スノーボードは、1990年代以降、急速に普及したウィンタースポーツです。世界中の多くの若者が、スキーよりもスノーボードを好むようになりました。そこでIOC国際オリンピック委員会は、1998年の長野オリンピックで、いきなりスノーボードを競技種目にしました。
スノーボードのオリンピックでの歴史は浅いけど、すでに最も人気のあるエキサイティングなスポーツになっています。
北京オリンピックが始まる今シーズン、これまでに開催された6回のスノーボード五輪を振り返りましょう。
今回のパート1では、 スノボ五輪創世期時代である1998長野、2002ソルトレイクシティー、2006トリノ大会を取り上げます。
1998 NAGANO
1998年に開催された長野大会では、ジャイアントスラロームとハーフパイプの2つの競技が行われ、男女のスノーボードがオリンピック種目としてデビューしました。
その背景には、 スノーボードが当時の若者を中心に急速に普及し、その若者人気にあやかりIOCは強引な手法で、正式種目としたのです。
しかし、絶対的な強さを誇るテリエ・ホーコンセン選手は参加を拒否しました。
なぜなら、IOC(国際オリンピック委員会)は、当時のスノーボードの国際組織であるISF(国際スノーボード連盟)を無視して、それまでスキー競技を管轄していたFISにスノーボード競技を委ねたからです。
記念すべきスノーボードの初代オリンピックチャンピオンは、カナダのロス・レバリアティです。
しかしロスは、金メダルを獲得した後、尿検査の結果、循環器系にテトラヒドロカンナビノール(THC)が検出され、失格となりました。このままではメダルはく奪かと思われましたが、当時のオリンピックのルールで、禁止薬物リストにマリファナが含まれていなかったことなどを理由に、この判定は覆され、メダルを返還されました。
オリンピックの後、故郷であるカナダのウィスラーに戻ったロスは、地元の人々に暖かく迎え入れられて歓迎セレモニーが行われました。マリファナ騒動もあり、彼はテレビ番組に引っ張りだことなり、一躍で時の人となりました。
Men’s Giant Slalom Results
Gold: Ross Rebagliati(Canada)
Silver: Thomas Prugger(Italy)
Bronze: Ueli Kestenholz(Switzerland)
Women’s Giant Slalom Results
Gold: Karine Ruby(France)
Silver: Heidi Renoth(Germany)
Bronze: Brigitte Köck(Austria)
男子ハーフパイプでは、スイスのジャン・シーメン選手がオリンピックのスノーボード競技で初めて金メダルを獲得し、ノルウェーのダニエル・フランク選手が銀メダル、アメリカのロス・パワーズ選手が銅メダルを獲得しました。 この結果に、当時のスノーボーダーたちは驚きました。なぜなら、ジャン・シーメンは有名なプロのスノーボーダーではなかったからです。しかし、オリンピック後、彼はすぐに有名なスノーボーダーになりました。
冒頭でもお伝えしたように、当時圧倒的に強さを誇ったテリエ・ハーコンセンは出場しておらず、当時のスノーボード・ファンは「テリエが出ていたなあ」という思いを持ちました。
またバートン・スノーボードの創始者であるジェイク・バートン氏も長野大会に訪れ、記者からの来日目的を聞かれ、「アイスホッケーのドリームマッチ、アメリカ対カナダを見に来た」という名言ならぬ迷言を残しています。
Men’s Halfpipe Results
Gold: Gian Simmen(Switzerland)
Silver: Daniel Franck(Norway)
Bronze: Ross Powers(United States)
Women’s Halfpipe Results
Gold: Nicola Thost(Germany)
Silver: Stine Brun Kjeldaas(Norway)
Bronze: Shannon Dunn(United States)
2002 SALT LAKE CITY
スノーボードは、アメリカで生まれたスポーツです。スノーボード五輪が初めて開催されたのは、アメリカのソルトレークでした。スノーボード大国といわれるアメリカですが、男子ハーフパイプで表彰台独占に成功しました。
男子金メダルのロス・パワーズは、元々プロの大会に出場せず、FISのW杯主戦場でしたが、この後にハーフパイプ界のリーダー的存在となります。(※当時のFISのW杯は、現在のように世界屈指のトップ選手が全員出場している大会でなかったので、そこで結果を残しても評価が低かった)
一方、銀メダルのダニー・キャスは、当時、多くのスノーボーダーのあこがれであった人気プロスノーボーダーでした。
銅メダルのジャレット・トーマスは、現在アメリカのハーフパイプチームのコーチを務めています。
女子ハーフパイプでは、アメリカのケリー・クラークが金メダルを獲得しました。
彼女のエアの高さは、男子のトップレベルの選手のレベルに達し、女子ハーフパイプのレベルアップに貢献しました。
Men’s Halfpipe Results
Gold: Ross Powers(United States)
Silver: Danny Kass(United States)
Bronze: Jarret Thomas(United States)
Women’s Halfpipe Results
Gold: Kelly Clark(United States)
Silver: Doriane Vidal(France)
Bronze: Fabienne Reuteler(Switzerland)
アルペンレースは、単独で滑るGSから、二人同時にスタートするパラレルGSに変わりました。PGSでは、よりスリリングなゲームを楽しむことができます。
Men’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Philipp Schoch(Switzerland)
Silver: Richard Richardsson(Sweden)
Bronze: Chris Klug(United States)
Women’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Isabelle Blanc(France)
Silver: Karine Ruby(France)
Bronze: Lidia Trettel(italy)
2006 TORINO
2006年冬季オリンピックは、正式名称を「XX Olympic Winter Games」、通称を「Torino 2006」または「Turin 2006」といい、2006年2月10日から26日まで、イタリア・ピエモンテ州のトリノで開催された冬季マルチスポーツイベントです。
トリノ大会から新たに男女のスノーボードクロス競技が加わり、ハーフパイプ、スノーボードクロス、パラレル大回転の3種目が行われ、トリノ郊外のバルドネッキアで開催されました。
スノーボードクロスはこれまであまり知られていないスポーツでしたが、最後まで結果がわからないレース展開は初めて見る人でも楽しませてくれて、多くの人たちを熱狂させました。
トリノ大会では、スノーボードのスーパースターが出現します!
アメリカのショーン・ホワイトが、ハーフパイプで金メダルを獲得。予選の1本目、ショーンは37.7点しか出せず、予選から脱落しそうになりました。しかし、2本目には45.3点を記録しファイナルへ。そして、決勝では46.8点(50点が最高点)を記録して優勝しました。同じくアメリカのダニー・キャスが44.0点で銀メダルを獲得し、2年連続での銀メダルに輝きます。
当時のショーンは、モップのような髪型と赤毛から「フライング・トマト」というニックネームで親しまれました。
19歳でチャンピオンになった彼は、今なお現役選手として活躍し、北京オリンピックに挑戦中です。
Men’s Halfpipe Results
Gold: Shaun White(United States)
Silver: Danny Kass(United States)
Bronze: Markku Koski(Finland)
Women’s Halfpipe Results
Gold: Hannah Teter(United States)
Silver: Gretchen Bleiler(United States)
Bronze: Kjersti Buaas(Norway)
2002年に開催された冬季オリンピックで金メダルを獲得したフィリップ・ショッホは、次のトリノ大会では、パラレル大回転の決勝で兄のサイモン・ショッチと対戦しました。
決勝の1本目で、フィリップは0.88秒の圧倒的なリードを築き、オリンピックの王座を保持しました。彼は冬季オリンピックで2つの金メダルを獲得した最初のスノーボーダーです。世界選手権では、2007年にスラローム種目で2つの銀メダルを獲得している当時のアルパイン実力選手です。
Men’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Philipp Schoch(Switzerland)
Silver: Simon Schoch(Switzerland)
Bronze: Siegfried Grabner(Austria)
Women’s Parallel Giant Slalom Results
Gold: Daniela Meuli(Switzerland)
Silver: Amelie Kober(Germany)
Bronze: Rosey Fletcher(United States)
スノーボードクロスの金メダルをかけた決勝戦で、アメリカのリンゼイ・ジャコベリスは、スイスのタニヤ・フリーデン選手に43メートル(140フィート)の差をつけ、3秒のリードを保ってコースの終わりに近づいていました。最後から2番目のジャンプで、リンゼイはスピード種目に関わらずメソッドグラブというトリックを試み、転倒。タニアに抜かれて金メダルを失い、リンゼイは銀メダルになりました。このシーンは、今でも語り草となっているスノーボード珍場面です。
テレビのインタビューでリンゼイは、当初、グラブは安定性を保つためのものだったと語っていましたが、後に「私は楽しんでいた。スノーボードは楽しいもので、自分の情熱を観客と共有したかった」と語っています。
リンゼイは現在でもスノーボードクロスの女王として君臨していますが、ワールドカップでは数々の栄光を手にしているものの、オリンピックでは金メダルを獲得したことがありません。果たして、北京では悲願の金メダル獲得となるのでしょうか。
ちなみに、彼女は2008年までハーフパイプの選手としても活躍しています。
また素晴らしい歌姫でもあります。
Men’s Snowboard Cross Results
Gold: Shaun White(United States)
Silver: Danny Kass(United States)
Bronze: Markku Koski(Finland)
Women’s Snowboard Cross Results
Gold: Tanja Frieden(Switzerland)
Silver: Lindsey Jacobellis(United States)
Bronze: Dominique Maltais(Canada)
●関連記事
英語版 SNOWBOARDING OLYMICS HISTORY 1998/2002/2006
https://dmksnowboard.com/olympichistory1-english/