ヘルメットの推奨が国内各リゾートで始動!

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文:飯田房貴 @dmkfusaki

もはやスキー場でヘルメットをかぶるのはあたり前の時代に突入。
まずは、各リゾート(スキー場)の従業員、スタッフのヘルメット着用義務化から始まっている。

私が住むカナダのウィスラーでも、まったく同じ展開だった。
何年か前かよく覚えていないが、おそらく10年以上も前だっただろう。
ウィスラーの従業員すべてのヘルメットの義務化が始まったのである。

(先週末のウィスラーのリフトでは雪が降ったことで、大混雑。その模様を紹介するために写真を撮ったのだけど、こうして改めて見てみるとみなさんほぼ全員ヘルメットをかぶっていることがわかる)

その前に2007年、ブラッコムの上級者パークでヘルメットの義務化が1つのきっかけになったと思う。
当時、巨大キッカーのジャンプで失敗したスキーヤー、ライダーたちがヘリコプターで病院に運ばれるほどの大事故が増えて、遂にウィスラーブラッコムはパークでのヘルメットを義務化を決めたのだ(※当時は上級者パークのみ)。

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その後、おそらく12年ほど前だったか。すべてのウィスラー従業員のヘルメットの義務化も発動。
当時、イントラの仕事をしていた私にとって、ヘルメットをかぶることはうっざったいようにも思えた。
しかし、実際にヘルメットをかぶってみると、意外に調子いい。頭の保温性が高いし、パウダーですっ転んでもビーニーのように外れることがない。
そもそもSANDBOXヘルメットの代理店の仕事を始めていた時だったので、ちょうどいいと思った。

それでも最初の2、3年ほどは、イントラ仕事の時だけヘルメットをかぶっていたが、しだいにいつでもかぶるようになっていた。一昨年までは撮影の時、ヘルメットをかぶっていると面倒にも思えたが、昨シーズンからは撮影の時でもどんな時でもヘルメットをかぶっている。

(気づいたらもはや手放せなくなったヘルメット。今ではスキー場に行く日は必ずかぶっています)

おそらく、現在、ヘルメットをかぶっている方の多くのスノーボーダーが私と同じようなヘルメット着用経歴を持つのではないだろうか。気づいたらもう手放せない。あった方が断然に楽だし安心というような感覚だ。

こうしてスキー場の従業員ヘルメットの義務化から始まった推奨活動はしだいに一般スキーヤー、スノーボーダーにも伝わり、現在ウィスラーでは100パーセントに近い方がヘルメットかぶるようになっている。当然、ジュニア層、キッズ層のヘルメットはしていないとならず、もしかぶっていない子供がいたら親が罰則を受けることになる。

考えてみてほしい。単に転倒だけのリスクではない。他のスキーヤー、スノーボーダーとの衝突、その時に板の先が子供の頭部に当たられば即死だ。また一生重い怪我を背負いながら生きることにもなりかねない。実際、過去に日本でもこのような悲劇な事故を怒っている例がある。
突っ込まれた親御さんからすれば、その暴走スキーヤー、スノーボーダーを恨んでいるだろうが、一方でヘルメットをかぶらせなかったことに悔やんでいるに違いない。

日本では現在、プリンス系、東急、スキー場開発の従業員スタッフのヘルメットの義務化が始まったようだ。

長年親交あるキララキャンプ、及び軽井沢スキー場(プリンス)でスノーボードスクールを開校している橋本ミッチャン(※元オリンピックハーフパイプ選手、現在はジュニア層の育成ワークを行っている)に尋ねたところ、プリンスの従業員ヘルメットは約5年前から始まったそうだ。

(軽井沢スクールのみなさん、写真ミッチャンご提供)

ただ軽井沢では国際安全基準のないヘルメットでもOKのようになっているようだ。
ウィスラーでも、かつてはそんな基準が関係ない時代があり、たしかここ5、6年ほどか、認証規格:CE EN 1077などが必要になった。シーズン初めに必ずマネージャーのような方が、すべてのスタッフのヘルメットの安全基準の表示を確認している。

今後は、日本でもこうした国際スキー、スノーボードの安全基準を満たしたヘルメットの義務化が行われるのかもしれない。

(国際的なスノーヘルメットの安全基準、CE EN 1077があるとより安心だ)

ただ、現在、国内で販売されているヘルメットはほぼ安全基準を満たしたヘルメットばかりだ。
だから、それほど気にすることでもないのかもしれない。

そもそもプラスチック素材のヘルメットを着用することで、衝撃は「点」から「面」になるので、かなり安全率は高まると思われる。
そういった意味では、スノー用のヘルメットでないものでも、かなり頭部へのリスクは減るだろう。

ただ、スノーヘルメットの専門家であるMIPS業者にとっては、ヘルメットというのは1ヒットで使いものにならないという見解も示している。
つまり、それは転倒した際、強くヘルメット(頭部)に衝撃を受けたら、例えヘルメットの見た目に損傷がなくても、それは本来のヘルメットの保護力を損なうということなのだ。つまり買い換えの時期ということである。
このことを伝える動画を以前、アップしたのでこの機会にぜひ拝見してほしい。MIPSの技術者がヘルメットの需要について言及している。

ともかく、スキー場スタッフのヘルメットは義務化の方向にあり、今後、スノー市場の模範となるべきリーダーがヘルメットをかぶることで、さらにヘルメットをかぶる人が増えていくと思う。欧米に比べて、本当にヘルメットのかぶり率が高まっていかない日本だけど、そろそろのタイミングのようだ。
来季はヘルメットをかぶる人が増え、スノーボードをより安全に楽しんでいただければ、この業界に生きる者としては嬉しい。

飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は39年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/
ツイッター:https://twitter.com/dmksnowboard

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