クラシカルなトゥイークを決めた一樹 意外と知らない!?メソッドエアの歴史

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もう5月も中旬ですが、まだ山に上がっています(笑)。
この真夏のような日差しを浴びていると自分でも「もういいんじゃないか」と思うのだけど、山に上がると涼しいし仲間たちのバイブスでテンションが上がるんですね。そして、ライダーたちと撮影しているのが、とても楽しいのです。(※一番下に現在のブラッコムの様子を紹介するVLOGアップしてあるので、よかったらチェックしてみてください)

久しぶりに中村一樹といっしょに山に上がりました。だいたい撮影する時は、ライダー主体でどこで何をするのか決めてもらうことが多いのですが、昨日も一樹ディレクション。最初は、「パイプのコンディションが良い内にトゥイークをしよう」ということになって。

一樹曰く、こうした身体を絞って、テールを上げるようにトゥイークをするのは、最近のスタイルではないと言います。それこそ10年以上前のクラシカルなスタイルだとか。最近は、もっと板を横にするのだそうです。ダニー・デービスがやっている感じが主流だと言います。知らなかったなあ。自分の中では、この一樹が決めたスタイルこそ、スタイリッシュでクールに見えます。自分もポコジャンでメソッドを決めますが、ここまでトゥイーク(捻じる)ことができないし、テールを上げることができないので、憧れてしまいますね。

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基本的に自分の中でメソッドができなくなったら、スノーボーダーではないと考えているので、メソッドは永遠のテーマ。極端な話、スタイルなんかどうだっていいと思うんですよ。実際、僕のメソッドなんか、へっぽこなスタイルだし。「メソッドをやるんだ!」という気持ちが大切。挑戦してみて例えグラブできなくてもOK。その挑戦できることこそ、永遠のスノーボーダーの証です。

世界中のスノーボーダーの中にもメソッドというトリックを大事にしていますね。ヨーロッパではスノーボード雑誌の名前になっているほどです。
Method Mag Method Snowboarding Magazine https://www.methodmag.com/

ちなみに海外では、ほぼトゥイークエアというようなトリックの名称にはなっていません。日本では、メソッドより身体を捻じって進化させたカッコいいトリックのことをトゥイークと呼んでいる人が多いのですが、海外ではトゥイークしたスタイルもメソッドエアと呼びます。日本では、90年代初めからトゥイークエアという名称なっちゃったので、そのまま誤った認識で今でもそのように呼ばれてしまうのです。

90年代には、よくベン・ウェインライトというライダーと日本向けの雑誌やビデオでハウツーを作っていたのですが、彼にトゥイークとメソッドをやってくれと伝えると、「同じじゃん!」とよく言われていました。「しょうがないじゃん、日本では単に両足の間のカカト側をグラブするとメランコリーと呼んで、そこから身体を反らすとメソッドと呼び、さらに上半身と下半身を捻るとトゥイークと呼ぶんだから」と言っても、ベンには「メランコリーグラブはわかるけど、メソッドとトゥイークという定義は単にスタイルの違いだから、僕はフサキが言うメソッドはやらないで、より自分が好きな身体を捻じるトゥイークをやるよ」と言われました。しかし、ハウツー本、ビデオの編集者の指令は、ともかく3つ(メランコリー、メソッド、トゥイーク)をやることだから、申し訳ないけどメソッド(身体を反らすだけのもの)もやってよ、と懇願したものです。

このことは折に触れて伝えて来ましたが、もうみなさんここらでトゥイークエアという名称はなくして、メソッドエアに統一しませんか?

意外と知らないメソッドエアの歴史

僕がスノーボードを始めたのは、幸運にも1985-86年という早さで、今から38シーズンも前なのですが、もうその頃にはメソッドエアというのはありました。というか、すでにメソッドこそ誰もが憧れるトリックになっていました。
もう、その頃からスタイルうんぬんの話はあったのですが、1991年だったかな、自分がウィスラーでメソッドエアをやっていると、日本から来た名前を忘れちゃったプロスノーボーダーが「フサキくん、そうやって両足を開いてやるとカッコ悪いよ。クレイグ(ケリー)みたいに、ヒザをくっつけなきゃ」と言われたものです。ちょうど、その翌年あたりからニュースクール時代がやって来て、ジェイミー・リンやブライアン・イグチが逆にガニースタイルをやって、もうヒザがくっついていようが離れていようがどうでもよくなっちゃいました。むしろジェイミーやイグチのお陰で、また一段か2段メソッドのスタイルが変わったように思います。特にジェイミーが見せたトゥイークを加えるスタイルは、当時のスノーボーダーたちのハートを射抜きました。

その後に出て来るテリエ(ハーコンセン)は、よりダイナミックに華麗にきれいようなスタイル。そしてそれが王道になっていくのですが、1997年トッド・リチャードが、USオープンでテリエに僅差で破って優勝した時、たしかあの時のメソッドは、ボードを水平にするようなものだったと記憶しています。当時、それが新しいスタイルと聞いて、ちょっと驚きました。
なぜ、このことを覚えているかというと、あの時、誰かが僕にアドバイスしてくれた記憶があり、あのトリックは「ジェシー」と呼ばれるもので、新しいメソッドのスタイルと言っていたのです。で、一樹が板を横にするようなトゥイークが現在の主流と言っていたので、また時代は戻るものだ、と思いました。
現在の主流メソッドとあの時代のトッドがやっていたものは、また違ったものだと思うのですが、テールを上げずに板を水平に持って行くスタイルという点では、同じかなあ、と思うのです。

そもそもスノーボードのトリック名称は、多くの場合、スケートボードから来ていて、メソッドも同様です。

1985年、スケートボードのパイオニアであるニール・ブレンダーが、バートランプでのハイエアコンテストで披露したのが初めてのメソッドと言われています。コンテストの世界では、エアの高さを計測するためにスケーターの足元の位置をチェックしていました。ニールは、ボードを反らすことで、より高さを演出したと言われています。ただ、本当にメソッドをより昇華させてカッコよくしたのは、クリスチャン・ホソイと言われています。(SNOWBOARDER:How to do a Method on a Snowboard引用元

自分もあまりスケートの方は詳しくないのですが、さすがにクリスチャン・ホソイという名前は知っています。シグネチャーのスケートを出したり、レジェンドですよね。スケートボードというものをよりカッコ良くしていったという点では、スノーボード界で言うジェイミー・リンとかのようなカリスマ性ある存在なのかもしれません。

スノーボードの方では、おそらく80年代初めにテリー・キッドウェルが、まず身体を反らしたメソッドエアを完成させて、さらにクリス・ローチがグラブして大きな礎を築きました。そして、90年になると、ジェイミー・リンです!彼のメソッドは、前の手をフロントバインのすぐ横をつかみ、身体を捻じってスタイルを出しました。最初は、まだノーズ側をつかんでいたのですが、いつしか「メソッドは両足の間をつかまないとカッコ悪い」となり、誰が定義したのだか、そういう流れになっていったのだと思います。

僕が初めてジェイミーに遭遇したのは、91年にウィスラーで参加したWestbeachクラッシック。僕もその大会に出て、単にグラブもできずにエアターンだけ噛ましていたのですが(笑)、ジェイミーはなんとグローブもせずに素手でクールなメソッドを決めていました。トゥイークのスタイルです。なんだあの小僧は!ヤバいなあ、と思っていたら、あとで超有名になり雲の上のようなカリスマになりました。ジェイミーは、もうあの当時からスケートのスタイルをうまく取り入れたのだと思います。
ちなみにその大会で優勝したのが、その春、僕のルームメイトであったケビン・ヤングです。彼も後年、有名ライダーになるのですが、ケビンのメソッドはよりオーソドックスなダイナミックで身体を反らす系だったと記憶しています。

(写真左、豪快なメソッドを決めて優勝したケビン・ヤング。右下、エアターンだけを武器にこの歴史あるコンテストに出場してしまった僕)

メソッドエアのコツは女性の目線を意識すること

まあ、以上がだいたいのメソッドエアの歴史なのですが、何度も繰り返しますが、ともかくスノーボーダーにとっては憧れのトリックであることは変わりありません。本当、カッコいいもんなあ。
以前、一樹が「メソッドをする時は女性の目線を意識するといい」と言っていたけど、今でも僕はそのアドバイスを忠実に守っています(笑)。さあ、メソッドをやるぞ!練習しよう、と思う時には、必ずそこのキッカーに美しい女性が立って見守っていることを想像します。すると、不思議なことに、54歳のおじさんでもメイクすることができるのです!(笑)メソッドって、凄いエネルギーを与えてくれる魅力的なトリックですね。

ともかく、長いスノーボードの歴史の中で、スタイルもいろいろ変わって来るのですが、一樹が決めたこのメソッド。身体が絞れてテールが上がっているやつ。僕は、それが一番カッコいいなあ、と思います。

みなさんにとってカッコいいメソッドとはどんなスタイルですか?

メソッドというと、本当昔からスタイルの対象になっていて、以前は女性ライダーが単に身体を反らしただけのエアを「ギャルメソ」と言い揶揄していたことがありました。今、振り返ると「どうでもいいじゃん!」と思います。大切なことは本人が気持ちよくジャンプしているかどうか。特にメソッドは身体を反らすという点で、他のエアよりも元気な印象が伝わるトリックです。その反らすという行為のお陰で、アプローチをしっかりと踏み込むという動作にも繋がっています。積極的な気持ちにもなれる良いトリックです。
この業界には、いろいろ細かいことを言う人もいるけど、本人が気持ちいいかどうか。それが一番大切ではないでしょうか。

今回のメソッドの話に興味を持ち、これまであまりやっていなかったら、ぜひ今度、やってみてください。うまく決まったら、本当に気持ちいいエアで、「オレってカッコ良かったかも」なんて、思うかもしれませんね(笑)。女性の方で決めたら、美人度が増しますよ。いいんですよ!その自己満感覚で。それがスノーボードの楽しさでもあるのだから。

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飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は38年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/
ツイッター:https://twitter.com/dmksnowboard

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