我が道行くプロ・ライダー/渡辺雄太

広告 five  

 

独特な動きをするライダーだ。
その動きに、媚は感じられない。己のしたいことをただ淡々とこなす。
彼は以前、メーカーの要求に頭を悩ましていた時期があった。
一度でもライダーになった者ならわかるだろう。自分がやりたいことと、メーカーが要求することは必ずしも合致しない。
しかし、たいていその狭間でバランスを見つけながら、やりくりするのがライダーというもの。
受け入れ過ぎれば、自分を見失うが、自分がやりたいことをやり続ければ、首になるのがオチである。

しかし、彼はずっと自分のやりたいことを続けたと思う。
今回、紹介する渡辺雄太だ。

広告

決して派手なトリックするライダーではないが、日本版ジェレミー・ジョーンズというのか。
誰もが挑戦しない山へ果敢に挑み、その姿が評価されている。
スイスではハイキングガイドも経験。
そして今もなお、モービルもするが、それ以上に足を使って登る活動を大切にしている。

今季は世界最高峰のライダーの一人、アンドレス・ウィッグともセッションした。
しかも、リードするのは雄太だった。

そして、今年驚かされたのは、自分が以前からリリースしたかったというスノーボードマガジン、In deepを作ってしまったということ。
そこにもまったく媚が感じられない。
スポンサーのための営業的な記事はなし。
本当にリアル・ライダーに捧げる専門誌。しかも一般の人が読んでもおもしろい雑誌だ。

今回は、そんな我が道行くプロ・ライダー渡辺雄太にインタビュー。

news140526a
Interview: Fusaki Iida

 

なんで自身でスノーボードマガジンを作ろうと思ったの?

ライダーとしての表現の幅を広げたいなーって言うのがきっかけで、最初はWebとかI padアプリとかでやれるようなことを模索していて色々な人に話しを聞かせてもらったりしていたんですけど、WEBとかアプリってオンタイムでアップされる情報量が重要じゃないですか。毎日新しい情報をアップしていくって言う感じで。まさにDMKもそうですよね。自分で言うのもどうかと思うんですが、僕はあんまりマメな方じゃないので、どうしてもムラができちゃうなーっていうか、自分ができるものとは違うなーって思ったんです。じゃー、オフシーズン中にじっくり煮詰めた記事をまとめて紙媒体で出そうって言う、初めとは全く逆の発想になったんですね。やり出したら、そこからどんどんのめり込んでいきましたが、初めの理由はそんなところです。

だけど、ウエブと紙媒体との違いは圧倒的にコスト面で違うよね?
ライダーなら誰もが自分の表現方法を模索する中でウェブサイトを考えると思うんだ。でも、それが紙媒体って凄く飛躍したというか、大きな決心だった思うのだけど、そのへんは感じなかった?つまりコスト面で本当に出せるのかどうか、というところ。

そうですねー。感じたと思います。でも、元々ウェブでやるにしてもそれなりにお金かけてちゃんとした物を作ろうと思っていましたので、コストって言うよりは自分の考えを優先した形が紙媒体でした。どんどん入れ替わる情報よりも、形としてずっと残っていくことに意味があるような物を作れるようになりたいと思ったんですよね。
それに、制作していく過程で変わっていった部分も凄くあります。今回取材させてもらった人達って、みんなお金の面での苦労は自己犠牲だと思っていないんです。むしろ、初めっから利益を得られることが解っている物なんて作る価値あるの?っていう姿勢だったので。自分なんてまだまだだけど、そういう姿勢に感化されて、中途半端な物は作れないって言う気持ちで制作していたので。 結果的にそこに賛同してくれる仲間やスポンサーから協賛を頂いたりして、なんとか形に出来ました。応援してくれる皆さんには本当に感謝しきれません。

凄い。本当に雄太は昔から生き方が変わらないね。そういったブレのなさが、何かを成し遂げたり、成功することにつながるのだと思います。
正直、今回、雑誌という本を作ったことを自分にとっても良い刺激で。いつか自分も実現させたい、という気持ちにさせてくれました。

ところで、実際、出来上がったものを見て、どうだった?
当初、思っていたことが実現できましたか?
そもそもどんなことを表現したいと思っていたのですか?

やっぱり嬉しかったですねー。最高でした。かなり時間もかけましたし、友達から助けてもらった部分もたくさんありましたので、無事に仕上がって本当によかったと。でも、正直なところ、仕上がってきた印刷をみてアレ??みたいなところもたくさんありましたね(笑。)何度も見直したつもりだったのに、誤字もありましたし、デザインのレイアウトで明らかにミスをしていた部分もありました。後は資金的に叶わなかった部分で予算を抑えたところは、そのまま出ちゃってましたね。「やっぱりかぁー」ってなりました。

表現したい事は自分自身の活動の事と、自分の周りで頑張っている尊敬すべき人達の活動を話題にする事が中心で、そこからヒントを得て次ぎに掘り下げる課題を決めていったり出来ればなー、なんて思っています。実際、今回取材させてもらったDaveとかは、若手で面白いやついるよー、みたいな感じで紹介してくれたり、ヤバイ斜面の写真を見せてくれてりして、凄くインスパイアされました。冊子作りはまだ始まったばかりなので、取材を通して新しい事を学び、周りから得たヒントを形にしていく事で今後のIn deepがどういう風に変化していくかは自分自身が楽しみにしているところです。この本はスノーボードだけが話題じゃなくても良いと思うんです。もっとメンタルな部分で繋がっていて大事だなー、と思う事をピックアップしていきたいですね。

news140526b

普通、雑誌社は誤字脱字をチェックする人が1人~3人いて、必ずそのライターでない誰かがチェックするようになっているんだよね。だから、一人でやった雄太がちょっとだけミスったというのは仕方ないこと。それより何より、スノーボードマガジンをリリースしちゃうってところが凄い!
また、今回、In deepをリリースしたことで、インスパイアされて、スノーボーダーとして新しい観点が備わったことは大きいと思います。

ありがとうございます(笑)。 最終的な修正は印刷にまわす前にプロの方と何度も相談しながら行いましたが、 それでもなかなか完璧に仕上げるというのは難しいですね。今後も経験を重ねてクオリティの高いものを作れるようになっていきたいと思っています。

ところで、今季の動きとして、アンドレス・ウィッグと撮影したことはビッグニュースでした。しかも、聞くところによると、撮影現場でのリーディングはアンドレスではなく、雄太だったとか。どんな撮影でしたか?

アンドレアスと一緒に撮影を行ったのは僕がサポートを受けているNorronaというノルウェーブランドのチームシューティングでした。ハイエンドのバックカントリーウェアを作っているブランドなのですが、先シーズンからフリースタイルモデルがリリースされて、そのプロダクトのプロモーションとしてWEB配信ビデオを作る事が今回の撮影の目的だったわけです。撮影中にリーディングしてくれたのは「なまら癖ーX」の奈良亘さん!知らない人は調べてみて下さいねー。なまら面白い人です。そして、カメラマンの中田ツトムですね。奈良さんは撮影を安全に進める為のガイドさん。ツトムは北海道ローカルのカメラマンで、普段は中井君とか沢山の北海道ローカルと撮影しているからポイントをたくさん知っているので凄く助かりました。他にも旭岳でガイド業を行っている中川伸也君が一日だけガイドしてくれたりしましたね。ノルウェーの撮影クルーも要求が的確で、こういう画が欲しいって言ってくれるし、アンドレアスは基本的に何でもOKだよー、っていうスタンスだったので、俺とツトムで相談して彼らに提案するって言う感じが多かったですね。前半は旭岳ベースで、後半は十勝岳ベース。毎日胸まで沈むような雪を滑れたので、最高でしたねー。ウィスラーのみんなー、ごめーんって言う感じでした(笑)。そのバフバフ映像はぜひ見てください。


“A day out” – Japan from Norrona on Vimeo.

ビッグネーム・ライダーということで、緊張感はなかった?

そうですねー、実際に会う前はちょっと緊張してたかも?でも、会って話しをしたら彼の素晴らしい人柄は直に解りましたし、緊張というよりは、これから楽しい場所に行くんで、それが楽しみって言うだけでした。確かに自分にとって憧れの存在だし、彼のビデオパートを何度も見たりしていましたけど、彼の人柄がよすぎてそういう実感は持てなかったですねー。でも、ジャンプ飛んだ瞬間に「うわー、アンドレアスだー」っていう、彼と一目で解るスタイルの飛びが見れた時は痺れましたけどね。あと、日本人勢は全員、腕相撲はチャレンジしときました。Video gangsの時の映像が蘇って、マジで怖かったすけどね。

news140526c

 

雄太のように、自分が思っていることをどんどん実現させているライダーというのはなかなかいないように思います。
例えば、自分のやりたいことと、スポンサーが求めていることが違ったり。
似たように、自分のやって来たことが、スポンサーが評価してくれなかったり。
そんなことで悩んでいるライダーに、アドバイスは?

僕の場合で言える確かな事はスポンサーに恵まれているという事です。
自分に嘘をつかずに活動を続けていけば、いずれ波長が合う良いスポンサーに巡り会えるのではないでしょうか?ライダーへの評価や求めている事はメーカーによって驚く程違うと思います。ライダーが求めている理想の滑りやスタイルも人それぞれ。だから自分に合うパートナーが見つかるまで、とことん自分の色を濃くしていくしかないっす。そうすれば、きっと同じヴァイブスを持ったライダーとメーカーが引き合うんじゃないですか?それがスノーシーンの良いところ!そこが大事だと思います!
自分に嘘をつかずに活動を続けるか。良い言葉だなあ。そして大事ですね。
最後に、これからの雄太の活動、2014-15シーズンの活動予定など教えてください。

まだハッキリとは決まっていませんが、狙っている斜面や山がたくさんあるので、それらを狙いつつ、その為のトレーニングや準備を進めながらシーズンを過ごそうと思っています。今から沢山岩登って、トレール走ったりして技術も体力もつけとかないとダメですね。それと資金面での体力も(笑)頑張りますよー。それから「In deep Issue2」も冬の初めには出せるように執筆活動!頑張ります。これからも、たまーにで良いんで気が向いたら活動チェックしてみて下さいねー。おねがいしまーす。
ふさきさん、インタビューありがとうございましたー!
news140526d

 

広告