今なおスノーボード界の最前線で活躍するプロ・スノーボーダー、トースタイン・ホグモが自身のSNSで、「ジムのトレーニング施設よりも、できるだけ外で体を動かしたい!」と、インドアよりもアウトサイドでのトレーニングする重視を表明した。
「オフシーズンはジムやトレーニング施設の中で1万時間以上、体を動かしてきたと思います。今はできるだけ外で過ごしたいという衝動に駆られ、楽しんでいます」
そう言えば、有名な映画『ロッキー3』でも主人公のシルベスター・スタローンが、対抗するロシア選手の化学的な練習よりもあえて外で行う自然を相手にしていたトレーニング姿を見せていたけど、そんなシーンを思い出した。
それにしても、トースタインがこれまで1万時間以上もトレーニング施設を利用していたなんて驚いたな。
というのも記者が初めてトースタインに会ったのは、2007年ブラッコムグレーシアで行われていたキャンプ・オブ・チャンピオンズで、当時はまったくの無名ライダーだった。だけど、あまりにもうまかったので、いっしょに撮影してインタビューを行った。
その夏、トースタインとは何度も撮影したので、写真素材がメチャクチャにあった。
それで、雑誌社『スノースタイル誌』に話を振ったところ、「このライダーは凄い!」ということで、採用が決まり、まだ世界でトースタイン・ホグモの名が広まる前に露出することに成功したのだ。
その後、トースタインは新人でありながら、当時のあらゆるトッププロが出場していた大会で優勝し、X Gamesにも出場するようになった。2010年には世界初となるトリプルコークをメイクし、「トリプル」という扉を開けた。
そして2017年に競技から引退したのだけど、トースタインがよく言っていたのは、「練習しない」ということだった。
「練習しない」とは、どういう意味かと言うと、そもそも楽しいスノーボードで練習という観念があるはずがない。
ただ滑って楽しんでいるだけだよ、という感じだ。
あれは、確か2009年だったと思う。すでにトースタインはスノーボード界のトップスターに成長していて、インタビューを行った時、「オフトレのような練習はしない。ただスノーボードを全力で行っているだけさ」みたいなことを言っていた。
まあ、あの当時は確かにオフトレのような練習はしていなかったのかもしれないけど、今、思うと隠れてずっと努力して来たのだと思う。というのも、当時から圧倒的な体力があったからだ。
例えば、ジブアイテムで撮影していると、普通のプロライダーというのはハイクする時に、地面にカカトが付く。
だけど、トースタインは、すたすたとカカトを付けることなく、かなり足早にハイクするのだ。
しかも、その量はどんなライダーよりも多い。自分の記憶の中で、最もハイク力があるライダーがあるというのは、トースタイン、あと日本の布施忠だ。
そう言えば、忠も隠れてやっていそうなタイプだな。
ともかく、プロは若くて上昇中の間は、練習しているようなことは言わないこともあるけど、本当は影でメチャクチャやっているのだと思う。
2007年にトースタインに会った時は、21歳。すでにスノーボードは8年やって来て、これからもずっと長くスノーボードを続けていたいと語っていたけど、その夢は叶ったようだ。
かつて90年代に活躍したプロが、数十年ぶりに会ったらブヨブユに太って、本人に気づかなかったということがしばしばあったが、トースタインに限っては、いつまでもプロとしてのシェイプを保ち、長い間第一線として活躍していくに違いない。
野球界で言うイチローさんのような存在だと思う。