
例年カナダのバンクーバー近郊で11月中旬〜下旬に滑走開始となるスキーシーズン。だが2025–26シーズン、Cypress Mountain(サイプレス)が12月中旬を過ぎても一向にオープンしない異常事態となっている。地元SNSやユーザーの記録では、ここまで開幕が遅れる年は過去十年以上なかった可能性が高く、史上最遅級のオープンとなる勢いだという指摘が相次いでいる。
この遅いオープンにより、地元スキースノーボード用品店や観光関連施設では売上への影響が出るなど、経済的な打撃が広がっている模様だ。
ローカルが伝えるサイプレススキー場の悲劇的な雪不足状況の動画
この背景には、太平洋沿岸地域で続く暖冬傾向と少雪の気象条件がある。ブリティッシュコロンビア州全体では、今季の雪パック(積雪量)はこれまでの平均を大幅に下回る水準で推移しており、雪解けが早く進んだという省の報告もある。例えば5月1日時点の州全体の雪パックは平均を29%下回るレベルで推移していたというデータもあり、平年の約7割程度しか雪が蓄えられていなかったことを示している。
サイプレス以外のNorth Shoreの中心スキー場でも影響は大きい。Mount Seymour(シーモア)は積雪不足を理由にオープンのタイミングを慎重に見極めており、十分な雪が降らない限りリフト稼働や滑走可能なコースは限られる見込みだ。Grouse Mountain(グラウス)も同様に雪の状況を見ながら営業規模を調整している様子で、例年より限定的な稼働になる可能性が指摘されている。
一般的にバンクーバー周辺のスキー場シーズンは、12月中旬〜4月中旬頃までの稼働が想定されるが、雪不足が深刻な年は滑走開始が1ヵ月近く遅れることも珍しくない。特にこの地域は標高が低めであり、暖冬の影響を受けやすい特徴がある。
気象専門家が注目する点としては、太平洋からの温暖湿潤な空気の流入、海水温の高止まり、そして気候変動による極端気象の頻度増加が挙げられる。大規模降雪が短期間に発生すれば大逆転もあり得るが、現状は雪の供給が不安定な状態が続いている。一方、天気予報では強い寒気や降雪の可能性も指摘されており、サイプレスがようやく開幕へ動くのか、冬型の雪で一気にコンディションが改善するのか、注目が集まっている。
バンクーバー近郊よりも標高が高い内陸部やロッキー山脈では、早期に滑走を開始したスキーリゾートも出ている。例えばカナディアンロッキーの複数リゾートは11月上旬〜4日頃には開幕しており、地域による気象差が鮮明になっている。
サイプレスやシーモア、グラウスといった市街地からアクセスの良いスキー場は、観光客や日帰りスキーヤーにとって冬の象徴でもあるだけに、例年以上に待ち望まれたシーズンインとなっている。今後の雪の動向次第では、雪不足と暖冬がバンクーバーのスキー文化そのものを揺るがす可能性も指摘されており、気象動向が例年以上に注目されている。

