【コラム】スノーボード界に新たなイノベーションは起こるのか?

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文:飯田房貴 [email protected]

BurtonのStep On®は、革新的なイノベーションでスノーボード界に新しいマーケットを構築する気配を見せている。
以前紹介したコラム『破竹の勢いで売れているBurton Step On®に伝えたい3つの提言』でも伝えたが、今後はBurton以外の他のメーカーがこの動きをフォローするのかどうかで、市場の変化をもたらせそうだ。

スノーボードの歴史をひも解いていくと、いくつかのアイデアが生まれて、その時代にはある程度の驚きを持って市場に放たれた。しかし、結局のところスノーボーダーたちは、その新アイデアを受け入れず、市場から消えていったという歴史がある。

ビンディングのベース部分をなくして、直接ブーツとボードをつなぐことを行ったベースレス・ビンディング、Step On®の前身のSTEP INシステムは結局のところ残らなかった。
しかし、今回のStep On®は長くスノーボード界に起きていなかったイノベーションを遂に起こした感がある。

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(左、今はなきベースレス・ビンディング。右、かつてのバートンのステップイン)

かつてのスノーボードの板は、インサートビスがなく、そのままネジをドリルで付けないといけないという、とんでもないアイテムがあり、そうした意味では、現在の4×4の装着システムやチャンネルシステムは、革新的と言えたが、おそらくStep On®はそれ以来の革新的なアイテムだろう。

その他のイノベーションとしては、ボードの形状がキャンバー一辺倒だったところに、バナナのようなロッカーボードが登場し、そこからダブルキャンバーやフラットなど、様々な形状ボードが誕生したことも挙げられる。

今回、このコラムを書くのにあたり、過去の写真などをチェックしてみたが、2008年に行われたラスベガスのトレードショーでLIB TECHは大々的にバナナシェイプ、いわゆるリバースキャンバー(ロッカー)を強くPRしていた。

これは、おそらくリバースキャンバーの1年目か2年目だ。
自分の記憶では、このスケートライクに楽しめる新シェイプが、瞬く間にブームとなり、その後のロッカー時代を作り上げたわけだ。

その数年後に自分もバートンのロッカーボード、HEROに乗ってみたが、「なるほど」と思ったものである。
ともかく、新しい乗り味、クルクルとグラトリが楽しめる。ただ一方でその頃のロッカーボードは、ひじょうにグリップ力が弱く、高速安定性やカービングでのホールド感が弱かった。

今では、キャンバー以外に、フラットだとWキャンバーだの、メーカーによっても様々なシェイプ名称があるが、ともかく2008年の前には、おそらくキャンバーばかりの市場であったことは明記しておきたい。

こうして、振り返ると、ボード形状というのも、1つのイノベーションだったのだが、個人的なヒストリー感ではそれほど強いインパクトはなかった。

かつては、ディレクショナルシェイプ形状しかなかったスノーボード市場に、ツインチップが登場したが、あれは90年前半だったか。その時のイノベーションの方が強烈だったようにも思う。

さて、ここからは冗談半分で聞いてほしい。
それでは、今後のスノーボード市場に残された技術革新は、どんなものがあるのか?
自分なりに6つのアイデアを考えてみた。
いつか、こんなことが実現できるように期待したい。

座って履けるStep On®

現在のBurtonのStep On®は、座って履けないという難点がある。
実際、初心者のスノーボーダーでは、座って履きたい場面にしばしば遭遇する。
また、うまい人でも、パウダーのハイクアップの急斜面で、座って履くような場面だってあるだろう。
そこで、座ってでも履けるStep On®があるといいと思う。

滑走中に自由にスタンス角度を動かせるシステム

スノーボーダーはスタンスを事前に決められて遊ぶ横乗り板だ。
サーフィンやスケートだと、その状況によってスタンス角度は自由自在だが、スノーボードはそうはいかない。
でも、タイトなツリーでよりクイックにエッジの切り替えをしやすいように前足の角度が触れたり。
あるいは、スイッチを楽しもうという場面で、後ろ足の角度をよりマイナスに振ってみたり。
そんなことが、ドライバーもなしにもっと気軽に自由にできたらいいと思う。

ワックスがいらない滑走面

個人的には、アイロンでホットワックスをする作業は好きである。マイボードを可愛がっているような意識にもなる。
昔から日本人は、道具に対する思いがあり、道具を大切にする文化もあるので、そうした遺伝子が自分にもあるのだろう。

だけど、もしもワックスがいらない滑走面があったら、ひじょうに便利だ!
と語ったところで、調べたところ、もうすでにあった!!(以下、リンク参考)
https://www.t-rescue.jp/page/24

ざっと読んだ感じ、まだまだ改良の余地があるようで、本当のワックスいらない滑走面時代は来ていないようだ。
でも、近い将来こうしてことも起こるのだろう。それができれば画期的なイノベーションになるに違いない。
初心者など、ワクシングなど面倒など思っている方には、朗報だ。


緩斜面ぐらいの斜度なら駆け上がることができる風車

スキー場とただの雪山の大きな違いと言えば、リフトがあるかどうか。
次に安全に管理されて、毎朝、圧雪してくれることだろう。

だけど、そもそも僕たちスノーボーダーが、なんかしら斜面を駆け上がるものを持っていれば、もうリフトなんかいらなくなる。
ドラえもんに出て来るようなタケコプターがあれば最高だけど、おそらく僕が生きている間には難しいだろう。
それなら、緩斜面ぐらいの斜度なら駆け上がることができる風車ならどうか。
そんなものなら、もうすでにあるに違いない。

そもそものスキー場イコール、リフトで上がる。
そんな発想力を壊してみたら、例えば、地下トンネルで超高速の列車のような乗り物で、頂上まで行けるとか。
おもしろいアイデアも考えられる。

温かくても溶けない完全人工雪

スノーボーダーにとって、もっとも切ないというのは、温かく春になった時期ではないだろうか。
今季も楽しいパウダーありがとう!でも、もうシャバ雪か。それはそれで楽しいけど、残念だなあ、と思う。
冬場イントラをしている自分も春は、ちょっと寂しい。
「ああ、もうスノーボードが教えることができないのか。また来季だなあ」なんて。

だけど、もし将来的に温かい日も溶けない、完全人工雪ができたらどうだろう?
それなら一年中スノーボードが楽しめるぞ!

砂漠のサンドボーディングなんかも近い感覚かもしれないけど、以前体験した人に取材したら、雪とは全然違う。
「滑りにくいし、ターンするのも大変だった」とのことだ。

でも、もし本当に温かくても溶けない完全人工雪ができてしまったら、一年中ダラダラ滑れてしまって、それはそれで良くないのかも。
やっぱり、夏には夏らしいアクティビティなどを楽しみ、冬に備えるのがいいのかな。

実際にスノーボードしている感覚を味わえるバーチャル・ボーディング

最近は、有名なデパートでもバーチャルで買い物ができる、というニュースを見たことがある。
ということで、将来的には、それもかなり近く、実際にスノーボードしている感覚を味わえるバーチャル・ボーディングができるのだろう。
もう、すでにそんなことをしている施設などもあるだろうが、本当にスノーボードをしている感覚とは離れてしまっている。
だけど、将来的にはかなり本当にスノーボードしている感覚と近づいているような気がする。
あれ、待てよ。だけど、そんなことをしたら、そもそももうスキー場に行って、スノーボードをしなくてもいいのか。
スノーボード・レッスンにしてもバーチャル!?
ここまで来ると、それが本当に楽しいのかどうか、とかわからなくなっちゃいそうだな。

もう、こうした想像するのも疲れて来たので、窓から見えるブラッコムの山へ行こうっと!

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。最新執筆書『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は35年。

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