
普段、スノーボードのインストラクターをしている中で、生徒さんのボードの滑走面が気になることがあります。
長らくワックスをかけていない滑走面は、エッジ付近から毛羽立ちが目立ち、いかにも滑らなさそうな状態です。
そんな時は「そろそろワックスをかけた方がいいですよ」とアドバイスします。
するとよく返ってくるのが、
「何日滑ったらワックスをかけた方がいいですか?」という質問です。
ワックスの頻度やタイミングは、滑る環境や頻度によって変わります。
私のようにインストラクターとしてシーズン中120日ほど滑る場合は、毎週のワクシングがおすすめです。
実際、私自身も毎週行っていますし、周りのインストラクターやライダーも同様の人が多いです。
もちろん、仕事が忙しくて2週間に一度になることもありますが、それでも定期的に行うことが重要です。
では、いわゆる「シーズン10回以内」のサンデーボーダーの場合はどうでしょうか。
この場合は、
シーズン前に1回、シーズン終了後に1回程度でも十分でしょう。
ホットワックス用の道具を一式揃えるよりも、
シーズン前に専門ショップでチューンナップを行い、あとは簡易ワックスで対応するのもおすすめです。
シーズン20回以上滑るようなヘビーユーザーの場合は、
1か月に1回程度+大事なトリップ前が目安です。
例えば、本州で滑っている方が北海道や海外へトリップに行く場合、
その前にワクシングをしておくことで、より快適な滑走が可能になります。
要は、ワックスの頻度は人それぞれの考え方にも大きく関係してきます。
私自身、昔はズボラでしたが、今では毎週ワックスしないと気持ち悪く感じるほどです。
部屋の掃除と同じで、ホットワクシング後にブラッシングしてベース面がきれいになると、とても気持ちが良いものです。
日曜日を休みにしているので、その日に作業することが多く、
週明けには気持ちよく雪山へ向かうことができます。
あと、使用しているボードの滑走面の種類によっても、ワックスの頻度は変わってきます。
少し乱暴な言い方になりますが、
比較的安価なボードに使われている滑走面は、ワックス頻度が少なくても滑りやすい傾向があります。
一方で、高性能なボードほど、性能を引き出すためにこまめなワックスが必要になります。
私の使用しているボードは、「DURA SURF 4001 SINTERED」という焼結製法(シンタード)ベースです。
このシンタードベースは、滑走性能が高くスピードも出やすい反面、
ワックスが抜けやすいという特徴があります。
そのため、性能を維持するには、こまめなワクシングが欠かせません。
また、ブラックソールの場合は、ワックスが抜けた部分が白く見えるため、状態の変化にも気づきやすいです。
一方で、比較的安価なボードに多く使われている「エクストルードベース(押出成型)」は、
そこまで頻繁にワックスをしなくても滑りやすいという特徴があります。
ただし、しっかりとワックスをかけた状態で比較すると、
滑走性能自体はシンタードベースに劣る傾向があります。

ちなみに、エッジのメンテナンスも重要です。
私はワクシングのタイミングで、ダイヤモンドシャープナーを使って軽くエッジを整えています。
特に硬いバーンの日は、ワックス以上にエッジの重要性を実感するはずです。
ワックス作業を自分で行うようになると、
ワックス選びやチューンナップキット選びも楽しみの一つになります。
インストラクター仲間の中には、スクレーパー専用のシャープナーを持っている人もいます。
「高いけど、毎シーズン少しずつ揃えてきた」と話していて、そういう楽しみ方もあると感じました。
また、エッジ付近のワックスが抜けやすい部分に、雪温に関係なくコールド用ワックスを塗るというテクニックもあります。
こうした知識が増えると、ショップでワックスを選ぶ時間も楽しくなります。
私自身は雪温にあまりこだわらず、
さまざまなワックスを滑走面に浸透させるイメージで、こまめにワクシングをしています。
迷ったときはコールド(低温)ワックスがおすすめです。幅広い雪質に対応できるため、非常に使いやすいです。
個人的には、マツモトワックスの「アンチBB」をよく使います。このワックスは、マツモトワックスの中でも特に人気が高く、ベースワックスとしてもオールマイティに使える固形ワックスです。長年愛用するリピーターが多く、リピート率No.1です。
体重が軽い私は、緩斜面や迂回コースでスピードが落ちやすいのですが、
こまめなワクシングによってスピードを維持しやすくなっています。
また、ウィスラーのようにフラットなエリアが多い場所でも、
ワックスが効いていればスムーズに止まらず滑ることができます。
ワックス作業は、結果的にストレスフリーな滑りにつながります。
ぜひ、ワクシングそのものも楽しみながら、
より快適なスノーボードライフを送ってみてください。

飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴は40シーズンを超え、約20年にわたり雑誌、ビデオ、ウェブなどを通じてハウツー記事の発信に取り組んできた。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というコラムを執筆。季刊誌という発行ペースの中で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てた。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
自身が監修・出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支える存在となった。
現在はカナダ・ウィスラーを拠点に、インストラクターとして世界中の人にスノーボードの魅力を伝え続けている。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

