【コラム】スノーボードが好きならスノーボード業界で働かない方がいい理由

文:飯田房貴 fusaki@dmksnowboard.com

スノーボードが大好きなら、誰もが一度は「スノーボードに関する仕事をしてみたい!」と思ったことではないでしょうか。
その気持ち、よーくわかります!
しかし、長い間、スノーボード界を見て来た自分としては、今はスノーボード界で働かない方がいいかも、なんて思います。
その理由を挙げていきましょう。

好きなことでなく「才能」が発揮できる仕事をするべき

大切な結論から伝えます。
人は、好きなことを仕事にしたいと憧れるけど、好きなことが必ずしも実力を発揮できるところとは限りません。
むしろ、「才能」を発揮できる仕事をすべきだと思います。

才能とは何か?

ベストセラー八木 仁平(著)『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』によれば、才能とは、他人にとっては一見大変そうなことでも、「自分ではあたり前に楽にできること」だそうです。

自分であたり前にできることなので、意外に自分では気づかなかったりします。
だけど、友人や親しい人に聞いたら、わかるかもしれません。
あなたにとっては簡単なことでも、他人とっては難しいこと。
それが、才能です。

僕の場合は、こうした執筆をすること。またそれを続けることです。

これまでの人生の中でも何回か言われました。
インタビューした原稿内容が、「よく、まとまっているね」とか、コラム原稿をアップした時に、「よく、ここまで調べましたね」とか。
あとは、「続けられるところがフサキらしい」と言われたことも何度かあります。
実際、僕は1997年12月から一度も休まずに、このDMKsnowboard.comをアップし続けています。
風邪を引いた時も、インフルエンザになった時も、肩を脱臼した時も、飛行機で移動した時も、一度も休んだことはないです。

自分にとっては、それこそ空気をするほど簡単な感覚(!?)と言っては大袈裟かもしれないけど、本当に苦ではない作業なのです。「書く」ということは。また続けることも。

あとは、「教えることも好き」です。

僕は子供の頃、毎日、近所の駄菓子屋に行って時間を潰していました。
お小遣いを使い切ってしまうと、やることがないので、誰かがやっているテレビゲームの前に勝手に座ってしゃべり掛けていました。
それこそ、見たことがない子にも!です。

どんなことを話すかというと、「どうしたらそのゲームがうまくいくか?」というアドバイスするのです。
僕の持っている知識をフル活用し、またその子の脳みその中身まで想像して、今の時点でどんなアドバイスすれば、その子が良い結果を出せるのか。そういうことを真剣に考えてアドバイスするのです。当時、流行したギャラクシーは、ステージが上がることにスピードも上がるので、アドバイスする方も汗を掻きながら一生懸命になります。

まあ、よけいなお節介焼きなんですよ(笑)。

で、今やっている自分の仕事が、執筆、インストラクターなど。
あと、おそらく、世界で最もスノーボードに関するハウツーコンテンツをリリースした人物だと思います。

かつては、専門誌で世界のプロ・スノーボーダーたちといっしょに撮影し、彼らの言葉を原稿に起こすようなこともたくさんやって来ました。

90年代にスノーボードをやった人なら、一度は聞いたことがあるかもしれないカナダのライダー、「ベン・ウェインライト」。
彼は、世界ではほぼ知られていないプロ・スノーボーダーだけど、あの時代にスノーボードをしている日本人なら聞いたことがある名だと思います。
というのも、僕は彼とたくさんいっしょにハウツーの仕事をして来たので!

専門誌、ハウツー本、ハウツービデオなど、ともかくたーくさん仕事しましたね。
90年代はスノーボード・バブルでもあったので、ともかく需要が高かったし。
ビッグエアー王のマーク・アンドレ・ターレ、ジブ貴公子シモン・チェンバレン、そして今でも第一線で活躍するトースタイン・ホグモなど、専門誌全盛時代は、いっしょに仕事して来ました。

スノーボード業界で働いた人によくあるパターン


それでは、具体的によくあるパターンを紹介しましょう。

まずは、社員さん、もしくはバイトでスノーボードショップで働くパターンから。

朝の通勤は、比較的に楽です。サラリーマンが満員電車で通う中、ショップのスタートは遅めなので。
平日の朝は、あまりお客さんが来ないので、接客業は少なめ。それよりも、メーカーや代理店から届く荷物の品出しの作業に追われます。
ランチは、他のスタッフとズラしながらうまく時間を工夫。1時間程度の休憩になります。
夕方くらいには混みだして来て、接客。接客が好きな人なら、時間が経つのも早いですね。またお客さんに喜んでいただけることも、店員としての歓びにつながります。
ショップによっては、ビンディングの取り付け作業などもあるかもしれません。
夜は、サラリーマンよりもちょっと遅めの帰宅になるでしょう。
シーズン中は、ショップを閉めた後、お店のレイアウトチェンジで残業がある日もあるかもしれません。

スノーボードができる日は、サラリーマンなどといっしょ、週2日程度です。

土日が忙しい仕事なので、休みを合わすのが大変で、もしかしたらバイトスタッフ仲間といっしょに滑ることができないかもしれません。
平日に休めるので空いているゲレンデを滑れたとしても、いっしょに滑る仲間がいなかったら寂しいですね。

次は代理店で働くことを想像してみましょう。
代理店というのは、海外メーカーなどを日本に輸入し、それを主にショップで卸す事業のことです。
自分がよく知っているところでは、それほど朝が早くないところが多いですね。
ランチなんかも、サラリーマンで込み合う時間帯を避けて、午後1時過ぎに行く傾向です。
午前中は電話の対応、あとはクレームの処理なんかもあります。ショップから、「オーダーしたものが入っていないよ」とか、お客さんからの対応など。
あと、午後はショップの受注に応じて、商品を出したり。倉庫から商品を出して段ボールに詰めて宅急便配送手配など。
あるいは、倉庫がない代理店ったら、倉庫への発送指示する作業など。
最近では、ネット通販への対応業務などあるかもしれません。


スノーボード業界に働きたいという人は、
・スノーボード・ギアなどのデザイン業務
・プロ・ライダーのマネージメント業務
そういったことに憧れを持っているのかもしれませんが、そんな仕事をできる人は、ごく一部です。選ばれしエリートという感じでしょうか。

しかも、英語が話せたり、その世界に精通している、あるいは資格など必要になって来る場合もあると思います。
憧れのスノーボード業界に入ったとしても、まったくスノーボードとは無縁の仕事に就く可能性がだって高いのです。
極端な話、経理担当などになってしまったら、スノーボードとはほぼ無縁になってしまいます。

逆にメーカーで働いている人は、むしろあまりスノーボードをやって来なくて、別の畑で活躍して来た結果、働いている人も少なくありません。
特に有名なスノーボード・メーカーのトップの地位にある人は、別業種の世界で活躍されていた方とかが、スノーボード業界に入って来ることもあります。
僕もセールスミーティングで、海外メーカー本社に行ったこともあったけど、「この人、全然スノーボードやらないじゃん!」なんて人も見て来ました。

もちろん、まったくないとも言えません。スノーボードを作ることに憧れて、実際に製作に携わっている人だっています。でも、そういう方はごく一部だと思うのです。または、タイミングよく良い時期に仕事をスタートでき、最初はあまり好きでない部署で働いていたけど、最終的にはやりたかった仕事をやっている、というパターンもある思います。でも、大方90パーセント以上のことは、思い描いていた世界とは違うということだと思います。

まとめ

かつては、スノーボード業界が潤っていて、賑やかな時には、ある程度やりがいもあった世界だったと思います。
しかし、今はどんどん日本の人口が減少し、さらにスノーボードをする人も減っている傾向で、大変なことばかり。仕事量は増えるのに、給料上がらずという辛さ。
ここ1、2年間でどれだけの人のお別れの挨拶メールを受け取ったことか。
長く働き、仕事が抜群にできる人も残念ながら去っていった現状があります。

ここまで聞いた上で、「いや、私はそれでも働きたい!」というなら、おそらくその人は何か「才能」を持っているのだと思います。

スノーボードのギアに囲まれているのが幸せであったり、ショップなら人と接するのが好きな人だったり。
または、最近多くの代理店やメーカーが始めているネットビジネスなら、そういう仕事が好きな人。モノの写真を撮って、説明書きをアップすることなど。説明がうまく書けて、お客さんに買ってもらえることも嬉しいことだと思います。売り上げとは、経済の投票活動の結果とも言いますしね。売れるということは、お客様の投票結果だから、嬉しい気分にもなります。

もし、インストラクターになりたいという人なら、初心者の人にスノーボードの魅力を伝えることが好きな人かもしれません。怖くてジャンプができない人に、辛抱強くやさしく上手に教えて、フリースタイル・スノーボードの感動を与えたり!
僕も、数十年以上前から初心者の方にレッスンして来たけど、初めてスノーボードやる人に、その魅力をうまく伝えた時にはもの凄い充実感があります。
そういう気持ちがある人は、向いているのかな、と思います。

個人的には、スノーボード業界が好きだし、ぜひ多くの人に興味を持ってほしいと思っています。
また、若い人にどんどん活躍してもらって、僕たちオジサンたちが考えもしなかった新しいアイデアで、この業界を活性化させてほしい!とも願っています。

参考文献:
八木 仁平(著)世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド

コラムニスト・飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをし、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Westbeach、Sandbox等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート(本社・東京千代田区)。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。最新執筆書『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は35年。