リフトの安全バー、義務化の流れはアメリカから日本へも?コロラド州での事故が呼び水に

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2024年12月、アメリカ・コロラド州のキーストーンリゾートで、スノーボーダーのドノヴァン・ロメロ氏(当時32歳)がリフトから約15メートル転落するという事故が発生した。事故当時、彼はリフト上でスノーボードのビンディングを調整しており、安全バーは下ろされていなかったという。

ロメロ氏は事故直後から重体となっていたが、今月2日(2025年5月2日)に亡くなった。彼の死を受け、アメリカ国内ではリフトの安全バー使用を「義務化すべき」という声が急速に高まっている。とくに母親のトネット・ロメロ氏は、息子と同じような悲劇を繰り返さないためにも、安全バーの使用を法的に義務付けるべきだと訴えている。

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アメリカでは現在、安全バーの使用は推奨されているものの、法的な義務はほとんどない。例外はバーモント州で、ここでは安全バーの使用が州法により義務付けられている。それ以外の州では、スキー場や業界団体が自主的に利用を促すにとどまっており、利用者の判断に任されているのが実情だ。

一方、ヨーロッパではリフトの安全バー使用が広く義務化されている。EUでは2018年からケーブル輸送設備に関する安全基準が導入され、安全バーの設置と使用が標準化された。フランスやオーストリアなどでは、安全バーを下ろさずに乗車しているとリフト係員から注意されることも多い。

今回の事故を契機に、アメリカでも本格的な法整備が進む可能性がある。州議会や規制機関による制度改正には時間がかかるが、議員や安全団体の一部がすでに義務化に向けた議論を始めている。

そしてこの流れは、日本のスキー場にも影響を及ぼす可能性がある。現在、日本にはリフトの安全バー使用を義務付ける法律は存在しない。しかし、国際的な動きや重大事故を受けて、安全対策の見直しが求められることもあり得るだろう。

ゲレンデの安全は、滑りの上達と同じくらい重要なテーマだ。リフトという“足”が安全であるために、今何が必要なのか。国内外の議論の行方に注目したい。

関連リンク|コロラド・キーストーンのリフト事故と安全バー義務化の動き

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