2024年12月1日、中国・北京で開催された2024-2025シーズンのスノーボード・ビッグエアワールドカップ第2戦決勝において、荻原大翔が見事なパフォーマンスで今季初優勝を果たした。大翔にとっては、昨シーズンの開幕戦(スイス・クール大会)以来の優勝となる。
女子では、前大会優勝者の深田茉莉が好調を維持し、2位に入る健闘を見せた。
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荻原大翔が見せた圧巻の安定感
今大会は、11月30日(予選)と12月1日(決勝)の2日間にわたり、国際スキー・スノーボード連盟(FIS)が主催する形で実施された。ビッグエア競技では、選手たちは3回のランを行い、そのうち上位2本の合計得点で順位が決定する。上位2つ採用されるトリックの回転方向は異なる必要があるお馴染みのルール。
男子の予選には53名が参加し、2つのヒートに分かれて各組上位5名、合計10名が決勝に進出。日本男子勢では、木俣椋真が2組1位、荻原大翔が1組3位、さらに第1戦(クール大会)優勝者の長谷川帝勝が1組4位でそれぞれ決勝進出を果たした。
決勝では、大翔がその持ち味である正確さと安定感を発揮した。1本目のバックサイド1800インディで86ポイントを獲得し、好位置につけると、2本目ではフロントサイドトリプルコーク1800をクリーンにメイクし、83.50ポイントを追加。合計169.50点で首位に立つ。
その後、他の選手たちがスコアを伸ばすことができず、大翔の優勝が確定。ラスト3本目のビクトリーランは、バックサイド2160を狙った。残念ながら、失敗してしまったが、将来に見据えた大技への挑戦だった。
一方、2位に入ったイタリアのイアン・マテオリは、1本目にフロントサイド2160ウェドル・トゥ・テールグラブという圧巻のトリックを成功させ、大会最高得点の97.75ポイントを叩き出した。しかし、2本目と3本目で狙ったキャブ1620やキャブ1800では大翔の出した得点165.50を上回ることはできなかった。
表彰台を締めくくったのは地元中国のヤン・ウェンロンで、自身初のワールドカップ表彰台となる合計159.25点で3位を獲得し、新たな中国シーンの歴史に名を刻んだ。
今大会で優勝した荻原大翔は2022年4月、前人未到のバックサイド・クイントコーク2160を成功させ、そのポテンシャルの高さは世界が注目しているライダー。次世代のエースとして期待を集めたものの、過去のワールドカップでは結果を出せない苦しいシーズンが続いていた。おそらくは、己の最高パフォーマンスを狙い続けて、リスクを伴うトリックでなかなか良い結果が出せなかったのであろう。
しかし、今大会ではクリーンで安定したトリックとランディングを心がけ、見事に優勝を飾った。さらに、北京オリンピック金メダリストのスー・イーミン(中国)の前で優勝を決めたことは、大翔にとって大きな自信となったに違いない。
試合後、大翔はFISの公式インタビューで次のように語った。
「とても嬉しいです!来年は自分も2160を決めたいと思います。この場のレベルは本当に凄まじいです。来年はもっと凄いことになるかもしれませんね」
いよいよオリンピックシーズンに向かい2160スピン時代を予言した。
一方、この決勝でで有力視されていた選手たちにとって厳しい一日となった。現世界チャンピオンの長谷川帝勝は9位に終わり、北京2022冬季オリンピックのビッグエア金メダリスト、スー・イーミン(中国)はその後ろに続いた。帝勝は2本目にキャブ1980ウェドルを決めるも3本目のスイッチバックサイド1980は失敗に終わった。
スーは1本目と2本目で転倒したが、3本目ではバックサイド1980インディを成功させ89.00点を獲得。しかし、最下位から順位を上げるには至らなかった。
W杯中国/北京大会 男子ビッグエア2戦目結果
1位 荻原大翔(日本)
2位 イアン・マテオリ(イタリア)
3位 ヤン・ウェンロン(中国)
4位 オイヴィンド・キルクス(ノルウェー)
5位 クリス・コーニング(アメリカ)
6位 クレメンス・ミラウアー(オーストリア)
7位 サム・ヴァーマート(オランダ)
8位 木俣椋真(日本)
9位 長谷川帝勝(日本)
10位 スー・イーミン(中国)
— 以上、決勝進出 —
11位 宮村結斗(日本)
41位 南谷花都(日本)
45位 飛田流輝(日本)
深田茉莉、大技連発で2位を獲得!
女子の部では、イギリスのミア・ブルックス(17歳)が1本目にバックサイド1260を成功させ、2本目のジャンプは失敗したものの、3本目でキャブ1440ステールフィッシュを見事にメイクして優勝を飾った。2位に迫った深田茉莉から、わずか3ポイント上回り優勝を飾った。
前大会の優勝者である深田茉莉は、1本目にスイッチバックサイド1260ジャパングラブ、2本目にフロントサイド1080ウェドル、そして3本目にに大技フロントサイド1440を見事に成功させ、1本目と3本目の合計得点176.75ポイントで2位となった。安定した滑りで今大会も表彰台に立ち、絶好調を維持している。
3位には、ビッグエア界を牽引するオーストリアの女王アンナ・ガッサーが入賞。彼女の存在感は健在だ。
4位には鬼塚雅、5位には岩渕麗楽という日本の実力派選手が続いた。
一方、予選を1位で通過し、表彰台が期待されていた村瀬心椛は、決勝では勝利の女神に見放される形となった。3本のラン全てでメイクが叶わず、8位に終わった。特に1本目と2本目で狙った大技バックサイドトリプル1440が決まっていれば、結果は大きく変わっていただろう。惜しまれる悔しい結果に終わった北京大会だが、次戦に期待したい。
W杯中国/北京大会 女子ビッグエア2戦目結果
1位 ミア・ブルックス(イギリス)
2位 深田茉莉(日本)
3位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
4位 鬼塚雅(日本)
5位 岩渕麗楽(日本)
7位 村瀬由徠(日本)
8位 村瀬心椛(日本)
— 以上、決勝進出 —
18位 鈴木萌々(日本)
2024-25 FIS WORLD CUP ビッグエア&スロープスタイル日程、結果
ビッグエア | 開催日 | 開催場所 | 男女優勝者 |
1戦目 | 10月19日、20日 | スイス(クール) | 長谷川帝勝(日本)/深田茉莉(日本) |
2戦目 | 11月30日~12月1日 | 中国(北京) | 荻原大翔(日本)/ミア・ブルックス(イギリス) |
3戦目 | 1月3日~5日 | オーストリア(クラーゲンフルト) | |
4戦目 | 1月9日~11日 | オーストリア(クライシュベルク) | |
5戦目 | 1月30日~2月6日 | アメリカ(アスペン) | |
スロープスタイル | |||
1戦目 | 8月30日~9月1日 | ニュージーランド(カードローナ) | キャメロン・スポルディング(カナダ)/村瀬心椛(日本) |
2戦目 | 1月15日~1月18日 | スイス(ラークス) | |
3戦目 | 1月30日~2月6日 | アメリカ(アスペン) | |
4戦目 | 2月19日~2月23日 | カナダ(カルガリー) | |
5戦目(未定) | 3月12日~14日 | イタリア(リヴィーニョ) |