
世界で最も影響力のあるスノーボード番組のひとつ、The Bomb Hole Podcast。
トップライダーたちが忖度なしで語るこのポッドキャストで、角野友基(Yuki Kadono)が初めて明かした内容は、スノーボード界にとってあまりにも重い証言だった。
テーマは、「なぜ彼は日本代表からキックオフされたのか」。
これはゴシップではない。
本人の口から語られた、事実の記録である。
目次
五輪8位 → US Open王者
順風満帆だったはずのキャリア
17歳でオリンピック出場、堂々の8位。
US Open優勝、X Games表彰台。
10代にして、世界トップクラスの存在となった角野友基。
五輪後、日本スキー連盟からかけられた言葉は意外なものだった。
「次は、どうしたい?」
角野は戸惑う。
オリンピックの次は、またオリンピックではないのか?
そこで連盟が提示したのが、
「君がトップに立つチームを作らないか?」という提案だった。
予算、スポンサー、スタッフ。
すべて用意する。
君が選手を選び、君が率いればいい。
18歳の角野は、本気でそれを引き受けた。
コロラド合宿、そして一本の電話
男女11名の日本人ライダーを率い、アメリカ・コロラドでの強化合宿が始まる。
だが数か月後、X Games期間中に日本から一本の電話が入る。
「合宿中に、大麻を吸っていたという情報がある」
角野はこれを否定している。
しかし実際には、宿泊先の外でスプリフ(※ストリートカルチャー由来の自由な価値観を象徴するスラング)を巡る行動が確認されていた。
アメリカでは珍しいことではない。
しかし、日本では絶対的タブーだ。
だが、問題はここからだった。
密室、施錠、強制的な毛髪検査
帰国後、渋谷にある日本スキー連盟のビルに呼び出される。
部屋に入った瞬間、
後ろからドアがロックされた。
逃げ場はない空間で、事情聴取が始まる。
連盟は言った。
「疑いを晴らすなら、髪の毛を提出しろ」
尿検査ではなく、毛髪検査。
しかも、実質的に拒否できない状況。
角野は自分で髪を引き抜き、提出した。
検査結果の詳細説明は、一切なかった。
数時間後、ネットニュースがすべてを暴く
後日、「陽性だった」と連絡が来る。
その数時間後、ニュースが一斉に報じた。
「オリンピック経験のある日本人スノーボーダーが大麻陽性」
実名は伏せられていた。
だが条件に当てはまる選手は、角野しかいない。
日本中が、誰のことか理解した。
日本代表からの完全排除
処分は苛烈だった。
- 日本代表チームから即除外
- FIS大会に必要な競技ライセンス停止
- 五輪への道は事実上、完全遮断
当時19歳。
キャリアの最重要局面で、競技人生は強制停止された。
終わりの見えない「更生プログラム」
復帰条件として課されたのは、半年間の更生プログラム。
- 英語学校への通学
- ボランティア活動
- 子ども向け指導
- 毎日の行動日記提出
角野は、すべて指示通りにこなした。
だが返ってきた評価は、こうだった。
「君は何も変わっていない」
さらに、半年延長。
明確な復帰基準は示されず、ドラッグテストも行われなかった。
時間だけが奪われていった。
1年半を失い、下した決断
20〜21歳。
スノーボーダーにとって最も重要な時期。
角野は悟った。
「これは復帰のためじゃない。最初から戻す気はないんだ」――20〜21歳、スノーボーダーにとって最も重要な時期の決断だった。
更生プログラムを自ら打ち切ろうとした彼に、連盟は警告する。
「今やめたら、二度と代表には戻れない」
それでも、角野は自らの道を選んだ。
The Bomb Hole Podcastで語られた“真実”
この一連の出来事を、
角野友基はThe Bomb Hole Podcastで初めて詳細に語った。
暴露でも、言い訳でもない。
淡々と、事実として。
そこから浮かび上がるのは、
単なる大麻問題ではなく、
- 管理できないスター
- 組織の枠に収まらない才能
- 日本的競技システムとの衝突
という、より根深い構造だった。
皮肉な結末──完全復活
日本を離れ、アメリカへ。
代表でもなく、守られる存在でもない。
だが、自由だった。
そして2020年。
角野友基はUS Open優勝を果たす。
日本代表から“消された男”が、世界最高峰の舞台で頂点に立った瞬間だった。
この物語が投げかける問い
How Yuki Kadono Was Kicked Off The National Team
The Bomb Hole Podcastで語られたこのエピソードは、日本のスノーボード界、そして競技団体の在り方について、改めて考えさせられる内容だった。
もちろん、現在のナショナルチーム体制は、当時と比べて大きく前進している。
選手への理解やサポート体制は、確実に改善されてきたと言えるだろう。
それでもなお――
才能あるアスリート一人ひとりの個性と、競技システムはどのように向き合うべきなのか。
この問いは、決して過去だけのものではない。
※本記事は、The Bomb Hole Podcastでの角野選手の発言をもとに作成したものであり、日本スキー連盟など関係団体への取材は行っておりません。

