年間300人の生徒を受け持つウィスラーのイントラが考えるNEXTニセコ

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文:飯田房貴 @fusakidmk

私はシーズンを通してカナダ・ウィスラーでスノーボードインストラクターをしており、年間で100日ほどのレッスンに入り、およそ300人の生徒さんを受け持っています。

ウィスラーは国際的なリゾートで、カナダ人だけでなく、アメリカ人、イギリス人、オーストラリア人、メキシコ人、そして中国、香港、台湾などアジアからのお客さんも多く、さまざまな国の方と一緒に滑ります。

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当然、こうした国際的なスノーリゾート事情に詳しい生徒も多く、日本のスキー場に興味を持っている方も少なくありません。特にオーストラリアや中国の方は、日本のスキー場に何度も通っている熱心なスノーボーダーも多く、私が日本人だと知ると、よく日本のスキー場に関する質問をいただきます。

ニセコは日本で最も知名度が高く、まだ日本に行ったことのない外国人は、まずニセコを候補に考えることが多いです。しかし、ニセコは人気が高く、混雑しているイメージもあるため、「次のニセコ」となるスポットを探している人も少なくありません。ここでは、私が実際に接してきた外国人のお客さんが注目している、日本のスキー場をご紹介します。

(ウィスラーに来るお客さんは、日本にも大いに注目しています!そんなみなさんに日本のネクストリゾートを聞いてみました。)

HAKUBA(白馬)

まずは白馬です。ウィスラーのエピックパスとつながっていることもあり、白馬を選ぶ人は多いです。北海道ではなく本州に位置するため、新幹線でアクセスでき、気軽に訪れることができる点も魅力です。

白馬も外国人観光客が増え、すでに「ニセコ化」している部分もありますが、それでもまだ白馬を目的地に選ぶ人は多いです。私の娘も昨シーズン、初めて日本でのスキートリップに行き、白馬の雪の多さやコンディションの良さに感激していました。さらに、野生の猿を間近で見られたことも、彼女にとって特別な体験だったようです。

海外からのスノーボーダーにとって、日本のスノーモンキーはユニークな存在です。山やビレッジに自由に現れる猿の姿を、非常に興味深く捉えています。私も子どもの頃、動物園の猿山を見入った経験がありますが、娘にとっても野生の猿の行動は特別な思い出になったのでしょう。

さらに白馬は、スキー・スノーボードだけでなく、観光面でも魅力的です。日本の便利な交通網を活用すれば、白馬から浅草や鎌倉、東京のショッピングスポットにも気軽に足を伸ばせます。ウィスラーであればバンクーバーで一泊して観光するイメージですが、日本ならスキーと観光を組み合わせた充実した旅が可能です。

白馬のユニークな特徴の一つは、「行ったスキー場の名前は覚えていないけれど、思い出は濃い」という点です。私の娘も、「どこのスキー場か忘れたけど、Tバーが閉まっていたエリアにハイクしてノートラックのパウダーを滑った」と言い、後から他の人たちも真似してハイクしてきたそうです。白馬は複数の山とゲレンデが広がるため、さまざまなスキー場体験ができるのも魅力です。名前は正確に思い出せなくても、外国人旅行者にとって深く楽しい思い出が刻まれる場所です。

(豪雪にラーメン、観光スポット…。彼女のインスタを見ると、日本旅行で心を打たれたものが伝わってくる。)

RUSUTSU(ルスツ)

ルスツも外国人スノーボーダーに人気があります。特に香港や中国からのゲストに人気で、「ニセコよりルスツの方がずっと良い」と言う方もいます。アクセスはニセコの方が便利ですが、ルスツは混雑が少なく、静かでピースフルな雰囲気が魅力のようです。

広大なゲレンデと北海道ならではのパウダースノーはもちろん、初心者から上級者まで楽しめる多彩なコースが揃っている点も魅力です。家族連れやグループ旅行でも、それぞれのレベルに合わせて滑れるのは大きな利点です。ゲレンデの起伏やツリーラン、自然の景観も素晴らしく、晴れた日には羊蹄山や尻別岳の絶景を眺めながら滑ることができます。

さらにルスツは、リゾート内の施設も充実しており、ホテルやレストラン、温泉、アクティビティも豊富です。滑り以外の時間も楽しめるため、長期滞在や家族旅行にも最適です。最近では、ニセコとルスツ間を結ぶシャトルバスも運行されており、移動の自由度が増しています。エピックパスも利用できるため、アメリカからの旅行者も訪れやすく、今後ますます注目されるスキー場になるでしょう。

(WORLD SKI AWARDSを毎年受賞する海外でも評価の高いルスツリゾート!)

FURANO(富良野)

富良野が好きという方は、日本に詳しいゲストが多いです。特に「混んでいるニセコにはもう行きたくない」という方にとって、富良野は静かで落ち着いたスキー体験ができる場所として非常に魅力的です。実際に訪れたゲストに聞くと、富良野こそ、最もポテンシャルが高い「ネクストニセコ」にふさわしいと感じる方も多いようです。

富良野の一番の特徴は、何と言っても雪質の良さです。北海道の内陸に位置するため、乾燥した軽いパウダースノーが豊富で、フカフカの新雪を思う存分楽しむことができます。雪の量も十分で、シーズン中盤でもゲレンデのコンディションは安定しており、ノートラックのパウダーを求めるスノーボーダーにとって理想的な場所です。

ゲレンデのバリエーションも豊かで、初心者向けの緩やかなコースから、上級者向けのチャレンジングなコースまで幅広く揃っています。特に山頂からのロングランは、富良野の大自然を一望できる絶景ルートとして人気です。ツリーランや中・上級者向けのオフピステも充実しており、山の地形を自由に楽しめるのも魅力のひとつです。

さらに、富良野は家族連れやグループ旅行にも向いています。スキー場周辺にはリゾートホテルや温泉施設も整っており、滑った後は温泉でゆっくり疲れを癒すことができます。レストランやカフェも多彩で、北海道ならではのグルメ、例えば新鮮なジンギスカンやチーズ、地元野菜を使った料理も楽しめます。

景観の美しさも富良野の大きな魅力です。冬の晴れた日には、周囲の山々が白銀に輝き、まるで絵画の中にいるかのような感覚を味わえます。また、朝の時間帯には霧氷が見られることもあり、幻想的な雪景色を楽しむことができます。

富良野は、スキーやスノーボードを楽しむだけでなく、滞在全体を通して日本の冬の魅力を体感できるエリアです。静かで快適なゲレンデ、質の高い雪、美しい景観、温泉やグルメなど、充実した冬の体験を求める人にとって、富良野は「ニセコに代わる日本の新たな魅力スポット」と言えるでしょう。

(「もうニセコは…」そう思うスキーヤー・ボーダーが向かうのは富良野。これからさらに外国人の姿も増えそうです。)

NOZAWA(野沢温泉)

野沢温泉スキー場は、まだ外国人には知名度が低いものの、非常におすすめのスポットです。ゲレンデの規模は十分で、降雪後のツリーランは格別。ウィスラーと比べても木と木の間隔が広く、滑りやすいため、ノントラックのパウダーを思う存分楽しむことができます。

かつて私自身も1シーズン滞在したことがありますが、やまびこコースをはじめ、何度もラップできる快適さに驚きました。10年ほど前、DMKクラブのメンバーと訪れた際も、混雑せず、キャンプツアー中なのにレッスンを忘れて滑りまくってしまったほどです(笑)。日本人スキーヤーやスノーボーダーはウィスラーに比べてパウダージャンキーが少ない印象で、その分ノントラックのパウダーを楽しめる環境が整っていると感じました。

さらに、野沢温泉のビレッジは古き良き日本の風景を残しており、外国人にとって特別な体験となるでしょう。温泉街の雰囲気や地元の食事、町全体の落ち着いた雰囲気が、スキーだけでなく滞在そのものを魅力的にしています。スノーリゾートジャパンの岩田さんも野沢を推奨しており、私も自信をもっておすすめできるスキー場です。

ただし、野沢では高層ホテルや大型施設の建設が制限されているため、今後も大量の外国人客を受け入れることは難しいでしょう。そのため、隠れた価値のあるスキー場として、静かで質の高い体験を保ち続けることができています。

まとめ

ニセコはもちろん素晴らしいですが、次に注目すべき日本のスキー場は意外と多く、白馬、ルスツ、富良野、野沢温泉など、それぞれに独自の魅力があります。

混雑を避けたい方、静かで質の高いパウダースノーを楽しみたい方、日本ならではの文化や観光も満喫したい方など、目的に合わせて「次のニセコ」を選ぶ楽しみがあります。

日本のスキー場は、滑るだけでなく滞在全体が思い出になる場所です。スノーボードやスキーを楽しむだけでなく、日本ならではの食事や温泉、観光も組み合わせることで、より充実した旅を体験できます。日本の方にとっては当たり前のことでも、海外の方にはとても魅力的に映ります。今季のスノーボードトリップで、日本のスキー場の良さをぜひ再確認してみてください。

飯田房貴

1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
ウィスラーではスノーボード・インストラクターとして活動する傍ら、通年で『DMKsnowboard.com』を運営。SandboxやEndeavor Snowboardsなど海外ブランドの日本代理店業務にも携わる。
また、日本最大規模のスノーボードクラブ『DMK CLUB』の創設者でもあり、株式会社フィールドゲート(東京・千代田区)に所属。
1990年代の専門誌全盛期には、年間100ページペースで記事執筆・写真撮影を行い、数多くのコンテンツを制作。現在もその豊富な経験と知識を活かし、コラム執筆や情報発信を続けている。
主な著書に、
スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』
スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』などがある。
現在もシーズン中は100日以上山に上がり続け、スノーボード歴は40年(2025年時点)。
2022年には、TBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター』や、講談社FRIDAYデジタルの特集「スノーボードの強豪になった意外な理由」にも登場するなど、専門家としての見識が評価されている。

インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/

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