
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックは9日(日本時間10日未明)、スノーボード女子ビッグエア決勝が行われ、村瀬心椛が金メダルを獲得した。
日本女子スノーボード史上、初の五輪金メダルという歴史的快挙である。
村瀬は北京2022大会で銅メダルを獲得しており、今大会で2大会連続の表彰台。世界選手権、Xゲームズのタイトルに続き、ついにオリンピックの頂点に立った。
今大会の女子ビッグエアには、日本から村瀬心椛、深田茉莉、岩渕麗楽、鈴木萌々の4選手が出場。予選ではこの4人全員が決勝進出を果たし、日本の層の厚さを世界に示した。
決勝1本目、最初に会場を沸かせたのは村瀬心椛だった。
バックサイド・トリプルコーク1440を完璧に決めて89.75点。いきなりトップに立つ圧巻の滑りで、金メダルへの流れを引き寄せた。
一方、金メダルの最大のライバルであり、予選を1位で通過して最終走者となったゾーイ・サドウスキー・シノットは、村瀬のトリプルコーク1440に対抗すべく、同じくバックサイド・トリプルコーク1440に挑んだ。しかしこのジャンプは着地に乱れが出て失敗。結果的に、1本目は村瀬が主導権を握る展開となった。
他の日本人選手では、岩渕麗楽がバックサイド1260を決めて82.75点をマーク。悲願の五輪メダル獲得へ、3度目の挑戦で上々のスタートを切った。
鈴木萌々は、メダル争いには1440回転トリックが不可欠という状況の中、果敢にバックサイド1440に挑戦。得点は54.75点にとどまったものの、攻めの姿勢を貫いた。
深田茉莉はスイッチ・バックサイド・ダブルコーク1260を狙ったが、着地で転倒し18.50点。
決勝1本目から、日本勢の中でも明暗が分かれる立ち上がりとなった。
2本目に入ると、展開は一気に混戦となった。
鈴木萌々はフロントサイド1440をクリーンに決めて81.50点。初出場とは思えない度胸で大技を成功させ、存在感を示した。
深田茉莉もスイッチ・バックサイド・ダブルコーク1260で85.00点をマークし、1本目の失敗をしっかりと取り返す。
メダル獲得に強い思いを抱く岩渕麗楽は、フロントサイド1440ミュートに挑んだが失敗。状況は一気に厳しくなった。
1本目で有利な立場を築いていた村瀬心椛は、フロントサイド・トリプルコーク1260をまとめて72.00点。合計161.75点とし、2位につけた。
一方、ゾーイ・サドウスキー・シノットは、1本目に失敗していたバックサイド・トリプルコーク1440ミュートを鮮やかに成功させる。
この精神力の強さは、見る者を圧倒するものだった。あのキュートな笑顔の奥には、勝利への強い闘志が渦巻いているかのようだった。
金メダルの行方は、最終3本目までもつれ込んだ。
運命の3本目。
村瀬心椛は、さらにギアを上げた。
キッカーの左側から放ったトリックは、フロントサイド・トリプルコーク1440インディ。スピン技を行うためのスライドローテーションはまったくなしで、トゥサイドから放たれたその高回転トリックは、きれいな放物線を描いていくビッグエア!ランディングはあまりの衝撃から、やや上半身が折れたように見えたが、決まった安堵感から右手が付き上げれられた。
スコアは89.25点でトップに立つ!
一方、ゾーイ・サドウスキー・シノットの最終3本目は、スイッチ・バックサイド1260。大きなミスなくまとめ、メダル圏内を確保。しかし、1260回転では、村瀬には届かない。
残るは最終滑走者、韓国のユ・スンウンだ。
五輪前はややノーマークの存在だったが、予選では、女子4人目3.5回転となるバックサイド1260ミュートを決めた若き実力者。この決勝でもバックサイド、フロントサイドの両方向で1440を成功させてきた。
しかし最後に狙ったフロントサイド・トリプルコーク1440インディは決まらず、その瞬間、村瀬心椛の金メダルが確定した。
最終順位は、
金メダル:村瀬心椛
銀メダル:ゾーイ・サドウスキー:シノット
銅メダル:ユ・スンウン
となった。
他の日本勢は、鈴木萌々が6位、深田茉莉が9位、岩渕麗楽が11位。
日本勢は誰もが表彰台を狙える実力を持っていたが、この日、五輪の女神は村瀬心椛に微笑んだ。
表彰式では、村瀬心椛は名前を呼ばれると天を仰ぎ、両手を掲げて表彰台へ向かった。
金メダルを首にかけられると、何度も深くお辞儀をし、君が代とともに掲げられる日の丸を、目を潤ませながら見つめていた。
通常、五輪には「魔物が住む」と言われる。どれほど実力を備えた選手であっても、予選敗退という苦渋を味わうことは珍しくない。しかし、女子ビッグエアの決勝は、そんな常識を覆すかのようにスター選手たちが集い、歴史に残るパフォーマンスを繰り広げた。
今大会を最後に引退を表明しているアンナ・ガッサー(オーストリア)は、ジュニア時代の村瀬にとって憧れの存在だった。そのアンナと同じ晴れ舞台に立ち、そして頂点に立ったことは、村瀬にとってこの上ない喜びだったに違いない。
さらに、ファイナルに出場した選手全員が村瀬を称える姿があった。そこには勝敗を超えた、スノーボードが持つ友愛の美しさが確かに表れていた。
日本女子スノーボード界が、ついに五輪の頂点に立った。
2026年2月10日は、その歴史が塗り替えられた一日として、長く語り継がれていくことだろう。
スノーボード女子ビッグエア 決勝結果(ミラノ・コルティナ五輪)
| 順位 | 選手名 | 国 | Run1 | Run2 | Run3 | 合計得点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 村瀬 心椛 | 日本 | 89.75 | 72.00 | 89.25 | 179.00 |
| 2 | ゾイ・サドウスキー=シノット | ニュージーランド | 27.75 | 88.75 | 83.50 | 172.25 |
| 3 | ユ・スンウン | 韓国 | 87.75 | 83.25 | 20.75 | 171.00 |
| 4 | ミア・ブルックス | イギリス | 80.75 | 78.75 | DNS | 159.50 |
| 5 | 張 小楠(ジャン・シャオナン) | 中国 | 74.25 | 14.25 | 70.25 | 144.50 |
| 6 | 鈴木 萌々 | 日本 | 54.75 | 81.50 | DNS | 136.25 |
| 7 | テス・コーディ | オーストラリア | 70.00 | 61.00 | DNS | 131.00 |
| 8 | アンナ・ガッサー | オーストリア | 25.00 | 45.00 | 76.25 | 121.25 |
| 9 | 深田 茉莉 | 日本 | 18.50 | 85.00 | 30.00 | 115.00 |
| 10 | メイラ・ストーカー | オーストラリア | 72.50 | 35.00 | DNS | 107.50 |
| 11 | 岩渕 麗楽 | 日本 | 82.75 | 20.50 | DNS | 103.25 |
| 12 | ハンナ・カーラー | オーストリア | 65.50 | 18.75 | 23.50 | 89.00 |
※ DNS = 得点なし(不成立)
スノーボード競技 メダル状況(2026年2月10日現在)
| 順位 | 国名 | 🥇 金 | 🥈 銀 | 🥉 銅 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本 | 2 | 1 | 0 | 3 |
| 2 | オーストリア | 1 | 1 | 0 | 2 |
| 3 | チェコ | 1 | 0 | 0 | 1 |
| 4 | ニュージーランド | 0 | 1 | 0 | 1 |
| 4 | 韓国 | 0 | 1 | 1 | 2 |
| 6 | イタリア | 0 | 0 | 1 | 1 |
| 6 | 中国 | 0 | 0 | 1 | 1 |
| 6 | ブルガリア | 0 | 0 | 1 | 1 |

