【コラム】スノーボードはマイルドフルネスの宝庫!集中力を高めて仕事や勉強に良い効果をもたらす

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboard.com

最近、「マイルドフルネス」という言葉をよく聞くようになりました。
「えっ、ずいぶん前からだよ」というツッコミも入りそうですが、シーズンオフになってユーチューブなど見ている時間が増えたせいか、やたらに周りで「マイルドフルネス」が飛び交っている気がします。

マイルドフルネスや瞑想は、フェイスブックやインテル、あるいはマッキンゼーといった大手企業の他、政府機関の研修でも取り入れているそうです。なぜならその効果は高く『免疫力の改善、ストレスの軽減、集中力が高まる』というようなことが期待できるからです。

そんな凄い力を持つマイルドフルネスなのですが、その方法を聞いてみると、「何を今更!そもそも毎日、自分がやっていることじゃん!」って思ってしました。
また、それはスノーボーダーが自然と実践していること。また延いては横乗りスポーツ全般で行われていることだと思いました。

大好きなスノーボードを一生懸命に行うことが、普段の生活、仕事、勉強にも良い効果をもたらすと聞いたら嬉しくなりませんか?
今回のコラムでは、そんなことをお伝えます。

今、その瞬間に集中する

マインドフルネスとは、過去の経験や先入観といった雑念にとらわれることなく、身体の五感に意識を集中させ、「今、瞬間の気持ち」「今ある身体状況」といった現実をあるがままに知覚して受け入れる心を育む練習のことだそうです。
(以下、カオナビ人事用語集から https://www.kaonavi.jp/dictionary/mindfulness/

それを聞いた時、「あれ!?そもそも自分の毎日の生活でやっていることじゃん!」と思いました。

自分のことをよく知っている人ならわかると思うのですが、だいたい僕って不器用で1つのことしかやらないのです。同時に2つのやることが苦手だと感じていました。

例えば、朝、起きたら犬の散歩をしますが、同時に音楽を聴くようなことをしません。
ただ単に、朝の散歩だけを楽しみます。太陽が出ている日は景色が綺麗だし、雨が降った日は空気が気持ちよく、深呼吸すると気分も落ち着きます。
また、曇りの日は、動物の動きが活発になり、普段あまり見かけないようなアライグマ、ウサギなんかも見つけることがあります。季節ごとに出て来る草花、あるいは山菜や松茸を見つけることも楽しみの一つです。

散歩の後には、朝食をいただきますが、その時も静粛に食べることだけを楽しみます。
「消化の良さそうなほうれん草から食べようかな。次はこのおいしそうな真っ赤なトマトをいただくか。そろそろ噛み応えがある芽キャベツ!」
そんな、ことを考えながら朝食をいただきます。

かつては食事の時には、テレビを付けてバックサウンド的に流していましたが、今はだいたいそのことだけに集中します。
それこそ、音楽を聴くことも、それだけに集中します。同時に何かしていると、脳が忙しく判断しそうな気持ちになるからです。

だから、僕は周りの人に「自分は不器用だから」と言い訳をするようにしています。
何かをしながら、同時に他のことをするということが苦手に感じていたのです。

今、その瞬間にやっていることをしっかりと楽しみたい。

で、最近よく聞く、マイルドフルネスの実践方法を聞いた時、「あれ、それって今、自分が毎日行っていることと同じじゃん!」と思ったのでした。

かつては、勉強している時でも仕事をしている時でも、必ず音楽を聴いたり、何かしながら何かをするというのがあたり前でした。だけど、歳と共に、自分に対してどういう行動を取ることが幸福感を感じるようになりました。気づいてみたら誰に言われることもなく、マイルドフルネスを自然に実践していたという感じです。

世の中の人は、「単調なことをしていて、つまらないのでは?その間は音楽でも聴いていないと寂しい感じがして、やってられないよ」という人もいるでしょう。
たしかに、その気持ちもわかります。

例えば、僕もハイウェイを運転している時には、音楽を聴いたり、ユーチューブにダウンロードしていた英語勉強動画、あるいは大好きなプロレス解説動画なんか、聴いたりしています。
晴れた日にウィスラーからバンクーバーまでのハイウェイ99を走っている時、懐かしの80年代音楽を聴いていると、青春時代の自分に戻るようでハッピーな気持ちになります。
だけど、ダウンタウンに入った途端に、こうした音楽や解説動画は、もう耳に入って来ません。気持ちが運転に集中して、バックの音が遮断されてしまうのです。

時々、超単調な数字の打ち込み作業などのワークをすることがありますが、そんな時にも音楽を聴くこともあります。

だけど、その他の一見すると単調なことでは、もうそれだけに集中する感じです。
だいたい毎日3回ほど散歩するのですが、その時にも、つまらないと感じることがありません。

例えば、「昨年たまたま登山屋で買ったこのシューズ、調子良過ぎるな。なんだろう、このクッション。気持ちいい。これをスノーボードのブーツに活用したらどうなんだろう?」なんてことを今日も考えていたし、普段、こうしたDMKでアップするコラムなども散歩中に構想を練ったりします。
あるいは、「雪山で動画撮影する時には、どんな画を最初に入れようかな。あの画とあの画を交換したら、おもしろそう!」とか、散歩しながら思考を巡らせるのです。

それこそ夜の歯ブラシをしている時でさえ、「どのようにしたら効率よくきれいに磨けるのだろう?」なんてこともよく考えます。
例えば、最近、思ったのは「そもそも歯ブラシすることって、歯を磨く効果って薄いだろうな」ということです。だったら、数十秒間、歯ブラシをした後に、すぐにフロスに切り替え、最も大切な歯茎のところをきれにする。あと、最もきれいにするのが難しい奥歯の方からやった方が効率が良さそうだな、とか、そんなことに考えながら歯を磨いています。

1日の生活がすべてこんな感じなので、散歩、食事、掃除、洗濯、お風呂、歯磨き、もちろん仕事も!すべてそれだけを行い、その時間を楽しむようにしていました。

で、それがそもそもマインドフルネスだったということでした。
そう、僕は知らぬ内にマインドフルネスの練習を日々行っていたのです!

一人のスノーボードも楽しい!マインドフルネスを実践していたから

今季は、コロナの影響でイントラの仕事も減ったので、よく一人でスノーボードをしに行きました。
すると、ゴンドラを並ぶ時に、偶然、友達に会うことがありました。
ゴンドラを並ぶ時に、友人や仲間と話しているのはとても楽しいことです。
ライダーたちと会った時には、「今度こんな撮影をしようか」なんてことを相談したり。あるいは、話をしていて「この考え方、おもしろい!」なんて、思った時には、すぐにブログという形でアウトプット化してしまったりします。

一人で滑る時も、いつも1つや2つテーマがあるので、楽しめます!
ヒールサイドのカービングをより深く堪能するためには、どうしたらいいのだろう?あの深くヒザを曲げる運動方法を実践してみようか、なんて考えたり。
そもそもヒッツで気持ちよく抜けるためには、どんな心掛けが必要か。できるだけ待つ。ともかく、超ギリまで待ってみよう、とか。
そんなことを集中して実践するためにも、一人の方が良かったりします。いっしょに仲間とセッションするのは、楽しいことだと思いますが、いっしょに滑ることに集中力を削がれたりしてしまったりするので。楽しいセッションでは、結局のところ、上達したかったことが、できなかったということもありますね。

レッスンに入っても、勝手にマイルドフルネスを実践している時もあります。

例えば、パウダーの日に、最高におもしろいスポットへ生徒さんを連れて行きます。
目の前にあるパウダーの状況で、いくつか滑りのポイントを伝えます。生徒さんは、ちょっとだけナーバス、一方で目の前に広がるパウダーでワクワクが混じっています。
レクチャーの後に僕は生徒さんのポケットが空いていないか密かに確認します。なぜなら、あまりにも素晴らしい大自然が目の前に広がっていると、生徒さんは自然に写真を撮って、エキサイト状態になり、ポケットのチャックを閉め忘れることが多々あるからです。
あとは、レギュラースタンスとグーフィスタンスの混じったクラスでは、テンションが上がり過ぎた生徒さん同士でぶつかる事故があるので、そのへんの注意もアナウンスします。

そこまでの説明や確認を終えると、自分だけの世界に入ります。
あそこまでチョッカリ、あのへんで一発目にヒール噛ますか。ちょっと強めに入れて、目の前のパウダーで景色を消そう。そのままブラインド状態だけど、感覚に頼ってトゥサイドに入る。その時は、おもいっきって身体を倒しながら、後ろ足に乗っていきスプレーを上げていこう。
もう、こういう瞑想(?)、いや妄想か!に入った時には、生徒さんのことは忘れて、自分だけの世界に入っています。

そして「行け―!」とばかりにドロップイン。パウダーと自分が、まるで一体化になったような境地に入りますね。まさに瞑想状態。自分がマザーネイチャーに抱かれて、そして溶かされて一体するような感覚になります。

スノーボーディングがマイルドフルネスの宝庫

僕は、以前、何回かサーフィンをしたこともあるのですが、あれこそマイルドフルネスの最高峰のスポーツではないか、と思います。
波の流れを読み、波の力で板に乗り、絶えず揺れ動く波に合わせながら板に乗ることは、どんなスポーツでもなかなか味わえないような素晴らしい感覚。
スケートボードもそうですが、他のスポーツ以上に上達がしっかりと確かめられるのが、横乗り3S(スケート、サーフ、スノー)スポーツの良いところでしょう。

スノーボードの場合、できなかったターンができるようになり、できなかった急斜面での滑りができるようになり、できなかったパウダーのライドができるようになり、できなかったメソッドエアができるようになり…、常に自分の感覚と相談しながら上達していきますよね。こうしたことは、マイルドフルネスに繋がるのではないでしょうか。

スノーボーダーは集中した場面が多いので、自然に日々の集中力も高まるのだと思います。こうした集中力を発揮し続けた訓練が、仕事や勉強にも役立ちマイルドフルネス効果を得れるように思います。そして、日常からのストレスから解放され、結果、免疫力も上がり健康になるのではないでしょうか。

最近ではバックカントリーが流行していますが、あのハイクアップしている時間も自分と向き合っていると思いませんか?
次の一歩をどうするか?前のステップに合わせるか?結構、細かいところに集中力を発揮しますよね。
自分の吐く息の音を聞いたり、バクバクする心臓の鼓動を感じるところなんか、まさにマイルドフルネス!

雪山で出会う、景色、音、匂いなど、まさにスノーボーディングすることは、マイルドフルネスの宝庫!!!
いつまでも若く健康で、明るいライフスタイルのためにも!ぜひ、スノーボードを続けましょう。

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。最新執筆書『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は36年。