
ミラノ・コルティナ五輪スノーボード女子ハーフパイプ決勝で、小野光希(21)が銅メダルを獲得した。前回・北京五輪で9位に終わり、悔し涙を流したあの日から4年。リベンジを胸に刻み続けてきた若きライダーが、ついにオリンピックの舞台で歓喜の涙を流した。
決勝には日本勢4人全員が進出。世界最高峰の舞台で、日本の層の厚さを証明する一戦となった。
決勝は予選を勝ち上がった12人が3本のランに挑み、その中のベストスコアで順位を争うフォーマット。ミスが許されない一発勝負の緊張感の中、小野は1本目から完成度の高いルーティンを披露した。
スタートはフロントサイド900テールグラブ。高さと安定感をしっかりと示すと、続くバックサイド540ミュートで流れをつくる。そして3ヒット目、勝負を決める大技フロントサイド1080テールを完璧にメイク。回転軸の安定、着地のクリーンさともに申し分のない出来だった。さらにキャブ720ステールフィッシュ、締めはスイッチバックサイド540まで滑り切り、トップからボトムまで一切のミスなくまとめ上げる完成度の高いラン。スコアは85.00点。いきなり表彰台圏のルーティーンをメイクした。
2本目、3本目はさらなる上積みを狙い、構成を強化。2ヒット目のバックサイド540を900へと引き上げ、難度アップに挑戦した。しかし攻めた分リスクも大きく、ランを最後までまとめることができない。結果的に1本目の85.00点がベストスコアとなり、その完成度の高さが最終順位を守り抜く形となった。
北京で流した悔し涙から4年。攻めと安定を両立させた1本目のランこそが、小野光希にオリンピック初メダルをもたらした決定的な滑りだった。
表彰式では、銅メダルを両手に乗せ、静かに見つめながら微笑む姿が話題に。「たくさんの想いが詰まったメダル」という言葉通り、その表情には北京での悔しさ、世界選手権での経験、そして支えてくれた人々への感謝が滲んでいた。SNS上では「これ見ただけでグッとくる」「静かに噛み締める姿が素敵」「美しい」と称賛の声が相次いだ。
金メダルをさらったのは、韓国の17歳チェ・ガオンだった。
1本目、いきなり激しいクラッシュ。メディカルスタッフがパイプ内に入り、会場は騒然とする。立ち上がれるのかさえ心配される状況だった。続く2本目もランをまとめきれず、表彰台争いから後退。五輪3連覇を狙うクロエ・キムがトップに立つ中、「今大会はここまでか」と誰もが思ったはずだ。
しかし最終3本目、チェは歴史に残るカムバックをやってのける。
スタートはスイッチバックサイド900ミュート。大舞台でいきなり高難度トリックを選択し、流れを作る。続くキャブ720トラックドライバーで高さと完成度を示すと、さらにフロントサイド900ステールフィッシュをクリーンにメイク。そして締めはフロントサイド720インディ。トップからボトムまで一切の乱れなく滑り切る、気迫と技術が融合した完璧なランだった。
ジャッジが示したスコアは90.25点。暫定首位に立つと、残るライダーの滑りを待つ緊張の時間。最終滑走のクロエ・キムが3ヒット目で転倒した瞬間、チェの金メダルが確定した。
激しいクラッシュからの逆転劇。17歳がやってのけた奇跡のランは、韓国スノーボード史上初の五輪金メダルという歴史的快挙となった。まさに五輪の舞台にふさわしい、魂の滑りだった。
銀メダルは、五輪3連覇に挑んだ絶対女王クロエ・キム(アメリカ)。平昌2018、北京2022に続く金メダルを狙い、今大会も優勝候補の筆頭として決勝に臨んだ。
1本目から圧巻の構成を披露する。
バックサイド720インディで高さを見せると、続くスイッチバックサイド・メソッドで流れを加速。3ヒット目にはキャブ・ダブルコーク1080ステールフィッシュという超高難度トリックを投入し、会場を沸かせる。さらにフロントサイド900テール、そして締めはマックツイスト・インディ。完成度、難度ともに世界最高レベルのランをまとめ、88.00点をマーク。堂々のトップに立った。
2本目以降はさらなる上積みを狙い、キャブ1080からフロントサイド1080へとつなぐ大技コンボに挑戦。しかし回転系の着地が合わず、クリーンに決め切ることはできなかった。最終ランでも攻めの姿勢を貫いたが転倒。得点の更新はならなかった。
それでも1本目の88.00点が最後まで有効となり、結果は銀メダル。3大会連続メダルという偉業を成し遂げ、女子ハーフパイプ史にその名を刻み続けている。
金には届かなかった。しかし挑戦し続けたその姿勢こそが、絶対女王たる所以だった。
日本勢も総じてハイレベルな戦いを見せた。
清水さらは4位。安定感あるライディングで表彰台に迫る滑りを披露した。
工藤璃星は5位。1本目77.50点から2本目81.75点へとスコアを伸ばし、着実な成長を示した。
冨田せなは9位。強豪ひしめく決勝で最後まで攻めの姿勢を貫いた。
決勝では12人中5人が1本目をクリーンに滑り切るなど、全体のレベルは極めて高かった。その中で日本は3位、4位、5位、9位と4人全員がトップ10入り。世界トップクラスの実力を改めて証明した形だ。
小野にとってこの銅メダルは、世界選手権で2大会連続3位を経験してきたキャリアに、オリンピックという新たな輝きを加えるものとなった。「素晴らしい選手たちと一緒にメダルを取れて本当に嬉しい。みんなが刺激をくれる」と語った言葉通り、互いに高め合う世界のトップライダーたちとの戦いが、彼女をここまで押し上げた。
17歳の新王者チェ・ガオンの誕生、クロエ・キムの偉業への挑戦、そして日本勢の厚い選手層。ミラノのパイプは、新旧世代が交錯するドラマの舞台となった。
その中で、小野光希が静かに見つめた銅メダルは、日本スノーボード界の未来を照らす光でもある。涙を越えた先に掴んだこの一枚は、次の世代へと確かに受け継がれていく。
ミラノ・コルティナ五輪 女子スノーボード・ハーフパイプ決勝結果
| 順位 | 選手名 | 国 | 1本目 | 2本目 | 3本目 | ベスト |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | チェ・ガオン | 韓国 | 10.00 | — | 90.25 | 90.25 |
| 2 | クロエ・キム | アメリカ | 88.00 | — | — | 88.00 |
| 3 | 小野光希 | 日本 | 85.00 | — | — | 85.00 |
| 4 | 清水さら | 日本 | 10.50 | — | 84.00 | 84.00 |
| 5 | 工藤璃星 | 日本 | 77.50 | 81.75 | — | 81.75 |
| 6 | 蔡雪桐 | 中国 | 73.00 | 80.75 | — | 80.75 |
| 7 | 呉紹桐 | 中国 | 67.75 | 70.25 | 78.00 | 78.00 |
| 8 | キム・ベア | アメリカ | 7.25 | 77.00 | — | 77.00 |
| 9 | 冨田せな | 日本 | 23.50 | 68.25 | — | 68.25 |
| 10 | ケラルト・カステジェット | スペイン | 4.75 | 24.00 | 33.50 | 33.50 |
| 11 | エリザベス・ホスキング | カナダ | 27.50 | — | — | 27.50 |
| 12 | マディ・マストロ | アメリカ | 5.50 | 5.25 | — | 5.50 |
スノーボード競技 メダル状況(2026年2月13日現在)
| 順位 | 国名 | 🥇 金 | 🥈 銀 | 🥉 銅 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本 | 2 | 1 | 1 | 4 |
| 2 | オーストリア | 2 | 1 | 1 | 4 |
| 3 | 韓国 | 1 | 1 | 1 | 3 |
| 4 | アメリカ | 0 | 1 | 0 | 1 |
| 5 | チェコ | 1 | 0 | 0 | 1 |
| 6 | カナダ | 0 | 1 | 0 | 1 |
| 7 | ニュージーランド | 0 | 1 | 0 | 1 |
| 8 | イタリア | 0 | 0 | 1 | 1 |
| 9 | 中国 | 0 | 0 | 1 | 1 |
| 10 | ブルガリア | 0 | 0 | 1 | 1 |

