文:飯田房貴
一夜経ってもまだ興奮が収まらぬ男女共にX Games制覇の興奮!
大塚健の金メダルも本当に素晴らしいが、村瀬心椛の13歳で女子コンペティション史上初のバックサイド・ダブルコーク1260(縦2回転・横3回転半)は、世界のスノーボード関係者が驚いている。しかもこれがX Gamesという大舞台でのデビュー戦というから、さながら大リーグの大谷翔平デビューのようなインパクトと言ってもいいのかもしれない。
村瀬心椛のバックサイド・ダブルコーク1260の初メイクは、1月29日のアルツ磐梯、鬼塚雅のオリンピック練習用パークとして作られた『Miyabi Park』。おそらく、富山キングスなどですでにこの技をメイクしていて、雪上での初メイクとなったのだろう。
すでにこの時から、X Gameでメイクした時のようなスタイルだったが、この時点では気づかなかったことがX Gamesでの映像から読み取れた。
それは、落下中にすでに1260回転後のスイッチ・ライディングに備えて、着地を見ているような視線を送り続けていること。
直接本人に聞いてみないとわからないが、ずっと着地を確認しているように見える。
前のランで決めた1080では残り180度スピン見えっぱなしでの着地となるが、1260になるとブラインド(背中越し)からの着地。ひじょうに着地へ目線を送るのが困難だ。しかしそれでも彼女は感覚だけに頼らず、しっかりと落下しながら着地を確認し続けて、ランディングを合わせているように見えるのだ。(上の2枚写真参照。)
メイクした時の周りの興奮している様子とか、コメンテーターの絶賛するコメント、そしてインタビューシーンなど感動的で、繰り返し映像を見ていたのだが。1260も回しているのに安定感、スタイルが伝わるのは、この視線ではないか、ということを考えるようになった。
着地自体は、手を付いた形となっているが、エアー自体がひじょうに安定している。だからこそ、スタイルが伝わる。ジャッジに好印象を与えた形となっているのだ。
2本目でテン(1080)をメイクして、ラストの2本目はトゥエルブ(1260)って思っていてのトライだから、ある意味、確信犯的に歴史のページを作ったと言えるかもしれない。
また、この視線で着地を確認できるような形を取れているのは、本人の死にもの狂いの練習の成果だろう。
世界が注目するX Gamesという大舞台で、実力を出し切ったところも本当に凄い。
ちなみに僕がこの優勝ラン動画で一番好きなところは滑り終わって、ハイスコアが出て思わずちょこんとお辞儀しちゃうところ。みなさん、ありがとうございます!ってまるで感謝しているような大和撫子だ。
これからもみんなから愛される素晴らしいプロ・スノーボーダーの道を歩むのだろう。