男だけのキャンプ。ありそうでなかったこのキャンプが、初登場した。企画の発端はアヤ部長だ。
「dmkクラブの男メンバー。本当の男ってものを見せてちょうだい。私たち女性を虜にするくらい、カッコよく勇ましく、女性を包み込むような強い男に。そう、男を磨くのよ!」
実際にそんなことを言ったかどうか定かはないが、そんなようなことを伝えて実現したのは確かだ。そしてその元祖「雪山男児育成合宿」に隊長に任命されたのは、稲川デモ。コブだけじゃないぞ、何だってうまい。そして体育会系ノリの鬼コーチだって任せてくれ!そんなワケで世界でも初めてかもしれない男だけの臭そうなキャンプはスタートしたのだった。
report/Hayato Bando
photo/K@y
刻(とき)は2***年2月、雪深き越後ノ國、妙高山の麓に一人の漢がいた。その漢は自分の身丈ほどもある木板に跨り、
獣も身をすくめるほどの急斜面をものともせず、疾風のごとく滑り去っていく。その様の猛々しいこと、かの上杉謙信公の如し。
人はみな口を揃えて言う。「毘沙門天の申し子」と。その名は・・・稲川光伸。
さぁ、この物語は「申し子」と「その申し子に集う14名の兵(つわもの)」どもの軌跡。
彼らがどんな「夢の跡」を見せてくれるか・・・ちょっとだけのぞいてみようか。
・・・「すいませ~ん、すいませ~ん」車が揺れる。窓を叩く音がする。「誰や!?」と朦朧とした意識の中、車の窓を開ける。
「ちょっとだけ、車を前に出して貰えますか?」警備員のおっさんだ。「ちょっとぐらいええやろ。」と思いつつ、指示に従う。
時計を見るともう始動の時間。とりあえず聖くんに電話する。
「Good mornning .How are you?」 「何で英語なんや」 「Have you already arrived at Mt.Arai?」 「おう、6時半ぐらいに着いたぞ。」
いつも通りの軽いジョークで適当に挨拶し、顔を出しに行く。ミックンと聖くんはすでに朝食を食べながら、準備をはじめている。
「おう、久しぶり。ヒザの調子はどうなん?」「まぁ、ぼちぼち。何とかなるでしょ」聖くんとボールを軽く蹴りながらウォームアップ゚し、眠った体を覚ます。 そう、自分はケガから一ヶ月半前ぶりに復帰なのだ。
集合場所のARAIゴンドラ下には兵(つわもの)達がぞくぞくと集結してくる。稲川デモもすでに準備OK!
いよいよ第1回「雪山男児育成合宿」の幕開けである。
この合宿(キャンプ)はアヤ部長がかねてより待ち望んでいて立ち上げた苦心の賜物。
「軟弱!?なdmk男連中を鍛え直さなきゃ!」と、アヤ部長がいつも呟いていた記憶がある。
さてここでコーチ、スタッフ、キャンパーたちを紹介しよう。
稲川デモ・・・言わずと知れたカリスマデモ。今回はどんな「夢」を見させてくれるか。
ムラッチョ・・・今回は我々問題児の監査役。仏様のようなオーラでみんなを見守る。(+猥談)
ケイくん・・・今回のキャンプの総大将。果たして問題児たちをまとめ切れるか腕の見せどころ。
しょうへい・・・HEADの板を操るイケ面ライダー。しかし今回はターゲット不在!?
みっくん・・・NITROの板にて参陣。パワー系のライディングは見ていて楽しい。
聖くん・・・CAPITAを操る超B型ライダー。Canada仕込みのそのノリ(滑り)は圧巻。
ゆうじ・・・つなぎウェアを着こなすライダー。笑顔が素敵だ。
オッチー・・・dmk古参ライダーの一人。何でもこなすオールラウンダー。強いです。
しんたろうくん(いのき)・・・若干26歳の若手ライダー。その叫び(滑り)は本物。
宮木さん・・・今回初参陣ライダー。滑りに注目。
エラっち・・・今回のターゲット?果たして指導(しごき)に耐えられるかどうか。
まさるさん・・・dmkを代表するパウダーフリークの一人。その暴れ技が炸裂するか。
とおるさん・・・dmkを代表するパウダーフリークの一人。そのクールな眼差しは時として阿修羅と化す。
有代さん・・・今回、初参陣ライダー。知能派の技に期待。
速斗・・・超B型お気楽ライダー。その気まぐれな滑りで周囲を困惑させる。
さてさて期待通り、総大将がいきなり軟弱ぶりを発揮してくれた。
「すいませ~ん、ブーツ忘れたんで先滑ってて下さい」と総大将、まさかスノーボードの3種の神器の一つを忘れるとは・・・。
そんな総大将をさておき、ゴンドラに乗り、とりあえず頂上へ。今日は雲ひとつないピーカンの天気。景色が最高だ。
1本目。ゴンドラ中間点までフリーラン。課題は「足裏を意識してターンする」。
ウォーミングアップを兼ねてみんな、それぞれ滑り出していく。何とも穏やかな雰囲気だ。
しかし、そんな空気はすぐに一変するのだった・・・、それはゴンドラ中間点脇の斜面で始まった。
課題「板をフラットにスライドさせる」。
まずは稲川デモのラン。自分を中心軸とし、板をフラットにしてフロントサイド⇔バックサイドと交互に高速スイングさせ滑走する。
これはかなり難しい。微妙なエッジコントローとと瞬間的な角付けによる切り替えしが要求される。
みんな果敢にトライするが、うまく切り返せなかったり、逆エッジで吹っ飛んだり、散々たる有様だ。
「ピッ!ピッ!ピッ!」稲川デモが笛で切り返しリズムをリードしてくれるのだが(強制されるともいう)・・・リズム速過ぎ!予定通り次々と撃沈していく。 朝一からこの体育会系の指導ぶり。これがこのキャンプの醍醐味だ。
2本目。ケイくん合流。
「じゃぁ、天空の城へ行こうか!」という声に「えっ、もう行くの!?」「まぁ、いいか」みたいなやりとりの後、
一列になり、山頂目指しハイクアップ。軽いピクニック気分だったが・・・登り始めて5分後、無言(そりゃそうさ。息上がるヨ。)
ここでマサルさんのワンポイントレッスン。「疲れにくいハイクアップの目線:目線は足元。頂上は見ない。」
30分程で山頂に到着する。山頂から見る360度の展望。絶景です。
「なぜ山に登るのか?そこに山があるから。」この言葉の意味が少しわかる気がした。
山頂にいたパトロールの方(稲川デモにそっくり!?)に記念撮影して頂き、本キャンプの主題「PowderRun!」のはずだったが・・・
ここ数日の気温上昇でパウダーがない!ありえん!2月なのに雨がふったとか・・・
まぁ自然相手の遊びなので、そんなにうまくはいかない。
ということで「Bigmountain滑走」稲川デモに続き、トオルさん、マサルさんと順に大斜面に飛び込んでいく。
自分の番。勢い良く飛び込む・・・転倒。気を取り直してノートラック部分に飛び込んでみた。ごりごり!?けっこう固い雪質だ。
今回は自分が滑ったことのない斜面を滑った。これが全部パウダーならなぁ・・・ちょっとだけ妄想。
途中から軽いトゥリー・ランをし、迂回路に合流。ここでワンポイント「木はぜ~たぃ、見るな!」
はい、見ると当たります!(私は木にあたってからのけがから復帰でこのキャンプにきたのでした)。
そして再びゴンドラ中間点脇斜面へ・・・またしても悲劇は繰り返される。「フラット切り替えし」
みんな1本目よりうまい。飲み込みが早い。さすが漢(おとこ)キャンプ。こうでなくては楽しくない。
再びゴンドラに乗り、ちょっと早めのランチタイム!えっ、もう?と思ったが、時計の針はお昼。時間が過ぎるは早い。
そうARAIゴンドラ頂上脇のレストラン、見晴らしが最高なのだ。特に今回のキャンプみたいなピーカンの日は絶景だ。
そしてご飯のボリュームが半端なく多い。普通盛りでも十分満足できる量だ。しかも「てんこ盛り」なんて設定まである。
みなガツガツ食べる、とにかく食べる。んっ、いのきは「かつ丼てんこ盛り仕様!」さすがだ(このカツ丼はあり得ないくらいでかい!)。
昼からのレッスンまでに時間が結構あったので、みんなゆったりと食後の時間をくつろぐ。
コーヒー飲む者、煙草をふかす者、昼寝する者、この男特有の雰囲気(まったり感)は何とも言えない。
ここで午前中、不完全燃焼気味のミックンと聖くん、いのきと自分の4人はで食後のフリーランをすべく一足先にゲレンデへ。
思い思いに技を出し合い、テンションを上げながら斜面を滑り降りていく。やはりフリーランは楽しい。
午後のレッスン開始。
気温も上がり雪がシャバってきたので「グラトリ」の練習からスタートとなった。
1本目。「バックサイドテールプレス。バックサイドノーズプレス」が課題。稲川デモのランの後にキャンパー達が続く。
「目線が低い!左ヒザ曲がってない!肩のライン傾けるな!ほらっ、板浮いてないよ~!」稲川デモの指導が冴えわたる。
そろそろ鬼コーチの本領発揮である。しかしここまでプレス練習を体育会系チックにするキャンプもないのでは!?とふと思った。
2本目
「フロントサイドテールプレス、フロントサイドノーズプレス」が課題。
1本目同様、稲川デモのラン後、キャンパーたちがぞくぞくとプレスする。周囲からは「あいつら、何者だ!?」と思われていたに違いない。15人の漢がぞくぞくと斜面でプレスをしているのだから・・・オッチー、いのき、しょうへいはすでにコツをつかんでいるようだ。
3本目
「フロントサイドテールプレス、フロントサイドノーズプレス、バックサイドテールプレス、バックサイドノーズプレス」のコンビネーションが課題。みんな1回目よりかなり良くなっている。特にえらっち、宮木さん、有代さんは目を見張る上達ぶり。
稲川デモの顔が浮かない。「意外とみなすぐできてるなぁ~」なんて呟いている。いやいや、指導がうまいからですよ。
何やらニヤリと怪しげな笑みを残し、リフト乗り場に滑り降りていった・・・。
4本目
「スイッチラン」が課題。まずは「スイッチミドルターン」からスタート。
しょうへい、有代さんはちょっとつらそうだ。
どうやら しょうへいはこれが今回のキャンプの課題らしい。
他の皆はさらりと滑り降りていく。
稲川デモの顔がますます浮かない。
「おかしい」!?いやいや、みんなできてるからOKでしょ~。
ゲレンデ中腹からはプレスコンビネーションの復習。
体の使い方、目線を確認しながら滑り降りていく。
5本目
「スイッチショートターン」みんなが「えっ~ぇ」と声を上げる。稲川デモは嬉しそうだ。
自分はスイッチは滑り慣れてるので、真っ先に滑り降りる。
続いてミックン。自分同様に滑り慣れているので、うまい。
その後、順次滑り降りてくる。さすがに左右に振られたり、ポジションニングが怪しくなったりしてくる人もいる。
「ほらっ~、後傾になるなぁ~!レギュラー(グーフィー)と同じことやるだけだぞ~!」
声高々に檄が飛ぶ。内心思った。「稲川デモはホンマに人いじるのが好きな人やなぁ」
しかしこれだけで済まされるワケがなかった。ゲレンデ中腹の平らな部分で、集合がかかる。
「平地でのプレス、オーリー」の練習。この練習は体の使い方、目線、スタイルを確認する上でひじょうに有効な練習だ。
有効だが・・・ひじょうに体力、筋力を消耗する。みんな、だんだん顔に疲労の色が滲み出す。
さらにこれが一番効いた。「フォールラインを向き、立った状態で斜面を上がる。」
ことの発端はみんながプレス、オーリーの練習中に斜面に沿ってずるずる落ちているところを発見した稲川コーチが克服するために教えてくれた練習だ。やり方は簡単。小さく、小刻みに山の上部にジャンプを繰り返し、上げっていくだけ。
しかし・・・うまくいかない。コケる。足がプルプルする。コケずに登れても、稲川デモみたいに素早くできない。
この練習の主目的は「瞬間的なエッジコンタクトによりバランスをとること」。
ここでもダメ出し。「みんなバックサイドのエッジコンタクトが甘過ぎ~!」 「みんなバランス感覚悪過ぎ~!」
6本目
「ピボットフロントターン」が課題。何じゃそりゃ!?と思った方のために簡単にご説明を。
レギュラー(グーフィー)からバックサイドターン中にバックノーズプレスをかけながら、180度回転し、スイッチに向く。
そのままスイッチバックサイドターン中にバックサイドテールプレスをかけながら、180度回転し、もとに戻る。これの繰り返し。
先ほどの平地プレス練習でみな体力を大幅に削がれたため、なかなかプレスにならない。
次に「ポコじゃん」。みんなそれぞれ好きな技を出し、飛んで行く。聖くんがバック180をしたので、自分はフロント180にしてみた。
7本目
「地形を利用してフリーラン」
谷状の地形のコースを滑りながら、ポコジャン、プレス、オーリー、スイッチラン等、地形に合わせてイメージし滑走する練習だ。
みなそれぞれのイマジネーション力が問われる。やはり、これがフリーランの醍醐味。ホント楽しい。
8本目
「下山」 頂上からの超長距離滑走。
稲川デモを追いかけるようにみんな滑り降りていく。さすが兵(つわもの)たちだ。
ゴンドラ下にて「お疲れぇ~」の挨拶をして、1日目のレッスンが終了となった。
宿(ほてる千家だよ)に戻り、それぞれ風呂に入り、夕食。その後、ビデオクリニック。
みんなゆったり寛ぎながら、ビデオチェック。稲川デモのアドバイスを受けながら、各自イメージを修正していく。
自分の滑りを初めてビデオで見たキャンパーはビデオの威力を感じたようだ。
その後、明日のレッスンの主題「急斜面の直滑降」「オーリー」「キッカー」と滑走するゲレンデが戸隠スキー場と決定された。
ひと段落つくと・・・床に付く者、スノボと違う話題で盛り上がる者、お互い語り合う者、それぞれの夕べを満喫していく。
気の知れた仲間たちとお酒を飲みながら、語り合い、ゆるりと時間が流れていく。何と心地の良いことか。
ほど良い疲労感!?も重なり、12時前には明日の備えて、みな部屋へ戻り、床へ付いた・・・。
ひとつの夢を見た。バフバフのパウダーの中をスプレー上げて滑ってる自分。
でも、どこのゲレンデかわからない。ただパウダーの中を終わりなく滑り降りていく自分。正夢か・・・Zzz。
何かが打ち付ける音がする。同部屋のまさるさんの声が聞こえる。「こりゃダメだな。暴風雨だ」
・・・「暴、風、雨、!?」雨!?、ウソやろ!?ボケぇ~としながら目を覚まし、外を見る・・・ホントに暴風雨だ。
みんな眠そうな顔しなが食堂に集まってくる。「雨かぁ~、風邪も強いし、今日はなしだな。」「まぁ、温泉入って帰るか」
9時半まで自由時間だったので、千家のお風呂にど~ぷり浸かる。あ~ぁ、温泉最高ぅ!!!
ということで2日目のレッスン「コブナビDVD観賞」
暴風雨でも滑走する男気あふれたライダーがほとんどいなかったため、
急遽 最近発売されたばかりのコブナビを見ながら、稲川デモにコブ滑走のポイントを解説して貰うということに決定!
・・・朝も早かったせいか、DVDのスローなバックミュージックが子守唄に聞こえたのか、みな意識が怪しかったが。
昼前に「お疲れぇ~」をして、2日目のキャンプ終了。近くの鳥めし屋にてみなで昼飯を食べ、解散となった・・・
いかがでしたかな?毘沙門天の申し子とその兵(つわもの)たちの物語は。
はっきり申し上げて、今回我々このキャンプに参加した者たちは稲川デモの凄さの片鱗を垣間見ることができた。
稲川デモというと真っ先に「コブ滑走の第一人者」というイメージを思い浮かべる方も多いと思うが、とんでもない。
ホントに末恐ろしい実力を持った、尊敬に値する、そして愛すべき、兄貴なのだ。
このキャンプのインフォメーション
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日程: 2006年2月25日(土)~26日(日)(1泊2日) キャンプ料金:¥19,800 (dmkクラブ員限定) ツアー参加人数: 12名 開催ゲレンデ:ARAI Mountain(長野県上水内郡飯綱町) 宿泊施設:ほてる千家 コーチ:稲川 光伸 |
●前代未聞ブーツを忘れた総大将ケイが撮影した写真は以下に。ダウンロードして記念に持っておこうね!
http://www.yukinchu.com/dmk/05-06/20060225mens/