
先日、ゴンドラで隣に座った方が、かなりのスノーボードマニアのようでした。
仲間との会話で、「自分はパウダーボードだからスイッチはできない」と話していたんです。
心の中で、つい「それ、板のせいじゃなくて技術の問題じゃ…」と思ってしまいました。
私は40年前からスノーボードをやっていて、こういう「マテリアル依存症」の人を何人も見てきました。
最近は板が進化したおかげで、板のせいにしやすい環境になった気がします。
例えば、カービング用の板に前振りスタンスを取っている人はスイッチを諦め、
硬い板を持っている人はジャンプを避ける…そんなケースです。
もちろん、グラトリ用の柔らかい板ならトリックが簡単にできるし、
パウダー用なら浮力を感じながら滑れます。それ自体は素晴らしいこと。でも、板に頼りすぎるのはもったいない。
私も先週、人生で初めてスワローテール板を使いました。
パウダーでの浮力もカービングの安定感も最高。でも、それだけでなく、スイッチやグラトリ、ボックス、レール、キッカーも楽しんでいます。
私は基本、1本の板でいろんなことをやりたい派です。
もちろん人によっては、何本も板を持ち込み、その日のコンディションで替える楽しみ方もあります。
でも自分は面倒くさがりなので、スクールのロッカーには1本だけです。

最近は、精神疾患のように病名を聞くことが増えました。
医学的には「日常生活に支障がある」「症状が長期化している場合」に病名がつきますが、
一方で「気の持ちようで変えられる部分」もあります。
スノーボードにも同じことが言えます。
「マテリアル症候群(私が勝手に名付けた)」は、意外と気の持ちようでクリアできることも多いのです。
初心者用板でもカービングやパウダーは楽しめるし、
上級者用の硬い板でもジブやジャンプは可能です。
つまり、板やブーツ、バインに惑わされず、
自分のやりたいことを自由に楽しめばいい。
まずは、自分の板で、思いっきり滑ること。
スノーボードの楽しさは、滑ること自体の喜びと、ちょっとずつ上達する実感にあります。
板のせいにせず、制限も恐れず。
あなたのやりたい滑りを、自由に、思いっきり楽しんでください。

飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴は40シーズンを超え、約20年にわたり雑誌、ビデオ、ウェブなどを通じてハウツー記事の発信に取り組んできた。
1990年代を代表するスノーボード専門誌『SNOWing』では、「ハウツー天使」というコラムを執筆。季刊誌という発行ペースの中で100回以上の連載を達成し、金字塔を打ち立てた。『SnowBoarder』誌でも初期からハウツーコーナーを担当し、中でも読者へのアドバイスコーナー「ドクタービーバー」は大人気となった。
自身が監修・出演したハウツービデオやハウツー本も大ヒットし、1990年代のスノーボードブームを支える存在となった。
現在はカナダ・ウィスラーを拠点に、インストラクターとして世界中の人にスノーボードの魅力を伝え続けている。
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。

