パウダースノーとスノーリゾートへの誘い スノースポーツ&スノーリゾーツ立国日本への提言

一昨日に入った速報ニュース『スノー業界に激震!西武HDがホテル、スキー場など40施設売却へ 全国で1000億円超!!』は、本当に驚かされたが、この出来事は、今、スノーリゾートが新たな局面を迎えて、新しい挑戦への必要に迫られているように感じる。

国内のスノーリゾート運営事情に詳しいSNOW RESORT JAPAN編集長の岩田克己氏に、この問題をお聞きすると、氏は「日本のスノー業界も変わる時期に来ている」と提言。ただ、すべてが新しい物がいいわけでなく、「日本人は本当の雪の魅力、雪文化の魅力をわかっていない点も発信したい」という回答をいただいた。

この考えを「より深く伝えたい」と言うと、氏は以前まとめた『パウダースノーとスノーリゾートへの誘い スノースポーツ&スノーリゾーツ立国日本への提言』をご提供してくださったので、早速、ご紹介したい。
日本に住んでいるとその恩恵に気づき難いけど、たしかに世界から見ればこれほど恵まれたスポットはない。氏の未来への提案にも耳を傾けよう。

文:岩田克己(SNOW RESORT JAPAN編集長)
写真提供:Snow Resort Japan
e-Book https://my.ebook5.net/resort-japan/Vol8/

スタイルの違いこそあれ、日本のリゾートには世界のスキーリゾートに匹敵する多くの魅力がある。日本人なら今一度、日本の冬の楽しみを再認識してはどうだろうか?

雪が2、3日おきに降るのは世界中で日本だけ。雲のような柔らかいパウダースノーで雪煙を上げて遊ぶ、これほど贅沢なスポーツは実は地球上にはそうそうない。しかも日本はそんな極上のトリップを楽しむ場所にあふれている。雲の中で遊ぶような感覚を楽しめるスノースポーツは、この世で最も贅沢なスポーツといえる。「さあ、次の週末は雪山へ行こう!」

日本のスノースポーツ、再発見!

いまスキーやスノーボードを中心にスノースポーツが再び盛り上がりを見せつつある。大自然の中で誰もが楽しめるスノースポーツとスノーリゾートは、国内外から注目の的。実は日本のスキーの歴史は長い。スノースポーツの魅力を語る前に、少しその背景について振り返ってみたい。

日本のスキー界にとって、1956年に猪谷千春が銀メダルを獲得したことが大きなニュースになる。さらに、イタリアのコルチナダンペッツォのオリンピックで、トニー・ザイラーが三冠王となり、それがきっかけとなって、昭和38年〜40年頃のスキーブームへとつながった。

その頃の日本のスキー人口は1000万人を超える勢いで、世界最大のスキー人口を誇るスキー王国だった。当時、アメリカでもスキー人口は200万人〜300万人程度。その後、札幌オリンピックがきっかけとなり、世界中のスキーヤーが日本を目指すことになった。

当時は冬になるとスキーに行くのが当たり前の感覚で、スキーが急速に普及した時期でもあった。日本でそのようにスキーがブームになったのは、手近なところに雪質のよいスキー場があり、スキーを手軽にできる環境があったからだ。
ニューヨークやサンフランシスコ、ロンドンやパリはスキー場まで距離があるので、世界的な都市と比較すると、日本はスキーを手近にできる恵まれた国といえる。また日本は、フィンランドやスウェーデンなどに次いで国土の7割が森林地帯。豊かな自然のおかげで、世界的にも質の高いゲレンデをつくることができ、多くのスキーヤーやスノーボーダーを虜にすることになった。

日本ではある時期スキー人口が急激に増加したが、その後減少してしまう。しかし、その時期も終わり、最近では、「大自然の中でスポーツをする」とか「雪と遊ぶ」ということが見直されてきている。そして新たな動きとして、「もう一度ウィンタースポーツをやってみよう」という世代が、子供や孫たちと一緒にスキーに行く、という時代が来ている。

今は施設のデザインやサービス、ホスピタリティも向上し、雪の中で遊ぶとともに、自然をゆったり感じたり、温泉を楽しんだり、地元の食を楽しんだり、総合的にスノートリップを気軽に楽しむ環境が整ってきている。

雪煙を上げながらパウダースノーを滑ることができる日本は最高

今、北海道のニセコ、長野県の白馬バレーや野沢温泉、新潟県の妙高赤倉など、インバウンドに積極的なエリアに、オーストラリアや欧米、アジアの人々が、たくさんやって来ている。日本にすべりに来た外国人は、必ずといっていいほど「日本は雪質がとてもよくて、雰囲気も最高だ!」と言ってくれる。

ではなぜ、日本の雪の質や雪山がいいのか? 

それは、日本は世界のどんな国よりも雪国列島だから。日本の国土の3分の2以上が、冬になると雪に覆われる。しかも、雪の降る量が多い。ヨーロッパのスキー場は雪がドライで固いのに比べ、日本の雪質は軽くて羽毛のような雪が降るところが多い。

日本のスキーヤーやスノーボーダーにとって、しっかり整備されたコースをすべることは当たり前のことだが、いちばんの憧れは、雪煙を上げながらパウダースノーをすべること。降雪量の少ないヨーロッパのスキー場は、パウダースノーをすべることができるのは、月に1〜2回程度。日本の豪雪地帯に位置するゲレンデは、毎週、あるいはタイミングがよければ、毎夜、しんしんと雪が降るので、パウダースノーを味わえる確率が非常に高い。これが世界中からスキーヤーやスノーボーダーが訪れる最大の理由なのだ。しかし、日本人は意外とこの事実に気づいていない。これは日本人としてとてももったいないと思う。パウダースノーは自然からの恩恵。パウダースノーを一度体感すれば虜になる人が多い。体感するとパウダースノーがいかに贅沢な体験であることがわかるだろう。これはほかのスポーツでは体感できるものではないと断言しよう。

ある有名なIT系会社の社長が以前このようなことを言っていた。「雪山に行って、まず感動するのは自然の景色です。そこがいちばんの魅力ですね。目の前に白銀の世界が広がっているのを見ると、すごくリラックスします。それに、雪山に行くメンバーは、仕事を一緒にしている連中とはまったく違うので、気分転換になります。そんなこともあり、東京だけで仕事しているとみんな行き詰まってしまうので、ウィンタースポーツが楽しめる白馬と美瑛に(会社を)もつことになりました」と。雪は心身を浄化する効果があるといわれているが、まさしく、そのことを実証している事例ではないだろうか。

さらに、雪山にはゲストの心をつかむもうひとつの楽しみがある。それが、「温泉」。「スノースポーツ」と「温泉」、これはもう最強のコンビネーションで、これは日本でしか味わえない贅沢な体験だ。寒い中、一日スノースポーツを堪能した後に、心も身体もゆったりほぐせる温泉は最高。長野から東北、北海道エリアは、スキー場の近くにたくさんの有名温泉がある。さらに、その土地でしか味わえない美食もある。それは豪勢な料理ということではない。北海道であれば寿司やジンギスカン、ラーメン、長野であれば蕎麦やジビエ、素朴な野沢菜漬けでさえ、都会から旅した人にとってはうれしい美食体験になる。そこに地酒や地元のワインなどがあれば、気分はもうすっかりラグジュアリートリップ。金額の多寡ではない。その土地でしか味わえない体験が本当のラグジュアリーと言える。雪をきっかけに四季のある日本の冬の地方を楽しむ。スノースポーツは地方を楽しむラグジュアリートリップだと提言しても過言ではない。

日本のスノースポーツやスノーリゾートを盛り上げていくには

たとえば、アメリカのトップスノーリゾートでは、小学生と70歳以上の人のリフト代金は無料。70歳以上の日本人でも、パスポートを見せれば無料になる。まさしく、プレーヤーの年齢の幅を広げる取り組みをしている。

フランスでは、スノーリゾートが観光的にも大きな産業であり、国もいろいろな面で補助金を出している。また休日に、大勢の人が一度にリゾートに押しかけてしまうと、交通機関はもちろん、スキー場であればリフトも混雑するので、国が街ごとや週ごとに、休暇のバランスをコントロールして、リゾートに長期滞在できるようにしている

日本の休暇制度の在り方は、ウィンタースポーツのみならず、スポーツ全体にも影響している。まだまだ休暇を取りにくい社会だと言われているので、少なくとも休みを取りやすくし、しかも分散して取れるようなシステムを構築していけば、状況はいろいろ変わってくるのではないだろうか。最近のテレワークやワーケーションなどは、ひとつの起爆剤になることを期待する。

日本のGNPは世界でも依然としてトップレベル。そういう休暇制度のシステムをうまく組めば、家族が楽しく健康にスノースポーツに取り組めたり、雪国へ旅行できるだろう。

雪のない国の人たちは、最初は雪そのものに憧れ、その憧れが、「スノースポーツをしてみよう」という気持ちにつながることが多いようだ。今後さらに雪やスノースポーツを目的に日本へ訪れる外国人が増えることだろう。

外国人が雪を楽しみに冬の日本へ来ることは大変ありがたいこと。しかし、こんな楽しいスノースポーツを外国人だけのものにしていいのだろうか? もっと我々の身近なものにしていこうではないか。スノースポーツは、実はたくさんの運動量をこなすことになり、頭脳の働きやメンタル面にもよい影響を与えてくれるという。しかもスノースポーツは家族で一緒に楽しめる数少ないスポーツであり、旅としての大きな魅力もある。
 さあ、この冬は雪山へ。「スノースポーツを楽しむ」、「雪山の大自然を堪能する」、「温泉に入って癒される」、「地元の食材を使った料理を味わう」。これらをたらふく堪能しなかったら、日本人として〝人生もったいない!と思いませんか?

<参考文章>
「スノースポーツ」と「温泉」の組み合わせは日本ならではの贅沢な体験。スキーを堪能した後の温泉は至福の時間。熱い湯に浸かれば身も心もほぐれていく。雪と温泉は切っても切れない関係にある。
郷土料理やご当地食材など、その土地でしか味わえない食体験も楽しみのひとつ。もちろん、一緒に地酒で一献といきたいところだ。「スノースポーツをする」とはすなわち旅なのである。そんな意味でも、「雪と遊ぶ」ということの価値が見直されてきている。2020-2021シーズンは、スキーが日本に伝わって110年の記念シーズン。日本のスノースポーツの再発見の旅に出かけてみようじゃないか!

岩田 克己(いわた・かつみ)
(一社)日本スノースポーツ&リゾーツ協議会参与
「SNOW RESORT JAPAN」編集長
(株)トップエンド 代表

長年に渡り日本のスノーリゾート地域を取材し、専門誌の発行に携わる。インバウンド向け冊子「SNOW RESORT JAPAN」を創刊するなど、日本のスノーリゾート地域の魅力を国内外に発信し続けている。野沢温泉、蔵王、白馬八方、妙高赤倉、草津のクラシックリゾートの広域連携組織「マウントシックス(Mt.6)」の事務局も務める。近年では、日本のスノーリゾート地域の活性化とウィンタースポーツの振興を加速するため、「一般社団法人日本スノースポーツ&リゾーツ協議会」の設立に尽力。数多くの取材を通じて日本のスノーリゾート地域やウィンタースポーツの事情に精通し、様々な地域、ステークホルダーとネットワークを有する。