
rama109チャンネルから公開された『滑走人 平間和徳 2025 full part』。
この映像は、単なるターンの上手さやスタイルを見せる作品ではない。平間和徳というスノーボーダーが、長い時間をかけて辿り着いた「滑りに対する答え」が詰め込まれている。
彼が繰り返し語るのは、バランスと軸。
雪質や地形、道具、ジャンルが変わっても「自然に、自由に動けること」。その根底にあるのは、テクニックを誇示することではなく、自分がいつでも楽しめる状態でいることだ。
「状況に左右されない。道具に左右されない。人に左右されない。いつでも“楽しい”を作り出せる技術の幅が大事」
平間は「テクニカル」という言葉にすら距離を置く。
ジャンルとしてのテクニカル、型としての正解。その定義に縛られること自体が、自由から遠ざかると感じているからだ。彼が目指すのは、重力や物理を理解した上で、ボードを自在にコントロールできる普遍的な滑りである。
映像の中で印象的なのは、「一つのことを極めるためには、より多くの経験が必要」という言葉だ。
カービングだけ、ターンだけに固執すると、経験は偏る。その偏りでは、本当の意味で“極める”ことはできない。サーフスケート、SUP、スノーボード——フィールドが変わっても共通するのは、目に見えない物理的な力の働きだと彼は語る。
形やスタイル、流派や主義に固執した瞬間、動きはぎこちなくなり、シームレスさを失う。
だからこそ平間は「決まりのないターン」を追い求める。深さやサイズ、均一性といった評価軸に縛られず、気持ちの悪い動きは一切見せない。それを通年で表現することが、彼の挑戦だ。
このフルパートで描かれるのは、派手さではなく、自由の密度。
ジャンプやジブを並べれば「何でもできる」ことは伝わりやすい。しかし、ターンだけで自由を表現することは、圧倒的に難しい。平間和徳は、その最も困難な表現に正面から向き合っている。
『滑走人』というタイトルが示す通り、この作品は技のカタログではない。
滑ることそのものと向き合い続けた、一人のスノーボーダーの思考と美学が、静かに、しかし強く伝わってくる映像だ。
instagram 平間和徳 @kazunorihirama

