
スキーやスノーボードといったウィンタースポーツは、これまで「雪がある季節」にしか楽しめないという制約があった。しかし、近年、ヨーロッパやアメリカを中心に注目を集めている「スノーファーミング」という技術が、この常識を大きく変えつつある。
スノーファーミングとは、冬の間に人工雪や天然雪を大量に集め、それを木くずや藁、特殊な断熱シートなどで覆って保管し、夏の間も溶かさずに残す技術である。これにより、雪のない季節でもスキーやスノーボードのトレーニングやイベントが可能になり、シーズン外の活動が活発になってきている。
フィンランドのルカやスウェーデンのクレッパン、アメリカ・コロラド州のカッパーマウンテンなどでは、すでにこの技術が導入され、10月上旬から本格的なパーク営業が行われている。特にカッパーマウンテンでは、夏の間も雪を残して一般向けのハイクパークを展開しており、トップレベルの選手たちによるサマーキャンプも実施されている。
このような動きは、競技レベルの向上はもちろん、スキー場の経済的安定や観光資源としての活用にもつながっている。雪が限られた資源となりつつある今、スノーファーミングは持続可能なウィンタースポーツの未来を支える技術として注目されているのだ。
一方、日本国内では、こうしたスノーファーミングの取り組みは、まだ本格的には導入されていない。気温や湿度の高い日本の夏は、ヨーロッパのような長期保存には不利な気候条件であることも事実である。しかし、気候変動による積雪不足や営業期間の短縮といった課題が顕在化している中で、今後は導入を真剣に検討すべき技術ではないだろうか。
冬だけでなく、オフシーズンでも滑走機会を提供することで、スノースポーツは「年間スポーツ」としての進化を遂げようとしている。日本においても、先進地の事例を踏まえ、技術的な課題を乗り越えていくことが求められる。
以下、参考動画。