スキーとスノーボードの「長い距離」がついに縮まる──全日本スキー連盟が「全日本スキー・スノーボード連盟」へ名称変更

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スノーボードが「スキーの1種目」から独立した瞬間

2026年ミラノ・コルチナ冬季オリンピックのシーズンに向けて、期待が高まるこの時期、大きなニュースが舞い込んで来た。
2025年10月31日、全日本スキー連盟(SAJ)が来年8月より名称を「全日本スキー・スノーボード連盟」へと改めると発表したのである。
この発表は、単なる名称変更にとどまらず、日本のスノースポーツ史において象徴的な出来事だ。

原田雅彦会長は会見で、「スノーボードはもはやスキーの1種目で扱うべきではない」と語った。
この一言に、長年スノーボードが歩んできた“独立への道”が凝縮されている。

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スノーボードが「スキーではなかった」時代

かつて、スノーボードはスキー界から完全に別物として扱われていた。
1980年代後半から1990年代にかけて、スノーボードの競技化が進む中で、国際スノーボード連盟(ISF=International Snowboard Federation)が設立された。
ISFは独自の大会を開催し、世界中のトップライダーたちが集う舞台となっていた。

しかし、1998年の長野オリンピックを前に、IOC(国際オリンピック委員会)はスノーボード競技を「国際スキー連盟(FIS)」の管轄下で実施することを決定。
これに反発したISFと多くのライダーたちは、「スノーボードはスキーではない」という強い信念を掲げ、対立は決定的となった。

その後、ISFは活動を終え、FISが主催するワールドカップが国際競技の主軸となった。
スノーボードは“スキーの一部”として制度的に取り込まれながらも、その精神は常に自由と独立を求め続けてきたのである。

そして2025年──「同列」への進化

あれから四半世紀。
今、全日本スキー連盟が自らの名に「スノーボード」を加えた。
それは、スノーボードが一つの確立した文化・競技として正式に認められたことを意味する。

「スノーボードはスキーの1種目ではない」
この言葉を、かつての対立を知る世代が聞けば、時代の変化を強く感じるだろう。
もはや「スキー対スノーボード」ではなく、「スキーとスノーボード」が共に雪山文化を担う時代に入ったのだ。

「さあ雪ましょう」──雪の上で、再びひとつに

2022年、FISは「国際スキー連盟」から「国際スキー・スノーボード連盟」に名称を変更した。スノーボードが長らくスキー競技の一部と見なされてきたが、2022年5月の総会で団体名に正式に「スノーボード」が加えられた。日本のSAJでも、遂に名称に「スノーボード」が加えられた。

新たなスローガン「さあ雪ましょう」には、原田会長の言葉通り、“雪と戯れる原点”への回帰が込められている。
このメッセージは、競技の垣根を超え、あらゆる人々に雪山の楽しさを再認識させるだろう。

スノーボードが誕生してから約半世紀。
反発と誤解の時代を経て、今ようやく「共に雪を楽しむ」新しい時代が訪れようとしている。

1998年の長野オリンピックで生まれた“分断”が、ようやく癒えつつある。
スノーボードの自由な精神と、スキーの伝統的な組織力。
このふたつが協調できる未来は、ウィンタースポーツの新たな可能性を広げるに違いない。

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