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スノーボードW杯ハーフパイプの今季開幕戦決勝が、中国の張家口・密苑(シークレットガーデン)で開催され、男子は戸塚優斗が95.50点で優勝した。通算8勝目のビクトリー。

戸塚優斗がラスト3本目にトリプルコーク1440を決めて有終の美を飾る

6日の予選で1組の1位通過を果たした優斗は、決勝に入ってからも順調なランで1本目こそ失敗したが、2本目には91.50点を叩き出し、他の選手を大きく引き離すことに成功。その後、3本目に長年のオーストラリアのライバル選手スコッティ・ジェームスが迫って来たが、優斗の出した91.50点に及ばず88.25点だった。スコッティの3本目の後は、ジャッジ陣も慎重に演技を考慮したため時間が掛かり、会場がやや緊張感に包まれた。そして得点が出た時は、判断された得点に納得がいかなかったのが、スコッティはかなり悔しそうな表情を見せた。

3本目、優斗の頭の中にはおそらく「優勝」の文字が過っただろうが、その後、一人残った日本チームの仲間の平野流佳の存在感は大きい。流佳は予選2組で1位通過を果たし、しかも予選の中では最高得点で決勝に進んで来た実力者だからだ。それならとばかりに優斗はラスト3本目にさらにチャージをかけ、ラストのヒットでトリプルコーク1440を加えた力強いランでフィニッシュで95.50点を獲得。滑り終わった後は、両手を掲げて喜びを爆発させた。優斗にとってトリプルコーク1440を大会で決めるのは、初のこと!5発放ったトリックの着地が、見事な安定ぶりでスムースなランでもあった。終わってみれば、優斗の圧巻の勝利となった。

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優勝を決めた優斗のルーティーン内容は、以下の通り。

スイッチバックサイド・ダブルコーク1260ウェドル→キャブダブルコーク1440ウェドル→フロントサイドダブルコーク1260インディ→バックサイドダブルコーク1260ウェドル→フロントサイドトリプルコーク1440インディ

3位に入ったのは、超テクニカルトリックを披露した山田琉聖だ。一発目のダブルマックツイスト1080でのジャパングラブは、完全に身体を反らせたメソッドのような形で、ひじょうに印象的なトリック。W杯の映像でも何度もそのトリックのハイライトシーンが映し出された。
W杯の舞台では、回転数やトリックの難易度が優先するため、このトリックのスコアの評価は、思っている以上に高くないのかもしれないが、見ている側としては筆者を含めて、この日、一番カッコいいトリックに見えたのではないだろうか。その後には、スイッチでランディングしてみせ、2発目でスイッチマックツイストでスムースにつないだ。さらに3発目以降は、キャブブルコーク1440からフロントサイドダブルコーク1440インディ、そして最後はキャブ1080ウェドルできれいにまとめて、87.75ポイントを獲得。今後、このルーティーンに加えて、さらに回転数を上げれば、世界の頂点に立てる日もやって来そう。


北京五輪金メダリストの平野歩夢はラスト3本目でFSトリプルコーク1440に成功!

北京オリンピックの金メダリスト、今大会の注目度が高い平野歩夢は、決勝の1本目と2本目で転倒するも、3本目で意地を見せ4位に食い込んだ。歩夢の得意とするフロントサイド・トリプルコーク1440トラックドライバーから入ると、キャブダブルコーク1440ウェドルをメイク。歩夢らしい高さあるインパクトあるトリックだったが、ランディングがボトムの方に流れたため失速。その後には、フロントサイド540、バックサイドダブルコーク1260、フロントサイドダブルコーク1440をメイクしたが、当初、予定していたさらなる高回転トリックを加えることができず、86.25点に留まり4位でフィニッシュ。
自身にとって最高のランではなかったものの、肋骨骨折を抱えながらの強行出場で入賞を果たした。

5位には予選から決勝まで終始安定した滑りを見せた平野流佳がランクイン。そして、重野秀一郎が6位と続き、日本勢男子がほぼ上位を独占する形となった。

今大会は、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪代表選考を兼ねており、W杯で好成績を収めることでFISポイントを獲得し、オリンピック出場権に近づく重要な大会である。決勝に進み入賞したことは、2026年に向けた大きな一歩となった。

なお平野海祝は左足首の負傷により予選から欠場となった。

W杯中国/シークレッドガーデン大会 男子ハーフパイプ1戦目結果

1位 戸塚優斗(日本)
2位 スコッティ・ジェームス(オーストラリア)
3位 山田琉聖(日本)
4位 平野歩夢(日本)
5位 平野流佳(日本)
6位 重野秀一郎(日本)
7位 イ・チェウン(韓国)
8位 キャンベル・メルビル・アイブス(ニュージーランド)
9位 チェイス・ジョージー(アメリカ)
10位 パトリック・バーグナー(スイス)
— 以上、決勝進出 —
DNS 平野海祝(日本)

マディ・マストロがキャリア初のFISスノーボードW杯優勝!

アメリカのマディ・マストロが、スノーボードW杯で待望の初優勝を飾った。これまで実に15回もW杯でトップ3入りを果たしていたものの、意外にも初の優勝となった。優勝後のインタビューで、彼女は「これまで2位や3位になることが多かったけど、今回初めて一番上に立てた。本当に嬉しい!」と喜びを語った。

マディは、自身の代名詞ともいえるダブルクリップラー900インディを1発目で成功させ、その後もバックサイド900、フロントサイド900といった高回転トリックを次々と披露。さらにバックサイド540、フロントサイド720インディ、最後に鮮やかなハーカンフリップで締めくくった。
かつてスタート前に見せていた「拝みポーズ」は影を潜めたものの、スタート直前の瞑想やイメージトレーニングのシーンは健在。今回の大会でもマディワールドがさく裂した。また、過去に苦戦していたダブルクリップラーも今大会では安定して成功を重ね、大きな成長を感じさせた。

しかし今回、アメリカの絶対王者クロエ・キムは大会に出場していなかった。そのため、マディの真の実力が問われるのは、クロエが出場する大会での結果となりそうだ。クロエはフロントサイド1080からキャブ1080という超高難度トリックを持っており、マディがさらなる高回転技を身につける必要があるだろう。

2位には、地元中国のスターで4度のオリンピアン、ベテラン30歳の蔡雪桐(ツァイ・シュートン)が86.25点でランクイン。女子で唯一フロントサイド1080を一発目で成功させ、そのインパクトが高く評価された。


3位にはアメリカのマデリン・シャフリックが入った。30歳のベテラン選手は終始スムースなルーティンを披露。最高回転数は720に留まるものの、エアートゥフェイキーやアーリーウープといった多彩な技をフロントサイドとバックサイドでしっかり決め、バラエティに富んだ滑りで高得点を獲得した。高回転技がなくてもハーフパイプの原点ともいえる美しい滑りが評価され、手本となるようなランだった。
マデリンにとっては、2009年のW杯デビューから15年後となる初の表彰台となった。

15歳の清水さらと工藤璃星が光る存在感

日本勢女子では、ここ2シーズン連続で種目別総合優勝を果たしている小野光希が4位に入賞。しかし、本人が狙うトリックを出し切れず、3本目のゴール後には悔しさを滲ませるシーンが見られた。

光希の2本目のランでは、フロントサイド720からキャブ900、スイッチバックサイド540、最後にキャブ900を組み合わせたルーティーンを披露。このランで82.00点を獲得した。しかし、3本目ではキャブ900の後に転倒。納得のいく滑りができなかったことが悔やまれたようだ。

今大会の女子決勝で特に印象的だったのは、15歳の清水さらと工藤璃星の挑戦だ。

清水さらは予選を1位で通過。決勝でもバックサイド900、フロントサイド900、そして2つの720を組み込んだ高回転トリックを連発。小柄な体格ながらも終始スムーズで高さのあるジャンプを見せ、その高いポテンシャルに観客も驚嘆した。

一方、工藤璃星はフロントサイド1080とキャブ1080という大技を狙った。すでにこの技は、直前合宿のスイスで披露していたが、肝心のW杯決勝では1本目と2本目は共に転倒…。3本目は欠場となったものの、そのチャレンジ精神には感服。将来のさらなる成長と飛躍を予感させるパフォーマンスだった。

北京五輪の出場経験を持つ実力者、冨田せなは、持ち前の実力を発揮できず予選落ちとなった。次戦に期待!

W杯中国/シークレッドガーデン大会 女子ハーフパイプ1戦目結果

1位 マディ・マストロ(アメリカ)
2位 蔡雪桐(中国)
3位 マデリーン・シャフリック(アメリカ)
4位 小野光希(日本)
5位 清水さら(日本)
6位 ウー・シャオトン(中国)
7位 キム・ベア(アメリカ)
8位 工藤璃星(日本)
— 以上、決勝進出 —
24位 冨田せな

※本記事は以下のFISレポートを参考に書き上げました。
https://www.fis-ski.com/snowboard-park-and-pipe/news/2024-25/new-tricks-and-new-heights-for-secret-garden-halfpipe-winners-maddie-mastro-and-yuto-totsuka

NAMENATRUN1RUN2RUN3
1Kim BeaUSA26.2567.2568.50
2Wu ShaotongCHN69.75DNIDNI
3Mastro MaddieUSA78.5088.75DNI
4Ono MitsukiJPN31.7582.00DNI
5Kudo RiseJPN9.7513.50DNS
6Cai XuetongCHN29.7583.0086.25②
7Schaffrick MadelineUSA85.25③DNIDNI
8Shimizu SaraJPN74.0080.00DNI
NAMENATRUN1RUN2RUN3
1Melville Ives CampbellNZL64.7573.75DNI
2Josey ChaseUSA70.00DNI72.75
3Yamada RyuseiJPN87.75③DNIDNI
4Burgener PatrickSUI23.5072.00DNI
5Shigeno ShuichiroJPN80.00DNIDNI
6Lee ChaeunKOR17.0077.50DNI
7James ScottyAUS29.50DNI88.25②
8Hirano AyumuJPN31.75DNI88.25
9Totsuka YutoJPN49.7591.5095.50①
10Hirano RukaJPN83.50DNI85.00

2024-25 FIS WORLD CUP ハーフパイプ日程、結果

開催日開催場所男女優勝者
1戦目12月6日~12月8日中国(シークレットガーデン)戸塚優斗(日本)/マディ・マストロ(アメリカ)
2戦目12月18日~12月20日アメリカ(カッパー)
3戦目1月15日~1月18日 スイス(ラークス)
4戦目1月30日~2月6日アメリカ(アスペン)
5戦目2月19日~2月23日カナダ(カルガリー)
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