春の雪山に行く理由。

Rider: @kazuki_z3z
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― 上達を目指すスノーボーダーにとっての「春」 ―

春のスノーボーディングについて改めて考えてみると、ちょっと不思議な世界です。
朝は放射冷却の影響で冷え込み、気温は2℃。それが昼には15℃近くまで上がることもあります。

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そんな日のゲレンデは、まさに「一日の中で変化する雪質の博物館」。
朝はカチコチのアイスバーン、日が高くなると少しずつ雪が緩み始め、やがて山の下から順にシャバ雪へと変わっていきます。

この“変化”こそが、春スノーボードの最大の魅力かもしれません。

ほどよく緩んだシャバ雪は、カービングにぴったり。
さらに雪が溶けていく時間帯になると、サイドヒットのジャンプも気持ちよく決まるようになります。
シャバ雪は柔らかく転んでも痛くないので、新しいグラブやスピンに挑戦するには最高のコンディションです。

Rider: @crazy_lunaluna

春に滑れるという奇跡

ただ、冷静に考えてみると、15℃という気温は「雪が降る」には高すぎます。
実際、冬前の11月よりも気温が高いことすらあります。

それでも、こうして滑れるのは、冬の間にたくさん雪が降ったおかげ。
つまり、春にスノーボードができるということ自体が、自然の恵みであり、冬の遺産なのです。

ちょっと立ち止まってそんなことを考えてみると、思わずマザー・ネイチャーに感謝したくなります。

(春にスノーボードを楽しめるのは、冬の降雪のおかげ。自然の恵みに感謝!)

春に滑る人=上達思考の人?

春のゲレンデには、共通点を持つスノーボーダーが多く見られます。

それは「とにかく、上手くなりたい人たち」
春になってもなお山に通う人は、一年中スノーボードをしていたいという情熱を持っている人が多い印象です。

反対に、春には滑りに行かない人もいます。
そういう人にとってスノーボードは「いくつかある趣味の一つ」であり、
「雪が悪くなったから、もう今シーズンはおしまい。また来年!」というスタンス。

もちろん、どちらが正解というわけではありません。
ただ、私が住むウィスラーでも、春は「上達志向の人たち」の姿をよく見かけます。
インストラクター協会の練習会や、モーグルやアルペンスキーの選手たちのトレーニング風景など。

その一方で、ゴンドラの中は空いていて、自分ひとりで悠々と足を伸ばせる。
そんな贅沢な春の一日を、上達を目指す人たちが静かに過ごしているのです。

Rider: @yaku89ryo

春は“学びの季節”

朝イチの固いバーンでは、無理に攻めるのではなく、自分のポジションを確認するようなフリーライドがオススメです。

たとえば、フラットな場所でオーリーやノーリーを練習したり、
その場に止まってトゥサイド・ヒールサイドでジャンプするというエクササイズも効果的です。

私が毎日のように取り組んでいるのは、斜面に止まった状態でのジャンプ練習。
とくにヒールサイドは難易度が高く、ポジションとエッジングの確認に最適です。
ヒールサイドで10回連続ジャンプできるようになれば、滑りの安定感も格段に上がります。

慣れない人は最初の1回で転倒することもありますが、何度かトライするうちに確実に成長を感じられるはずです。

(全スノーボーダー必見!ヒールサイドジャンプは、ボディバランス向上&エッジング強化にめちゃくちゃ効きます。)

シャバ雪は“チャレンジ”のステージ

2〜3本滑った頃にはバーンも緩み、エッジがしっかり噛みやすくなります。
そうしたタイミングで、今度はジャンプやサイドヒットに挑戦してみましょう。

春のシャバ雪は、新しいトリックにトライするにはうってつけ。
柔らかくて安心感があるうえに、体も温まり動きやすくなるので、フリースタイルの練習には最適です。

「冬の寒さでうまく動けなかった」あの技にも、春なら再挑戦できるかもしれません。

(GOOD SPRING MORNING!!!)

春の雪山へ行こう

「もう春だし、スノーボードは終わりかな……」
「一緒に行く仲間もいないし……」

そう思っている人も、ぜひこの週末、ひとりでも雪山に出かけてみてください。

まだまだ雪はあります。
そして、そこには上達のチャンスと、自分自身に向き合う時間があります。

新しいことに挑戦して、ひとつ壁を越えたとき、
きっと、スノーボードの新しい楽しみ方に出会えるはずです。

飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴40シーズン。その大半を雑誌、ビデオ、ウェブなど、スノーボードメディアでのハウツー記事の発信に費やしている。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というハウツーコラムを執筆。季刊誌という環境下で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てる。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、その中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
また、自身でディレクションし出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボードクラブ「DMK Snowboard Club」の責任者として活動し、レッスンを行っている。普段はカナダ・ウィスラーでインストラクターとして、多くの人にスノーボードの魅力を伝え続けている。2016-17シーズンには、ウィスラーのインストラクターMVPを受賞。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

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