スノーボードの楽しさの要素は、様々ある。
パウダーを滑りたい!パークを楽しみたい!
仲の良い友達とのセッション。見たことのない素晴らしい景色に遭遇。
あとは、何より上達する楽しさ!
上達すれば、これまで知らなかった世界を知ることができる。
例えば、急斜面が滑れなかった人が滑れるようになれば、ゲレンデでのどこでも行けるようになるし。
ジャンプができない人ができるようになれば、新しいエアー感覚を知れることができる。
カッコ良くトリックを決めれば、仲間から「クール!」と言われるし、やった本人だって気持ちいいよね。
だけど、一言。スノーボードの楽しさの要因を聞かれたら、僕はきっとこう答えるな。
「良い雪質!」
自分の感覚では、スノーボードの楽しさは雪質で8割決まる!
だから、朝山に向かう時、だいたいその日の楽しさ加減が想像できるもの。
この要素は大きい。
例えば、いくら素晴らしいロケーションのところに行っても、カチコチだったら怖くて楽しめるものではない。
憧れの海外に行ってもアイスバーンだったら、楽しさ半減しちゃいそうだね。
それなら、近所の小さい山でもパウダーを滑った方が気持ちいいと思うんだ。
パウダーは当然のことながら、楽しいけど、朝イチのピステが掛かったバーンも気持ちいい!
それほどの斜面がないようなところでも、ノンストップでクルージングすると気持ちいいんだ。
僕は、ウィスラーのエメラルドチェア周辺の初心者コースが大好きだ。
この初心者コースは、日本で言うなら初心者~中級者向け斜面。だけど、ウィスラーは他の山よりもアドバンスな設定だから、グリーン(初心者)と呼ばれている。
コースの長さは、ウィスラーの中では、最も短い部類だけど、日本で言うならそのゲレンデの最長コースぐらいはある。だから、たいてい日本から来る人は、一気に滑れずにちょっと止まって休憩しちゃうほど。
特に気持ち良いのは、朝イチ。
スピードを出していても、衝突の心配がないほどゲレンデが空いているから。
あとは、なんと言っても雪質の良さ!
極端な話、この朝イチの一本は、午後の10本よりも勝ると思っている。
急斜面というのは、基本的にスピードを制御することが多くなるし、スピードを押さえるために筋力を必要とする場面も出るので、あんまり好きじゃない。
急斜面を滑るならパウダーがいい!
レッスンでティーチングしていて、雪が良くないのに、やたらに急斜面やコブに行きたがる生徒さんのリクエストを聞くと、内心「やれやれ」なんて思ってしまう(笑
気持ち良く飛ばせる緩中斜面がいいのになあ、って。
スクールに入って来る生徒さんって、みんな向上心があるから、当然、行ったことがないようなチャレンジを求めて来る。だけど、本当、雪質によるんだ。
雪が良ければ、斜度45度以上あるブラックダイヤモンド(超急斜面)だって、連れて行ってあげるよ。だけど、雪が良くない時には、頼むからそんなオファーしないでって思う。
だから、僕のアドバイスとしては、
1)雪質が良い可能性が高い朝イチは逃さないように!
2)雪質の良い時期、エリアを狙って滑りに行こう!
ということ。
布施忠はマゾだった!?
だけど、これからちょっと例外的なアドバイスも送るよ。
みんなも布施忠って言う名を聞いたことがあると思う。
そう、日本だけでなく世界を代表するプロ・スノーボーダー。世界で最もリスペクトされた日本人ライダーと言っていいかもしれないね。
そんな忠といっしょに滑る機会があったのだけど、忠ってカチコチの日でも元気に朝イチで上がって来て、いきなりコブ斜面に挑むんだ。これがウォーミングアップか!?って攻め方さ。当時、いっしょに滑っていたDMKスノーボード・クラブ員と、こんなチャンスないから「忠に付いて行けー!」って号令掛けたけど、誰も付いて来れなかったね(笑
あと、忠が攻めるラインって、たいてい斜度がキツめ。
例えば、忠は全体的に斜面が緩いコースが多いウィスラーよりも、ブラッコムでのフリーランを好んでいる。
その方が、筋力いじめることができるから。
マゾだ~(笑
だけど、こうして自分を常に鍛えるように滑る。
だから、遊べる範囲が広がるってことでもあると思うんだ。
最初の僕のアドバイスとは、反対のこと言うようだけど。こういう考えも知っておくといいだろう。
まとめ
多くの人は、スノーボードを日常生活の楽しみとして行っている。そこには練習という観念はあまりなく、ホビーとして行っている。だからこそ、雪質を考えて行動する。朝ピステを狙ったり、パウダーを狙ったり。楽しいと思う感覚を大事にしながら、ほのかに上達していこう。
だけど、自分は若くて、向上心も満々!そんな人は、忠のように攻めるスノーボーディングを考える。アイスバーンでも関係なしに滑る。
こうしたスノーボードでレベルアップすれば、良い雪質に出会った場面では、より楽しめるわけだしね。ステージを上げるためにも、たまには自分をいじめよう、という考えも必要。
ぜひ、ご参考に!
飯田フサキ プロフィール
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴30シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWing誌では、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、シーズン中に一回は日本へ帰国しコーチングも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして活動し、今なお世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!