことでも有名ですね。アーロン曰く「夏はあまりやすことがない」ということだけど、なんと周辺には11個ものスキー場があるとか。

今回、僕が行ったのはスノーバード(Snowbird)です。ガイドブックには空港から最も近いスキー場で車で30分と書いてあったけど、実際には40分以上50分近く掛かりました。ソルトレイクというと五輪開催場にもなったパークシティ(Park City)というイメージがあり、そこにショーン・ホワイトとかハンナ・テーターとか五輪金メダリストなどが、たむろしちゃっているのかな!?と勝手にセレブなリゾートも想像しちゃったりなんかするけど、スノーバードというのは何かちょっと田舎っぽいリゾートのような感じがしました。

というのも、ここのゲレンデにはリフトがあまりないようだし(注:確かなことはわからないけど、3、4本か?)、基本的に僕が行った時期には、長いゴンドラ一本のみで遊ぶような感じ。パークもあるらしいけど、この時期はありませんでした。

その長いゴンドラだけど、なんと100人乗りのデカ物! 所要時間は10分程度。朝一番は結構、空いているけど、午前10時ぐらいから人がどんどん来て、ゴンドラはギューギューの満員になってしまうのです。このギューギュー、以前、僕がよく利用していた総武線と同じほどの混み具合。つまりスノーボードを持って、平井からお茶の水までずっと満員電車に揺られているような感じです。

いざ初日!

初日。午前中は、みんなでスノーボード時間です。
今回のセールスミーティングは、NOMISを動かしているブランドベースという会社の社長のジョンさんという方のお招きで来ました。そのジョンさんいきなりリスト券を渡す時、哲学めいたことをコメントしました。
「思い出は人生で最も大切なもの。滑って来なさい!」
ジョンさんの持つ独特な迫力に僕が押されるように「はい。チケットありがとう」と言いました。

ところでこのジョンさん、韓国のディストリビューター(代理店)のショーン曰く「ビジネスの天才」だとか。確かにジョンさんは、様々なブランドにお金を出資し、コントロールして、ブランドを成長させているようです。最近ではテックナインにマーク・フランク・モントーヤを入れて、さらに新ウェアー・ブランドも立ち上げる動きをするなどしています。その他、NOMISはもちろんフットウェアーや水着など、様々なブランドを動かし、ブランドの価値を上げることを生業としているようです。会った印象は、かなりやり手、という感じでした。

最初に山を案内してくれたテックナインのマーク。

話を戻して、初日のライディングの話を。
僕は、ここスノーバードで毎日シモンといっしょに滑り、撮影することを楽しみにしていました。しかし、この日の朝、シモンが見つかりません。だけど、各国のNOMIS代理店の方などいたし、またテックナインのライダーのマーク(Mark Edlund)というのがいたので、彼の案内で滑ることになりました。

なんかみんなテンション高かったので、一発目から凄いとか行きそうな予感していたのですが、やっぱり行っちゃいました(笑)。迂回コースから反れて、いきなりバックカントリーっぽいところに行ったのです。僕は、相棒のムラッチョがいたので、心配でした。ムラッチョは、10月に綿谷くんの室内キャンプで行ったぐらいで、実質初滑りだったし。しかも、日本から来たムラッチョは、昨夜サンフラシスコ径由の便が遅れるハプニングもあり、10時間以上もの長旅でソルトレイク入に入り、だったのです。ベスト・コンディションとは程遠い状況です。

グルーミング(圧雪)されていないコースは、この時期、岩も多いし危なさそうです。僕は、山の地形を見て、彼らがこれから滑って来そうなところを判断し、先回りするようなコースを選択しました。残念ながら、みんなを見失ったけど、案の定、安全なコースを取った僕たちの方が滑り降りて来るのが早かった。最初に乗ったゴンドラステーションのところで待っていたら、次々にみんなが降りて来ます。一部、雪ダルマになっている人もいました(笑)。ヨーロッパなど世界各国からやって来たディスリビューターたちは、いきなり朝一本目から試練だったに違いありません。「ボードのベースがやられた」という人もいて、やはり過酷な一本であったことが想像できます。だけど、なんだかみんな楽しそうな笑顔。

シモンもいないし、2本目も僕とムラッチョは自分たちのペースで行くことに決めました。山頂で記念撮影もして。ところが、どうも最初、みんなが行ったパウダー・コースが気になります。岩とか出ていそうな感じもあるけど、行ってみたい。だけど、ムラッチョ大丈夫か、心配。ところが、そのムラッチョがとても行きたそうな目をしています。ちょっと不安もあったけど、僕たちは勇気を出してトラバースして、そのコースへのアクセス開始しました。すると、ビックリ! パウダー・コースがあったのです。確かに一部、岩とかありそうだけど、かなりおいしい感じ。道理で、みんな充実した笑顔のわけだ。

僕とムラッチョはこのおいしいパウダーをいただきました。ムラッチョは、初滑りでいきなりビッグマウンテンのパウダーで、かなり夢心地のよう。

ところでこのスノーバード、雪が軽いです! ソルトレイクというところは、ウィスラーよりもずっと南に位置するけど、高度も高いようで雪が軽いのです。NOMISデザイナーのジョーダンが「標高が高いので、ちょっと息苦しい」とも言ってました。普段、ウィスラーを滑っている人が言うのだから、確かに空気が薄いのかもしれません。僕はまったく気づかなかったですが。

かなり気持ち良さそうにパウダーを攻め始めたムラッチョだけど・・・ 嗚呼、一番のシャッター・ポイントで撃沈してくれました。さすがに普段dmkクラブでお笑いのツボを鍛えているだけのことはあります。

アーロン・ビットナー

2本滑った後、ゴンドラ乗り場のところに、あきらかにプロ・ライダーのオーダーを出している奴を発見しました! 「あっ、アーロンっぽい!?」
この夏、キャンプ・オブ・チャンピオンで見たから、間違いありません。あの時は、DC軍団に囲まれて声を掛けれなかったけど、今回はチャンス!
僕は、「やあ、アーロン!」と、こちらのアメリカ人風に気軽に声を掛けて、話し始めました。

なんとアーロン・ビットナーに山を安心してもらうことに!

「僕の友達のハジメってのが、アーロンのこと凄い尊敬しているんだよ。アーロンは世界で一番50-50がうまいって」
アーロン、とても嬉しそうです。きっと、かなり安定したスタイルを出すために練習して来たのでしょう。このシンプルな技に、相当、磨きをかけて来たようです。これまでに練習して来たことなど、話し始めました。

そして、気を良くしたアーロンは「僕が案内してあげるよ」という感じで、その場にいた友達を無視するかのように、僕とムラッチョといっしょにゴンドラに乗りました。その時、アーロンは先週、マックダグで撮影したことを話を始めました。なんとその場で自分で撮影したデジカメの映像も見せてくれたのです。

「うわあ、この車からの追いかけ、カッコいい!誰?アーロンかい?」
「違うよ、だって僕が撮影したんだもん。これはジェレミーだよ」
「へえ、凄え~」

その映像を見てかなりビックリしていたムラッチョ。しかし、ムラッチョはあまりプロ・ライダーの名前を知らないので、ジェレミーがどんなライダーなのか、わかっていなかったと思います(笑)。

「JPもいっしょだったよ。彼はステップに乗っていたよ」
「ワーオ、そうなんだ!」

アーロンは、来季ディケード10周年となるダブル・ディケードの話をしてくれたのです!

ところで、アーロンがこの自分のデジカメを見せてくれていた時、ボードはまったく知らない人の背中に立てかけてありました。ゴンドラの中では、混んでいるのでこのような技はあたり前のようです。

ジバーのイメージが強いアーロンだけど、やっぱポコジャンもうまかった!

さあ、いよいよアーロンと滑ることになりました。
相棒のムラッチョが付いて来れるのか、心配です。アーロンに「あまり難しいコース行くとヨシ(注:ムラッチョの本名)が付いて来れないよ」
と言うと、「心配しないで」とやさしいアーロン。

アーロンは迂回コースを流し、時より迂回から外れるようにジャンプして遊んでいました。完全にここのローカルということがわかります。細かいヒッツ・ポイントも知っています。さすが世界で一番50-50がうまいと呼ばれる男、超安定しています。しかし、結構、細かいところで攻めて転がっています。シモンや忠くんもそうだけど、よく攻めて転びます。うまいライダーというのは、常に適度に攻めて転がっているものなんですね。

アーロンがあまりにもカッコいいので、滑りの写真を撮らせてもらうことになりました。
アーロンは時よりポイントで待ってくれたりして、撮影に協力してくれました。マックダグで撮影しているアーロンにとって、かなりほんわかモードの撮影だったに違いないでしょうが、僕の方は「こんなうまい話はない!」ってわけで、結構必死でした。何よりほとんど滑りながら、撮ったものだから大変だったのです。
きっと今、アーロンのこのような普段着のライディングを撮影する者など、世界中で僕しかいないでしょう。だって、撮影しているのは、ゲレンデのポコジャンなんだから(笑)。だけどお陰で、いつもアーロンがやっている自然なジャンプの写真を収めることができました。

お昼までいっしょに滑り、僕はお礼に「飯をおごるよ」と言っていました。もちろん支払いはムラッチョ持ちですが(笑)。

この時、アーロンは、ここスノーバードで4年間ピザ屋やオークリー店で働いていたことなど話してくれました。また、かなり練習している、ということも語っていました。すべてのトップ・ライダーが、ハードな練習によりそこまで到達できた、ということは理解しているけど、こうして聞くと改めて「そうなんだ」と、関心してしまいます。アーロンは、3人兄弟で一番上の兄貴で。弟の面倒を見たり、結構、苦労人のような感じもしました。テックナインから出てしまったことは、やや引け目そうな印象を受けました。冗談で「彼らはオレを殺すよ」とも言っていたし。
だけど、プロである以上、喰っていかなくてはならない。もしかしたら、気のやさしいアーロンは、弟たちの学費まで稼いでいたりして!? 考え過ぎか。でも、サポート面が強力なところに移ることも理解できます。

ランチをほぼ食べ終わった後、僕は窓の外にマーク・フランク・モントーヤのような人を発見しました。「うわ、あれMFMみたい」と言うと、アーロンは一目散にレストランを出て走っていきました。

「うわあ、やっぱりそうだよ。アーロンとモントーヤ話している。なんかモントーヤ親分っぽいなあ」
「マーク・フランクって、かなり有名なんじゃない」
「あたり前だよ!そんなことも知らないのかい、ムラッチョは。超ビッグなライダーだよ」
「スッゲえなあ」

ワーオ、MFMまで来ちゃったよ。

と、まあ、僕たちの会話は、ほぼ素人レベルです(笑)。
すると、二人はなんとレストランに近づいて来ました。
「うわっ、ヤベ、来ちゃうよ。」「マジで」

レストランに入ると、アーロンはモントーヤに、僕とムラッチョを紹介してくれました。まるで「僕たちこのおじさんに飯をおごってもらったんだよ」と言う感じです。そして、モントーヤは「ウチの若いもんの面倒を見てくれて、ありがとうよ」という感じでした。ワーオ、まさにロック・スターのようなオーラが出ていました。

ところで、海外で握手をする時、スノーボーダーの間では、パーで軽くタッチして、その後、グーをぶつけ合ったりする挨拶あるのだけど、知っていますか?
北米の若造たちは、ほとんどこの方式で、最近はさらに複雑した、挨拶タッチがあります。僕は、この手の挨拶が、未だに苦手で・・・。もちろんムラッチョなど、そんなご挨拶方法があるなんで知るハズもなく、モントーヤが自然にパー・タッチでグーしようとしているのに、かなり無理矢理な感じで握手するのは笑えましたね。おお、まさに日本のおじさんって感じのオーラを放ってました(笑)。

モントーヤは、レストランで、アーロンの残してあったポテトフライをガツガツ食べ始めました。
そして、僕はモントーヤに、テックナインの契約のことなど聞きました。
いろいろ話してくれたけど、ここでは明かせられないこともあります。
ナイトロから出ることは聞いていたし、テックナインと契約していたことも聞いていたけど、このように直接取材ができて光栄でした。これも、まさにやさしいアーロン気配りがあったからですね。この日は、本当にアーロンに素敵な思い出をもらったような一日でした。今度はぜひしっかりと雑誌のハウツーなどで、アーロンと撮影したいなあ、と思いました。

ps
ところでこの夜、僕たちはパーティでもモントーヤに会いました。その時、モントーヤは、女の子に囲まれていて。そこで一人のイケイケ姉ちゃんからキス攻撃を受けていました。モントーヤはここでもロックスターでした(笑)。


2日目はシモンと
 

今日こそシモンといっしょに滑りたい!という気持ちです。ここでシモンと撮影したい!という気持ちが強かったし。シモンには朝食の時に、「いっしょに滑るぞ」ということを伝えました。しかし、このミーティングに来ている関係者60名ほど、ほとんどの人がシモンといっしょに滑りたいに違いありません。だから、どれほどいっしょに滑ることができるのか、また撮影できるのか、疑問ですが。
 
実際にいっしょに滑った人数は10名ほど。シモンの双子の兄アンドレもいっしょです。
 
シモンは、アーロンと違ってローカルでないので、もう1つ山の攻め方がわからないようです。しかし、僕たちクルーは一番うまいシモンに付いていかないわけにはいきません。
僕たちは、かなり凸凹の激しいコースに連れて行かれて一苦労させられました。カメラを持って撮影しながら滑っている僕には、さらにもう一苦労加わります。しかし、そこはスノーボード歴22年のライダー。こんなことではへこたれません。シモンをピッタリとマークして滑ります。
 
ここの山は、急に日向から日陰になるので、露出などの設定が目まぐるしく変わります。ホワイトバランスまでも滑りながら合わせるでの大変でした。しかし、結局、苦労した割りには素材が残っていなくて。まあ、しっかりと撮影する、と決めた撮影でないとうまくいかないのだけど・・・、残念。編集ディレクターのアキにまた、叱られそうです。
 
相棒のムラッチョが、この日、どこまでシモンに付いて来て滑っていたか忘れちゃったけど、とりあえずジャパン代表ムラッチョが、シモンといっしょに初めて滑る記念日だったのかな、と思います。
 
 
NOMISセールスミーティング
 
さあ、いよいよ僕たちのメインイベントがやって来ました。セールスミーティングです。
このためにここにやって来た!と言ってもよいでしょう。かなり気合です。僕とムラッチョはど真ん中の最前列に陣取りました。しかも、僕はビデオカメラも持っています。60分テープも5本あり、これなら充分に全ミーティングが撮影できるでしょう。
 

初期のフーディを見せながらNOMISの歴史を語ったマット代表。

壇上にNOMIS代表取締役のマットが上がり、まずはNOMISの歴史から話し始めました。

現在もいっしょに仕事しているデザイナーたちが、ウィスラーの同じスーパーマーケットで働いていたことなど語り始めました。
そして、本気でこれを仕事にするきっかけになったのは、ここに座っているフサキの友人ハジメの一言だった、ということを語り始めました。
 
最初、友達にTシャツなどを販売していたNOMISが、きちんと会社としてやっていこう、と思ったのは、ここにいるフサキの友達であるハジメの一言だったんだ。ハジメが、日本にもNOMISを紹介したい、と言ってくれた。販売する数も増えたら、スタッフにも給料を払うことができ、会社としてこの仕事ができると思ったんだ」
と、語り始めたのです。
 
さらに、マットは「フサキは、まだこんなモノしか作れなかったNOMISの初期時代、シモンと撮影して雑誌で8ページも紹介してくれたんだ」ということもスピーチしました。

60人以上も世界のNOMIS関係者が集まるセールスミーティングでハジメのこと、そして自分の名前を出してくれたことは超感動でした。

この時、相棒のムラッチョが何を考えていたか、わかりません。英語がよくわからないムラッチョは「なんで、フサキやハジメの名前が出たんだ」と疑問符だったでしょう。
しかし、僕はマットの律儀な性格に感動してました。マットの誠実そうなスピーチは、人々を魅了する力が強く、心を打つものがあったのです。ちょっと涙もこぼれそうなほど、感動していたのです。

ちなみにこの後のミーティングでも、何人かの方から声を掛けられました。フサキはNOMISをビジネス化にしたきっかけの人物、またNOMIS初期時代からの重要な人物だと思われたのです。最初にこのきっかけを与えたのはハジメなんだけど、何やら他の国のディストリビューターは僕がその人物だと勘違いしたようです。なんだかハジメの手柄まで僕が取ってしまったようです。
また、最初にNOMISを日本に入れたのもRSSさんという会社なんだけど、それも僕の会社でやったような錯覚を与えてしまったようです。
しかし、この尊敬の眼差しのようなものを受け続けていたら、あまりにも気持ち良くて、そのまま思われるようにしておいちゃいました。しかも自分の会社でもなく、ムラッチョの会社なのだけど(笑)。
 

ところでこのNOMISセールスミーティングは、午後1時から始まったのだけど、何時に終わったと思いますか?
なんと、夕食の時間にも終わらなくて、一度、夕食を取りに行き、なんと夜11時まで掛かったのです。本当はアウトウェアーもあったのだけど、それは明日に回されました。

NOMISの来年度の秋冬モデルは、それぐらいラインナップが増えたのです。早くこの斬新でポップなNOMISのデザインを、みなさんにお見せできたらなあ、と思います。来年NOMISは、さらに新化を遂げるので楽しみに待っていてください!

シモンとの思い出ラン
 
3日目、昨日に引き続きシモンといっしょに滑りました。
この日は、韓国のショーンというのもいっしょでした。ショーンは今年から韓国でNOMISのディストリビューターを行います。このセールスミーティングの期間中は、何かと僕たちに絡んできました。一人で来たので寂しかったのでしょう。夕食や飲み、さらにはジャクジまでともかくいっしょに行こう、と声を掛けて来ました。お陰で僕たちは、とても仲良くなりました。あまりにも仲良くしていたので、一部の国のディストリビューターの方は、僕とショーンがいっしょにビジネスをしているように見えたかもしれません。
 
さて、そのショーンもいっしょに滑るということになり、僕は「任せておいて。案内してあげるから」と言っていました。ところが、3日目もシモンが過激なラインで攻めたので、ショーンは追いつくことができません。最初の一本はムラッチョといっしょに付いて来たようですが。
 

思い出のシモンとのパウダー・セッション!

僕はこの日、カメラのスチール撮影です。ビデオのカメラよりも写真のカメラの方が軽装ってことで、かなり動きも良くなりました。2本目は、裏山の方に行くことになり、「あれ、ショーンとムラッチョ、どこに行ったのだろう?」と思いつつも、シモンたちといっしょに滑りました。デレック・デニソンも合流し、最高のセッションです。シモンも僕のことを乗らせてくれます。パウダーを攻める僕に対して、「イエー、フサキー!」と大きな声を掛けてくれるのです。このシモンの声を聞くと、かなりノリノリになりますね。いつも以上に攻めてしまいます。お陰でパウダーに隠れていた岩をガッツリと踏んでしまったけど(笑)。楽しかったなあ。

 
また、この日も昨日と似たようなメンバーと滑り、長兄マットもいっしょだったのですが、一本だけ僕とシモンが二人で違うコースに行くことになりました。シモンは、誰も行っていないところを攻めるのが好きなのです。僕は常にシモンに付いて行った結果、一本だけだけどシモンといっしょにパウダーを攻めました。
 
シモンと会ったのは、かれこれもう5年も前でしょうか。しかし、こうして二人でいっしょに滑るというのは、意外になかったです。いつも僕はシモンの撮影で上がっていたし、そういうモードだったし。しかし、この日はカメラを持っているとはいえ、いっしょに滑った、という感じでした。今、振り返ればとても貴重な時間だったと思います。シモンが僕に対して、どう思っているのかわからないけど、僕はシモンを尊敬しているし、大好きだし、こうしてパウダーセッションをできたことをとても嬉しく思います。リフト乗り場で近くて、バイタミンジブで学んだグラトリもシモンの前で披露できたし、何だか良い思い出になりました。
 
山を降りると、ちょっとぶんむくれているショーンがいました。「フサキ、面倒見てくれるって言ったじゃないか」と。
「ゴメン、ゴメン。シモンを追いかけて行ったら、裏山に行って・・・。」
「明日こそいっしょに滑ろうよ」
「わかったよ」
 
 

NOMISという合言葉で国際的なミーティングができました!

この日は、NOMISのアウトウェアーのミーティングがありました。

ウェアーはNOMISらしい、かなり斬新なデザインです。まだアイテム数は少ないですが、確実に人気が出そうな気配です。
 
夜、夕食、飲んで、そしてショーン、ムラッチョといっしょに屋上のスパ(ジャクジ)に行きました。
外のプールが気持ちよかったなあ。
しかし、あまりにも気持ち良過ぎて、ややボケボケとなっていた僕は、誤って女性の更衣室に入っていました。入った時には気付かなくて、一人でしばらく更衣室の中にあるサウナにずっと入っていたのです。しかし、サウナから出ると、なぜか女の人がいて、唖然! まさに「ワー!」って感じで、驚いて「ゴメン!」と言ってました。だだけど、その女性は、やさしくて「夜遅いし、私以外には二人しかいないよ。安心して」と言ってくれました。とりあえずサウナから出た時、フルチンでなくタオルを巻いていただけでも良かったあ。
 
と、まあちょっしたハプニングがあった日になりました。
ファイナル
朝早くから。というか、昨晩からずっと相棒ムラッチョがガチャガチャと忙しく動いていました。まだ朝4時です。しかし、ムラッチョはこの日の朝、日本に帰るのです。かなり眠たかったけど、頑張って起きて見送りしました。
そして、その後、また部屋に戻って一眠り。
 
この日はショーンといっしょにスノーボードをする約束だったけど、ショーンが突然、家庭の事情でロスに行くことになりキャンセル。ということで、NOMISのデザイナーのジョーダンとジャクジしたり、また部屋でたまりにたまったメールと格闘したり。
夜は、パーティに行き、楽しんで。
いつもいっしょにいたムラッチョがいなくて、またこの期間で仲良くなったショーンもいなくなって、何だか寂しい感じもしたけど、逆に新しい仲間ができたり。それはそれで良い経験になりました。
 
これからNOMISのアウトウェアーは、マニューバーラインさんが行うことになります。それで、日本から鈴木さんとティムも来ました。マニューバーの鈴木さんともこの期間、短かったけどいっしょに飲んだり、話すことができて、良かったです。
 
また、世界のNOMISのチームと毎日いっしょに食事をとり、またいっしょに滑り、本当に良い経験をさせてもらいました。
NOMIS本社の人たちとも改めて、いろいろなことを話すことができたし、とても良いセールスミーティングだったと思います。
 
世界のディストビューターと話して、一ブランドだけをやっているのはかなり珍しいということも改めてわかったけど、これからもNOMISの仕事をできることを誇りに持ち、多くの人にNOMISの素晴らしさを伝えたいと思う、旅でした。
楽しい思い出ありがとう、スノーバード。また、来年も帰って来るぞー!

 


平岡暁史のパーク・ライディング遊び術

 ニュース・コーナーの初の試みの連載ハウツー。お陰さまで大好評だった。
日本を代表するライダー、平岡暁史プロのお手本がガンガン見れる、というところも評判が高い要因だったようだ。
これまで週間でバラバラで見せていたので、ここで改めてしっかりと見たい!という方も少なくないだろう。
そこで、今回の特集では、アイテムのチェック方法や攻め方なども含めて、改めてまとめてお届けしよう!

ハウツー・コンテンツ内容

A 擦り系アイテムの特徴

ジブ系
1 フロント・リップ270アウト
2 ノーズプレスのダブルノーズグラブ
3 50-50 180アウト

B キッカーの特徴

キッカー
4 フロントサイド540
5 キャブ540
6 スイッチバックサイド540

C ヒップの特徴

ヒップ
7 トゥイーク
8 バックサイド360
9 バックフリップ

 

Sponsors:
Ride snowboard, A SEVEN, Oakley, DAKINE, R≒0 Wax, Wingcraft,
oran’ge, Sandwich,雪番長
平岡暁史もワンポイント・ハウツーで登場!
Peak#04は全国ショップ及び、
DMK ORIGINAL STOREで今月22日に発売開始

A 擦り系アイテムの特徴

ボックスやレールといった擦り系アイテムの特徴は、雪と違って固いということ。長年スノーボードをやっているベテラン・ライダーさんでも、ボックスに入ったとたんに戸惑うのは、この点にある。
しかし、アイテムに入るまでは、オーリーインしたり、180インしたりなど、雪上でのフリースタイル・テクニックが有効に使われるので、やはりスノーボードがうまい人は、ジブ系でも実力を発揮できるものだ。
ほとんどの擦り技は、事前に雪上で同じような練習ができるので、まずは雪上であたかもボックスやレールがあるかのごとく練習してみるといい。
例えば、ボードスライドやりたいと思ったら、それは雪上でもできるのだから、例えば雪上にボックスを描いて(注:枝やポールなどを使って描いてみるのもいいだろう)練習するといいのだ。
またレールはボックス以上にシビアなポジションに乗らないと殺られる(=転ばされる)ので、まずはボックスで練習した後にレールに行くといい。
今回、使用したレールのアイテムは、キンク・レールと言って、この曲がったところをうまく乗りこなすのがポイントとなる。具体的には、ボード面をレール角度に絶えずフラットに合わすように、足首やヒザをうまく使って調整する必要がある。

1 フロント・リップ270アウト

フロント・リップは、擦りアイテムを正面からまたぎ越してバックサイド・ボードスライドのように擦る技。バックサイドで擦っているので、一見すると「バックサイドなになに」という技になると思われるが、そうではない。フロント側から入っているので、フロント・リップスライドという技名になる。

         

このトリックの基本は、見ての通りバックサイドで擦っているので、バックサイドボードスライドがうまくできないとならない。初めてボードスライドする人の多くは、後ろに体重をかけてエッジを抜かしがちだ。ハイバックに寄りかからないように、しっかりとフラットで乗るようにすること。

 

POINT !

乗ったところでボードはフラットに

またアイテムに乗る時にトゥで蹴るが、その時に前のめりになりやすいので気をつけよう。

フロント側からジャンプして乗ったら、アイテムのエンド(終点)を見ながら後ろ足に体重を乗せていく。ここでしっかりと後ろ足にプレスができることで、スタイルの良し悪しが決まるだろう。

乗ったら270アウトのため、上半身を後方へ回す先行動作を行うこと。

そしてエンドのところでボードのテールをポップさせて、バックサイド側に270回して着地。

アイテムをまたぎ越して乗るジャンプ技術、アイテムを擦る技術、そしてバックサイド側に270回して着地する技術が必要で、それぞれのテクニックをしっかりと習得することで、このフロント・リップ270アウトができるようになる。
ジブ技は、乗るところが最も難しいので、普段のフリーライディングもポコジャンにより、ジャンプして乗るという感覚を習得しておこう。

 

 

 

2 ノーズプレスのダブルノーズグラブ

細めのボックスでノーズプレスを決める姿。なんとなく、ユニークなトリックなトリックだ。技はかなり本気感が漂う凄いものから、このようにお遊び的ともいえるトリックもある。しかし、お遊び的とは言え、しっかりと基本したテクニックがないとできないものだ。

 

 

 

 

POINT !

ボードは真っ直ぐに擦らすには、目線をしっかりとエンド(終点)へ持っていくこと

アイテムに乗ったら、前ヒザを曲げて、後ろ足を同時に伸ばしてプレス。
この形をしっかりと決めないとノーズをダブルグラブする時に、バランスを崩すので気をつけよう。

グラブを決めたら、さらにプレスをしっかりと維持できるように、後ろ足を伸ばし続ける。
同時にボードの進む軌道をまっすぐに保つために、目線をアイテムのエンドに送り続けよう。

いきなりボックスなどのアイテムでトライせずに、雪上でやっておくととても良い練習になる。

 

 

3 50-50 180 out

アップからフラットのレールの斜度変化を利用して、フロントサイド180を鮮やかに決める平岡プロ。エアーに導くための板の抜き方が絶妙である。まさに長年培ったテクニックで、ひじょうに参考になるエアーの飛び出し。
レールを擦るだけでなくジャンプのアイテムに利用することもできる、という良い例だろう。
 
まずはこのアップフラットのレールになれるため、50-50で抜いてみよう。

POINT !

ボードを体に引き寄せ、完全にコントロールできているfs180。こんな180ができているといいね!
次にスピードを利用して平岡のようにアップフラットの斜度変化を利用してジャンプしよう。いきなり180やると、危ないので、まずはストレートにジャンプだ。

いよいよフロントサイド180にトライする時には、ボードをフラットのまま抜くようにすること。雪上でのスピンでは、フラットで抜かずにエッジをかけて抜くことがほとんどだが、レールの場合だとエッジをかけたとたんにバランスを崩すことを忘れずに。だから、日頃からフラットで抜くことも習得することが大切。

右肩を入れて、左肩を引くことによって上半身を回し続けて、エアーしよう。

あとは目線を着地方向に送りつつ、下半身でボードを着地に合わすだけ。

日頃からフロントサイド180をやる時に、この平岡の上半身の使い方をよくイメージして練習するといいだろう。

 

B キッカーの特徴
パークにあるキッカー(注:別名テーブルトップ)は、数多くの飛び系アイテムの中でも最も飛びやすい。
例えば、ハーフパイプは技術がないと、飛べないので、意外と大きなケガは少ない。
しかし、キッカーは、真っ直ぐ滑れることができる初心者でも飛べてしまうので、最もケガが多いアイテムだ。それだけに基本的な動作をしっかりと頭と身体に叩き込んでから挑みたいアイテムである。
また、アプローチするところから、ランディングは見えないのが常なので、必ず下見が必要だ。
もちろん今回ハウツーをやってくれた平岡プロも、必ず下見をしている。
実際、アマチュアの方が、猪根性で下見もせずに突っ込んだり、いきなりスピンしたり傾向があるので、気をつけてほしい。なぜなら、世界中で今日も下見をせずに飛んだおかげて、今シーズン棒に振ったスノーボーダーがいるからだ。
また、キッカーは、スピンを始めた時にバランスを崩しケガが多くなる傾向もあるので、充分にポコジャン(注:小さいジャンプや自然地形のジャンプ)で鍛えてから挑もう。
最も飛びやすいキッカーは、最もケガが多いアイテムでもあるので、充分に気をつけよう。 まるでジャンプする時のように滑ってきて、リップ直前で止まる。
このような下見は多くのプロがやっていること。
4 フロントサイド540

中型サイズのキッカーで、お手本のようなフロントサイド540テールグラブ。何度もシークエンス写真を確認してしまいたい完璧さ。この技を長年やり抜いたベテランの味を感じる。シーズン前のイメトレに最適なので、ぜひ参考にしよう。

 

 

 

アプローチでは、基本通りに低い姿勢を保つ。

 

POINT !

高さを出すため抜けギリギリまで先行動作は辛抱して、ここから目線、肩、手を回す方向に導いていこう。

肝心の抜けでは、上半身をリラックスさせつつ、目線、肩、手をフロントサイド・スピン方向に回し続けること。

空中に飛び出したら、慌てずにヒザを曲げてボードを自分の体に持っていき、テールをグラブする。
残り180ほどのところでグラブを離し、着地に備える。

着地の後にボードが惰性で回ってしまうようなケースでは、着地の時にカカトに乗ること。こうすることでドライブを防ぎ、着地をピタッと決めれる。

もちろん基本は180にあるので、まずは180を完璧にして、次に360、そして540に進むようにしよう。

 

 

 

 

 

 

5 キャブ540

ノーマルのスタンスで行ったトリックを、そのままスイッチで行う。
そして、あたかもそのスイッチ技をスイッチでやっているように見せないほど、完璧にこなす。
この遊び心が、さらにスノーボードの楽しさを深めるし、平岡の実力の真骨頂だろう。
先週行ったノーマルのフロント5も参考にしつつ、今回はスイッチならではのコツを紹介しよう。

 

 

 

 

POINT !

スイッチのジャンプはアプローチで戸惑いがち。日頃からのスイッチ・ランで「慣れ」が肝心。

 

慣れていないスイッチでは、スピード感覚が速く感じがちだ。自分的にはスピードが足りていると思っても、足りなかったりするものである。
またスイッチではスピード調整も慣れていないから失敗することもある。その点、注意が必要だ。

日頃からスイッチでガンガンすべって、慣れておくことが肝心。

 

 

6 スイッチバックサイド540

スイッチでのバックサイド540は、最初の180度はスイッチでのバックサイド180だが、残りの360度はフロントサイド360となっている。
ということは、スイッチバックサイド180と、フロントサイド360をしっかりと習得しておけばできる技だ。

方程式
スイッチバックサイド180+フロントサイド360=スイッチバックサイド540

 

 

方程式を理解したら、あとは2つの基本動作を習得すべし。
とりわけスイッチでのバックサイド180が鍵となるので、日頃からグラトリという基本的なところから習得しよう。
そして、だんだんと小さいなキッカーから大きなキッカーにトライしていくといい。

 

C ヒップの特徴

ヒップとは、パイプとストレート・ジャンプの中間にするようなアイテムで、着地はフロントサイド側かバックサイド側になる。ここで平岡プロがジャンプしたアイテムは、アプローチはストレートジャンプのようにほぼ真っ直ぐに突っ込めて、着地はパイプのバックサイド側の壁のような斜度になっているというものだ。
多くのヒップ初心者は、上まで行かずに途中で降りてドロップするようなジャンプしてしまう。それだとランディングに落差があって、返って危ない。
怖いけど、ヒップのリップまでしっかりと滑ってみよう。すると、上る斜度のお陰でスピードがかなり低速するものだ。そうして最初は飛ばなくても、このヒップを上って下がり、滑ることで、このヒップに必要な体軸の移動を覚えるのだ。
体軸と言うと、難しいけど、ようはボードを常に斜面に向かって垂直に当てるように動くということ。
慣れていない人は、最初、プレッシャー感があるかもしれないが、パイプと同様に回数をこなすことで、どんどん恐怖感も和らぎ、身体の動かし方も理解してくるので、ぜひチャレンジしてみよう。

 

 

7 メソッド・エアー

多くのスノーボーダーが一度は虜になってしまうメソッド・エアーを気持ち良さそうに飛んでいる。あまりにもテンションが高かったのか、着地はややフラットの方まで行ってしまったけど、持ち前のガッツと足腰の強さでリカバリーした。

 

ヒップのアプローチではリップに駆け上がるところで、パイプのように強いGが掛かる。だからそのGにつぶされないように、ヒザ、足首をしっかりと曲げて固定させておくこと。

 

POINT !

アプローチでしっかりと踏んでいるから、そのGを利用して高く飛べるんだね!

リップできるだけ待って、まさにテールが抜けるというところでリップを蹴る。早く蹴り過ぎると、このヒップで本来出せる高さを出せないので「できるだけ待つ」という気持ちが大切だ。

空中で飛び出したら、慌てずにゆっくりと後ろの手をヒール側にグラブするメランコリー・グラブに。エアー高いから「ゆったり気分」が大切。そこからエビ反りのメソッドの形を作っていくこと。最初、この形にこだわりエアーを低くしてしまいがちなので、しっかりと抜いて慌てずに技を決めていく、ということを意識しよう。

ところで、このようなバックサイド側のヒップでは、ヒールエッジで着地しがちだ。だけど、ヒールで着地すると衝撃で飛ばされるので、むしろトゥに乗るぐらいの気持ちで着地しよう。結果、フラットに着地していればOKだ。

 

 

 

 

 

8 バックサイド360

ストレート・ジャンプだけでなく、このようなヒップでもクルっとスピンを決めれたらオシャレだよね。今回はそのスピン系の基本ともなるヒップでのバックサイド360。
ヒップはパイプと同じように、実質180回転ほどのトリックでも360という名称になるので、そこんとこヨロシク。

 

 

POINT !

まずはストレートのように抜いて、それからゆったりとスピンのアクションをするようにしよう。

アプローチでは、ストレートと同じように入る。

トリックの名前で360とあるが、実際には180を回す感覚だ。だから先行動作はほとんどいれないで、飛んでから体を縮めて目線を後方に送る。

空中へ飛び出したら、ボードをしっかりと引きつけ、同時に上半身をかぶせてメランコリー・グラブ。体をコンパクトにまとめることにより、スムーズなエアーを可能にする。

着地ではボードが惰性で回らないように、トゥ気味に着地すると良い。そうすると、ピタっと着地が決まるよ。

 

 

 

 

 

9 バックフリップ

ラストを飾るに相応しく華やかな技、バックフリップだ。こんなトリック決められたらゲレンデのヒーローだね。

それにしても平岡プロは、忠プロ(布施)といっしょに滑っていたので、テンション高まっていたのか飛び過ぎだ!またもやフラットまで行っている。
だけど、完全にこの技を制している安定感が漂うね。
 

 

POINT !

体を小さくしたこの体勢から、アゴを上げバックフリップの仕上げへ。

ビビらずスピードをしっかりと付けて、アプローチ。

 

抜けが早くならないように、リップのギリギリまで蹴るのを待つこと。
 
抜けたら後方へ体を持って行くようにする(2コマ目)。
 
空中では体を小さくしていこう。小さくすることで、スピンを安定させることができる。
 
グラブしてからアゴを上げ、バックフリップの仕上げの作業。
同時に着地を見ていき、ランディングに備えること。

もちろんいきなりバックフリップをやるのは、ご法度。ケガのリスクが高いので、日頃からトランポリン、またはプールなどを利用して、バックフリップの感覚をつかんでおこう。

 

 

 

おばばスノーボーダーのちゃれんじ記

dmkのメルマガで大好評のおばばスノーボーダー体験記。あまりにも評判がいいので、今までリリースした体験記に2つ体験記を加筆して、特集としてお届けすることになりました。 「えっ、まだ読んだことがないですか?」 これは、つまりあるおばさんスノーボーダーがスノーボードと出会い、ハマり、そして血と汗が滲み出るようなチャレンジを続けた実話物語。この体験記を読んだ人は、きっと大笑いの後、チャレンジ魂の炎を点火するに違いありません。


Part.1
おばばボーダー「はじめまして!」

すべてはこのメールから始まったのだった。唐突にメールがやって来て・・・

はじめまして、フサキさん。
私はちかやんといいます。46才と2ヶ月のおばばボーダーです。
ちゃれんじの東野圭吾に対抗し、いやいやのネーミングです。
(おばばじゃないわい!)
しかし東野圭吾はまだまだだな!私を知ったらびっくらこくぞ~。って、
この話はまたゆっくりと・・・。

私がスノーボードを始めたのは1999年、スキーもしたことのない私が主人と始め、ついには私の人生を支配するまでとなっちまいました。
去年の8月にはゲレンデに1分でも近いところをと、ここ岐阜県に引っ越しをしてしまい、お陰様で?私の仕事場への通勤時間は、峠越え三つの片道2時間、往復4時間となり、しっかりみんなの笑い者になっております。

フサキさんのことは主人から知りました。ボードを始めた頃から私にはナイショで、フサキさんのハウツーを参考にしていたらしく・・・。
後になって気付いたのだけれど、ゲレンデで私に講釈をたんたんとしゃべりやがるその内容は、まさにフサキさんのハウツーだったわけで・・・。
それでも知らずにしばらくは「何て主人はいろいろなことを知っているんだろう!」と感心してしまっていたわけで・・・。まあ、でもその時は納得できたんで許そう!

よくわからないですが、主人はフサキさんに何度もメールを送っていませんか?
去年?その前の年?だったか、フサキさんからお手紙とステッカーが何枚も入っている封書が届いていましたよ。dmkのステッカーも家に6枚ぐらいあります。なんで?
ちなみにフサキさんから頂いたステッカーは、私がいくら「くれ~!」と言っても無視されます。
主人はそれを大事に袋に入れて、秘密の箱にしまってある様子。
使わにゃあダメだっちゅうじゃん!ねえ?フサキさん。

それでもdmkのステッカーは一枚奪い取り、持っている板の一枚に張っているのですが、先シーズンその板で滑っていたら、突然知らない若い兄ちゃん達が近づいてきて、「おいおいナンパか~、お茶はダメだぞ、ゴーグル外して日焼け除けのバンダナ外しちまったら正体がばれちまうぜ!!」なんて、一人で一瞬のうちに小劇場の最後まで演じきっちゃったその瞬間、そのお兄ちゃんの一人が私の板を
のぞき込んで一言。
「dmkに入っているんすか~?」とこきやがった。
「はあああ~?」「dmk?」おいおい、君たち若者よ!私に近づいてきたのはこの青いステッカーのせいかい!しかもこのステッカー、スミは剥がれかけているし、第一そんなに遠くから何でこのステッカーめがけてすっ飛んでこれるんじゃい!
わたしゃーそっちの方が不思議だわ。 フサキさんていったい何もんでっか~?

Part.2
おばばボーダーの骨折事件簿

おばばボーダーから2通目の体験記メールはなんと、衝撃の骨折体験談・・・

フサキさんこんにちわ。
こちらはすっかり秋らしくなって、家の前の田んぼは昨日稲刈りをしていましたよ。
待ち遠しいシーズンも、もうすぐそこまで来ています。

主人は3連休だったので、スノーボードのビデオを観まくっていました。
そしてその合間に、夏の間はオフトレ用のマウンテンバイクの待機所として占領していた部屋を、スノーボード部屋に戻し、我が家は一気にスノーボードモードに切り替わりました。
早速主人は4枚の板のワックスがけです。この作業はシーズンが終わるまで、ほぼ毎週になります。
もちろんおばばボーダーも自分の板は、自分でホットワックスをかけかわいがってやります。
ジロー(会田二郎)さんや成田童夢くんの板もチューンナップしている某チューンナップショップ店主さんに、ワックスのかけ方を教えてもらい、滑る楽しさ以外の楽しさも覚えたんですよ。
奥が深そうでこれからが楽しみです。

今日はたくさんある私のスノーボード劇の中から、今年3月の骨折編をお届けします。
先シーズンはラッキーなことに、プロのスノーボーダーの方と何度も滑る機会があり、そのお陰で新しいことへもどんどんチャレンジすることができました。
そこで知り合った仲間たちと、今年3月おばばボーダーにまた新たなチャレンジが・・・。
それはツリーランです。

その日、「今日はパウダーだし、裏山でツリーランをしよう!」
ってことになっちゃって・・・。
私以外はみんなメチャうまい人たちで、私の他には男5人の計6人。
こうゆう時何かあると、真っ先におばばボーダーは置いていかれるんだよね、間違いなく。
なんて思いながら、連れて行かれた先を見てひっくり返ってしまいました。
「なんじゃ、こりゃ~!?」「ここ、ここを滑るんかい?」
ありえん。私にここを行け!ってか?
フサキ・ハウツーにツリーラン攻略法ってあったっけー?思い出せん!
おばばボーダーはさすがにビビった。
「恐い」って神経は小学6年の時に奥歯の神経といっしょに抜いたはずなのに・・・。
おかしいー!あのヤブ医者めー、まだ残っとるじゃんかぁ!だって、恐いもん!

「恐いよ~!!!」って私が叫どるのに、誰も聞いちゃあいない。
こんな時、いっしょに滑るのが私じゃなく若いお姉ちゃんだったら、
「どうしたの?大丈夫だよ、僕たちがいるから。」
なんちゃって、あいつらは言っているに違いない。
若者よ、そんなことじゃあカッコイイ大人にゃあなれんぞ!
そんなこと思っとたら・・・。おい、おい。
あれ?みんなもうバイン締めとる?
あれ?もう行っちゃう?
あれ?もしかして私だけ?
「お~~~い!」いくら叫んでも誰一人振り向きゃあしない。思った通りだ!

そしてちかやんは遂に決心した。
「よし、ここは一つ東野圭吾をギャフンと言わしたるかー!」って。
ほんと、毎度ながら決心するその理由が本人もワケわからん。

右へ左へ除けても枝はバシバシ顔に当たるわ、当たった枝が腹で折れるわで、もう大変。
その様子といったら滑るって言うよりも、私は木の間伐しとる?って思えるぐらい。
こりゃあ、自然に申しわけない。「ごめんなさい。」と心から謝りました。

それでもちょいとコツをつかんで、少しスピードも乗ってきていい調子になってきた。
よ~し、「浪人1」のビデオでマユミちゃんも言っとったじゃん!
こうゆう時は木を見ちゃいかんて。
木を見ずに、今から進む方向を見るんだ!って・・・。
でもね、フサキさん。わかっとるだよ、頭ではわかっとるだけどね~。
見ちゃったのよ。間違いなく見ちゃったのよ、しかもしっかりと。
そしてその瞬間、「ワァオー!」ちかやん撃沈。
左足腓骨骨折で全治2ヶ月。おばばボーダーのシーズンもこれでおしまいかぁ。

なっ、わけないじゃん!翌月4月の終わりには折れたまま滑っておりました。
ここまでくるとアホ以外の何者でもないおばばボーダーは、バッチテストも受けて合格しちゃいました。
おばばボーダーに『悔いなし!』
でも思った・・・。

決して無理はいかん。
己の実力を知れ。
おだてに乗るな、断る強い意志を持て。
前向きな気持ちも必要だが、その前に体力が必要だ。
そして、神経はきれいに抜いてもらえ。

Part.3
おばばボーダーのバッジテストちゃれんじ体験記

全国の検定ファンに捧げる(?)おばばボーダーの検定極意とは?

私がJSBAバッジテストにチャレンジしたのは3年前。
その頃いっしょによく滑っていた友達が「ちかやん、うちら3級ぐらいなら受かるんじゃない?」
と言ったその一言がきっかけでした。
その頃の私の滑りといったら、やっと何とか形になってきたかー?っていう程度。
主人にその事を話すと「ちかやん、そんなに甘くないと思うよ!」
そうさ、その通りさ!ちみの言うとおりだよ!
でも、なんちゅうか、わかっとることをちみに言われるとだねぇ、やたらと燃えてくるわけさ。
てな訳で、友達の根拠のないその一言と、私のどうしようもない性格のお陰(?)で
とにもかくにも、おばばボーダーのバッジテストへのチャレンジは始まってしまった。

初の3級検定チャレンジの日。言い出しっぺの友達ももちろんいっしょだ。
二人とも余裕で望んだその結果はと言うと・・・。
それはそれは手の付けようのない有様だった。
友達はと言うと、「ダメだったねちかやん、私はもう諦めるわ!」何て、サラッと言ってのける。
「え?~!!あんたが言い出したことでしょー!?」
ちなみに彼女はスノーボードからはサッサと足を洗い、代わりに夜な夜な釣り船に乗って海へと出掛ける日々へと変わっていった。
時々「ちかや~ん、大物が釣れたよー!」なんて、どでかい魚との2ショット写メールなんかを船上から送ってくる。
私からすると「この変わりようと言ったらなんざんしょ?」って思うのだが、
彼女に言わせると、夜中に家を出て朝方釣り出すというスタイルは、スノーボードと何ら変わりがないらしい。

そして、この日から私のバッジテストへの執念とも言うべき恐ろしい日々が始まったのでした。
それは重ねて、バッジテストウイルスという病魔に襲われる病の始まりであり、周りが何一つ見えなくなってしまうという恐ろしい病であった。
バッジテストのためにスクールに入り、バッジテストのためだけに滑る。
そう、おばばボーダーは完全におかしくなっていった。
でも、そんな自分の異変に気付く筈もなく、主人の忠告を聞くこともせず、ただひたすら練習した。

そして2回目のチャレンジの時がきた。
スクールの先生にはお墨付きももらい、自分でも自信があった。
なのに、なのにだよ・・・。
一体私の体の中で何が起こっちゃったわけ?
体ガタガタ手はブルブル、おまけに歯までガチガチ鳴り出した。
何も見えないし聞こえない。どこをどうやって滑ったかなんて覚えちゃあおらん。
おそらくすごくヘンテコリンな格好で滑っていたに違いない。
そう、私には『緊張する!』という大きな欠点があったのだ。
結果はお伝えするまでもなく・・・。
そしておばばボーダーは奈落の底へと落ちていった。

ある時主人がこう言った。
「ちかやんは今楽しい?ちかやん、もうずっと笑ってないじゃん!スノーボードは楽しく滑らにゃー。」
ガ~ン!!脳天空手チョップを喰らった。
「あぁぁぁ~」そうじゃん!そうだよ。
ちょいとばかり遠回りはしたけど、やっとおばばボーダーは目を覚まし、バッジテストは一時中断。
そのあとの楽しかったことといったらあーりゃしない。

翌年、3度目のチャレンジで見事?合格。
そして先シーズン、2級、1級と一気に取る予定が3月の骨折で願い叶わず。
と思ったら、ゲレンデホームページに『バッジテスト追加決定』とあーるじゃあーりませんかぁ!
その後のことは前回書いたとおりで、おばばボーダーは2級合格を果たしたのでした。

さあ、今シーズンも1級目指して頑張るぞー!
そう、おばばボーダーは懲りないのよ・・・。ワッハッハ~!!
でも思った・・・。失敗を繰り返すことで見えてくるものがある。

目標に振り回されるな。焦らず慌てずどっしりと構えよう。
壁にぶち当たったら、急がば回れ。少しだけスノーボードを忘れてみよう。
とにかく笑う!ポコじゃんで遊んじゃえ。
自分の姿をビデオで撮ってみよう。わからなかったことがはっきりするよ。
そしてちかやんのバッジテスト緊張攻略法。
『何が何でも一番手に滑るべし!』これ試してみりん!意外と効果あるから。

Part.4
おばばボーダーのホットワックスちゃれんじ体験記

ワックスの楽しさを知ったおばばボーダーからのホットなメッセージ

ゲレンデ以外でもおばばボーダーがチャレンジしていることがある。
そいつはホットワックスだよ。
おばばボーダーも初めから自分でやっていたわけじゃないだよ。
おばばのように楽しくフリーランするだけなら、大手スポーツショップの安いチューンナップで充分だと思っていたし、
実際私の分まで主人がかけていてくれていたので、あんまり興味も沸かなくて・・・

でも、昨シーズン前に某チューンナップショップさんにお世話になってから、おばばボーダーは目覚めちゃったのよ。
こんなにおもしろいことを私は今まで知らなかったんだ!って。
なんちゅう奥が深いだん!?
柔らかいものから硬いものまであるワックスの意味。
ソールを焦がさないアイロンのかけ方。
スクレーパーの目立ての重要性。
ブラシの種類とかけ方。何もかもが目からウロコだよ。

店主さんの熱い語りにどんどん吸い込まれちゃって、気が付けば帰りにチューンナップ台を買っていた。
今まで主人はワックスをかけるのに、電話帳を重ねて両端に置き、その上に板を乗せてかけていた。
その次は100円ショップで風呂で使う椅子を2個買ってきて、コルクを貼り付けて滑り止めにして、その上に板を乗せてかけていた。
狭い部屋と低い体勢で腰も痛いのに、その根性には頭が下がるよ。
なのに、なのに~、っと。おばばボーダーは即決だ!さっさと買っちまった。

そんなんで我が家では、今年も9月からワックスがけが始まっている。
ちなみにもうイエローは終わり、今はレッドの10回目を入れとる。

主人は帰ってくると、私のかけたワックスチェックをする。
「ちかやん、これワックス少な過ぎー。アイロンがテールのところで止まっとるよね。頭使わんと何百回やったって同じだよ」
そうこきやがった!えぇぇ~、何じゃそりゃ!頭使えだとぉ?
頭でワックスがかけれるかって、言うじゃん!
だいたいこの言葉もよくゲレンデで言われとったわ。
「ちかやんは何にも考えんで滑っとるらぁ、それに一つのことを言うとさっき言ったことも忘れちゃうし・・・」
忘れちゃうだとぉ?それは関係ねえだらぁ。
それだったらただのバカじゃん!おばばの上に『バカ』が付いちゃうわけかぁ。
ってことは?『バカおばばボーダー』になっちゃうの?ちょっと名前が長過ぎんかぁ~?
って、すぐこうやって脱線してっちゃうからいつもバカにされるんだ!
よ~し、おばばボーダーはホットワックスの達人になって、ワックス天使マスミさんのポジション取っちゃう?
ビビっとるらぁ?マスミさん。

おばばオーダーは正直まだワックス歴2年目で、偉そうなことは言えん。
だけどねえ~、おばばにも少しはわかることがあるだよ。
それはさー、リフト直前によくある長い平坦なコースでさぁ、さっきまでバリバリに早かったお兄ちゃんをそこで一気に追い越す時だよ。
その時の気持ちのいいことって言ったら最高だよぉ。
あの優越感は、ホットワックスをかけた人のみが味わえる至福の時だね。
「一生懸命かけて良かった~!」って思える瞬間だよ。
それから、こうしていつもいつも板をみてやることが、道具を大切にしてあげてるってことだからそんな自分の姿勢にも自信が持てるだよ。

今はホットワックスするのが楽しくて仕方ない。
ソールさえ焦がさなきゃ、少々の失敗なんてどーってことないのよ。
フサキさんはこれを3分でやっちゃうらしいけど、そんなの大好きなケーキを3分で喰っちゃうようなもんじゃん。
そりゃ~もったいない。ちょいと楽しんでかけにゃあ長続きせんじゃん。

ゲレンデだってそうだよ、楽しく滑ってるといつの間にかうまくなってる気がしない?
楽しくかけるにはどうすりゃいいのか?
やっぱ、頭使わんといかん。主人の言うとおりだわぁ、ワッハハァー!
おばばボーダーも肝に銘じんとね。なんせすぐ忘れちゃうもんで・・・

今シーズンもゴンドラの中でこれ見よがしにソールひっくり返して、若者に見せつけてやる!
どうよ、この輝き。あぁ~、ピカピカに輝くソールに頬ずりして、これもまた格別な幸せ~。
そこのお兄ちゃん、今日も彼女が君のソールを見ているぜ!
いくらカッコつけてパンツ下ろして履いたって、そのソールじゃあ彼女は落とせないぜ!
カッコイイ男は板も自分も磨けよー!

Part.5
おばばボーダーはスクール大好き!

若者のエキスを吸いながら、確実にステップアップ方法を発見していく恐るべしおばばボーダー。

おばばボーダーがなんでスクールが大好きかって言うとだねぇ、そりゃあ決まっとるじゃん!
若いインストラクターのお兄ちゃんがおるからだよぉ。
若いっていうのはいいね~。おばばボーダーはその若いエキスを吸い取ったるじゃんねぇ。
そのお陰でスクール終わった後、おばばボーダーは元気なのに、イントラのお兄ちゃんは、みんなクタクタになっとる。あら、可哀想に・・・
まぁ、そればっかりが理由じゃなくて、とにかく早くうまくなりたい!それかな。

かれこれ30回以上は入ってるかなぁ。
だからその数だけいろんなことにチャレンジしてるし、体験もしてるだよ。
イントラの人たちとの出逢いもたくさんあったなぁ。
時間ばかり気にしてスクールの間中、何度も時計を見る人。
そうゆう人は終わる時間を合わせるのも神業で、当然始める時間も1分とて狂いはない。
他には自分の滑りをやたらと見せたがる人。
「じゃあ、僕が滑りますので見てて下さ~い」と言って、はるか彼方に消えてしまう人。
見えんじゃん!どこ行っちゃた?自分の滑りに酔っちゃて、距離感がなくなっちゃうんだよね。
タチが悪いのが、やたらと自分の持っている知識をしゃべりたがる人。
専門用語を並べては、わかるようなわからないようなウンチクを延々と話す。
おそらく本人も何言ってんだか、終いにはわかってないと思う。
こんなイントラにはマジで「金返せー!」って言いたくなる。

あっ、そうだ!それからやたらとギャグ連発するおっつぁんがおった!
これが完璧なスーパーおやじギャグで、あの時はさすがのおばばボーダーも参った。
スクール終わったらもうクタクタだったもん。
白馬○のさかの○沢盛夫くん!キミのことだよ~。
「みんなー、もっとヒザを曲げて~!そうそう、あと14.5センチねー」
「おっと、それじゃあ13.7センチだよー」
こんな調子が最後まで続くんだから、ほんと勘弁してくれよ○沢盛夫くん!

30回以上入っていると、いろんなことも教わったしチャレンジもしてきた。
そんなチャレンジの中で、これは私を変えたチャレンジだった。
それは、『スケーティングからの停止』だ。
初めは何でこんなことを今さら?そう思ったよ。
でも、やってみたらびっくらこいちゃった!
「ここで止まりたい!」という所でうまく止まりゃーしない。
横を見れば私よりうまい人たちも、まともな形になってないじゃん。
なんじゃーこりゃー!そんな感じだよ。
でもね、やっていくうちにこの練習の大切さが凄くわかってきただよ。
前足の操作の仕方も前足の軸の使い方も、びっくりするほど体が覚えていく。
今までいかに前足軸を意識していなかったのかってことを・・・
だからこれは凄いよ!
他には超緩斜面での『片足ショートターン』もやったよ。
これも初めはなかなかうまくいかなかったけど、そのあと一人で一生懸命に練習したから何とか感覚はつかめるようになったよ。
とにかくこのチャレンジが私の滑りを変えてくれたことは間違いなーい。

おばばボーダーは思うだよ。
我流で楽しくフリーランするのもそれはそれでいいと思うんだけどさ、うまくなりた~いと思ったらやっぱり基礎なんだよね。
だから、そのためにはスクール入っちゃうのがいいのよ。
お気に入りのスクール見つけて、イントラに顔を覚えてもらっちゃうってのもいい手だよ。
滑りの良いところも悪いところもみ~んな覚えていてくれてるか、確実にステップアップが早いわけよ。

ラストメッセージ
待ち遠しいシーズンに向けて、おばばボーダーも着々と準備を進めとる。
実は今年7月に腰の大手術を受けた。手術を決心したのもスノーボードを続けたいがためだった。
ボルトが4本入って頑丈な腰は出来上がったが、これからリハビリを兼ねた体力づくりを始める。
早速11月からプールとジム通いだ。
ここでも若いインストラクターのお兄ちゃんがいるから、エキス吸い取ったるぞー!
ほんでもって今シーズンはキッカー飛びまくりだぜ!
おばばボーダーの“ちゃれんじ”はこれからもまだまだ続くぞ~!!

ちかやんのプロフィール
なまえ: ちかやん
生年月日: 1959年6月26日
スノーボード歴: 5年
年間滑走日数: 約25日

愛用ギア
ボード: MOSS KING144.5
バイン: BURTON P1
ブーツ: DEELUXE VICIOUS
プロテクター: CCC & HAZAK
ワックス: HOLMENKOL

スタンス: レギュラー46cm F21°B0°
得意技: バックサイドターンからのヒップスライド(単におしりから転ぶともいう)
スポンサー: ZORA
愛車: パジェロイオ

好評シリーズ! おばばスノーボーダーのちゃれんじ記 Part 4

お待たせしました!dmk名物企画が復活です。あの好評おばばボーダーが、ほぼ一年間ぶりに帰って来ました。
スノボやるのに年齢なんて関係ねえぞ。永遠にチャレンジを続けるスノーボーダーは、どんなうまいプロにだって負けないぞ。世のスノーボーダーたちに勇気をチャレンジ精神を伝えるおばばは、世界で最も輝いているライダーだ。今回も失敗あり、笑いあり、そして感動あり!
さあ、久々によろしくお願いしまーす、おばばボーダー!

一話

おばばは先シーズンは、またまたおもしろいちゃれんじをしただよ。

白馬さのさかスキー場に、相○盛夫くんという方がおります。
この方、たぶん?かなり有名です。時々おばばの話しの中にも登場するおっつぁんです。(注意、おばばよりも4才も年下です。)
このおっつぁんの主催する、こりゃまた有名な?AZ道場なんちゅうもんがあります。
道場なんて名前から、何するところじゃい?と思うけど、まぁ言ってみればバッジテスト目指したり、インストラクターの資格を取りたい人とか、いわゆるテクニカルの技術を更に磨きたいという人たちがじっくりとスノーボードの基礎を学ぶ場所、って言っちゃえばわかりやすいかな?
道場には2パターンあって、1つは1月から3月までの3ヶ月間寝起きを共にしながら、月曜から金曜日の五日間を毎日みっちりレッスンを受ける道場。
もう1つは、おばば達が入門した、3ヶ月間の週末にレッスンを受けるというもの。

ほんじゃあ、どうしてまたシーズン3ヶ月間をこの盛夫くんの道場に捧げることにしたかって言うと、これは至って簡単で「うまくなりて~!」これのみ。
とは言ってもいろいろ々あって、ご存じの通りおばばは先々シーズンJSBAの1級を取った。
そして、いずれはB級、さらにA級なんて取れっちゃったらいいなぁ!なんて、果てしない夢を持ち続けてきたけれど、このシーズンが終わってからしばらくして、おばばはふと思った。
このままでいいのかなぁ?何かがおばばの体の中で不完全燃焼している気がした。
 
おばばはこれからどうしたいんだ?B級が欲しいのか?本当に最終目標はA級なのか?
それ取ってどうすんべ?誰かにプチ自慢したいのかぁ?自己満足かぁ?う~ん、ちょっと違うなぁ。
そんな思いから、おばばはこれからなりたい自分の姿を頭に思い描いてみた。

そしたら答えが出たじゃんね。それは、凄~く単純で簡単な「うまくなりてー!」だった。
何かの資格がほしいワケじゃない!カッコつけてどうすんだ!
おばばの目指す“うまい”ってどんなんだろう?そう考えた時に、一つだけはっきりとしたものが・・・

それは「自然体」。どこにも力が入っていないかのように見える滑り。一番簡単そうで一番難しい滑りかも?
この滑りを目指すのに今必要なことは“基礎”だとおばばは確信した。

基礎こそが原点だ!スノーボードを始めて6年、ここにきて基礎を見直すなんて遅すぎるかもしれない。
いいえ、遅いことなんてない!見よ!桑田を。39歳でメジャーデビューしたじゃないか。
結果はどうであれ、夢を諦めずに努力すれば、誰にだって可能性ってやつは同じ分だけ神様は与えてくれてるはずだ。おばばはそれを信じて果敢にも道場の門を叩く決心をしたというわけ。
言っちゃあなんだが、おばばはもうとっくに48歳なっちまった!どうだ、参ったか!
 
さて、いよいよ道場初日の日がやってきた。
雪不足の影響で予定よりも10日程遅れてのスタートとなった道場。
この日から3ヶ月間の毎週土日を、この道場で過ごすことになる。
おばばは一皮剥けた自分の姿を想像しなら、期待に胸を膨らませ道場の初日を迎えることに。

初日の予定は、まずはレストハウスで自己紹介。
そして道場の目的や練習法、今後の予定などの説明を受ける。
さて、ここでおばばは突破しなくてはいけない関門があった。
それはズバリ自己紹介だ!何で?なんて思っちゃう人はズバリ感の悪い奴だ!

はっきり言って、おばばより年上はいないと思っていた。だから、この自己紹介で年齢がばれてしまうことを何よりも恐れていたのよ。
どんなことがあろうと、自ら人前で年齢を名乗るなんて事は一度たりともなかったおばば。
スクールのちょっとした申込用紙にさえ、大胆なウソを書いてきた。
独身30才なんてのは当たり前で、時には20代を名乗る時だってあった。
 
まぁ、それはさておき、この自己紹介の関門を突破する秘策がおばばにはあった。
「ち、ち、ちかやん塗りすぎじゃない?」
「あっ、これ?」
おばばは自分の顔を指差した。
「クマ隠して、シミ隠して、シワにファンデーション埋め込みゃーこれぐらいにはなるわさぁ。」
化け物顔に妙に可愛いビーニーかぶった姿は、今思い出してもゾッとする。
 
集合時間が近づき、おばばも席に着いた。
控えめに座っていたつもりだけど、おそらくこの化粧じゃあかなり目立っていたかもしない。
気になるメンバーを上目使いで一周しながら、その時おばばの目に止まったのは・・・

「お~~っっっ!!」思わずおばばは声を上げてしまった。横に座っている主人の膝をこつきながら、やたらとニヤニヤするおばばの様子は、誰が見ても怪しい人だったに違いない。
あのね、じじいが二人いたのよ。どう見たってあの二人はおばばより年上だ!もしそうじゃなかったら、そこまで老けて見えるのは犯罪だぞ!逮捕してやる。

一人は50代半?えっ?もしかして60代かも?
もう一人はやけにカッコ付けてる。ウェアーからしてあきらかに貧乏人じゃないその様子は、こじゃれたデニム風のパンツに、革っぽい上着のウェアーを着て、上から下までかなりお金がかかっていそうなスタイルだけど、おばばには分かる!あなたは54歳です。間違いない!
 
いよいよ自己紹介の時がやってきた。
一人目二人目と次々に何かしゃべっている。でも、おばばは上の空。
さぁ、一人目のじじいの番だ。
えっ?なんだって?聞こえんぞ!B級目指しとるって?何回受けてるって?えっっっっっっ?
おばばの聞き違い?今確かに20とか、20何回とか言ったよね。
ウソでしょ?でも、おばばには間違いなくそう聞こえた。やっぱり、ここにも凄い人がいた。

そろそろ年齢を言うぞぉ。はよー言わんかい!
「私は56才になります。」
お~、いいぞいいぞ。いい歳じゃん!よ~頑張っとるじゃん!
よし、もう座っていいぞ。って、まだしゃべるんかい?
 
もう一人のじじいの番は、おばばの3人前だ。
こ洒落た格好のじじいは、立ち方もちょいとかっこをつけている。そして第一声が、「私は54才になります。こんなおやじでも頑張れるんだってところを見せたいです。」なんて、やけにでかい声で話し始めた。
おばばはこのおやじの年齢をぴたりと当てた。だから、ちょっと嬉しい。
このおやじ、「A級目指して頑張っています。」とか言っとったら、隣に座っていた連れの一人に「あんたはまだB級も取れていないでしょ。とりあえずそっちが先じゃないの?」なんて、年下におもいっきり突っ込まれとった。

そして、おばばの順番が回ってきた。
おばばは、にゃんにゃん声の可愛らしい第一声を挙げた。いつもと違う声のトーンに、呆れた顔でこっちを見ている主人の顔が視界に入ったけど、おばばは構わずしゃべり続けた。
その話しっぷりに、相○盛夫くんもウンウンと大きくうなずいていたらしい。
もちろん、自ら年齢を名乗ることなどしなかった。
 
ところで、おばばはこのおやじたちには驚いた。上には上がおるもんで、56歳のおやじはB級を受け続けて早数年?とにかくビックリするぐらいB級を受け続けているらしい。二十数回と聞こえたのは間違いじゃなかった。こりゃビックリだ!

どんな理由があって受け続けているのか?おやじの気持ちを計り知ることはできないけど、とにかくこの年齢でちゃれんじし続ける姿は素晴らしい!
そして、このおやじは驚いたことに、ある日の道場の前日に、なんと兵庫県で開催されたテク選の予選をこなして来ていたりする。それから、地方のちっこい大会にも盛んにちゃれんじしていたり、何が驚くって、なんと毎週大阪から高速ぶっ放してくるなんて、もう限界を超えたおやじパワーだ。
おばばも誰にも負けないくらいちゃれんじしてきたつもりだけれど、この道場で出会ったおやじにには、頭が下がりっぱなしだった。
そして道場最終日の前日に、遂におやじは念願のB級を手にしたのである。
凄い!凄いぞ、おやじパワー。
 
カッコつけの54歳のおやじも凄かった。
道場で一番パワフルで、元気があってうるさかった。
自分の息子や娘たちぐらいの年齢の道場生達の中で、一番頑張っていたかもしれない。

いつでも一番が好きで、スクールでも一番最初に滑ってきたおばばのお株を、道場ではこのおやじにその大切なポジションを奪われてしまっていた。
このおやじ、とにかく要領がいい。気が付きゃいつだって、いつのまにか先頭を陣取っている。
そして、気持ちよさそうに一番で滑り降りていく。きっと、このおやじもおばばと同じで“誰よりもうまくなりたい!”と思っているんだろう。一番で滑り降りていくおやじの姿を毎回上から見ていたおばばは、このおやじに密かに闘争心を抱いてた。
いつか一番で滑ってやるぞ!おばばだって「うまくなりて~」って気持ちは誰にも負けんぞ!と頑張るんだけど、結局このおやじから一度もそのポジションを奪い取ることはできなかった。
 
おばばは素直に、このおやじ二人を尊敬する。
いくつになっても自分の目標に向かってちゃれんじし続ける姿は、眩しいほどカッコイイ!
若者たちよ!おめ~たちにはまだまだ負けんぞ!おばばもおやじも頑張っているんだ!
その姿、よ~く見ておけよ。

二話

先シーズンは、なかなか降ってくれない雪を、首を長~くして待ち続けたシーズンだったなぁ。
けれど、自然ちゅうやつは不思議なもんで、ちゃんと降るんだよね。
それでも温暖化は深刻で、一部のゲレンデは一日もオープン出来ずに終わってしまったところもあれば、あまりの雪不足で予定よりも一ヶ月早めてクローズを決めたとたん、最終日の翌日から雪がドカンと降り、全てのコースが滑走可能状態に・・・なんて、皮肉な話しもテレビのニュースで見たりすると、これまた自然の恐ろしさを感じずにはいられないシーズンだったなぁ。
 
おばばたちの先シーズンの初滑りは12月10日。
オープンのお天気が雨っぽかったから、ここはグッと我慢して来週に初滑りを延ばそう!そう決めたのに、おばばも主人も心の中じゃあ「行きて~よ~!早く滑りて~よ~!」と思っていた。
まぁ要するに、二人が我慢出来るわけがなく、結局気が付きゃおばばはとっとと支度を始めていた始末。
 
ゲレンデは予想通り、見事なアイスバーンだった。
初日だし軽く足慣らしをする程度で、今日は早々と引き上げるつもりだった。
何本か気持ちよく滑り、これ一本でちょいと早いお昼にしよう!と決めた最後の一本。
ここで大事件が・・・
 
もうレストハウスも目の前という時、おばばの目の前で主人が勢いよく転んだ。
しかも、ほとんど斜度なんてないところでだよ。
「えっ?何やってんの?どうしたの?」
「ちかやん痛い!」
「痛いって、どこが?」
「手首打っちゃったみたいで痛い!」
なんだ、なんだその情けない顔はぁ。
「おまえはそれでも男か!」って言いたくなるほど、しょぼい顔をしている。
 
でも、やっぱり痛いんだろうなぁ?と思いながら、
「指、動く?手首曲がる?」
恐る恐る指動かしたり、手首曲げたりしている主人をやや冷たいまなざしで見つめながら、
「どう?」
「うん、指動くし手首も曲がる。」
そう返事をしている主人の顔が、やっとニコッとした。
「よし!ほんじゃ~折れとらん!」
おばばの愛情のこもった?一発。
 
自分が骨折した時なんて、ギャーギャー泣きわめいてほとほと困らせたくせに、立場が逆だとこうも違っちゃうんだ。
お昼を食べて一時間ほど休憩し、「今日はもう帰る?」と聞くと、
「ううん、もうちょっと滑ってく。」
「えっ?痛くないの?」
まぁいい、本人が痛くないって言うんだから、もう少し滑っていくことにした。
 
しかし、痛みがどんどん増してきたようで、主人の表情が冴えない。
「やっぱり今日はもう帰ろう!」
おばばの独断で、この日は帰路に着いた。
 
そして、家に着く頃には本格的な痛みが・・・
さすがに主人も感じたことのない痛みに心配になってきたのか、顔つきがみるみる変わってきた。
「明日仕事休んで医者に診てもらってくる。」
「お~、そんなに痛いんかい。よしよし、よ~く診てもらってこい!ついでに最近出てきたその腹の肉の中身は、ただのメタボか?それとも悪性の腫瘍か?そいつも診てもらってこい!」そう言うと・・・
「ちかやん、そりゃ診てもらえんじゃない?」
「おい!その返事かい!」
やっぱりかなり動揺しとるな。こんな時、すかさず鋭い突っ込みを入れてくる主人が、まともに返してきている。こりゃかなり深刻だぞ~?
 
そして翌朝、心細い顔で起きてきた主人の顔を見てつくづく思った。
男っちゃ~、でかい体にでかい態度で偉そうな事を言うくせに、なんと痛みに弱い生き物なんだ!
整形でレントゲン撮るくらいでその情けない顔はなんだなんだ。
 
さて、結果はと言うと・・・なんと骨折でした。えっ?
左手の親指付け根のところにある何とかっていう骨が折れちゃって、なんと全治2ヶ月。
待ちに待ったシーズンの初日で骨折しちゃうなんて、主人の気持ちを思うとなんと言って声を掛けてあげればいいのか?
おばばも骨折した時は、この世の終わりぐらい落ち込んだし、涙がちょちょ切れて止まらなかった。
なのに、その時と同じ立場にたった主人を目の前にして、おばばが主人に掛けた言葉はこうだ!
「ジタバタしたってしゃーないじゃん!2ヶ月もすりゃー治る。それまでの辛抱だ!」
とにかく、シーズン初日に骨折というおまけを付けて、おばばたちのシーズンは始まった。
 
骨折から5日後の木曜日の夜のことだった。
「じゃじゃじゃじゃ~ん!見て見て、ちかやん」
ニタニタしながらおばばの前に出した手首には、何やら黒い物がはまっている。
骨折した手と反対側の手にはめられていた黒い物の正体は・・・・
「おい!それってもしかしてHAZAKのプロテクターじゃあ、ね~のかぁ~?」
おめ~はいつの間に注文してたんだ!?
「自分の体を守るのは自分だよ。」
そりゃその通りだけど、ちょっと注文するの早くない?
5日後に届いてるってことはだよ、骨折直後には既に注文してたってことじゃん!?
ちょっと早くねぇ~かぁ。ほんとビックリだわ。
もちろん、ギプスが外れたら両手にはめて滑るらしい。
「ねぇねぇ、滑るのって当然ギプス外れてからだよね~」
「ちかやん、何言っとる?明日滑りに行くに決まっとるじゃん。」
「はぁ~?明日?その手で滑るわけ?」
「そうだよ。こんなんなっちゃってもできることはいくらだってあるだよ~。とりあえずぅ、ちかやんの滑ってるところをビデオ録るね。横滑りだって練習になるし、出来ることなんて山ほどあるよ。」
そう話す主人の目は輝いていた。一日も早く治すことが先決なんだけど、それを含めて今自分にできることは何かと一生懸命考えていた主人。
こんな主人の前向きな考え方は、おばばは大好きだ!
起きてしまったことをくよくよと悩んでいる暇があったら、これから何ができるか考えろ!
考えたら早速行動に移せ!そんな考え方ができる主人をおばばは尊敬している。
 
ウェアーを着ることも、ブーツを履くことも、もちろんグローブをはめることも一人ではできないし、日常生活の全てが不自由で、何一つ満足にできなかった2ヶ月間。
きっと、健康でいることの大切さを痛感したに違いない。
そして、いつだって前向きな主人は、道場への参加も諦めることなく、講師にお願いして参加させてもらえることに。
かくして、主人の滑らない、滑れない道場がスタートした。
 
ギプスが外れるまで一ヶ月間、主人は道場で何をしていたかと言うと・・・。
道場生が次々と滑って行くのを上からじっくり観察したり、時には下で待つ講師の方達のうしろで、道場生の滑りのコメントやアドバイスを聞いていた。
もちろん、講師同士が話している内容も聞け、その話しの中に入っていっしょに語りあってもいたらしい。
人の滑りが理解出来ると、自然に自分の滑りも分かってくるようで、ここで聞いたたくさんの講師の言葉の数々は、これからの主人のスノーボードに、計り知れない希望と可能性を与えてくれたに違いない。
主人にとってここでの経験は、お釈迦様の説教よりも有り難かったことだろう。
 
おばばたちの先シーズンは、骨折というおまけが付いちゃってのスタートだったけれど、主人はこれを本当のおまけに変えてしまったわけだ!
それは、どんな事も前向きに考えられる主人へのご褒美に違いない。
“どんな出来事にだって意味があり、意味があって起きている。”
大切なことは、いつでもどんな状況の時でも、全身全霊をかたむけて取り組むことが大切。
とにかく最後まで諦めないで、前を向いて進み、どんな苦難やアクシデントも自分に与えられた試練だと思い、それに立ち向かっていかなきゃだめだ。
 
自分を磨くことの大切さ、己の魂を磨けられるだけ磨くことが、この世に生きている意味ではないのか?そんなことを、主人に教わった気がする。
 
何だか難しい話しに思えちゃうけど、何の事はない!
おばばから一言。「諦めたらダメ!前に進めば必ず道は開ける」
おばばも足がよたり、手が震え、そして腰が曲がってもスノーボードには関わっていたいと思うし、必ず叶えてみせる。
おばばのちゃれんじは死ぬまで続くよ。

三話

おばばは3ヶ月間の道場で、いろいろなちゃれんじをした。
今までやったことのない練習で、出来なかったことが出来るようになったし、まだまだ未完成の基本姿勢ももう少しで出来そうだし、とにかく沢山の自信をつけることが出来た。
そして、もう一つ。同じ目標を目指している沢山の仲間との出会いもかけがえのない宝になり、多くの友達を得ることも出来た。何から何まで充実した3ヶ月間のスノーボードシーズンだった。
でもある日ね、おばばの目指すこれからを、少~しだけ変えるような出会い?出来事?があっただよ。
 
それは、道場もあと二日という時の練習中のことだった。
おばばはその若者を見てびっくりした。
若者は、おばばとお揃いのdmkの手拭いを頭に巻いていた。派手な色だからすぐ気づいたし、何よりdmkのロゴにはおばばはすぐ反応しちゃうし、えらく親近感を覚えちゃう。
彼は、7、8人の集団を連れてやってきた。
おそらくdmkの手拭い野郎がリーダーで、他の子たちにグラトリを教えてるっぽい。
おばばたちの練習しているコースの脇には、ちょいと盛り上がってグラトリには最高な地形があった。
目の前にあるそれを見つけた手拭い野郎は、早速そこでちょこっとオーリーかけてB1をやって見せた。
さ~てさて、おもしろいのはここからじゃんね。
手拭い野郎が向こうで手を挙げて、みんなに合図を送っている。おばばにもその合図が「いいから思い切ってやれよ~!」と語っているように伝わってきていた。
もちろん、それはこっちで待機している若者達にもはっきりと伝わってきていたに違いない。
しかし、しばらくしても先頭の子が滑っていかない。そして一緒に待っている他のメンバーも、申し訳なさそうに遠慮がちに順番を待っている。
中にはおばば達道場生に頭を下げる礼儀正しい若者までいる。
さて、どおゆう事かと言うと・・・
手拭い野郎は、おばば達道場生軍団の練習中まっただ中のコース、しかも大胆なことにそこを横切っていったわけだ。そこにクリアーしたい地形がある限り、ちゃれんじしたいのは手拭い野郎にとったらある意味定めかもしれん。しゃ~ないか!
つまり、この状況に気づいていなかったのは手拭い野郎だけで、言い換えれば彼以外の全員が「ありゃりゃ?」と思っていたはず。
でも、おばばはその様子が微笑ましくてたまらなかった。
「いいぞー、やれやれ!」たとえ周りの状況がつかめなくても、キミのその情熱はみんなにしっかりと伝わっているぞぉ!「突っ走れーdmk!」
 
そして、おばばはその先頭の若者に「いいよ、どうぞ」という意味で、手を差し出してあげた。
そしたらぴょこんと頭を下げて、次々とキャーキャー叫びながら滑って行った。
その若い声は、ゲレンデ中に心地良く響き渡り、その光景の清々しいことといったらなかったなぁ。
もちろん、向こうで待っていた手拭い野郎も大満足だったはずだ。
がんばれ、dmkの手拭い野郎!おばばも頑張るぞ!
 
キミたちのせいで、おばばは今シーズンの目標を少し軌道修正することにした。
キミたちのひたすら楽しむ姿、夢中になって遊んでいる姿を見て、これが大切なんだと痛感した。
今までおばばが必死こいて練習している横を、楽しそうにすっ飛んだり回ったりしている若者に対して、冷ややかな視線を送り続けてきたおばば。
だいたいそんなことをする前にやることがあるだろーが!ロングターンもショートターンもまともにできないくせに、そんなことやるにゃー10年早いわ!なんて思ってた。
でも本当は、楽しそうに滑っている姿をちょっと羨ましくも思ってた。
ほら腰の位置だ!荷重だ!目線だ!なんて、振り返ればおばばのボード人生の大半がそれだった。
「うまくなりて~!」のために、この道場で基本の大切さを一から学んだ。そして、遊ぶことの素晴らしさに触れた。
だから、今シーズンはちょっと遊ぶことに夢中になってみようと思う。dmkの手拭い野郎のように・・・
おばばのボード人生まだまだこれからよん!
今シーズンもどんなドラマが待ち受けているか、おばばの活躍にこうご期待!!

ちかやんのプロフィール

なまえ: ちかやん
生年月日: 1959年6月26日
スノーボード歴: 7年
年間滑走日数: 約40日

愛用ギア
ボード: OGASAKA CT148
バイン: FLUX STREAM
ブーツ: DEELUXE VICIOUS
プロテクター: CCC & HAZAK
ワックス: マツモトワックス

スタンス: レギュラー48cm   前27度、後0度
得意技: バックサイドターンからのヒップスライド(単におしりから転ぶともいう)
スポンサー: ZORA
愛車: パジェロイオ

過去のおばばスノーボーダーのちゃれんじ記

おばばスノーボーダーのちゃれんじ記 Part 3

おばばスノーボーダーのちゃれんじ記 Part 2

おばばスノーボーダーのちゃれんじ記 Part 1