文：飯田房貴 @dmkfusaki
友人から送られてきた興味深い写真。それはニセコにある自動販売機の写真で、驚くべきことにその自動販売機はアリペイ（Alipay）とチャットペイ（WeChat Pay）しか使えないというものでした。
私は先日、日本へスキーやスノーボードに行く外国人向けに「10 Best Ski Resorts in Japan」という記事をアップしました。実際、このトップ10リストを作成していただいたのは、日本のスキー場に精通するSnow Heaven Japan編集長の岩田 克己氏です。
その中で疑問に感じたのは、海外のスキーヤーやスノーボーダーから高く評価されているニセコがリストに含まれていなかったことです。岩田氏に直接聞いてみたところ、ニセコのスキー場としてのポテンシャルは認めつつも、ゲレンデ内の混雑や、海外の高級リゾートであるウィスラーやアスペンに比べてレストランの少なさを挙げていました。それに加えて、屋台村で提供されるラーメンが驚くほど高価であることへの不満もあり、結果的にオーストラリア人観光客はコンビニで食事をするようになっているとのことでした。
現在、ニセコは以前のように「お金のないオーストラリア人」をターゲットにしているわけではなく、むしろ欧米、中国、アジアの富裕層を主なターゲットにシフトしているようです。これまで日本のスキー場を愛していたオーストラリア人たちも、ニセコではなく、別の道内や本州のスキー場に足を運び始めていると聞いています。
ニセコは、オーストラリアや中国、香港、シンガポール、欧米からの観光客が集まる国際的なスキーリゾートとして知られてきましたが、近年では特に富裕層をターゲットとした施策が目立ちます。例えば、レストランの数が少ないことや、屋台村で提供されるラーメンの価格設定に対する不満が上がる中、ニセコは富裕層向けの高級感を打ち出す方向へシフトしているようです。これまでの予算を抑えた旅行者たちは、道内や本州の他のスキー場に移りつつあります。
中国からの観光客は消費力が非常に高く、彼らをターゲットにした施策は地域経済の活性化に寄与するでしょう。しかし、特定の観光客層に偏ることは、他の観光客や日本人利用者への配慮不足と捉えられる可能性があります。例えば、アリペイやチャットペイ専用の自動販売機を見た日本人スキーヤーやスノーボーダーは、「もうニセコは私たちの雪山ではない」と感じるかもしれません。
また、ニセコにおける懸念点として、外国人投資家によるホテル建設の状況も挙げられます。外国人投資家は、運営が難しいホテル建設よりも、すぐに売却益の出るコンドミニアムの建設に注力している傾向があります。ホテルの場合、レストランなどの施設を併設する必要がありますが、コンドミニアムにはレストランを作る必要がなく、この点がニセコのレストラン不足の一因となっている可能性が高いです。（※こちらの情報源も岩田氏から）
ニセコが富裕層向けのリゾート地として発展を続ける中で、他の観光客にも配慮した多様な決済手段の導入が進むことが、持続可能な成長につながるのではないでしょうか？
以下の動画は、ニセコの中国化や富裕層向けターゲティングの現状を伝える内容となっています。
飯田房貴
1968年生まれ。東京都出身、カナダ・ウィスラー在住。
シーズン中は、ウィスラーでスノーボードのインストラクターをしており、年間を通して『DMKsnowboard.com』の運営、Sandbox、Endeavor Snowboards等の海外ブランドの代理店業務を行っている。日本で最大規模となるスノーボードクラブ、『DMK CLUB』の発起人。所属は、株式会社フィールドゲート（本社・東京千代田区）。
90年代の専門誌全盛期時代には、年間100ページ・ペースでライター、写真撮影に携わりコンテンツを製作。幅広いスノーボード業務と知識を活かして、これまでにも多くのスノーボード関連コラムを執筆。主な執筆書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書 』『スノーボードがうまくなる！20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。
今でもシーズンを通して、100日以上山に上がり、スノーボード歴は39年。
スノーボード情報を伝える専門家として、2022年2月19日放送のTBSテレビの『新・情報7daysニュースキャスター』特集に、また2022年3月13日に公開された講談社FRIDAY日本が「スノーボードの強豪」になった意外な理由にも登場。
インスタ：https://www.instagram.com/fusakidmk/
ツイッター：https://twitter.com/dmksnowboard
