
カナダ・ブリティッシュコロンビア州に位置する世界屈指のスノーリゾート、Whistler Blackcomb(ウィスラー・ブラックコム)が、ブラックコム山の高山エリアで長年親しまれてきたShowcase Tバーを廃止し、新たにチェアリフトを建設する計画を明らかにした。新リフトは政府承認などを前提に、2026–27シーズンの稼働開始を目指している。
氷河後退と老朽化が背景
Showcase Tバーは1988年に設置され、ブラックコム氷河(Blackcomb Glacier)へのアクセス手段として、上級者・エキスパートライダーを中心に利用されてきた。しかし近年は、氷河の後退による地形変化が顕著となり、Tバー特有の運行条件を安定して確保することが難しくなっていた。
積雪量が少ない年には斜度や路面状況が大きく変化し、運行の制約が増加。加えて、設備自体の老朽化も進んでおり、安全性と安定性の両面から、リフト更新が検討されてきた。
固定グリップ式クアッドチェアを新設予定
計画されている新リフトは、固定グリップ式の4人乗りチェアリフト(クアッドチェア)。Tバーに比べ、より幅広い利用者が安定してアクセスできる点が大きな特徴だ。
新リフトのルートは、従来の氷河上を避け、より安定した地盤を通るアラインメントが想定されている。これにより、ブラックコム氷河周辺に広がる約215エーカーの上級地形へのアクセスを、シーズンを通して確保しやすくなると見られている。
上級者エリアの性格は維持
チェアリフト化によりアクセス性は向上するものの、対象となる滑走エリア自体は引き続き上級者向けの性格を保つとされている。Whistler Blackcomb側も、単なる集客拡大ではなく、あくまで「安全で持続可能な高山アクセスの確保」を主目的としている。
一方で、長年Tバーを象徴的存在として捉えてきたローカルスキーヤーやライダーからは、伝統的設備の撤去を惜しむ声も上がっており、コミュニティ内では賛否が分かれているのも事実だ。
Vail Resortsの長期投資計画の一環
今回の計画は、Whistler Blackcombを運営するVail Resortsが進める、2026年に向けた長期的な資本投資計画の一部でもある。同社は近年、リフトやダイニング施設、リゾート体験全体の刷新を進めており、気候変動を見据えたインフラ整備にも力を入れている。
象徴的存在だったShowcase Tバーの廃止は、一つの時代の区切りとも言える。しかし同時に、それは変化する山岳環境の中で、スノーリゾートがどう進化していくのかを示す象徴的な出来事でもある。2026–27シーズン、新たなチェアリフトがどのような体験をもたらすのか、世界中のスノーコミュニティから注目が集まりそうだ。

