
文:飯田房貴 @dmkfusaki
最近、ウィスラーでスノーボードをしていて、やたらと目立つバギーパンツ。特に今季は、急激に増えた印象があります。
バギーパンツはカッコいい象徴のようなファッションですが、あまりにも増えたせいか、逆にダサく感じることもあります。
気になったので、そもそもなぜバギーパンツが増えたのか、レッスンに来る生徒さんに聞いてみたところ、意外な答えが返ってきました。
「流行らせたのは、日本だよね?」
えっ、そうなの!?
スノーボード界のファッションは、なんとなくカリフォルニアから北上してウィスラーに伝わり、その後、日本で流行るというパターンが多かった印象です。ところが、バギーパンツは逆に日本から流れてきたというのです。
たしかに近年、日本のスノーボード・インフルエンサーの間でバギーパンツが増えているし、コンペシーンでも日本人選手が太めのパンツを好む傾向があります。特にグラトリをやる人は、ほぼバギーパンツの印象です。
今やSNS時代、日本のファッションが海外へ飛び火してもおかしくありません。そもそも、スキーヤーやスノーボーダーの間では、日本へ行くこと自体がブーム。憧れのジャパウを体験するのが一種のステータスになっていて、おいしい食事はもちろん、日本のコンビニのおにぎりすら、彼らにとって目的のひとつになっています。
そんな日本好きなスノーボーダーたちが、日本のスノボ・ファッションに影響を受けたとしても不思議ではありません。
バギーパンツの流行はどこから発生?
そもそも、このバギーパンツの流行は、どこから発生したのでしょうか?
近年のバギーパンツ・ブームの火付け役のひとりが、スイスのライダーLucas Baume(@yungdoli)です。彼が流行のきっかけになったと考えられます。
7シーズンほど前、彼はスタイリッシュな滑りで注目され、コアなスノーボーダーから高い支持を受けるようになりました。ジブだけでなく、パイプでも高さを求めるのではなく、流れるような板さばきを見せつけ、多くのライダーを魅了しました。
そして、彼のバギーパンツスタイルが印象的で、それに触発された若い世代のライダーたちが彼を模倣していったのです。
私自身、スノーボード歴40シーズンですが、90年代初めにもバギーパンツ・ブームがありました。いわゆる“ニュースクール”の時代です。当時はデヴァン・ウォルッシュ、ケビン・ヤング、ブライアン・イグチらが袴のような太いパンツを履き、バギーパンツの流行を作り出しました。
つまり、今のバギーパンツ・ブームは、二度目の流行ということになります。
実際にバギーパンツのような太めのパンツを履いている人にインタビューしてみると、「動きやすくていい!」という意見もありました。確かに、ピタッとしたパンツよりも、ゆったりしている方が動きやすそうです。
そういった意味では、スノーボーダーはワンサイズ大きめのウェアやパンツを選ぶのがいいでしょうし、ファッションの流れとしても自然な傾向かもしれません。
バギーパンツ・ブームの背景とは?
Lucas Baumeがバギーパンツ・ブームを後押ししたのは確かですが、彼ひとりの影響だけでここまで流行したわけではなさそうです。
考えられるのは、若い世代のファッションの変化。スノーボードだけでなく、普段のファッションでも大きめの服を選ぶ人が増えています。
さらに、世界的なポップスターでありファッショニスタのビリー・アイリッシュの影響もあるかもしれません。
彼女の服装は全体的にオーバーサイズで、スノーボードの流行ファッションとも通じるスタイルです。
このことを娘に話したら、「違うでしょ」と言われてしまいましたが(笑)。
バギーパンツ・ブームは日本以上に海外で拡大中!
私はほぼ毎日山に上がるので、昨今のバギーパンツ・ブームがどうも気になります。そこで、ウィスラーで活躍する一樹くんや、実際にバギーパンツを履いているライダーたちに話を聞いてみました。
すると、またしても意外な回答が。
「日本でも流行っていますが、ウィスラーはそれ以上ですよね。」
えっ、そうなのか!
日本でも若者を中心にバギーパンツが人気ですが、実際に履いている人の数で言えば、ウィスラーのほうが多いようです。だからこそ、やたらと目に付いたのかもしれません。
さらにライダーのリョウくんにも話を聞くと、こんな意見が。
「バギーパンツ、最近多いなとは思っていました。今のZ世代に多い気がします。でも、なぜ流行っているのかは自分も不思議ですね。」
なるほど、Z世代か!やはり若い世代の間で特に流行しているようです。
さらに彼は、
「バギーパンツというより、裾が絞れているジョガーパンツの太めが多いですね。もうだいぶ前から履いている人はいましたが、それを見ていたZ世代がもっと太めのパンツを履くようになったのかもしれません。
本当に裾がヒラヒラのバギーパンツを履いている人は、ビギナーが多い印象ですね。」
なぜ「ダサい」と感じたのか?
リョウくんの話を聞いて、ようやく納得しました。
私がこれまで長く見て来たのは、ジョガーパンツの太めバージョンでした。あの頃は、うまいフリースタイラーばかりが履いていて、特に気にならなかったんです。
ところが最近は、裾がヒラヒラしているバギーパンツを履いている人が増え、それが若いビギナースノーボーダーだったため、違和感を覚えたのかもしれません。
つまり、上手なライダーが履いていたときは気にならなかったが、最近はビギナー層が履くことが多く、それが「ダサい」と感じる要因になっていたのでしょう。
リョウくんの意見を聞いて、ガッテン!(笑)
飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は39年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
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ツイッター:https://twitter.com/dmksnowboard