歴史を動かした10人のライダー/ジェイミー・リン

ジェイミー・リン

スノーボードも最も熱くなった時代のアイコン

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文:飯田房貴

以前、布施忠や平岡暁史と飲んでいた時、スノーボードを始めた頃に最も影響を受けたライダーの話をしたことがあった。
僕は、クレイグ・ケリーと答えた。自分の中では、絶対的な答えである。
しかし、二人の回答は違う名前だった。しかも同じ名前のライダーを挙げたのだ。

それが、今回紹介するジェイミー・リンだ。

スノーボードは、80年後半からボチボチ知られるようになって来たが、本当の意味で盛り上がって来たのは、90年初頭だ。
キャンプファイヤーで例えるなら、燃えやすい小枝や新聞紙を入れていたのが80年代。それが、やっとのことで燃え出し、大きな木を入れて一気に炎が舞い上がったのが90年代だ。その時の象徴的アイコンという存在が、ジェイミー・リン。だから、今、30代後半のベテランのスノーボーダーというと、やたらにジェイミー・リンにやられちゃっている人が多い。あの時、スノーボード人口が急激に増えて、その時に最高のアイコンだったけに、ジェイミーこそカリスマ、レジェンドという声がこの業界には強いのだ。

僕が初めて彼を見たのは、1991年、ウィスラーで開催されたWestbeachクラッシック大会だ。
優勝したのは、ケビン・ヤング。2位はショーン・ジョーンソン。そして3位に入ったのが、当時、名を知られていなかった若きジェイミー・リン。

実を言うと、僕も参加していてこの時の決勝を目の前で見ていたのだけど、あの日、鮮明に覚えているのは、優勝したケビンと、3位のジェイミーの安定感抜群のぶっ飛んだ姿だった。しかし、インパクトという意味で、ジェイミーは強烈だった。何しろ、素手で滑っていたのだから。今でこそ、素手でライディングする姿が見られるが、あの時代、素手で滑っていたのは、ジェイミーだけだ。

しかも、そのスタイルが独特だった。スケートのスタイルは、すでに確立されつつあったが、ガニ又を強調するようなあのスタイルはジェミーならではのもの。

この翌年から、ジェイミー・リンの姿は、どんどんビデオで発信されるようになる。そして、その独特なスタイルはたちまち当時のスノーボーダーたちの虜となった。

代名詞にもなっているメソッドエアー。対空時間あるエアーから後ろ足を蹴り出すトゥイークの形は、当時、世界で一番カッコ良いスノーボード・トリックとなった。

そして、ノーグラブというスタイルを流行らせたのもジェイミーの功績だろう。
ジェイミーは、エアー中にヒザを胸に引き付け、前足を蹴り出すポークの形を作り、ノーグラブでもエアーはカッコいいということを見せた。

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(左、素手のままでグラブするジェイミー。無理矢理グラブすのではなく、空中で板をコントロールできているからこそできる。右、ノーグラブでもスタイルを出している姿。)

当時、540を回せば十分という時代で、720を安定感抜群で回せるのもジェイミーだった。
360のスピンでは、エアー中に動きを止めてスタイルを作り、そこから急動作で着地するレイトスピン。さらには、上半身と下半身を捻るシフトもジェイミーあたりが最初で、その後のブライアン・イグチがさらに広めた感じである。

ドラム缶に当て込む姿も様になっていた。メリハリあるタップ・トリックは、あの時代のライダーたちの中では異彩を放っていた。

このようにジェイミー・リンを有名にした舞台、それは、ビデオというメディアだ。今でこそ、ビデオはスノーボード・プロの表舞台な感があるが、当時のスノーボード・ビデオというのは、まだまだマニアックな世界だった。
ところが、ジェイミーが登場してからというもの、僕たちはテープが切れるほどブラウン管にくぎ付けになった。VHSのテープをガチャンと入れて、ウィーンという音と共に再生が始まる。あの懐かしい音が思い出される。

ジェイミーの前にもビデオスターはいたが、その前のスターたちが大会にも比重を置いていたり、まだまだマイナーだったことを考えると、まさにジェイミーが映像というメディアを大きく発展させたと言えよう。

だが、ジェイミーを走らせた舞台は、まだゲレンデ内だった。今、ストリートの世界ではまったくゲレンデを使うことがないが、ジェイミーの時はほとんどの映像がゲレンデ内だったのだ。それでも、ジェイミーはすでにこの時から、ストリート映像も見せていたので、その後の時代の担い手、ピーター・ライン、そしてJPウォーカーなどに大きな影響を及ぼしたと言えよう。

ジェイミーは、単にプロ・ライダーとしてだけではなく、アーティストとしても成功を収めている。自身のグラフィックを施したボードを最初に注入したのもジェイミーだ。しかも、今なおその活動は続いていて、さらにミュージック・アーティストとしても才能が花開いている。
現在もその影響力は測りし切れなく、今なお最もいっしょに記念撮影を撮りたいレジェンド・ライダー。まさにグレート・アイコンという存在だ。

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●関連リンク
特集「歴史を動かした10人のライダー(前編)」
https://dmksnowboard.com/?p=13338