スノーボードは、1990年代以降、急速に普及したウィンタースポーツです。世界中の多くの若者が、スキーよりもスノーボードを好むようになりました。そこでIOC国際オリンピック委員会は、1998年の長野オリンピックで、いきなりスノーボードを競技種目にしました。
スノーボードのオリンピックでの歴史は浅いけど、すでに最も人気のあるエキサイティングなスポーツになっています。
北京オリンピックが始まる今シーズン、これまでに開催された6回のスノーボード五輪を振り返りましょう。
今回のパート2では、 いよいよ日本人選手の大活躍が始まった2010バンクーバー、2014ソチ、2018平昌、2002ソルトレイクシティー大会を取り上げます。
2010 VANCOUVER
2010年バンクーバーオリンピックのスノーボード競技が、サイプレスマウンテンで開催されました。
男子ハーフパイプでは、ショーン・ホワイトが2大会連続の金メダル獲得となりました。
ショーンはその後、自身のInstagramのQ&Aで、「これまでのオリンピックで一番良かった瞬間は?」の質問に対して、「2010年バンクーバー冬季オリンピックでダブルマックツイストを決めた瞬間」と答えています。それほど、ショーンにとっても思い出深い大会となりました。
銅メダルを獲得したアメリカ代表のスコッティ・ラゴは、夜のパーティで物議を醸す写真が浮上し、試合終了前に帰国しました。当時は、ちょっとしたスキャンダルとなり、全米で話題となりました。
2010年のバンクーバー冬季オリンピックから、ハーフパイプのサイズが大きくなり、18フィートのサイズから22フィートへと変更されました。その結果、エア(ジャンプ)はさらに高くなり、技の回転数も増えました。技が難しくなったことで、スノーボードの魅力がより多くの人に伝わるようになりました。
女子ハーフパイプでは、ケリー・クラーク選手が金メダル候補と言われていましたが、実際に優勝したのは、オーストラリアのトーラ・ブライトでした。
トーラは、開会式でオーストラリアの旗手に選ばれるほど期待されいました。女子ハーフパイプの決勝では、事前のトレーニングで2度の脳震盪を起こすアクシデントがありながらも、予選を1位で通過しています。決勝では、1本目で転倒したので、2本目にトーラが最初の滑走者となりました。そして、2本目で見事なランを成功させ、45.0点というハイスコアを残します。その後に滑った決勝の選手たちは、そのスコアを抜かせず、トーラが栄冠に輝きました。
Men’s Halfpipe Results
Gold: Shaun White(United States)
Silver: Peetu Piiroinen(Finland)
Bronze: Scott Lago(United States)
Women’s Halfpipe Results
Gold: Torah Bright(Australia)
Silver: Hannah Teter(United States)
Bronze: Kelly Clark(United States)
一方、アルペン種目。男子パラレルGS決勝の1本目で、ジェシー・ジェイ・アンダーソン(カナダ)は相手のカール選手と0.76秒差をつけられましたが、2本目に逆転勝利!!!地元カナダのヒーローが金メダルを獲得し、会場は盛り上がりを見せました。
ジェシー・ジェイ は2010年のバンクーバー五輪を最後に引退しましたが、2014年のソチ五輪に出場するためにスノーボードに復帰し、最年長で出場して最終的に14位でフィニッシュしました。
ジェシー・ジェイは、1998年、2002年、2006年、2010年、2014年、2018年、なんと6度も冬季オリンピックに出場しています。
Men’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Jasey-Jay Anderson(Canada)
Silver: Benjamin Karl(Austria)
Bronze: Mathieu Bozzetto(France)
Women’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Nicolien Sauerbreij(Netherlands)
Silver: Ekaterina Ilyukhina(Russia)
Bronze: Marion Kreiner(Austria)
スノーボード・クロスでは、マエル・リッカーが金メダルを獲得し、カナダ人女性として初めて自国開催のオリンピックで金メダルを獲得しました。
マエリは準々決勝を快勝しましたが、予選で3位に終わったため、金メダル候補のリンゼイ・ジャコベリスと準決勝を行うことになりました。しかし、 リンゼイはゲートを外したため失格となり、リッカーはそのまま決勝に進みました。
決勝戦、マエリはスタートで大きくリードし、比較的容易にレースを進めて見事に金メダルを獲得した。
彼女は、幼少期を過ごしたノースバンクーバーからわずか数分の場所で金メダルを獲得し、このオリンピックの勝利を「クレイジーな夢のよう」とコメントしています。
Men’s Snowboard Cross Results
Gold: Seth Wescott(United States)
Silver: Mike Robertson(Canada)
Bronze: Tony Ramoin(France)
Women’s Snowboard Cross Results
Gold: Maëlle Ricker(Canada)
Silver: Déborah Anthonioz(France)
Bronze: Olivia Nobs(Switzerland)
2014 SOCHI
2014年ソチ冬季オリンピックのスノーボードは、ロサ・クトゥール・エクストリームパークで開催されました。
ソチオリンピックでは、スノーボードの人気種目であるスロープスタイルと、アルペン競技のパラレルスラロームも追加されました。
そして、スノーボードの開幕戦に選ばれたのはスロープスタイルです。
メダル候補の一人、ノルウェーのトースタイン・ホグモは、公開練習中に転倒して負傷したため、出場は叶いませんでした。
ショーン・ホワイトは当初、スロープスタイルに出場する予定でしたが、直前に回避します。おそらく危険を察知したのでしょう。
練習中の転倒で鎖骨を骨折したトースタインことや、一部のジャンプが急すぎるという他の選手からの苦情により、主催者は大会前週にスロープスタイルのコースを変更することになりました。
男子ではセージ・コッツェンバーグ、女子ではジェイミー・アンダーソン、共にアメリカ出身の選手は、スロープスタイル初代チャンピオンとして輝きました。
Men’s Slopestyle Results
Sage Kotsenburg(United States)
Ståle Sandbech(Norway)
Bronze: Mark McMorris(Canada)
Women’s Slopestyle Results
Gold: Jamie Anderson(United States)
Silver: Enni Rukajärvi(Finland)
Bronze: Jenny Jones(Great Britain)
男子ハーフパイプでは、ユーリ・ポドラドチコフ(スイス)が得意のキャブダブルコーク1440(※本人曰く「YOLOフリップ」)を成功させ、金メダルを獲得しました。
銀メダルは平野歩夢、銅メダルは平岡卓でした。この結果は、日本人にとって初のオリンピックでのスノーボード競技のメダル獲得となり、日本中にスノーボード・ブームが巻き起こりました。
優勝候補だったショーン・ホワイトは、本来の実力を発揮できず4位に終わりました。当時、温暖で雪不足だったソチでは、ハーフパイプのクオリティが悪く、その影響でショーン選手も良い成績を残せなかったと言われています。このソチ大会は、彼にとって最も悔しい結果となりました。
女子ハーフパイプでは、ケイトリン・ファリントン(アメリカ)が金メダルを獲得しました。ケリー・クラーク(アメリカ)が金メダル候補と予想されていたけど、銅メダル。この結果はちょっとしたサプライズでした。
ケリーの競技成績からすれば、オリンピックでもっと金メダルを取ってもいいはずなのですが、勝利の女神の微笑みを得ることはできませんでした。
銀メダルを獲得したのは、2010年バンクーバー冬季オリンピック金メダリストのトーラ・ブライト(オーストラリア)です。
Men’s Halfpipe Results
Gold: Iouri Podladtchikov(Switzerland)
Silver: Ayumu Hirano(Japan)
Bronze: Taku Hiraoka(Japan)
Women’s Halfpipe Results
Gold: Kaitlyn Farrington(United States)
Silver: Torah Bright(Australia)
Bronze: Kelly Clark(United States)
男子スノーボードクロスのビッグファイナルは、非常にエキサイティングなレースとなりました。金メダルはフランスのピエール・ヴォルティエ、銀メダルは地元の英雄ニコライ・オリュニンが獲得しました。
Men’s Snowboard Cross Results
Gold: Pierre Vaultier(France)
Silver: Nikolay Olyunin(Russia)
Bronze: Alex Deibold(United States)
Women’s Snowboard Cross Results
Gold: Eva Samkova(Czech Republic)
Silver: Dominique Maltais(Canada)
Bronze: Chloé Trespeuch(France)
ヴィック・ワイルド(ロシア)は、同じ冬季大会で2つのメダルを獲得した史上初のスノーボーダーとなりました。
ヴィック は元々は、アメリカ代表選手でしたが、2010年の冬季オリンピック後、アメリカのスキー・スノーボード協会がアルペン・スノーボード・チームを閉鎖。そのため、2011年にロシアのスノーボーダー、アレナ・ザヴァルジナと結婚すると、ヴィック 手はロシアの市民権を申請したのです。
Men’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Vic Wild(Russia)
Silver: Žan Košir(Slovenia)
Bronze: Benjamin Karl(Austria)
女子パラレルGSでは、金メダルがスイスのパトリツィア・クマー、銀メダルが日本の竹内智香、銅メダルがロシアのアレナ・ザヴァルジナでした。
アルペン競技では、欧米人が圧倒的に強かったのですが、竹内選手が遂にアジア人として初めてメダルを獲得しました。
Women’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Patrizia Kummer(Switzerland)
Silver: Tomoka Takeuchi(Japan)
Bronze: Alena Zavarzina(Russia)
ソチオリンピックでは、スノーボードのアルペン競技の内、パラレルGSの他、パラレルスラロームも開催されました。しかし、この種目はオリンピックで1回しか開催されませんでした。将来的にアルペン種目がより注目されれば、復活するかもしれません。
Men’s Parallel Slalom Results
Gold: Vic Wild(Russia)
Silver: Nevin Galmarini(Switzerland)
Bronze: Žan Košir(Slovenia)
Women’s Parallel Slalom Results
Gold: Julia Dujmovits(Austria)
Silver: Anke Karstens(Germany)
Bronze: Amelie Kober(Germany)
2018 PYONGCHANG
2018年の平昌オリンピックではスノーボードのフリースタイル人気により、ビッグエア種目が追加されました。しかし、アルペン種目のパラレル・スラロームは姿を消すことになります。
スノーボードのスーパースター、ショーン・ホワイト(31歳)が4度目の五輪に挑んみました。
スロープスタイルでは、強風のため競技開始が遅れ、選手は集中力の維持と風への対応に悩まされました。
男子の金メダルはアメリカの若手実力者レッド・ジェラード、女子はジェイミー・アンダーソンに贈られました。ジェイミーは、2大会連続の金メダル獲得という偉業を達成しました。
コースは非常にテクニカルで、特に印象的だったのは、最初のジャンプでの複数回のテイクオフです。(※上のイラスト参照)
Men’s Slopestyle Results
Red Gerard(United States)
Max Parrot(Canada)
Bronze: Mark McMorris(Canada)
Women’s Slopestyle Results
Gold: Jamie Anderson(United States)
Silver: Laurie Blouin(Canada)
Bronze: Enni Rukajärvi(Finland)
平昌五輪の男子ハーフパイプ決勝は、スノーボードオリンピックの中でも最も劇的な幕切れだったのではないでしょうか。
2本目、平野歩夢がキャブダブルコーク1440からフロントサイドダブルコーク1440を成功させ、オリンピック初の快挙を成し遂げました。この滑りで平野選手はトップに立ちました。
ショーンは2本目が不発に終わり、最後の3本目に挑みます。ショーンは1本目にフロントサイドダブルコーク1440を決め、2本目にはキャブ1440をクリーンに決めました。この後も、ショーンは見事に技を繋いでほぼ完璧なルーティンを披露。大逆転で金メダルを獲得しました。
平野選手にとっては、2大会連続で銀メダルという快挙でしたが、今回の銀メダルは本人にとって悔しい結果だったでしょう。
平昌五輪後、ショーン・ホワイトと平野歩夢がともにスケートボードで東京五輪に行くことを表明し、再び夏にライバル同士の対決が期待されました。しかし、残念ながらショーンは代表チームに入ることができず、一方の平野選手は念願の夏冬両方のオリンピックに出場することができました。
女子は、初出場のクロエ・キム(アメリカ)が金メダル。スノーボード女子ハーフパイプで17歳での金メダル獲得は、オリンピックでの最年少記録となりました。
Men’s Halfpipe Results
Gold: Shaun White(United States)
Silver: Ayumu Hirano(Japan)
Bronze: Scotty James(Australia)
Women’s Halfpipe Results
Gold: Chloe Kim(United States)
Silver: Liu Jiayu(China)
Bronze: Arielle Gold(United States)
スノーボードクロスでは、フランスのピエール・ヴォルティエが2大会連続の金メダルを獲得。
その後、レッドブルが選ぶ「スノーボード界のクレイジーな動画」トップ5に選出されて、文字通りクロス界の帝王となりました。
Men’s Snowboard Cross Results
Gold: Pierre Vaultier(France)
Silver: Jarryd Hughes(Australia)
Bronze: Regino Hernández(Spain)
Women’s Snowboard Cross Results
Gold: Michela Moioli(Italy)
Silver: Julia Pereira de Sousa-Mabileau(France)
Bronze: Eva Samková(Czech Republic)
エステル・レデッカ選手(チェコ)は、アルペンスキーのスーパーGとスノーボードのパラレル大回転で金メダルを獲得し、同じ冬季オリンピックでスキーとスノーボードの2種類の用具を使って金メダルを獲得した最初の人物になりました。2つの種目で金メダルを獲得したのは、女性では2人目ですが、同じ冬季オリンピックで獲得したのは初めてです。
Men’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Nevin Galmarini(Switzerland)
Silver: Lee Sang-ho(South Korea)
Bronze: Žan Košir(Slovenia)
Women’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Ester Ledecká(Czech Republic)
Silver: Selina Jörg(Germany)
Bronze: Ramona Theresia Hofmeister(Germany)
スノーボードの人気種目、ビッグエアがついにオリンピックに登場!
初代チャンピオンは、男子がカナダのセバスチャン・トゥータント、女子がオーストリアのアンナ・ガッサー。
オリンピックにとってスノーボード種目は、世界中の若者の目を引きつけますが、ビッグエアはさらにその一役を買うことになりました。
Men’s Parallel Big Air Results
Gold: Sébastien Toutant(Canada)
Silver: Kyle Mack(United States)
Bronze: Billy Morgan(Great Britain)
Women’s Parallel Big Air Results
Gold: Anna Gasser(Austria)
Silver: Jamie Anderson(United States)
Bronze: Zoi Sadowski-Synnott(New Zealand)
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英語版 SNOWBOARDING OLYMICS HISTORY 1998/2002/2006
https://dmksnowboard.com/olympichistory2-english/