
文:飯田房貴 @fusakidmk
近年、スノーボードギアの価格が上昇し、リフト券の値段やガソリン代まで高騰しています。スノーボードを続けたい気持ちはあっても、出費がかさみ、節約の方法を探している方も多いのではないでしょうか。
そんな中、注目を集めているのが中古のスノーボードギア市場です。ヤフオク!やメルカリ、さらにはブックオフでもスノーボード用品を見かけるようになりました。
目次
中古ギアの中でも、注意が必要なアイテムとは?
確かに、日本人はモノを丁寧に扱う文化があるため、中古でも状態の良いアイテムが見つかるかもしれません。板やビンディングは劣化具合を見ながら選べば、中古でも十分に使えるケースが多くあります。
ただし、絶対に中古で購入すべきではないアイテムがひとつあります。
それが、スノーボード用のヘルメットです。
ヘルメットは「一度限り」の命を守る道具
スノーボード用ヘルメットは、見た目には頑丈に見えるかもしれません。しかし、その内部構造は一度衝撃を受けた瞬間に、その保護能力を大きく失う「一発屋(ワンヒット・ワンダー)」なのです。
ジャンプで転倒したとき、あるいは滑走中のクラッシュで頭を守ってくれた場合でも、見た目に傷や変形がなかったとしても、内部の衝撃吸収構造(EPSフォームなど)はダメージを受けている可能性があります。
これは、ヘルメットに採用されている構造上の特性であり、多くのメーカーも「衝撃後は買い替えるべき」としています。
MIPSの研究者も警告「外見では劣化はわからない」
衝撃吸収システム「MIPS(ミップス)」の研究者による動画でも、ヘルメットは外見からでは安全性の有無を判断できないと述べられています。
見た目が綺麗でも、すでに十分な保護機能を果たせない状態かもしれないということを、ぜひ知っておいてください。
安心・安全にスノーボードを楽しむために
スノーボードは、時に大きな衝撃を伴うスポーツです。命を守るヘルメットだからこそ、中古ではなく新品を購入するべきアイテムだと強く言いたいです。
節約するなら板やバインディング、ウエアなど他の部分で調整して、ヘルメットだけは妥協しないことをおすすめします。
ヘルメットの常識、実は知られていない?
驚くべきことに、ヘルメットが一度の衝撃で使えなくなるという事実は、メーカーや一部のプロライダーは知っていても、一般ユーザーやショップスタッフでさえ知らないケースがあります。
実際に私の知人(バイク乗り)はそのことを以前から知っていて、「ヘルメットは一度でも落としたら買い替えるべき」と話していました。バイク業界では常識でも、スノーボードでは意外と知られていないんです。
ぜひ「ヘルメット 一度 落とした 買い替え」などのキーワードで検索してみてください。多くの専門家が警鐘を鳴らしています。
中古でもかぶらないよりマシ? でも…
もちろん、「何もかぶらない」よりは、中古のヘルメットでもあったほうがマシです。
- 頭皮(無防備) < ビーニー < 中古のヘルメット < 新品の認証済みヘルメット
この順番は、衝撃に対する保護能力のイメージです。
ただ、せっかく命を守るためにヘルメットをかぶるのであれば、やはり新品の、正規の安全認証がついたものを選ぶのがベストです。**「ヘルメットは命の保険」**と考えて、ここだけは妥協しないことをおすすめします。
安心して選ぶために:CE EN1077認証の確認を
スノーボード用ヘルメットを選ぶ際には、CE EN1077:2017 Class Bなど、国際的な安全基準に準拠したモデルを選びましょう。最新モデルの多くはこの基準を満たしており、安全性の面でも信頼できます。
飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は39年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
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