【コラム】コンペじゃなくてコンテストであってほしい!

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboard.com

東京オリンピックが盛り上げっている中、僕のフェイスブックでもその話題で持ち切り!
私の友人で長年スノーボード・レースを行っている方がいるのですが、最近の投稿に「いい意味で、アスリートになって欲しくない」というものがありました。

「こんなにメダルなんてカンケーねぇ〜!そんな競技ほ見た事ない。最後にメダル圏内を狙わず、ハイリスクで攻めた魂。そんな岡本を抱えてメダリストかの如く称賛していた世界中のライダー、でも彼女は4位。岡本にプラチナメダルを!!(╹◡╹)。ホントに素敵なスポーツだ。
タイム競技は、失敗した時にギャラリーは大声だすが、フリースタイルは成功した時にyeh〜‼️٩(^‿^)۶、ちと憧れるな。
にしても、、このまま正式競技にもしなるならば、商業化が進み、違う環境となり、魂の変化、スケボーのせっかく良い所の変化も余儀なくされる。。いい意味で、アスリートにはなって欲しくない」

その投稿を受け、かつてスノーボードのナショナルチームのを率いた阿部幹博さんが、うまい表現をされていました。

「コンペじゃなくていつまでもコンテストであってほしい!」

的を射たコメントですね!

「コンペ」も「コンテスト」も同じように「競技」という意味を持つ単語だと思いますが、僕の勝手な印象かもしれませんが、コンペの方がより激しい競争で、相手に対して敵対心を持って勝ちたい!という雰囲気があります。
対してコンテストの方は、お披露目会というかルールも比較的な簡単な競争に使われるような単語。もっとリラックスした印象を受けるのです。

かつて、僕がスノーボードの大会に出た頃というのも、こんな楽しい雰囲気がありました。
勝ち負け以上に、その大会という楽しいスポットに行く。勝っても負けてもノーサイドという感じです。
以下は、僕が最初に出たスノーボードの大会、1986年に行われた第四回丸井スノーサーフィングランプリの映像。

冒頭の開会式のシーンで、右側に上下ホワイトのウェアで突っ立ているのが、17歳の頃の僕です(笑)。
その隣の上下で赤いウェアは、僕にスノーボードの世界へ導いてくれた今は亡き親戚の兄ちゃん。

この時、親戚の兄ちゃんが、「フサキ、スノーボードというのはこれからだ。こんなにおもしろいもの、絶対に多くの人を魅了する。だから山に篭って今から一生懸命に練習しておけば、きっといいことあるぞ!」と伝えられました。
僕はその言葉を胸に抱きつつ、高校卒業後に野沢温泉スキー場に篭り、その後、ニュージーランドへ旅立ちます。

その時にニュージーランドで開催されていたスノーボードの大会は、まさに今回の東京オリンピックのスケートボード大会のように和気あいあいとした雰囲気。当時、デュアルで滑るモーグルという競技があり、滑り終わった後はハイタッチしてお互いを称え合っていました。
おそらく、90年代前半にスノーボードがオリンピック種目に採用されていたら、今回のスケートボード大会のような楽しい雰囲気になったと思います。

東京オリンピックで最も美しい光景

オリンピックを見ていて、いろいろ感動的な場面を見て来たけど、これほど美しい光景はなかったのではないか、というのはスケートパーク種目で岡本碧優選手が惜しくも4位でメダルを逃した時のシーンです。

冒頭の僕の友人が語るように、まさにメダルの色に囚われず、己の最高パフォーマンスに向かって全力で戦う姿。惜しくも転倒し、その夢は潰えますが、その瞬間、決勝に残った仲間が駆け寄り、そして岡本選手を高々を抱え上げました。

この光景、岡本選手のご両親は、どんな思いで見ていたのでしょうか。
自分も同じくらいの年齢の娘がいますが、このシーンは涙を流しましたね。本当にカッコ良かったし、感動的でした。 東京オリンピックで最も美しい光景と言ってもいいのではないでしょうか!
スケートボード競技の素晴らしさの神髄を見せてもらったように思います。


ミニスカ、46歳のおじさんスケーター、カメラマンにぶつかり自由過ぎる演技!

今回の東京オリンピックのスケートボード大会では、勝っても負けても相手を称え合う姿が最も印象的でしたが、それだけではありません。参加している選手が自由過ぎる。また解説者の瀬尻さんが「ゴン攻め」「ビッタビタ」という飾らないコメントも話題となりました。

ミニスカで登場したイギリスの選手。まだ15歳のマーティンは「めちゃ可愛い」とネット注目!「ファッションで金メダル!!」という声も挙がりました。
46歳のオジサンスケーターは、長年スケートをやって来て「遂にママに自慢できる!」と大喜びで東京にやって来ました。凄く楽しそうに東京オリンピックを満喫していたようです。
演技時間が終わっても、パフォーマンスを続ける選手がいたり、または勢い余ってカメラマンにぶつかってしまうアクシデントがあったり、本当に自由な空間でしたね。
とても楽しい印象、めっちゃ明るい印象が伝わって来ました。

この「自由」「明るい」「楽しい」雰囲気の空間が、スケートボードの素晴らしいところ!

空手女子の形という種目では、清水選手が惜しくも銀メダルとなりましたが、相手のスペインのサンチェス選手が競技後に日本サイドに駆け寄り正座でお辞儀をしました。その態度、そして清水選手の試合後のコメントも素晴らしかったと思います。悔しい気持ちを持ちながらも、これまで支えて来てくれた人への感謝の気持ちに溢れていましたね。だからこそ、「金メダルを獲りたい!」という強い思いがあったのだろうけど、ともかくこのコロナ禍で東京オリンピックが開催できたことに感謝し、その喜びというものも噛みしめていた印象でした。

一方、他の種目に目を移すと、サッカーでは相手の選手の握手を拒否したとか、体操でジャッジがおかしいとか、なんか殺伐した雰囲気があった競技も少なくありません。
例えば、サッカーや野球では、「相手よりも1点多ければ勝てる!」という特性があるので、どうしても相手のミスに目が行ってしまったり、「負かしてやる!」という感じになって来てしまいます。僕は個人的にサッカーや野球も好きですが、試合が終わっても相手を称えられない態度というのは、もの凄くカッコ悪く見えてしまいますね。お互いの実力を発揮して思う存分に戦い、終わったら相手の強さを称えることがスポーツの大事なところ。日本古来から伝わる武士道の精神でもあります。

海外サッカーの大きな大会となると、選手以上に観客がエスカレートして暴動騒ぎが起こることもあります。しかし、スケートボードというのは、その対極にあるような新しい旋風を巻き起こしてくれるようなコンテストでした。

スノーボードの未来がコンテストでありますように!

東京オリンピックの影響で、今、スケートボードは空前の売れ行き、ブームがやって来たと言われています。パーク施設があるスクールでは申し込みが殺到し、キャンセル待ちだとか。オリンピックのお陰で素晴らしい時代を迎えたスケートボードだけに、業界内では早くもその将来に危惧する声も出始めています。

オリンピックのスポーツ種目の中には、もの凄くお金が掛かるものも少なくありません。そんな中、スケートボードは最もチープに気軽に誰でも楽しめるものです。だからこそ、みんなで温かい気持ちを持ってさらに良い方向で発展させていく必要があります。

路上でスケートボードの騒音の問題など出て来るだろうから、そのへんどうするのか。もっとパークを作って気軽に誰もが楽しめるようにしたいですね。スノーボードも90年代にメチャクチャに人気が出て、その時、残念ながら転倒や衝突による死亡事故が問題になりました。スケートボードでもこうしたことが起きるだろうから、ヘルメットやプロテクターなどオススメするなりして、安全で楽しくできることを伝える必要もあります。

ところで、スノーボードの競技はスケートボードのような楽しい雰囲気は、なくなってしまったのでしょうか?

いやいや、そんなことはないです!
今年2月に開催された自然の山をそのまま利用して世界の強豪選手が集まった大会、Natural Selectionにはオリンピック選手やビデオスターたちが集結したのですが、ゴールした対戦相手をハグしてお出迎えして、その健闘を称え合っていましたよ。

スノーボードのワールドカップやオリンピックも今回のスケートボードで見せたような相手をリスペクトするような雰囲気がもっと出て来るといいと思います。

阿部さんが伝えた「コンペじゃなくていつまでもコンテストであってほしい」という願い。
これから行われる冬季オリンピックでも見せられますように!

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。最新執筆書『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は36年。

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