【コラム】スノーボーダーはチビが有利なスポーツ

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboarr.com

スケートボード、スノーボードの二刀流で活躍する平野歩夢選手のプロフィールを調べていて、身長が自分と同じ165cmであったことを知り、なんかより親近感が湧きました。
海外に出るとわかるのですが、身長が165cmしかないと周りの人たちは頭一つ高く、自分の身体の小ささを感じるものです。
久しぶりに日本に帰って満員電車に乗っていると「あれ、オレって意外に背が低くないな」なんて思うこともあります。
そんな小柄な人が多い日本人だからこそ、スノーボードに向いていると思います。

小さい方が俊敏性が高い

多くのスポーツでは、体格がある方が有利ですが、逆に身体が小さい方が有利であるものもあります。

身長が高い方が有利:バスケットボール、バレーボールなど
身長が低い選手が活躍するスポーツ:体操競技など

あとは、同じスポーツでも、ポジションによって体格差に影響されるようなこともあります。

僕たちがやっているスノーボードというのは、小さい方が有利でしょう。
国内では、冒頭に紹介した平野歩夢の他、國母和弘など。カナダで活躍しているプロでも、自分の身長とあまり変わらないライダーも結構います。
海外のライダーたちを取材していて、「あのライダー、意外に小さいなあ」と思ったこともしばしばあります。
なんとなく、写真や映像のイメージでは大きい人かな、と思っていたライダーが、実際に会ってみたら、そうでもなかったという感じ。

例えば、デヴァン・ウォルッシュ、ケビン・サンサローンは、小柄です。あとは、JFペルシャやダスティ・クレイバンも、僕とあまり身長が変わらないです。なぜかレジェンドと呼ばれるライダーにおチビさんが多いようですね。
90年代に活躍したレジェンド、ピーター・ラインも小柄でした。
本当かどうかわからないけど、ピーター・ラインは幼い時、チビで暗かった性格なので、いじめられっ子で苦労したと聞いたことがあります。それが、スノーボードの世界に入って活躍したことで、自分の居場所を見つけたそうです。

なぜ、スノーボーダーにチビが多いか?

それは、小さい方が俊敏性が高いからです。
小学生の時、クラスでも前から1、2番くらいの背の低い子が、リレーの選手だったりした姿、見たことがある人もいると思います。
自分も、前から2番目だったけど、小学生の時はクラスで4人選ばれるリレーの選手でした。一番前のコシイシくんも速かったなあ、と思います。なぜか、コシイシくんは僕が自転車に乗っていても、自分は自転車に乗らずに走っている子でした(笑

実際、今、自分の周りにいるウィスラーのライダー、一樹くんリョウくんも自分の身長とそう変わらない小柄な体格です。
でも、メチャクチャ俊敏性が高くいい動きします!

なぜ小さい人は俊敏性が高いのか?

そもそもなぜ小さい人は、俊敏性が高いのでしょうか?

仮に同じ運動能力のAさんとBさんがいるとしましょう。
運動能力とは、あくまでも「能力」だけに脳内における運動力です。

だけど、もしAさんはBさんよりも身長が半分しかなかったら、BさんはおそらくAさんよりも相当に身体を動かすのが大変だと思います。
何しろ身体を動かす能力は同じながら、身体の大きさは2倍あるので。

仮にBさんの運動能力がAさんよりも2倍にあったら、この二人は同じ運動ができるハズ。

僕はスノーボードのインストラクターもしているのですが、大きな人が来ると「本当、苦労されて頑張っているな」という姿を見かけます。
例えば、僕の体重は55キロくらいですが、生徒さんの中には体重が110キロくらいある人がいます。つまり、僕の身体がそのまま2つ入っているような人です。

そんな大柄な人は、立つのも苦労。
カカト側の横滑りをする時に立てない人もいます。
仕方ないので、ロールオーバー(でんぐり返し)して、つま先側になっていただき、そこからなんとか立って、横滑り。そして斜滑降からターンにつなげるようなレッスンをします。
そんな大きな人は、小さい人よりも2倍とか苦労されて上達されていくのかもしれません。

滑るだけなら大きな人の方が速い

『スノーボードがチビが有利』というここまで伝えて来た内容は、特に俊敏性が必要とされるフリースタイルの技術にフォーカスした話です。
滑るだけだったら、身体が大きい人の方が速く有利です。

ウィスラーでは、長い迂回コースがあるのですが、そういうところでは身体が大きい人がどんどん速く滑り去ってしまいます。
斜面があるところでは、僕が先頭に立って生徒さんをリードしていきますが、迂回コースに入ったとたんメチャクチャに速く滑る生徒さんがいたりします。

かつて僕は、ブラッコムで行われたワールドカップのスノーボードクロス大会の取材をしていたことがあります。
その時、思ったのは日本人選手の技術の高さ。身体が大きい外国人選手と比べても、あきらかにライディング・スタイルはカッコいい。見た目も速そう。
だけど、実際にレースになると大きい外国人選手に抜かれてしまいます。
アルペン競技でも同じです。身体が大きい選手ばかり。
身長180センチ以上がゴロゴロいます。

一方、ハーフパイプのワールドカップでは身長170cm前後の選手たちばかり。

もちろん例外はあります。
オーストラリアのスコッティ・ジェームスは185センチもあります。
ソチ・オリンピックでは、日本人選手の平野歩夢、平岡卓が見事に銀と銅メダルを獲得しましたが、その時にいっしょに表彰台に立ったユーリ・ポドラドチコフ(スイス)は、頭一つ高かったですね。

もう1つのスノボ有利の体格は細マッチョ!

身体が小さい方が俊敏性が高い。だけど、身長が高い人が必ずしも劣るということではなく、あくまでもそういう傾向があるということです。
そして、もう1つスノーボード向きの身体というと、細マッチョということが挙げられます。
これは以前、Xゲームのメダル常連のマックス・パロットが言っていたのですが、彼が心掛けていたのは細マッチョのボディ作りです。


マックスの体重は、155ポンド。およそ70キロだそうです。彼の身長の割には、軽いです。
マックスの筋トレのゴールは、体重を増やさないことにあると言います。
というのも、重くなると、スピンに支障を来たすから。
また、スノーボーダーは転ぶことが多いので、そういう時でも体重が軽い方が痛みを軽減でき、怪我の防止につながると言います。

確かに細そうな感じで、意外に筋肉がありそうなライダーって多いですよね。
女性トップ・ライダーであるアンナ・ガッサーも、そんなボディの印象があります。

上のインストグラムの写真、特に2枚目を見ると「細い!」と思ってしまいます。
「よくぞ、こんな華奢なスリムボディであれだけの巨大キッカーを飛ぶもんだな」と思ってしまいますが、細くてしなやかな身体は自由に自分のボディをコントロールさせる力につながり、また転倒の際の衝撃も逃がしてくれるのでしょう。

ということで、そこで仕事帰りのビールが楽しみなお父さん、今夜はちょっと我慢かな!?

デブでもお年寄りでもスノーボードは楽しめる!

ここまでの話を聞いて、「ああ、自分の身体はスノーボードに向かないなあ」と思った人もいるかもしれませんが、これはあくでも傾向の話です。それも俊敏性を必要とするフリースタイル系の話と言ってもいいでしょう。
先にお伝えしましたが、体格がある方が速く滑れるので、カービング戦士向きだったりします。
海外でも逆にデブという体型を全面に出し、活躍しているプロ・スノーボーダーもいますよ。

スウェーデン出身の兄弟チームTHE FAT AND THE FURIOUSは、世界一過激なデブチビ兄弟して知られています。


どっちがお兄さんでどっちが弟さんかはわからないのですが、兄弟のどちらかがポッチャリ体型で、その容姿とは裏腹の過激なスノーボーディング・スタイルがひじょうに魅力的です!

体型というテーマでここまでお話して来ましたが、お年寄りだってスノーボードを楽しめます。
ウチのイントラの中にも70歳を超えている方もいるし、以下に紹介するおじいさんは、ジブ・アイテムにも果敢にチャレンジしていて、この動画は多くの人から賞賛されました。
自分のライディングの後にすかさずビデオ映像チェックし、研究しているひた向きさには、本当に頭が下がる思いです。


このおじいさんの姿を見ると、「よし、オレもまだまだ頑張るぞ!」と勇気が湧くのではないでしょうか。

自分の生徒さんの中で、毎年ウィスラーに来てくれる台湾のスノーボーダーがいます。
ニックネームがタンクというのですが、彼はたしかにのネーム通りのご立派な体格な持ち主。だけど、スノーボードを始める前は、もっと大きくて体重が150キロオーバーだったそうです。
スノーボードを始めたことで、体重が落ちて今では100キロほどになりました。つまり、僕のような人間が一人そのままなくなったダイエットに成功したわけです。
タンクさんは、そんな体格でもスノーボードがとてもうまくツリーだって付いて来ます。カナダのインストラクターの資格ももっています。

初心者の人は、レッスンに来ると、最初に行う練習、片足スケーティングや横滑りなどで、相当、体力を使われます。
たしかに、スノーボードって、上下のウエアを着て、ブーツを履いて歩くだけでも結構な運動になります。その上、慣れない運動を始めたら、相当疲れるってわけです。
また寒いところに行くと、身体はブルブル震えることで、温めるようにします。だから、寒い日ほど、体力の消耗が激しいのです。
実際、マイナス10度ほどの日にレッスンすると、凄い体力の消耗を感じます。お風呂に入ったら、一瞬落ちるというか寝てしまいそうな日もあります。

だから、スノーボードというのは、エネルギーを消費しダイエットにも最適だと思うのです。
しかも、バランスが必要だから、いつまでも身体を若く保つ効果もあります。

太っている、年齢がいっている、「だからスノーボードに向いていない?」と思いの方に伝えたいです。
むしろそんな人こそ、スノーボードをやってほしい!と。

僕の周りには、スノーボードが好きなおじさんおばさんも多いですが、みんな元気です!やはりダイエット効果もあって、身体も引き締まっている人が多いですね。
また何より、みなさん若々しい!!
きっと、スノーボードという楽しい遊びが、生き生きとさせるのだと思います。

スノーボードは小さい人の方が有利なスポーツだけど、スノーボードをすることでダイエットができ、いつまでも若々しくいられます。
もし、今、これを読んでスノーボードを始めようかな、と思ったら、ぜひ体験することをオススメします。
スノーボードはきっとあなたの人生に素晴らしい時間を与えてくれることでしょう。

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。最新執筆書『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は36年。