【コラム】なぜ日本には競技プロがいて海外にはいないのか?

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文:飯田房貴 [email protected]

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日本には、「私、プロ・スノーボーダーです。」と名乗る人がいます。

で、あなたはそれで生計を立てていますか?
→「No」
と答える。

じゃあ、あなたは何を持ってプロなのですか?
→日本のスノーボード協会が認めたプロ・スノーボーダーなんです。

そんなプロ・スノーボーダーのあなたの活動は?
→プロの競技会に出ています。また、プロとしてスクールやキャンプのコーチングをしています。
またプロとしての経験を活かしてショップの販売のお手伝い(店員)をしています。

競技プロの年収実情

日本の競技プロの平均年収とか正しくは把握していないけど、何人かの方にリサーチしたところ、プロの賞金獲得で良い方で数十万円~100万円以内。ほとんどの方は、ゼロに近いというところではないでしょうか?

まさに喰えない・・・。

プロ登録すると、年間で8万円とか払うのだとか。
遠征費など含めれば、プロになることで出費が増えて、むしろプロ競技登録することでマイナス出費になったりします。

「なんでプロにこだわるの?」と聞くと、
→プロと言うと世間の目が良くなる
と言います。

例えば、就職先で「お前何でこんなに休みがあるんだ?」と聞かれた時、「プロ・スノーボーダーなんです。」と答えると、それが良い理由になったりすることもあるそうです。

確かに「プロ・スノーボーダー」と聞けば、世間では「スゲー!」とかなるし、納得するところもあるようです。

でも、それって日本独特の文化で、北米やヨーロッパにはそのような競技プロはいません。
プロ・スノーボーダーと言えば、スポンサーなどから契約金をもらって、それで生計を立てることを言います。

もちろん日本人プロでも、立派に生計を立てるほどの金額をもらっているライダーもいます。その方は世界的にも知られていて人気が高いプロ・スノーボーダーですが、おそらく数千万、または億近くもらっているかも!?
だけど、決してその日本人プロ・スノーボーダーは、競技プロとして登録している選手ではなく、あくまでも、スポンサーなどから契約金をもらってプロとして活躍している方になります。

 

日本が生んだ独特な競技プロが生まれた背景とは?

なんで日本だけが、こうなってしまったのでしょうか?

そもそも1990年前後に日本に競技プロが生まれた時には、世界にもプロ選手の団体が発足しつつありました。それが、ISFという団体になるわけですが、その時のプロ・スノーボーダーというのは、まだビデオや雑誌撮影だけで喰えるものではなかったのです。競技者としても活躍し、その上でメディア露出でも頑張る!というスタンスでした。

おそらくクレイグ・ケリーが最初のメディア・インセンティブ勝者です。彼は、当時競技プロとしても世界トップの立場でしたが、スポンサーであるバートンから、雑誌露出のページ数・割合についていくらもらえる、ビデオでの露出・分数でいくらもらえる、ということを他のプロ・スポーツから学びオファーし、最初のメディア露出プロにもなりました。

そして、この当時の日本は、アマ選手からプロ選手に昇華するという納得できるストーリーがありました。

しかし、現在のように、アメリカではXゲームという大きなプロ大会がありながら、そこには一切、日本のプロ競技が連結せず、例え日本のプロでシーズン王者になってもXゲームに招待されないという現状では、プロの意味合いが大きく薄れています。

このような現状にもあるにも関わらず、今なお競技プロが存在するのは?
僕が思うのは、日本というのは肩書き文化なんだと思います。

例えば、芸能人を見ると、「スゲー!」とか、社長さんと聞くと、「ハハー、お偉い人!」って敬ったりする傾向が強い。
もちろん、僕が住むカナダでもそういうところがまったくゼロではありません。でも、日本人より肩書きに弱くはないようです。

例えば、「今日、デビッド・ベッカムのご家族にレッスンしたんだ。」と言うイントラがいれば、日本ではたちまち騒ぎそうなものだけど、こっちでは「へえー、そうなんだ。で、どうだった?」っていたって冷静に答える。もちろんそこには「いいな。」という気持ちも多少あるだろうけど、あまり騒ぐことがありません。

カナダのウィスラーという土地柄、アメリカのセレブリティや有名スターが来ることもあるけど、日本よりは有名人に対する目がクールな印象です。だから、やたらにサインや記念撮影を求めることもありません。

従業員が数千人以上いるウィスラーの社長さんだって、気さくなもんです。周りの人、マネージャー職でない下の従業員も、「やあ、デイブ!」って。
オイオイ社長さんなのに、ファースト・ネーム呼びかい!って突っ込みたくなるけど(笑

ともかく、西洋はアジア諸国よりも、どちらかというと肩書に対して、あまり敬うことがない。自然に接する傾向です。

 

まとめ

競技をやって盛り上がることは素晴らしいことだし。
そこに目標を持って挑むことも良いことです。
もちろん切磋琢磨し、技術を磨き挑戦することは素晴らしいこと。その方法が競技プロということも理解できる部分はあります。

でも、そのプロとか肩書きばかりこだわると、おかしくなるような・・・。

もの凄く乱暴なことを言ったら、プロ登録がなくなっても、日本のスノーボード業界にとってどってこともないような気がするのです。
なくなれば、これまでプロ競技に参加していた方が、アマチュアの大会に参加することで、もっと盛り上がったりするかもしれないし。
また、自然な形でメディア露出でのパフォーマンスで、多くのスノーボード・ユーザーに認められて、プロフェッショナル・ライダーとしてスポンサーが付き、喰えるようになったり。
もちろん、最近台頭して来たユーチューバー的なプロライダーも全然あり!彼らは、スノーボードの魅力を動画という新しいカテゴリーで発信してくれる新しいプロの形だと思います。

だけど、日本独特のプロ制度とかあっても、世間一般的にも大きな勘違いを起こすことにもなっているような気がしてなりません・・・。

大切なことは、プロのスノーボーダーとして、一般スノーボーダーの方に伝える力があるのかどうか。
なければ喰えないけど、あれば立派なプロ・スノーボーダーです。

 

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