残念ながら、今日もどこかでスキーヤーとスノーボーダーとの衝突事故が起きています。衝突による怪我、また最悪の事態としては死亡事故も起きています。
楽しみにしていたスキーやスノーボードが一瞬の事故で悲惨な経験にもなりかねません。おそらく、これを読んでくださる方も、何度かヒヤッとした思い、または実際に衝突して辛い思いをした方がいるかもしれません。
こうした事故を聞くたびにとても残念に思うし、少しでもそんなことが起きないように自分なりの提言をしていきたいと思います。
ここで紹介することが、100%安全につながるとは考えていませんが、このような提言がきっかけとなり、今後の衝突事故の減少につながることを願っています。
目次
原因1 スノーボーダー特有のヒールサイド(カカト側)のブラインド
最もな原因の1つには、スノーボーダーが持つ特有のヒールサイド(カカト側)のブラインド(視界不良)があげられるでしょう。
初心者の方で多く、またかなり速く滑れるような方まで、カカト側のターンでブラインドになっていることがあります。
以上の写真で、赤の方向にしか目線が行っていなくて、緑の方向に目線が行かないようなタイプです。
前肩越しから、後方から来る滑り手に目線を行く配慮が必要です。
原因2 スキーヤーのスピード加速で視野が狭くなる
スピードが上がれば上がるほど視野が狭くなるのは、スキーヤー、スノーボーダー共に言えることですが・・・。特にスキーヤーの方にスピードが出るほど、視野が狭くなる方をよく見かけます。
スキーの特性として、スピードが出しやすく、前方一点だけ目線が行きがちというのがあるのかもしれません。
また、スノーボーダーの方が、横乗りで滑ることから、比較的にスキーヤーよりも周りを見る癖がつきながらうまくなる方が多く、一方スキーヤーの方はそんなヒストリーがないことから、視野が狭くなりがちなのかも。
ともかく、スピードが出ると、周りに目線が行かないことはスキーヤー、スノーボーダーに限らず生まれる現象なので、気を付けましょう。
スノーボーダーのブラインド特性+スキーヤーの加速特性=衝突の原因
以上の2つの特性、スノーボーダーのカカト側のブラインド特性と、スピードを出し視界を狭くするスキーヤーの特性が、重なることで衝突事故が起きがちです。
抜かす方は、抜かされる気持ちに立場となり、怖がらせるような抜き方をしていけません。
しかし、平気でスノーボーダーの背中越し、カカト側からの近くから抜かそうとするスキーヤーがいます。
以上の写真は、このことを示した例になります。
スノーボーダーの目線は谷側に行きながら、よちよちと右側方向に進んでいます。一方、後方から来るスキーヤーに気づいていません。
一方のスキーヤーも目線は谷側に行きながら、真っ直ぐな方向に滑っています。スノーボーダーのことを理解しておらず、そのままスノーボーダーの右側そばを抜かしていきました。
きっとスノーボーダーの方は一瞬「ヒヤッ」と驚いたことでしょう。一方でスキーヤーの方は、気にもせずスピードを出し抜き去りました。
このようなことは、頻繁に起こっています。
実際、僕がことを伝えたくて、撮影しようと思ったらすぐに、この写真が撮れたぐらいですから。
スキーヤーからしてみれば、ダラダラと斜面を横切るように滑るスノーボーダーに憤慨しているのかもしれませんが、スノーボーダーからしてみれば、見えにくい後方からのスキーヤーの抜かし方に恐怖を感じています。
ようは、スキーヤー、スノーボーダー共に双方のことが理解していないから起こる原因なのですが、以上の件に関しては、後ろから抜かすスキーヤーの方にもっと理解してほしいとも思っています。
(※この記事のアップ後、まさにヒールサイドで滑っていたら、初心者の方に後ろから突っ込まれて、救急へ行ったという投稿がありました。確かに初心者スキーヤーでもかなり暴走してしまっている方がいます。本当、気を付けてほしいです。)
マテリアル進化による衝突事故
先日、友人『えむしー じる』さんのフェイスブックでも話題になった以下の動画を見ていただきたい。
短い時間の間に、これほどの衝突事故があることに驚かされます。
この原因は何なのか?
ここですでに伝えたように、スピードが上がったことにより周りが見えなくなっている、ということも考えられますが、FBのカキコミで興味深い内容がありました。それは、衝突しているのが、お年寄りの可能性があるということです。
「昔スキーは直線的に下りていたから前しか見ないで事が済んでいたので、その感覚のままの年寄は、周囲の人々がどう動くのかが考えられないんです。」
「こういうおバカさんが多すぎる(๑˃̵ᴗ˂̵)。そしてどう見ても下手っぴよね。なのに凄いスピード。後ろから当たって文句言うヤカラを何度も見た事がある。私が見たのは100%だいぶ大人なおじちゃんです。彼らはどういう感覚なの?この「俺は速いんだぞ〜」的な習慣というか文化というか、もう無くそうよ。」
「お年寄りかも、、ですね。
ただ見る限りでは反応も遅く、コントロール下にはないので、、もう少しスキー場が考えてくれたら、と思います。アサマは、こういうヤカラばかりで有名みたいです。」
「私もまさしく同じ目にあいました!
高齢だと目の前しか見てませんね」
以上、『えむしー じる』さんのカキコミの一部抜粋内容になりますが、自分が興味深かった点は2点。
まずは、ぶつかっているスキーヤーのお年寄り説。
それと、 『えむしー じる』さんが暗に指摘しているように、以前ならスキーヤーは、現在のような深回りするようなダイナミックなカービングターンができなかったのですが、現在はマテリアルが向上し、誰もがこうした滑りができるようになってしまった点です。
この動画を見る限り、自分のカービングターンの気持ち良さに酔っちゃって、周りが見れていない印象があります。以前ならこうした技術は、なかなか習得できなかったと思うのですが、今のカービングスキーというのは誰もが気軽にうまく滑れてしまう。その結果、自称上級者(?)のようなスキーヤーが次々に出現し、周りを見れる余裕がなく衝突してしまっているように思います。
衝突が起きやすい危ない場所
それでは、次にどんなところで衝突が起きやすいのか。
そんなことを自分の経験と共にお伝えします。
リフト乗り場付近
まずは、リフト乗り場付近。
こうした人が集まって来る場所は、危ないです。常に360度目線を配るくらいの気持ちでいる方がいいでしょう。
迂回コース
狭くて平らなコースは、スノーボーダーの方で苦手な方が多いですが、そんなところで頻繁に衝突事故が起きています。
車の運転のように抜かす時には、どっち側からとかないし、ボーゲンで滑っている初心者の方も驚くほどコースを横切ることがあるし、スノーボーダーの初心者も同様に狭いところでゲレンデ幅を使ってしまうことがあります。
後ろから滑って来るスキーヤー、スノーボーダーも思ってもみなかったほど、前を横切られて困惑しているケースも多々あります。
スノーボーダーの場合、目線が行きやすいように、レギュラースタンスならなるべく左側で滑り続けて、グーフィースタンスならなるべく右側で滑り続けるといいでしょう。
スピードを上げやすい場所
ここまで紹介して来た2つの例では、比較的に低速同士での事故のため、大惨事にはなり難いのですが、スピードを上げやすい場所では、かなり大きな衝突事故になることがあります。
例えば、中・急斜面から緩斜面になるようなところ。
ここでは、うまい人にとってはスピードを出しやすい環境なので、視界が狭まり、衝突事故になることがあります。しかも、お互いスピードを出しているので質が悪いのです。
意外に感じるかもしれませんが、超急斜面のような上級者コースの方が、衝突に関しては安全と言えます。
なぜなら、滑っている同士が上級者スキーヤー&スノーボーダーでコントロールしているし、このような斜面では、スピードを出すよりも調整することが優先されやすいからです。
だけど、スピードをグングン出せるような初・中級者のようなところは、危ないものなのです。
衝突事故を避けるために気を付けたいこと
360度視野
混んでいるような場所では、360度視界を届けるような気持ちでいましょう。
特に走り出しが肝心です。滑り始める前によく周りを見ること。
スピードを出しているスキーヤーなどが後方かた来ていないか、確認しましょう!
混雑時間を避ける・気を付ける
特に土日の混雑しているスキー場では、ラッシュアワーを考えましょう。
みんなが下山のために降りて来る時間は、半分自分の滑りを捨てて、ともかく周りをよく見て安全確保に努めましょう。
できれば、混雑している時間や日を避けて滑りたいところですが、時には混雑しているところを滑れないといけない時もあります。そんな時には、十分に気を付けてください。
何度も言うようですが、スピードを出さない。よく周りを見ることです。
その分、朝、比較的に空いている時間を狙っておもいっきり滑るといいでしょう。
一度の衝突事故は、1秒の出来事ですが、その1秒がその後の長い人生を暗くすることだってあるのです。
レギュラースタンスとグーフィースタンスとの衝突
これまで、スキーヤーとスノーボーダーとの衝突というテーマでお伝えして来ましたが、当然スノーボーダー同士の衝突だってあります。
特にレギュラースタンスとグーフィースタンスのスノーボーダーがいっしょに滑る場合、お互いカカト側のターンでブラインドになりがちなので、気を付けましょう!
この衝突事故もとても多いですよ。
お子さんのいる親御さんは後ろから守るのも手
特に小さいお子さんがいるお父さん、お母さんは、混雑しているところでは、お子さんの後ろを滑り守ってあげるといいですよ。
お子さんが、右に滑る時には、右を滑り、後ろから来る人に突っ込まれないようにしたり。
こうしたこともぜひ考慮してみてください!
飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴37シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ、ウェブ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWingでは、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、レッスンも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして活動し、世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!
AmazonのKindleストアで最新書籍『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』絶賛販売中!!