
文:飯田房貴 @dmkfusaki
帝国データバンクが2024年度の「スキー場の倒産動向」に関するレポートを発表しました。
その中で注目すべきは、今年度のスキー場倒産が7年ぶりにゼロだったというニュースです。
目次
降雪とインバウンドが追い風に
今シーズン(2024-2025)は全国的に降雪に恵まれ、スキー場のオープン期間も平均101.5日と、前年度より0.7日長くなりました。さらに、コロナ明け初のフルシーズン営業が可能になったことや、香港・台湾・東南アジアを中心とした訪日外国人の利用増も業界を大きく後押ししました。
カナダ・ウィスラーでインストラクターをしている自分の周りにも、「今度こそ日本で滑りたい」と話す外国人は多く、日本のスノーリゾート人気は確実に高まっていると感じています。
若者のスキー・スノボ離れと現場の実感
ただ一方で、日本国内の状況を見ると少し違った印象も。
自分の友人・知人(多くが40代以上)を見ていると、「若者が減っているな」と感じる場面が多々あります。SNSで見る限り、パークやフリーライディングを楽しむ若者もまだいるけど、全体として“数”は明らかに少ない。
若年層のスノー離れに加えて、リフト設備の老朽化、人手不足、運営コスト増など、特に中小スキー場にとっては深刻な課題が残っています。
夏の人工スキー場と“オフシーズン強化”の可能性
最近では、夏でも滑れる人工スキー場やマットバーン施設など、オフシーズンに向けた動きも少しずつ見られるようになってきました。
熱心な若手選手や競技志向の人にとっては大きな武器になる一方で、レジャー利用やファミリー層にとっての訴求力はまだ限定的。
若者だけじゃない、20代後半~30代・子育て世代にも目を向けて
すでに学生向けの割引サービスなどは浸透していますが、今後は20代後半~30代以上の社会人世代に向けた取り組みが必要だと思います。
「朝だけ滑れるプラン」や「ワーケーションに合わせたリフト券」、「子連れでも快適に過ごせる環境づくり」など、ライフスタイルに合ったスキー場の選択肢がもっと増えるといいのでは!
オリンピックが起爆剤になるか?
さらに来シーズン(2025-2026)には冬季オリンピックが開催予定。日本人選手の活躍が期待される中で、スノーボードやスキーがメディアで大きく取り上げられる機会も増えるはずです。
「見るだけ」から「自分もやってみたい!」と思わせるきっかけになる可能性は十分にあります。
その波を逃さず、「今だからこそ滑ろう」「ちょっと行ってみよう」と思わせるような初心者・リターン層への受け皿づくりが、これからのスノーリゾートのカギになりそうです。
私自身も、日々スノーボードに関するさまざまな情報を発信しながら、この業界を少しでも支える一助になれればと考えています。
まとめ
倒産ゼロというニュースは確かにポジティブ。でも、安心はできません。
本当の意味で“続けられるスキー場”を目指すには、現場の声、ユーザーの声をもっと反映した施策が必要です。
次のシーズンに向けて、スノーボード好きとしても、一人の利用者としても、希望を持って応援したいところです。
▶ 出典:帝国データバンク「スキー場の倒産動向(2024年度)」
飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は40年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/
ツイッター:https://twitter.com/dmksnowboard