カナダのウィスラー・スノースクールと山のオペレーションの報告!

2020-21シーズンを終わった。パンデミックの中、全国各地域のスキー場は、コロナ対策に追われ、苗場スキー場のように一時期的にクローズされたところもあった。そんな中、日本人の多くのスキーヤー、スノーボーダーたちからも注目される海外リゾートで1番人気のウィスラー、ブラッコムでは、2シーズン連続で3月末に突然、コロナの影響によりクローズという事態に見舞われた。

そんなウィスラーでは、結局のところスキー客の数、営業状態はどうだったのか?また、コロナのためのどんな対策が行われたのか?地元のカナディアンのお客さんは、こうした対策に素直に応じて安全な運営ができたのか?

そのへんのことをとてもくわしく地元のスキー・インストラクターのAkiko Takemotoさんが、SNSで投稿。Akikoさんは、カナダで最高峰のスキー・イントラ資格、CSIA Level 4を持ち、ウィスラーでは19シーズンも活躍している人気インストラクターだ。
そこで、DMKサイトの方で、Akikoさんにシェアさせていただくオファーしたところ、快く承諾していただいたので、ここにご紹介しよう。


文:Akiko Takemoto
http://instagram.com/akwinter2020/

パンデミックに踊らされている人間界に比べ、自然界は実に平常運転でした。
人との触れ合いが減った分、黙ってそこにあり続ける雪や山、空や雲が織りなす景色がとりわけ美しく見えました。
どんな日も毎日が素晴らしかった。

山の状況やシステム

例年に比べ、来訪者の半数以上を占める国外からのゲストが見込めない事と、国内でも州や地域をまたぐ不要不急の旅行・移動の制限措置が出されている所があり、来場者数はかなり少なかった(と思われる)ものの、リフトやゴンドラは乗車人数制限のため長蛇の列だった。
リフト待ちと人混みを嫌う地元民は、土日を避ける人も多かった。でも、荒れた天気の平日などはリフトもゲレンデもガラガラな状態。
山は一日の人数制限があり(実際の入山人数は公表されていなかった)リフトで上がるためには前もってオンラインで予約が必要、ゲートを通過する各個人1枚のICカードに予約が反映されるので、トラブルに備えて乗り場スタッフが通常の倍以上になり、スーパーバイザー(管理職)も繁忙期には現場に立つ姿が見られた。

レストラン

ゲストが一番不安を抱く場所なので、施設の整ったメインの3箇所は、45分で入れ替えの完全予約制が導入されていた。建物内は予約席以外に座れる場所が無く、予約が取れなかった人が外でサンドイッチを食べる姿を度々見かける。インストラクターはゲストと別のランチ場所が指定されこちらも予約制だったのだが、繁忙期には予約が取れず私も3回ほど外でおにぎりを食べた。
パッケージングされたメニューがほとんどでフォークナイフやケチャップなどをセルフで取れる置き場も廃止、トイレの温風乾燥機も使用不可で接触、拡散を避ける工夫がなされていた。
ただ、オペレーションはルール一辺倒でなく、その時の混み具合や状況に応じたフレキシブルな対応がなされているのがシーズン通して見えた。
ローカルの友達はレストランでは食事をしない選択の人も多かった。

リフトでの感染防止対策

乗車制限のため人が溜まるリフトとゴンドラは、スタッフが常にゲストのマスク着用と鼻まで隠す事をチェックしていた。
最初の2ヶ月が過ぎた辺りでゲストの意識が定着したのか、きっちり着用する人が大半となる。感染を気にしてか、ご年配のゲストが他のゲストに注意するなどの光景も目にした。また、リフト待ちが長時間の時など、待ちながらスナックを食べる人もいて注意されていた。でも気持ちはすごくわかる。
カナディアンが果たしてどこまで厳しい規制に対応できるのか実は疑問だったが、予想は大きく裏切られた。とにかく何としても安全に運営し、シーズン最後まで山が開いていて欲しいという思いが、ほとんどのスタッフから溢れ出ていた。そしてゲストからも。


アフタースキーがネック?

山の管轄ではないが、ヴィレッジのレストランの幾つかのお店で、年末年始の繁忙期にスタッフの感染者が増え数軒が一時的に閉鎖。集団での飲食と街のビジネスのスタッフ寮での集団感染が主な原因とされていた。4月を目前にウィスラーエリアの感染者数が再度急増したことで閉山に至ってしまった。今後の課題が明らかになったのではないだろうか。

スキースクール

雇用状況 (人数等の数字は口頭で聞いたもので公式ではありません)
スノースクールの部門は正社員とパートを含め1500人規模のスタッフを抱えるところ、今シーズンはインストラクター500人(パートタイム/若手のキッズ用イントラ400人とアダルト用イントラ100人)と、国外からの就労ビザによるリターニングスタッフ例年80〜100人程?の募集採用が取り止め。

さらに雇用者のうちの100人をスケジュールから外し、会社の基準によるランク分けによって仕事の振り分けがされ、勤務日数は人によって大幅に違ったものになった。いつも朝夕賑わうロッカールームも人影まばら。

スタッフは出勤前に健康管理のチェックが義務づけられ、オンラインで自身の健康状態の申告が必須で、その証明画面を上司に送信しなければお給料が発生しないシステムになっていた。
これはスクールの生徒さんも同じく、参加前のオンラインでの健康状態の提出が義務づけられていた。


いろんな人がいろんなところで何でも屋に

今年は多くのスクールのスタッフや管理職でさえも、レストランやリフティ、特に混み合うゴンドラ・リフト待ちでの感染防止対策要員や予約センターの電話受付など、需要がある場所で働いていた。
もしくは、山以外で仕事を掛け持ちしたり若手に仕事を譲るベテランのイントラなどもいた。
あと、カナダはコロナ禍での失業保険と国や州からの臨時補償の対応が日本に比べて厚く、敏速だと強く感じた。



レッスンについて

ウィスラーでは、大人、子供、シニア、ティーン、地元向けクラブ、グループ、プライベート、資格試験コース、女性だけのキャンプ、エクストリーム系のプログラム、団体、アダプティブ、イントラのトレーニングなど多くの部署があるものの、今回は縮小・改編・休止に分けられた。インストラクターは例年なら所属により仕事内容は様々で、専門のみか、多分野を掛け持ちするなど多彩な働き方ができるのだが、今年は勝手が大きく違っていた。

おそらく一番需要があったのがキッズ部門、ついでローカル向けの子供、大人、シニア向けの毎週開催の通年キャンプ。
プライベートレッスンは、例年最繁忙期には一日に600組以上確かあったが、今年は知っている限りでは40件弱だった。

本来キッズを担当する若手イントラが少ないため、私も初めて3、4歳児のレッスンを何度か担当し、その大変さが身にしみた。
スキーは一歩間違うと怪我や事故に繋がるスポーツでもあるので、特に滑り始めたばかりの幼児のレッスンは緊張が解けなかった。(カエル🐸ヘルメットは、幼児と仲良くなりたい一心での苦肉の選択)



スクール内のスタッフ向けトレーニングやサポート

スキースクールの少ない予算の中で組まれたスタッフ向けのスキートレーニングや、技術や指導法のオンラインセッションも少ないながら行われ、夜のオンライン参加型のゲーム、応募投票型の写真コンテストなどのイベント、ゲストからのフィードバックに対してのプチボーナス、山のスタッフ食堂の無料お食事券や食材ボックスの無料配布など、多くのサポートがあった。
仕事がほぼ無いスタッフもシーズンリフト券が与えられているので、フリーやトレーニングで滑っている仲間をよく見かけた。私も過去20シーズンの中で今年ほど仲間と滑れたことは無かった。


オンライン化とスタッフの熱意が重なった冬

2016年からアメリカのヴェイルリゾート(世界37カ所の山岳リゾート企業)の運営傘下にあるため、シーズン前には細部まで作り込まれた感染防止ガイドラインに沿った長時間に渡るオンラインコースが必須となり、zoomやteamを使ったミーティングやトレーニング、数々の変更に対する質問応答も行われた。

シーズン中は、現場のまとめ役のスーパーバイザー達によるフォローや感染防止への意識の再確認が何度もなされていて、何よりもスタッフへの声掛けと励ましというコミュニケーションが際立っていた。その多くはメールやテキスト、Facebookページを使ったものであっても。

感謝の気持ちや共に目標に向かう結束を高めてくれるリーダーや各部署のスタッフがいたことと、そしてプロ意識が高く尊敬する仲間達と働けたことが何よりだった。

同じ冬でも、人により全く違ったストーリーがあり別の見方もあると思いますが、以上が素直な感想です。

個人的には、仲間からの依頼などで9種類の仕事を担当し、その都度違うチェックインやシステムに戸惑いながら例年の7~8割の仕事量となりました。

一度限りの仕事を含め、違うセクションに幅広く関われたことで思いがけない発見や学びがあり、とても勉強になった。

パンデミックの収束が見えない中、ゲストのリピートに繋がる満足度の高い楽しいレッスンを増やせるよう、また、周りの仲間の力になれるよう、今年の経験を生かして知恵を絞って行きたい。

ウィスラーのチームが、個々が考えられる限りのベストを尽くせる環境を、来冬も作ってくれるに違いないと期待を持って、次の冬を指折り数え始めています。
多くを与えてくれたスキーに、関わってくれた全ての人に感謝が止まりません。
ありがとう!!

●Akiko Takemotoプロフィール
http://instagram.com/akwinter2020/

奈良市出身 1965年生まれ
20歳からスキーを始めた。
インストラクター歴26年
2000年12月からウィスラー勤務19シーズン 日本で7シーズン

主な資格:
CSIA Level 4
CADS Level 1
CSCF Level 2 Coach
CASI Level 1
日本スキー連盟 正指導員 日本ソムリエ協会 シニアソムリエ

冬はウィスラー、夏は関西・大阪京都の百貨店でシニアソムリエとしてワインの接客販売をしている。
CSIAをベースにプレイフル・ラーニングの感覚を取り入れるレッスンを目指している。