私は、冬の間にウィスラーで120日以上滑走しています。そのうち、約100日間はスクールでレッスンをし、多くの生徒さんと接してきました。その経験を通じて感じたことは、スノーボーダーはブーツのキツさよりも快適さを求めるべきだということです。その理由をお伝えします。
目次
ブーツを強く締める傾向
スノーボーダーはレベルに関係なく、緊張する状況ではブーツを強く締めることが少なくありません。私は、生徒さんのこうした動作をよく観察しています。その時点では特に指摘しませんが、その生徒さんがこれから滑る状況でややナーバスになっているのを感じます。
痛みや動きづらさへの対策
しかし、その生徒さんが「足が痛い」や「足首が曲げにくい」と言う場合、「ブーツをもう少し緩めてみませんか?」と提案します。私のブーツの締め具合を実際に見せると、多くの生徒さんが驚きます。「こんなにブカブカでよく滑れますね」と言われることが多いです。
カカトが浮くかの疑問
さらに、初・中級者の生徒さんからは「カカトが浮きませんか?」という質問を受けることもあります。これは中級者以下にありがちな質問です。
サーフィンに学ぶポジショニング
その際には、「私のブーツは中で足にゆとりがありますが、カカトは決して浮きません」と説明します。さらに、「例えば、海でボードに立つサーファーを想像してください。彼らはスノーボードのようにビンディングがなくても、しっかりと板に乗り、波の上でトリックを決めます。大切なのはポジショニングです。滑っている時にカカトが浮くのは、ブーツが緩いからではなく、しっかりと乗れていないからです。つま先側ターン後半に急激に板を回してズラした時などに、カカトが浮いてしまいます」と説明します。
すると、「なるほど」と納得され、ブーツを少し緩めて滑ってみると、「フサキさんの言う通り、確かにうまく滑れるようになりました」と答えてくれる生徒さんが多いです。
ブーツの締め具合の調整が重要
私のレッスン経験では、約10人にこういったアドバイスをすると、そのうち7人ほどが納得し、滑りやすさを実感しています。
では、なぜブーツを強く締めずに少し緩めると調子が良くなるのでしょうか?その理由は、足の圧迫が緩和され、運動パフォーマンスが向上しやすくなるからです。また、足首が動かしやすくなることも一因です。
新品のブーツの取り扱い
新品のブーツは、インナーをしっかりと締めた後、アウター部分はほとんど締めなくても問題ありません。特にアウターの甲部分は、最初からしっかり締まっているため、全く締めない方が良いくらいです。
ブーツの使用期間による調整
ブーツのメーカーやモデルにもよりますが、およそ10日から20日間使用すると、インナー部分にゆとりが出てきて、さらに快適に滑れるようになります。その場合は、これまでより少し締め具合を強めて調整すると良いでしょう。
さらに50日以上使用したブーツは緩く感じることが多いため、その際には締め具合を強くしても問題ありません。
状況に応じた締め具合の調整
ただし、スノーボードのブーツは常に強く締める必要はありません。状況に応じて締め具合を使い分けることが重要です。
例えば、私の場合、朝8時半から午後3時半までブーツを履き続けることが多いので、滑っていない間やレッスン中にはあまりきつく締めません。ランチ時には、ブーツを脱ぐこともあります。
ブーツを脱ぐことでリラックス
ブーツを脱ぐことで足の血行が促進され、リラックスできます。ランチ後には再び締め直して、午後のレッスンを続けます。
長時間滑る場合の対策
みなさんも、私のように朝から午後までスノーボードをしていることがあるでしょう。そんな状況で常にブーツを強く締めていると、逆に疲れてしまいます。快適さを優先し、状況に応じて調整することが重要です。
まとめ
スノーボードのブーツは、強く締めることが必ずしも最適ではありません。自分の足に合った締め具合を見つけ、状況に応じて調整することで、より快適でパフォーマンスの高い滑走が可能になります。
飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴40シーズン。その大半を雑誌、ビデオ、ウェブなど、スノーボードメディアでのハウツー記事の発信に費やしている。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というハウツーコラムを執筆。季刊誌という環境下で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てる。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、その中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
また、自身でディレクションし出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボードクラブ「DMK Snowboard Club」の責任者として活動し、レッスンを行っている。普段はカナダ・ウィスラーでインストラクターとして、多くの人にスノーボードの魅力を伝え続けている。2016-17シーズンには、ウィスラーのインストラクターMVPを受賞。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。