
イタリアで開催された今大会の女子スロープスタイル。
金メダルを獲得した深田茉莉、そしてイー・スーミンらを指導した佐藤YASコーチの存在は、大きな注目を集めた。
しかし、その一方で競技後に巻き起こったのが「ジャッジング」を巡る議論だ。
発端のひとつとなったのが、アメリカNBCの五輪中継でコメンテーターを務めたトッド・リチャーズの発言。
「フロントサイド・トリプルコーク1260?
巨大なスイッチ・バック9、10-10?
それよりも720を選ぶって?」
高難度スピンよりも、より完成度や構成が評価された結果に対し、疑問を呈するコメントは瞬く間にSNSやニュースで拡散。国内外で議論が広がっていった。
そんな中、佐藤YASコーチが自身の見解を語る動画
「イタリア五輪 女子スロープスタイル コーチの率直な見解 Snowboard Slopestyle at the Olympics – A Coach’s Perspective」(ポーザーズチャンネル)を公開した。
「みんなで作ってきた」ジャッジングシステム
動画の中で佐藤コーチが強調したのは、今回のジャッジングが突然決まったものではない、という点だ。
約3年前から、各国のコーチ・選手・ジャッジが集まり、試合ごとにジャッジミーティングを重ねてきた。
回転数だけで評価するのではなく、
- 完成度
- バラエティ
- フロー(全体の流れや見た目の美しさ)
- 独創性
をどう評価するのか——。
議論を重ねながら、現在の基準が形作られてきたという。
「たくさん回れば勝つ」という時代から、「完成度と構成をどう評価するか」へ。
コミュニティ全体の意見の変化が、ジャッジングに反映されてきた背景を丁寧に説明した。
高回転か、完成度か
佐藤コーチ自身、回転数を追求するロマンを否定しているわけではない。
かつてはマックススピンを更新していくことが、スノーボードの進化そのものだった。
しかし、スロープスタイルは単なる「スピン合戦」ではない。
ジャンプ構成、トリックの組み合わせ、ライン取り、そして全体の流れ——。
その総合評価へと軸足が移っている現状に、チームとして適応してきたと語る。
実際、今回金メダルを獲得した演技も、そのジャッジング基準に沿った戦略のもとで構築されたものだった。
「ジャッジを守らなければならない」
印象的だったのは、ジャッジへのリスペクトを強く打ち出した点だ。
外部から見れば疑問に映る判定も、内部では長年の議論と合意を経て形になったもの。
だからこそ、感情的な批判ではなく、コミュニティとしての理解が必要だと訴えた。
スノーボードは、互いをリスペクトする文化の上に成り立っている。
大会は勝敗を競う場でありながら、その土台には共通の価値観がある。
今回の動画は、単なる弁明ではない。
コーチという立場から、競技の進化と評価基準の変遷を説明し、コミュニティの成熟を促すメッセージでもあった。
勝者だからこそ語れること
金メダルを獲得した側のコーチが、あえてフラットな視点で語る。
そこに、この動画の重みがある。
結果に対する賛否はあっても、少なくとも今回のジャッジングは「突然の変化」ではない。
3年間の積み重ねの上にあるものだという事実は、改めて共有されるべきだろう。
議論はこれからも続くはずだ。
だがその中心には、スノーボードをより良くしたいという共通の思いがある。
佐藤YASコーチの言葉は、その原点を思い出させる内容だった。
以下の動画、ぜひチェックしてみてほしい。

