「自由なはずのライダー」がハマる、もうひとつのサラリートラップ

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文:飯田房貴 @fusakidmk

プロライダー、サポートライダー、ローカルヒーロー。
立場は違っても、多くのスノーボードライダーは「自由な存在」だと思われている。
会社に縛られず、雪を追い、世界を移動する。
だがその自由は、本当に自由だろうか。

実はライダーという立場こそ、最も気づきにくい“サラリートラップ”にハマりやすい。

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スポンサーは給料ではない、しかし給料よりも縛る

ライダーの収入は不安定だ。
固定給はない。
だが、ボード・ウェア・ブーツ・ギャラ・撮影費。

「サポートされている」という状態は、
一見すると自立しているようで、実際には一本の糸にぶら下がっている。
来季も契約があるかは分からない。
成績、露出、タイミング次第。
怪我をした瞬間、価値が揺らぐ。

これは給料とは違うが、給料以上にシビアな依存関係だ。
「雇われていない」のではなく、責任の所在が曖昧なまま依存している状態である。

ライダーの固定費は「身体」と「滑走日数」

ライダーにとって最大の資本は身体だ。
そして最大の固定費も、身体である。

シーズン中、休めない。
休む=露出が減る
露出が減る=評価が下がる

結果、

無理をする
怪我をする
さらに立場が不安定になる

という悪循環が生まれる。

会社員は「時間」を切り売りするが、
ライダーは身体とリスクを切り売りしている。

成長しているようで、実は足踏みしている現実

若い頃は違う。
毎年できることが増え、映像も出る。

だが、ある年齢を超えると変わる。

  • トリックの伸びは鈍る
  • 若手の台頭が始まる
  • “次”を求められる

それでも生活は、ピーク時の自分を前提に組まれている。
ここで多くのライダーが気づく。

俺は「今の自分」で
ずっと稼ぎ続けられるのか?

これは会社員が
「この会社に一生いられるのか」
と感じる瞬間と同じだ。

最大の罠は「ライダーであり続けること」が目的になること

本来、ライダー活動は手段だったはずだ。

  • 表現のため
  • 可能性を広げるため
  • 次の扉を開くため

しかしいつの間にか、

ライダーでい続けること自体が目的

になる。

  • 契約を切られないために滑る
  • ブランドの期待に応えるために滑る
  • 自分の意思より、ポジションを守るために滑る

これは自由ではない。
立場に縛られた状態だ。
立場を失わないために消耗している状態といえる。

ライダーにとっての「本当の資産」とは何か

映像は資産だろうか。
フォロワー数は資産だろうか。
スポンサー契約は資産だろうか。

答えは半分イエスで、半分ノーだ。

それらはすべて
「滑り続けている間だけ機能する資産」。

滑れなくなった瞬間、
価値は急速に弱まる。

本当の資産は、

  • 自分の言葉
  • 視点
  • 信頼
  • 次に何を生み出せるか

そこにしかない。

「いつか考える」は、たいてい遅い

多くのライダーはこう言う。

「引退したら考える」
「もう少し滑れなくなったら」

だがその時、
スポンサーも、収入も、体力も減っている。

選択肢は増えない。
減る。

ライダーという立場は、永遠ではない

これは悲観ではない。
現実だ。

問題は「いつ終わるか」ではなく、
終わった後に何が残るか。

ライダー活動は、
人生のゴールではなく、強力な通過点である。

その視点を持てるかどうかで、

  • 消えていくライダー
  • 形を変えて残るライダー

が分かれる。

自由でいるために必要なのは、滑り続けることではない

給料に縛られる人生も、
スポンサーに縛られる人生も、本質は同じだ。

依存している限り、人は自由になれない。

ライダーという立場を
「消耗する肩書き」にするか、
「未来を生む土台」にするか。

選ぶのは、今だ。

飯田房貴

1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
ウィスラーではスノーボード・インストラクターとして活動する傍ら、通年で『DMKsnowboard.com』を運営。SandboxやEndeavor Snowboardsなど海外ブランドの日本代理店業務にも携わる。
また、日本最大規模のスノーボードクラブ『DMK CLUB』の創設者でもあり、株式会社フィールドゲート(東京・千代田区)に所属。
1990年代の専門誌全盛期には、年間100ページペースで記事執筆・写真撮影を行い、数多くのコンテンツを制作。現在もその豊富な経験と知識を活かし、コラム執筆や情報発信を続けている。
主な著書に、
スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』
スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』などがある。
現在もシーズン中は100日以上山に上がり続け、スノーボード歴は40年(2025年時点)。
2022年には、TBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター』や、講談社FRIDAYデジタルの特集「スノーボードの強豪になった意外な理由」にも登場するなど、専門家としての見識が評価されている。

インスタ:https://www.instagram.com/fusakidmk/

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