今季も100日以上、スノーボードのレッスンで世界中の生徒さんを見て来ました。1日平均で3名から4名くらいでしょうか。仮に3.5人で計算すると…、350人もの生徒さんをレッスンしたことになります。
生徒さんのほとんどは、ブーツをしっかりと締めるべきだ考えているようです。
特にナーバスなシチュエーションになると、改めてブーツを締めるためにBOAのダイヤルをグルグル回している生徒さんの姿もよく見かけます。
例えば、その生徒さんにとってちょっと怖い急斜面や凸凹なパウダーバーン、あるいはパークに入った時など。
私は、逆にこういうシチュエーションほど、ブーツを緩めるので、時々、生徒さんに「意外に締めない方が調子いいかもしれませんよ?」と提案します。
すると、「フサキの言う通りだ!ちょっとブーツを緩めて調子良くなったよ」という方もいるし、逆に「私はやっぱり締めないと安心できない」と、しっかりと締める方もいます。
確かに私も、カチコチのバーンでカービングターンをしっかりと決めたいようなエッジグリップ力を高めたいケースでは、ブーツをちょっとキツめに締めたりします。
しかし、パーク、あるいは凸凹斜面、あるいは斜度が45度以上あるような超急斜面では、足首を使いやすいようにブーツを緩めます。
この話を聞いて、普段ブーツをしっかりと締めないと思っている方は、「えー、ウッソー!!!」と驚かれるかもしれませんね。
だけど、プロライダーでもブーツ緩めるべきだということを推奨する人は、少なくありなせん。かつてオリンピックのハーフパイプ選手として活躍し、現在はアメリカのコーチにもなっているダニー・キャスもブーツを緩める方と聞いたことがあります。
またライダーの友人にも、ブーツを緩める方が好きという方がいます。
自分の周りのイントラには、生徒さんと同じように、しっかりと締める派が多いかな。
でも、ブーツをキツく締めたり、私のように緩めたりするのは、パーソナルなチョイスで、必ずしもキツく締めるが正解でないことを知っているといいでしょう。
昨日、いっしょに撮影したライダーのRYOも「8割締めが調子いい!」と言っていました。その時にその理由も聞きましたが、このことをしっかりと読者の方に伝えたいと言うと、「あとでメッセンジャーで連絡します」との返答。
すると、早速、その返事が返って来ました。
「自分は基本的に8割程度のキツさでいつもブーツを締めています。たまに今日は気合いを入れて行くぞー!なんて時にキツくし過ぎてリフトで上がっている時に足が痺れちゃって締め直し…、なんてこともたまにあります。山に上がると標高なのかわかりませんが、足がちょっと浮腫んだりすることがあるので8割ぐらいがいつも調子いいなと感じています。」
そう、この8割締めってちょうど良いように思います。多くのスノーボーダーに当てはまるおすすめの締め具合だと思うのです。
キツくもなく緩くもなく、ちょうどいい!
ちなみに、自分は4割~6割ぐらいの感覚で、締めています。
そして、実際にその隙間あるブーツの締め具合を生徒さんに見せると、とても驚かれることがあります。「えー、よくこれで滑っているね!」と聞かれます。
「でも、サーファーはスケートボーダーは、ビンディングで板が留められていないのに、あんなにカッコいいし乗れていますよ。カカトが浮くことが心配なようですが、しっかりと良いポジションに乗れば、カカトは浮かないと思います」
と、回答しています。
レッスン中はバリバリとカービングするわけでもないし…。普段は急斜面が苦手な生徒さんにレッスンしたり、あるいはオフピステのような圧雪されていないバーンの滑り方を教えたり、基本的なフリースタイル技術を教えているので、そんなにキツく締める理由はなく、むしろ緩める方が楽なのです。
さらに、ランチの時にはブーツを脱いじゃいます。そうして自分の足を労わってあげるのです。
毎シーズン、120日以上滑っているし、そのほとんどの日、朝9時から午後3時まで山にいるような状況なので、長い時間、ビチビチに締めたブーツでは疲れてしまいます。
というわけで、ぜひあなたも今度はブーツを自分が思っている以上に緩めたり、8割締めぐらいにしてみてください。
そうしたら、思っている以上にスノーボーディングが調子良くなるかもしれませんよ。踏む込み動作がしやすく、また足首の操作もしやすいので、おすすすめです!
飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴39シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ、ウェブ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWingでは、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、レッスンも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして、世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。