W杯ビッグエア開幕戦 深田茉莉が今季初優勝──日本勢女子がビッグエア開幕戦で表彰台を独占

Photo: @fisparkandpipe
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今季初戦で魅せたのは、18歳の深田茉莉だ。中国・万龍スキーリゾート(シークレットガーデン)で行われたビッグエアW杯開幕戦で、堂々の優勝を飾り、日本勢が女子表彰台を独占する圧巻のスタートとなった。昨季はビッグエアでクリスタルグローブ争いを最終戦まで演じ、世界選手権でも表彰台に上った彼女だが、今大会ではさらに一段ギアを上げた。オリンピックシーズンに突入する中での幸先の良いビクトリーだ。

ビッグエア決勝は、1人3本のジャンプを行い、回転数の異なるベストトリック2本の合計で順位が決まる。

深田茉莉は1本目から流れをつかんだ。スイッチ・バックサイド1080(インディグラブ)で78.50をマーク。着地の力強さと回転のキレが際立ち、ジャッジは迷わず高評価を与えた。2本目はフロントサイド720で詰まったものの、ここからが茉莉の真価だ。最終3本目に必要だったのは、単にまとめることではなく、“勝ち切る”ための一段上のトリックであった。FS1080で回転数を上げ、グラブをテールからメランへと持ち替え、78.25を叩き出して締めくくった。この“攻めて勝つ”姿勢がそのまま結果につながり、これが彼女のW杯通算4勝目となった。「本人は自分のベストランではなかったので悔しい」と報道陣の前で語ったが、全方向に高回転トリックをこなせる技術を持つ茉莉らしく、本番での強さを発揮した勝利だった。

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日本勢の強さは今大会でも際立った。2位には岩渕麗楽、3位には鬼塚雅が入り、女子では表彰台を独占。ここ数年、日本女子ビッグエアが世界を牽引してきたことは周知の事実だが、その中でも茉莉は着実に“中心”へと近づいている。本人も「女子全体のレベルが上がる中で、こうして戦えるのが嬉しい」と語るように、今季の女子ビッグエアはさらにハイレベルなシーズンになりそうだ。

Women’s Big Air – Tricks & Scores (Final Runs)

AthleteRun 1ScoreRun 2ScoreRun 3Score
Mari Fukadax-b-D-10-Mu78.50f-7-Tg-to-Me13.75f-10-Tg-to-Me78.25
Reira Iwabuchib-10-Ng74.25f-10-Tg21.50f-10-Tg71.50
Miyabi OnitsukaCab-10-Mu67.25b-D-10-Mu74.25Cab-12-MuDNI
Tess Coadyb-D-10-Me19.75b-D-10-Me71.50x-b-9-Mu63.00
Meila Stalkerf-10-Mu41.25b-7-Mu48.25f-10-Mu66.25
Kokomo Murasef-D-10-Tdr28.25f-D-10-Tdr79.75b-D-10-Mu19.75
Ally Hickmanb-7-Me10.75b-7-MeDNIf-10-Mu+Tg68.50
Lily Dhawornvejb-10-Ddr16.50b-10-DdrDNIf-10-Tdr13.50

地元の大観衆に推されスー・イーミンが優勝!

男子では中国勢が1–2フィニッシュという強さを見せた。優勝したスー・イーミンはバックサイド1980ノーズ、スイッチBS1980メロンと大技をしっかり決め、地元の大観衆の前で“完全勝利”ともいえる帰還を果たした。今大会は彼にとって2年ぶりのW杯優勝でもあり、中国の期待を背負った中での見事な復活劇となった。

そして、その勢いを支えたのが2位のグォ・チュンユだ。初のW杯決勝で臆することなく攻め切り、最終3本目にバックサイド1980ミュートを完璧に着地。82.50を引き出し、一気に2位へとジャンプアップした。2本目にはフロントサイド・トリプルトーdeo1440ミュートという目を引く高難度トリックも披露し、今回の男子ビッグエアで最も勢いのある若手として存在感を示した。

3位には日本の木俣椋真が入った。バックサイド1980メン、そしてスイッチBS1980テールグラブと、世界王者らしい完成度の高い滑りを見せ、シーズン序盤としては上々の立ち上がり。3位とはいえ滑りの質は相変わらず高く、ここからどのように調子を上げてくるのか、多くのファンが注目している。

男子決勝は1980回転トリックの成否が上位の鍵となるなか、長谷川帝勝だけがさらに一段高いレベルで、1本目からキャブ2160に挑戦した。残念ながら1本目、そして2本目ともに着地が決まらず表彰台は逃したものの、イタリア・コルティナを見据えた攻めの姿勢をしっかり示したと言えるだろう。

Men’s Big Air – Tricks & Scores (Final Runs)

AthleteRun 1ScoreRun 2ScoreRun 3Score
Yiming Sub-19-Ng86.25x-b-19-Me88.25In-f-3-IDNI
Chunyu Geb-T-18-J38.00f-T-Td-14-Mu77.00b-19-Mu82.50
Ryoma Kimatab-19-Me76.75x-b-19-Ng23.25x-b-19-Tg81.75
Eli Bouchardt-Mo69.75bob84.00t-MoDNI
Brooklyn DePriestx-b-T-19-Mu19.50x-b-T-19-Mui80.50b-18-Me71.75
Justus Henkesf-1-NB-to-x-b-12-Me79.00Cab-12-oT-I62.25Cab-9-I-oTDNI
Yuto Miyamuraf-19-I23.50b-19-Me84.75f-19-I28.50
Taiga HasegawaCab-21-Mu23.00Cab-21-Mu41.25f-18-I66.50
Kira Kimurab-19-Me24.50b-19-MeDNIx-b-T-14-Mu59.00
Nicolas LaframboiseDNSDNSDNS

熾烈な五輪日本代表争い

ビッグエアおよびスロープスタイルの五輪代表は、昨季(2024–25)と今季のW杯・世界選手権での獲得ポイントを基準に選考され、代表内定は12月11〜13日のW杯第3戦終了後に男女各2名が決まる予定だ。

女子は、今回優勝した深田茉莉がほぼ確実で、2位の岩渕麗楽も内定濃厚。これまでの実績から村瀬心椛も有力で、残り1枠は鬼塚雅が今大会3位に入ったことで内定に近づき、鈴木萌々や村瀬由徠も逆転での代表入りを狙っている。過去の代表争いでもシンデレラストーリーがあり、最後まで予断を許さない戦いが続きそうだ。

男子はさらに熾烈で、世界選手権覇者で今大会3位の木俣椋真が確実、昨年度シーズン王者の長谷川帝勝も有力だ。荻原大翔はXゲームス金メダリストで昨シーズンW杯でも好成績を残しており、代表入りの可能性は高い。残り1枠は宮村結斗と木村葵来の争いになりそうだが、果たして他の選手の逆転選考はあるのか注目される。

日本は現在、世界トップクラスの選手層を誇り、シーズン終盤までハイレベルな代表争いが続く見込みだ。今後の重要な戦いは2戦あり、12月5〜6日には北京(中国)でビッグエア2戦目が、12月11〜13日にはスティームボート(アメリカ)で3戦目が行われ、最終的な代表争いの行方を左右することになる。

W杯 中国・シークレットガーデン ビッグエア第1戦 結果

【男子】
1位 スー・イーミン(中国)
2位 グォ・チュンユ(中国)
3位 木俣 椋真(日本)
7位 宮村 結斗(日本)
8位 長谷川 帝勝(日本)
9位 木村 葵来(日本)
──以上、決勝進出──
23位 国武 大晃(日本)
25位 木村 悠斗(日本)
27位 荻原 大翔(日本)

【女子】
1位 深田 茉莉(日本)
2位 岩渕 麗楽(日本)
3位 鬼塚 雅(日本)
6位 村瀬 心椛(日本)
──以上、決勝進出──
13位 鈴木 萌々(日本)
27位 村瀬 由徠(日本)

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