【コラム】20-21シーズンのスノービジネスはインバウンド需要脱却からマイクロツーリズムへ

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文:飯田房貴 [email protected]

「さすが、星野リゾート代表の星野佳路さんだな」と、思わず、唸ってしまった。

最初、動画を拝見した時に、星野さんが提唱する「マイクロツーリズム」って、どんな意味だろう?と思っていて、コーヒー片手に軽く聞き流していたのだけど、途中から「ヤバい!かなり大事なことを伝えている」と思って、改めて聞き直した。

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まず、星野さんの見解は、コロナの問題は一年半も掛かるということ。
そして、マーケットが再び戻るところというのは、近場からというのだ。

まずは、数十分から一時間以内程度で来られるお客さんから。
次は、大都市圏。
そして、インバウントが戻るのは、ワクチンができてから。ということで星野さんの会社では、すでに18か月間の計画を立てているというのだ。

マイクロツーリズムというのは、15分、30分圏内、そして1時間以内で来られるお客さんをターゲットにするという、地元の人に向けた観光ビジネスということ。

実際、先週末には、国内旅行者の数が戻る傾向で、あるコメンテーターによれば、すでに半分回復したとか。
それも、ほぼ地元の人たちによる需要である。

星野さん曰く、かつては軽井沢も、こうしたマイクロツーリズムが観光ビジネスを支えていたそうだ。東京から人が来るのは夏だけで、それ以外の時期は近郊のお客さんでビジネスが支えられていたというのだ。

確かに、今のように交通が便利だった時代と違い、遠くへ行くのに「よっこいしょ」という時代は、近くで旅行を済ませていた、ということは多かっただろう。
僕自身、子供の頃、お袋の田舎である「練馬のおじいちゃんの家」に行くのが、何より楽しみでしょうがなかった。
東京江戸川区、1つの小さな町に銭湯が3軒もあるような下町に育った僕にとって、何度も電車を乗り換えて行く、練馬はちょっとした冒険でもあった。

工場の煙突ばかり並ぶ地元から、だんだんと田園風景が広がる景色を電車の窓から眺めるだけで、ワクワクしたものである。
おじいちゃんの家の水は井戸水で、夏でも冷たくておいしかった。
だけど、トイレが汲み取り式で怖かった。でも、今となっては、良い思い出である。

昭和43年生まれの僕にとって、確かにあの時代、マイクロツーリズムがあったことを思い出させてくれた。
星野さんが伝えるずっと昔からあった考え方だったのだ。

だが、近年の日本の観光産業の多くは、外国からのお客さんが来ることによるインバウンドで支えられてきた。
その結果、京都には多くの人が溢れ過ぎて、北海道のニセコは外国人だらけで、彼らが買った土地がバブル価格に。
今、僕が住むカナダのウィスラーも、海外からの来る人が多く、収益の多くは世界から来るスキー客に支えられているところが大きい。

実を言うと、こうしたグローバルビジネスが、元々いたローカルのカナダ人を追い出している。
特に、ウィスラーがアメリカのスキー場会社であるベイルグループに買収されてから、その反発感情が強くなったように思う。
例えば、ウィスラーが来季の早割パスの案内の広告をSNSでアップすると、元々ウィスラーに行っていた人からの苦情のような書き込みが多くなっている。

「その高い価格、冗談としかいいようがない」
「もう、ウィスラーには行かない。これからは同じBC州のビッグホワイトに行く」

というような内容だ。

特に今季は、まさにこれから楽しいシーズンになるという3月中旬にクローズしてしまっただけに、そのうっぷんも溜まっているようだ。
シーズンパスを買ったけど、元を取れずに、満足行かないクレジットで怒りのやり場がないようなスキー客もいる。
自分は、あまりくわしいディールまでは調べていないが、ベイル(※ウィスラーの親会社)が行った返金に、満足していない人が多いようだ。

インバウンドのビジネスが盛んになったせいで、昔からあったマイクロツーリズムが、ないがしらになったということは日本でも多かったのではないだろうか?

先日、日本のニュースを見ている時、あるお土産屋さんの商品を、全面的に国内向けに変更しているということを耳にした。
海外向けのお客さんが好む派手なジャパンを強調するようなものではなく、国内向けの商品はより実用的なお土産を好むというような内容だった。
これもすでにマイクロツーリズムを考えたビジネス展開だろう。

星野さんは言う。
「コロナ後に観光を強くするためにも、今、この時間が大切である」と。

つまり、こういう時だからこそ、元々国内に存在したマイクロツーリズムというマーケットを見直し、成長させ、地元の人にプライドを持っていただく。そして、コロナ収束後には、コロナ前よりももっと大きな観光業にしよう!ということ。

観光地に必要な需要の平準化

この番組内で、さらに星野さんは大事なポイントを伝えてくれている。
それは、「観光地に必要なのは、需要の平準化」ということだ。

例えば、日本の場合にはゴールデンウィークに人が密集し過ぎる。そうしたことを緩和し、もっと平均的に常に忙しくしようという考え方だ。
結果、定期的な従業員の雇用も守られ、観光業も栄えるということになる。

実際、海外に住む者にとっては、日本の週末などの混雑ぶりは異常にも見える。
以前に自分もDMK CLUBのキャンプを「平日の空いたできる時にできるといいのになあ。」と相棒に伝えると、

「フサキ、仕方ないよ。だって、みんな休み取れないのだから。週末にやるしかない」
と言われた。

だが、星野さんは、こうした集中した人もコロナ時代によって分散する可能性を示したのだ。

参考になるのが、海外ですでに行われいるような休み方だ。星野さんはフランスを例にとって伝えていたが、カナダにも同じような考え方がある。
カナダの場合には、2月にファミリーディというのがある。

ニューイヤー(1月)とイースター(3月~4月)の間に祝日がなかったので、ファミリーディを設けて家族に長期休暇を楽しんでもらえるようにしたのだ。
その休み期間は、カナダの各州でずれている。

これを日本に導入したたと想定して、以下の例を考えてみた。

北海道・東北エリアの住民 定められた月の頭の最初の月曜日を休み→土日も合わせて3連休になる
関東エリアの住民 定められた月月の第二週目の月曜日を休み→土日も合わせて3連休になる
中部・近畿エリアの住民 定められた月月の第三週目の月曜日を休み→土日も合わせて3連休になる
中国・四国・九州沖縄エリアの住民 定められた月月の第四週目の月曜日を休み→土日も合わせて3連休になる

もしそんなことができれば、車の渋滞が緩和される。一気に混まないので、価格を下げることできる。結果、お客さんの満足度が高まるだろう。

前のコラムでも伝えたが、コロナによってリモートワークも増えて、観光地に滞在しながら仕事ができるという環境もできてくるだろう。
コロナは悲観することだけでなく、星野さんが提唱するように観光業にチャンスも生まれるし、さらに成長できる可能性があるわけだ。

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