スノーボード新イージー脱着システム完全解説|STEP ON・SUPERMATIC・FASE・CLEW徹底比較

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2025-26シーズンのスノーボード市場は、例年以上に盛り上がりを見せている。オリンピックイヤーに加え、バインディングとブーツの新イージー脱着システム、STEP ONやSUPERMATICの人気も急上昇中だ。BURTONやNIDECKERを中心に、多くのブランドが参入し、さらにプロ志向向けの黒船!FASEも登場している。

円安によるギア価格上昇や少子化による市場縮小という逆風の中、業界はこの新システムに注目しすぎる傾向も見られる。しかし実際、多くのユーザーがこの便利なシステムに惹かれて始めているのも事実だ。

そこで今回は、STEP ON・SUPERMATIC・FASEに加え、既存のCLEWも含めた4つのシステムを徹底比較。初心者から上級者まで、誰にでもわかるよう「新イージー脱着システム」を完全解説する。

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文:飯田房貴

市場をリードするSTEP ONの実力

私は普段、カナダ・ウィスラーでスノーボードインストラクターをしており、年間100日以上レッスンを担当しています。年間約400人の生徒さんを教える中で、STEP ONを使うスノーボーダーが年々増えていることを実感しています。同僚のインストラクターでも、STEP ONを使い始める人が出てきました。

私の感覚では、生徒の2~3割がSTEP ONを使用しています。インストラクター仲間では1割未満です。SUPERMATICやCLEWを使用する人も見かけますが、まだSTEP ONの使用率には及びません。現在、この新イージー脱着システムの市場は、STEP ONが圧倒的にリードしていると言えます。しかし、この市場でのリードが必ずしも製品の優位性を意味するわけではないことも理解しておく必要があります。

(実際に市場調査を行ったわけではありませんが、これまで多くの一般ユーザーを見てきた経験から、STEP ONの使用率は、他のイージー脱着システムに比べて8割以上のシェアがあると推測。)

脱着の便利さを考えると、将来的にはほとんどのスノーボーダーがこのようなシステムを利用することも想像できます。おそらく3~5年後には、ゲレンデで座り込みトゥストラップやアンクルストラップを締める光景は、あまり見かけなくなるでしょう。

STEP ON使用者は大きく2つに分かれます。1つ目は、新しいギア好きのコアスノーボーダーです。特にオシャレで敏感な中国系スノーボーダーに多く、日本でもギアにこだわるスノーボーダーに人気があります。

2つ目は、本当にSTEP ONでなければ困る人たちです。日本では少ないですが、西洋人はしゃがむ姿勢が苦手な人が多く、特にお腹が出ている方は座った姿勢から立ち上がるのが大変です。初心者レッスンでは、およそ2割の生徒が座った状態から自力で立つのが難しく、いわゆるロールオーバーと言う動作、背中側から正面にひっくり返るように立ち上がる必要があります。

こうした人たちにとって、STEP ONは大きな助けとなります。脱着時間を短縮するだけでなく、立つ・座るといったわずらわしさからも解放してくれる、まさに魔法のようなシステムです。

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パウダーでの脱着が弱点か!?STEP ON

STEP ONが登場した当初から、よく議論されていたのは、パウダーでの脱着が難しいのではないかという点です。

実際、私が担当してきたレッスンでも、生徒さんがパウダーの日に脱着で戸惑うシーンを見たことがあります。これはSTEP ONに限らず、他のイージー脱着システムでも懸念される点です。

しかし、バートンはそれに反論するかのように、パウダーでも脱着が簡単だという動画を公開しています。

実際のところ、パウダーでも脱着できるかどうかは、ライダーの技術に左右されるでしょう。

STEP ONはその名の通り、ステップ(踏む)してオン(装着する)システムです。しかし、パウダーでは板が沈みやすく、ステップ時に装着しづらくなることがあります。とはいえ、スノーボードが上手いプロは足場を固めることに慣れており、その結果、難なくSTEP ONを装着できるのです。

したがって、確かにSTEP ONはパウダーで装着しづらいと感じることもありますが、多くの場合は経験値が左右しているといえます。また、パウダー時にはブーツやバインディングに雪が付着し、脱着を難しくすることも考えられます。

パウダーでは通常のバインディングに比べ不利になることもありますが、スノーボード全般の使用に大きな問題はないでしょう。

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プロがSTEP ONを使う理由と使わない理由

多くの人が疑問に思うのは、オリンピックやX GAMESなどのスノーボード競技シーンでSTEP ONを使うライダーをほとんど見かけないことです。スノーボードムービーでも同様に、STEP ONを使用しているプロはほとんどいません。

では、実際のところプロライダーはSTEP ONを使っているのでしょうか?

取材を重ねて分かったのは、プロライダーたちは日常のライディングではSTEP ONを愛用しているということです。昨年、バートンのプロライダーでギア開発にも関わるマーク・ソラーズに取材した際、この点について質問しました。

私が「大会や映像撮影でSTEP ONを使っている姿を見ない」と言うと、彼はこう答えてくれました。

「ライダーにとって、ステップオンを使う/使わないという話は“システムの違い”というよりも、これまで使ってこなかったブーツやバインディングに切り替えること自体が大きいんだ。長年慣れ親しんだ道具を変えるのは難しい。だからコンペティションや撮影といったシリアスな場面では従来のものを使う。でも、デイリー(普段)のライディングではSTEP ONは本当に重宝するよ。」

つまり、STEP ONは競技用ではなく日常用として評価されているのです。
これは一般スノーボーダーにも当てはまり、上級者であってもSTEP ONは十分おすすめできます。

ただし人によっては、従来のビンディングとのフィーリングの違いに慣れるまで、特に最初の使用時に戸惑うこともあります。

実際、世界的に人気のスノーボードハウツーチャンネル「Snowboard Addiction」のネブもSTEO ONブーツの使用検証動画の中で、

「違いといえば、若干だがヒールからトゥへの反応が早いこと。でも正直、それはほとんど気にならないレベルだね。」
とコメントしています。

長年、往来のバインディングを使っていた人たちも、安心してSTEP ONを使用できるでしょう。

BURTONブランド以外にも広がるSTEP ON参加ブランド

STEP ONを選ぶ上での懸念点は、価格が往来のものよりも高めになること。
あと、BURTON以外のブランドで使えないという思い込みではないでしょうか。

しかし、実際のところ、今やBURTON以外でもSTEP ONに参加しているブランドは多いです。
DCシューズは早々とSTEP ONブーツをリリースしたし、昨年はなんとあのUNIONバインディングもSTEP ON参加に表明しました。
また、これまでにもNITRO、FLUXも参加しています。

こう聞くと、もう多くのブランドがどんどんSTEP ONを選択していることがわかります。

STEP ONは、なんとなくイメージ的にBURTONの専売特許なところがあったかもしれませんが、実際にはそのシステムはどんどん他のブランドにも広がって行ってます。

(昨年、UnionバインディングがSTEP ONに参加を表明したことは大きな話題となった。)

STEP ON®︎参加ブランド一覧

ビンディングブーツ
BURTON
UNION×
FLUX×
DC SHOES×
NITRO×

全ブーツに対応!画期的なSUPERMATICバインディング

NIDECKER(ナイデッカー)が開発した SUPERMATIC(スーパーマティック) は、世界初の ブーツを選ばない自動スノーボードバインディング です。
BURTONのSTEP ONとは異なり、どんなメーカーのブーツでも使用できる点が非常に画期的です。

ブーツを差し込み、ヒールペダルを踏むだけで自動的に固定される ステップイン(イージーエントリー)システム が特徴で、リフトを降りてすぐに滑り始めることができます。快適なフィット感と高いパフォーマンスを両立しつつ、従来のラチェット式バインディングと同様の操作も可能です。

一見すると理想的なシステムで、SUPERMATICはスノーボード市場を席巻しそうな予感もありますが、デメリットとして 重さと厚み が挙げられます。
ヒンジ部分にヒールバックルがあるため、ハイバックが厚くなり、重量も増す傾向があり、持ち運びや長時間のライディングでは疲労を感じる場合もあります。

しかし、実際に使用しているライダーへの取材では、「重さは気にならない」という声も多く、数値上の重量よりも快適に感じることが多いようです。

SUPERMATICは、ブーツの互換性とイージーエントリーを実現した革新的なバインディングで、スムーズな滑り出しと高い操作性を兼ね備えています。重量面には注意が必要ですが、実際の使用感では多くのライダーが快適さを実感しており、これから注目のシステムであることは間違いありません。

かつてのVHS戦争に学ぶ、STEP ONとSUPERMATICの行方

かつて1970年代後半から1980年代後半にかけて、ビクターのVHSとソニーのベータが争った「ビデオ戦争(フォーマット戦争)」がありました。当時私は高校生で、ベータの優れた画質と小型テープを見て「VHSを凌駕するのでは」と予想しました。しかし実際に勝利したのはVHSでした。

勝因の大きなポイントは、VHSが製造ライセンスを幅広く供給し、多くの企業がデッキやソフトの販売に参加できる体制を作ったことです。この自由化によりデッキが普及し、市場規模が拡大。録画時間の長さや低コスト化、ソフトの充実も後押しとなり、VHSは消費者のニーズに応えつつ標準フォーマットの地位を確立しました。

私はこの歴史を、現在のSTEP ONSUPERMATICの争いに重ねています。現状、STEP ONは多くのブランドに採用され普及が進んでおり、参加ブランドの多さが市場での優位性を生んでいます。一方、後発のSUPERMATICも負けじとライセンスを拡大し、昨年にはSalomonやBent Metalへの提供を発表しました。

こうして見ると、かつてのVHS戦争と同じく、広く供給して多くのブランドやユーザーに利用されることが、勝利のカギになりそうです。将来的には、こうしたイージー脱着システムがスノーボードの標準になる可能性がありますが、果たして勝つのはSTEP ONかSUPERMATICか、注目が集まります。

(サロモンも参入したことで、俄然認知度が上がったスーパーマティック。果たした将来この市場のメインを張れるのか注目される。)

FASE:スノーボードイージー脱着システムに黒船!2ストラップ派も魅了する新技術

スノーボードのイージー脱着システムは、STEP ONとSUPERMATICの争いかと思われていたが、昨年、驚くべきニュースが飛び込んできました。それは、FASE(フェイズ)という新しいシステムです。
※FAST ENTRY SYSTEMから名付けられた。

トゥストラップを外すことなく、アンクルストラップを完全に外さずにブーツの出し入れが可能なリアエントリーシステム。そしてその動きをサポートするように、ハイバックが自動で後方に倒れる構造になっています。

約7年の歳月をかけてデイヴィッド・パーチリッジ(David Partridge)とジェフ・ペルシャ(JF Pelchat)が共同開発した FASE。従来の2ストラップバインディングのパフォーマンスとフィット感をそのままに、迅速な着脱を実現することを目指したこの新システムは、まさに“黒船的存在”と言えるでしょう。

STEP ONやSUPERMATICといったシステムが市場に登場する中、コア層のライダーには懐疑的な見方も少なくありませんでした。長年2ストラップを使い続けてきた感覚からすれば、新しい仕組みに違和感を覚えるのは自然なことです。

しかしFASEは、そうしたライダー心理を十分に理解し、カバーできる新製品です。実際にスコット・スティーブンスやジョー・セクストンといったトッププロが支持している事実は、大きな信頼材料となります。新システムを「1〜2年様子を見てから」と考える慎重派のスノーボーダーでさえ、FASEには初年度から注目せざるを得ないほどの存在感を示しています。

さらに、世界各地で1月から2月にかけて行われたスノーボード展示会でも、FASEのブースは軒並み盛況だったと報告されています。

FASEはアンクルストラップの操作が必要なため、STEP ONやSUPERMATICに比べると脱着はやや遅れますが、2ストラップを愛用し続けるコア層には高い支持を得ることが期待されます。さらに、今後は新たなブランドの参入も続くでしょう。

どれを選ぶ?FASEバインディングの素材別特徴とおすすめモデル

FASEバインディングは、革新的なイージー脱着システム「FASE Fast Entry System」を搭載しており、スムーズな装着・脱着が大きな魅力です。さらに、採用する素材によってライディングの感覚にも違いがあります。
ROMEとBataleonは、軽量で剛性の高い鍛造アルミニウム製ヒールフープを採用しており、ダイレクトでレスポンスの良い操作感が特徴です。一方、thirtytwoとJonesはグラスファイバー強化ナイロンを使用し、しなやかで軽量、長時間のフリーライドやパウダー滑走でも快適に楽しめます。用途や好みに応じて、素材の違いも選ぶ際のポイントになります。

ROME
現在流通しているFASEバインディングの中で、最も調整機能が高いKATANAをベースに作られており、細かい角度やハイバックの設定など、自分好みにカスタマイズしたいライダーに最適です。

Bataleon
BLASTERを元にしたエントリーモデルで、価格を抑えつつFASE Fast Entry Systemを搭載。軽量アルミフレームにより横方向のしなりを活かした安定感のある操作性を実現しており、オールマウンテンで快適にライディングできます。

thirtytwo
FASEバインディングの中で最もフレックスが高く、フリースタイラーや柔らかい板を好むライダーに向いています。軽量でしなやかなフレームにより、パウダーや長時間のフリーライドでも快適さを維持できます。

Jones
Jones Mercury FASEは、クラシックな2ストラップの操作感を保ちつつ、FASE Fast Entry Systemにより素早く装着可能。どんな地形でも快適でロック感のある操作性を提供し、フリーライダーが長時間アグレッシブに滑るのに最適です。

米有名ギア系YouTuberが徹底比較!FASE vs Union Step-On vs Supermatic

アメリカの有名ギア系YouTuber、Board Archive(チャンネル登録者数10.9万人)が、「FASE vs Union Step-On vs Nidecker Supermatic」のハイクパーク・バインディングレビュー動画をアップ!
FASE・Union Step-On・Nidecker Supermaticの3種類のイージー脱着バインディングを徹底比較しているので、ぜひ参考にしよう。

  • FASE(フェーズ):ツーストラップ感覚に近く軽量。エントリーはややタイトだが脱着は直感的。
  • Union Step-On(ユニオン・ステップオン):軽量で脱着が簡単。専用ブーツ必須。
  • Nidecker Supermatic(ナイデッカー):完全自動でエントリー最速、頑丈だがやや重量がある。

📌 選ぶ基準のポイント

  • 軽さ重視 → Union Step-On
  • 脱着の簡単さ&自動性 → Nidecker Supermatic
  • ツーストラップ感覚を重視 → FASE

イージーシステム異端児CLEWはどこまでシェアを奪えるのか?

ドイツ・ミュンヘン発のCLEW(クリュー)は、従来のバックル操作の手間を省きつつ、すべてのソフトブーツに対応する革新的なステップインバインディングとして、世界中で注目を集めています。2017年に機械工学の学生3人が開発を始め、試作と改良を重ねた結果、2020年にはISPOアワード金賞を受賞。短期間でスノーボード業界に存在感を示しています。

CLEWが“異端児”と呼ばれる理由は、ハイバックとアンクルストラップが装着前からブーツと一体化した独特なデザインにあります。最初にバインディングを装着する際は従来のバインディングと同じ操作が必要ですが、一度装着すればステップイン式のように簡単に脱着が可能です。この設計により、ステップインバインディングよりもスムーズで効率的な操作性を評価するライダーもいます。

一方で、片足を外した姿を見ると、ブーツにハイバックとアンクルストラップがくっついた状態になるため、見た目が少し変わって見えるのもCLEWならではの特徴です。こうした独自の設計思想が、CLEWを「異端児」と感じさせるポイントです。

従来のシステムに囚われないCLEWは、今後どこまで市場シェアを拡大できるのか。スノーボード業界でその動向から目が離せません。

主要イージー脱着システム比較表

STEP ON・SUPERMATIC・FASE・CLEWの参加ブランドと脱着のしやすさを一覧でチェック!
スノーボードのイージー脱着システムは、ブランドごとに対応ブーツや脱着のしやすさが異なります。本記事では、4つのシステムを比較し、それぞれの特徴をまとめました。自分に合ったシステム選びの参考にしてください。(2025年9月20日現在)

システム名参加ブランド(バインディング)参加ブランド(ブーツ)脱着のしやすさ備考
STEP ONBurton / UNION / FLUX / DC / NITROBurton / UNION / FLUX / DC / NITRO★★★★★ブランドによって互換性あり/なし
SUPERMATICNIDECKER / Salomon / Bent MetalNIDECKER / Salomon / Bent Metal★★★★★どんなブーツにも対応可能な独自システム
FASEthirtytwo / ROME / Jones / Bataleonthirtytwo / ROME / Jones / Bataleon★★★☆☆アンクルストラップを締める必要あり
CLEWCLEWCLEW★★★★★ブーツとビンディングのハイバックが一体型
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