
「ターンは、スノーボードのすべての始まりだ。」
そう語るのは、スノーボーダーでありボードシェイパー、そしてKORUA Shapesの共同創設者ニコラス・ウォルケン。本作『Simple As A Turn』は、そんな彼の“ターン”への探究を静かに、しかし力強く描く作品だ。制作はYucca Films。
派手なトリックも、巨大キッカーもない。フォーカスされるのは、スノーボードで最も根源的な動き――ターン。そのシンプルな動作を、ニコラスは驚くほど丁寧に言葉で分解していく。
スピードを得て、わずかに前足へ体重を移す。腰からターンを始動させ、スポットが近づくにつれて深く膝を曲げ、ヒップを雪面へ落とす。ターンの中心で最大のパワーを受け止め、そして訪れる一瞬の“リリース”。ほぼ無重力のような感覚とともに、次のターンがすでに視界の中に描かれている。
外から見れば、ただのターン。しかしその内側では、身体の連動、エッジの物理、加速の感覚、そして心理的な集中が複雑に絡み合う。「シンプルなことほど、掘り下げると世界が開く」と彼は言う。
その思想はボード作りにも通じる。余計なものを削ぎ落とし、「必要なことを、必要なだけ」機能させる。科学的アプローチというよりは、好奇心から始まる有機的な創造プロセス。ガレージには数えきれない試作ボードが並び、成功も失敗もすべてが“より良いターン”のための過程となる。
舞台はやがてビッグマウンテンへ。ゲートに縛られない斜面には無数のラインがあり、どこにターンを刻むかは自分次第だ。だが同時に、そこにはリスクもある。「スノーボードで死にたくはない。次のターンのために生きたい」という言葉が印象的だ。挑戦と恐怖、そのバランスの中でターンはより意味を持つ。
作品後半では、ターンの哲学が人生へと重なっていく。地形を読み、流れに身を任せ、創造的に進む。急斜面をエッジで刻みながらもスピードを保つ感覚は、どこか“ありえないことをしている”ような不思議さを伴う。それでも最後は、ただこう締めくくられる。
「Feels good. It’s as simple as that.」
高さでも難度でもなく、ターンの質を追い求める姿勢。
今のスノーボードシーンに対する静かなカウンターとして、この作品は強く響く。
ターンはシンプルだ。
だが、その奥深さは計り知れない。
Featuring: Nicholas Wolken, James Niederberger
Patagonia Films
presents A Yucca Films production

